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04-12.模擬戦終了

 数合打ち合い、両者共に息をつく為に距離をとる。時間にしてほんの数十秒。その間、息をするのも忘れて無我夢中で“ワルキューレ”を駆った。


 ヘルメット内の酸素濃度が自動的に上昇する。新鮮な空気が額の汗を冷やしてくれて心地よかった。


 僕に残された時間は3分を切っている。


 それは“ワルキューレ”が全力稼働出来る限界の時間であり、出力全開で挑まなければ“ライオウ”は、いや、もう認めるけどこのウエハラには勝てない。


 意地とかプライドとか、殴られた痛みとか、恨みとか。それはそれとして今はとりあえず捨て置く。

 

 僕はいつか対峙する事になるかも知れない強敵、ガーランドと渡り合える、叶うなら凌駕するほどの力を付けようとしている。

 今の僕はヤツの足もとにも及ばないだろう事は容易に想像出来る。そんな簡単に越えられる壁ではない事はわかっている。


 それでも常に念頭に置いておくべき仮想敵であり、僕が目指す最終到達点だ。あ、いや、決してヤツみたいになりたいとかそんな事ではなく。


 この戦いをその為の糧にする。


 その為には彼女と同じステージ(・・・・・・)に立って戦わなければならない。

 彼女に、胸を借りなければならない。


 僕はジェネレータのリミッターがしっかり作動しているか確認する。ジェネレータに限界を超えた稼働をさせない為だ。


 機体性能は互角か。

 いや、でも汎用性を備えた万能な機体“ワルキューレ”に対して、パワーとスピードが上回る“ライオウ”はなんと言っても()装甲だ。頭部バルカン数発命中しただけで致命傷に至る。


 例えば両機の性能をレーダーチャートのグラフにしたとしたら、“ワルキューレ”は綺麗な形を示すだろうが、“ライオウ”は(いびつ)な形になるだろう。


 機体性能に一長一短はあれど、結局はパイロットの腕次第。もちろんそれが全てではないと整備士でもある僕は声を大にして言いたいけれど。


 出撃したからには機体の性能を活かすも殺すもパイロット次第。


 そして僕たちはどちらともなく再び間合いに飛び込み、剣と拳を打ち合う。


 ナイフ型の模造剣を2本装備したウエハラはナイフの柄を握ったまま拳を打ち込んでくる。


 乱暴にも5本指のマニュピレータで殴るのでは無く、打突部分のみ装甲が厚くしてあるようだ。装甲が厚い脚部による蹴りならともかく、MK(モビルナイト)の拳で人間の様に殴ればマニュピレータが無事では済まない。拳による打突を行うウエハラに対する配慮だろう。


 武装は……なんとそれだけだ。60mmバルカン砲などの飛び道具が一切ない。ナイフ2本のみ。いや、予備のナイフくらいはあるだろうけど。距離を取られたらどう対応するつもりなのだろうか。


 しかし、機体同士が触れ合う程のこの間合いだとなるほど、確かに強い。

 こうも近づかれては現在装備しているフォトンセイバーを模した剣ですら長く感じてしまう。それでも“ライオウ”に対抗する為には剣とシールドをうまく扱わないといけないのだけれど。


 次々に打ち込まれてくる斬撃を掻い潜り、必殺の一撃を打ち込む隙を窺う。確かにウエハラの動きは洗練されている。どの攻撃を取っても全てが脅威になり得る。隙などない。

 

 でも一方的に攻め続けているものの決定打に欠けるこの状況に少し、ほんの少しだけ焦っている様に思えた。ウエハラの動き、“ライオウ”の動きは変わらない。でもそう感じた、伝わってきた。


 隙なんてやっぱり無い。……でも、


 “ライオウ”が逆手に持って小さく振りかぶったナイフ。その手首を“ワルキューレ”の腕部で受け止める。すぐさま反対の腕、左腕のナイフを横薙ぎに繰り出してくる……わかってる。


 でもその前に機体の間に脚を入れて蹴り飛ばす。スローモーションの様にゆっくりと、確実に操作すると“ワルキューレ”がそれに応えてくれた。


『っ!』


 ウエハラが小さく悲鳴をあげる。そこに初めてこちら主導のアクションをかける。


 背面、背後大腿部スラスターを全開にして操縦桿を押し込む。収束されたエネルギーがスラスターから噴射されて青色の粒子を放った。

 突撃と共に、左腕にマウントしていたシールドを投擲。機体を回転し、十分に加速させて放つ。

 回転しながら“ライオウ”に一直線に向かっていくが、ウエハラはそれをあっさり回避。


『苦し紛れか!』

「……!」


 苦し紛れ? そんな事してる暇すらないんだ。

 心の中でそんな事を思う間もなく、更に突撃を仕掛けて距離を詰め、セイバーを振りかぶる。


 “ライオウ”が、ウエハラが僕の斬撃に対して身構える。隙などない。どう打ち込んでも彼女はそれを捌き切るだろう。今までそうしてきた様に。

 でも、今回はそうはいかない。


 セイバーを振るうその瞬間に肩アーマーにマウントしていたA.F.C.マントをパージして機体を直角に機動させる。するとマントはまるで“ワルキューレ”の残像の様にその場に残され、そして、ウエハラはそのマントにナイフを振るった。


 それがこの模擬戦で唯一見せた隙だった。


 その一瞬の隙を突いて渾身の一撃を放つ。

 

 “ワルキューレ”が放った斬撃が“ライオウ”の肩アーマーに接触すると360°モニターに模擬戦終了を示す表示が現れた。

 


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― 新着の感想 ―
[一言] やはりマントは浪漫… 行き着く先は光学迷彩の認識阻害やビーム無効…
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