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04-08.地球観察


「青い……」


 初めて外から地球を見た時の感想がこれだった。


 写真や映像で何度も見てきた地球だけどやっぱり自分の眼で見ると、月並みな言い方になってしまうけどインパクトが凄かった。地球を見て月並みとか、インパクトが凄いとか、明らかに変なことを言っている自覚はあるし、語彙力が吹っ飛んでしまっているのは自分でも分かっている。

 けど、語彙力が吹っ飛んでしまう程に母星、地球は青くて大きくて綺麗だった。


 まだ地表からの高度はそこまで高くないので、地球の全貌は視界に収まっていないけど、それでも、いや、だからこそ地球が放つ存在感に飲み込まれてしまっていた。


 そう言えばシャルが初めて宇宙旅行に行った時に地球の美しさに感動したって言っていたっけ。


 彼女はその時の事を、すげえ、だのクソでけえだのと語彙力がアレな感じで語っていたけど全然僕も人の事が言えない感じになってしまった。


 いや、でも、うん。そんな事はどうでも良い程に地球は綺麗だった。


 青い球体をコーティングする様に包む白い雲はまるで彫刻のように繊細で美しい。

 所々に垣間見える砂漠化の気配、立体的な山脈の凹凸、太陽光が作り出す光と闇のコントラスト。


 この美しい地球に僕の大切な人、大切な人達がいるんだ。

 

 アメリカ大陸には闇が落ちている。今頃リオは眠っているだろうか、寂しくて泣いていないだろうか。でもきっとシャルが側に居てくれるはずだ。ヨナは、エディは、メイリン准尉は。


 こんなに綺麗な地球を初めて見て感動したからなのか、そんな事に思いを巡らせていると自然に涙が出てきてしまった。重力がないので、涙は浮かんで宙を漂った。

 

 そうだ、そんな大切な人を救うために宇宙でやらなければいけない事が沢山ある。

 ただ連れられてきたわけじゃないんだ、やりたい事はいくつかあるけど、アカギ教授に作製委託した例の新素材。それにまつわる実験も行いたい。

 地球じゃ出来ない事を試すチャンスだ。もちろんニウライザの開発作業の合間を縫って、日課のトレーニングもこなして、“ワルキューレ”の改良も進めながら。

 

 それと、ウエハラとの模擬戦。


 妙な形で話が進んだ模擬戦だけど、実のところすごく有意義な事なんじゃないかと僕は思っている。

 今は協力関係にあるとはいえ、元は敵艦だった“ソメイヨシノ”のエースだというウエハラの機体“ライオウ”との模擬戦を行えるんだ。


 もちろんその時点で“ワルキューレ”のデータも取られるとは思うけど、それは僕にとっても欲しいデータだ。


 僕自身が空間戦に於いてどのような立ち回りをすべきなのか、そもそも空間戦というものが如何なるものかを身をもって体験出来る貴重な機会だ。

 シミュレータでしか経験がない事だけど、今後、リオを救うという最大目的達成のために宇宙での立ち回りは会得しなければいけない事だ。


 ウエハラとの勝負は当然負けたくはないけれど、はっきり言ってそう易々と勝たせてもらえるとは思ってない。


 まだ手合わせした事は無いけれど、カスタマイザーの保護という任務を何度も何度も遂行してきた……そう、有り体に言ってしまえば手練れだ。


 危険な任務を何度も成功させ、その中で確実に生き残ってきた部隊のエース。性格は悪いけど、その操縦技術からは何らかのものを得られると僕は思っている。性格は悪いけど。


 僕はもっと操縦技術を磨かなければならない。アラスカでのあの戦闘の時みたいに敗北する訳にはいかないんだ。その為ならウエハラからでも何でも技術を吸収しなければ。


 けど少し懸念もある。


 それは“ワルキューレ”の事だ。

 敵軍である“ソメイヨシノ”に拿捕された形になっている“ワルキューレ”が敵機と模擬戦じみた事をする事自体が問題があるんじゃ無いかと。


 よほどの事がない限りそんな事は発見されたりする事は無いと思うんだけど、万が一国際連合に準ずる組織に“ワルキューレ”が捕捉された時に、僕がレジスタンスに寝返ったと思われてしまわないように手は打たないと。

 

 国際連合軍が採用している機体識別方式は光学センサーで確認した映像データを照合して機体を特定する方式だ。機体色を変更する程度ではそのシステムは抜けられない。

 “ワルキューレ”以外の機種で模擬戦を行えばその問題は解消されるけど、操縦感覚自体が違うから実力を発揮出来ないだろうし、自身の腕を磨く目的もあるからやはり“ワルキューレ”で模擬戦は行いたい。

 

 何らかの形で機体の露出を抑えられれば機体照合されずに済むんだけど……。


「あ、そうだ」


 と、僕はある方法に思い至った。そう、それは先日カレンさんに教えたあの方法を応用したものだ。

 手間も然程かからないし、少し面白そうだ。

 


 

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、

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いよいよ宇宙でのお話になります。

頑張って書いているつもりですが、知識不足で現実の宇宙との矛盾が生じるかも知れません。どうか暖かく見守って下さいますと幸いです。


そして、誤字脱字報告、ものすごくありがたいです。

この場をお借りしてお礼申し上げます。いつも助かっております、ありがとうございます。

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