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04-04.エース専用機


「エース、専用機」

「“ファントムクロウ”で培った技術を発展させた新型の試作機(プロトタイプ)だ」


 エース専用機でプロトタイプ。なんて甘美な響きなんだろうか、そんな言葉を聞いてはメカマニアの僕の心が高鳴らないはずが無い。


 思わずこの“ライオウ”はどういったコンセプトで作られた機体なのかカレンさんに聞いてしまった。

 僕の食いつきに少し驚いたカレンさんだったけれど、彼女もまたMK(モビルナイト)の開発者、メカマニアだ。

 秘匿しなければいけないところも当然あるだろうけれど、それはそれとして、それでも嬉々として話してくれた。


 まず“ライオウ”は“ファントムクロウ”と同型のジェネレータを搭載した第4世代MK(モビルナイト)であると、しかし最大の特徴であるフォトンライフルを装備していないんだとか。


「ジェネレータ出力の全てを機動に回しているんですか?」

「よく分かったな、流石だよ」


 カレンさんはそうやって褒めてくれるけど、それは僕がキレものだから思い至ったというわけでは当然ない。半分は勘。半分は単に1周目の人生でそういう機体を使った兵士が居たらしいという事を勉強したから。


 第4世代MK(モビルナイト)最大の特徴であるフォトンライフル。その威力は一撃で敵の装甲を焼き貫く強力な物だ。

 それを捨てて、装甲すら最低限に削ぎ落として、エネルギー全てを機動性と関節のトルクに特化させた機体。数字だけで考えるとエディの“ブルーガーネット・リバイヴ”の機動性をも凌ぐかも知れない。


 そう、この“ライオウ”は関節の所々から内部フレームが露出してしまうほどに装甲が薄い。腹部などはシリンダーが覗いてしまっている。


 機動力、俊敏さなら“ライオウ”、火力と防御力なら“ブルーガーネット・リバイヴ”といったところだろうか。エディの機体も機動力は高いが、それでもこの“ライオウ”にはスピードでは引けを取るだろう。


 いや、それでもやっぱりこの“ライオウ”の軽量化は極端過ぎる。

 現在、多くのMK(モビルナイト)の主兵装である90mmサブマシンガンの弾丸は愚か、主に牽制などに用いられる60mmバルカンですら容易に装甲を貫きそうだ。

 エース専用などと謳っているのでコクピット周辺は屈強な作りにはなっているであろうけど、少し強気が過ぎないだろうか。


 ……強気。ああ、何となくパイロットの顔が浮かんだ気がしたので僕は興味を別の箇所に移した。


 関節はまだ普及していないボール関節を使っているみたいだ。メンテナンスは大変だけど、人体に近い動きをさせられる画期的な構造。


 軽量かつ高出力、関節の可動にこだわった設計。現時点で最強クラスの中距離武器フォトンライフルの排除。

 

 どうやらこの“ライオウ”は近距離戦を得意とするパイロットが乗るみたいだね。うん、まぁ、察するに多分パイロットはあの暴力女だろう。


「せっかくだ、少し面白い物を見ていくかい?」

「面白いもの?」

「ああ、着いて来ればわかる」


 話の流れ的にMK(モビルナイト)に関係する事だとは思うけど何だろう。

 ニウライザの方は少し手が空いているから着いて行ってみよう。



 僕が連れられて行ったのは壁の一面が鏡張りになった軽運動場だった。バレエやダンスの練習場はきっとこんな感じなんだろう。


 そこに研究部員だと思われる白衣の男性が2人。ノートパソコンを覗き込んで難しい顔をしている。

 そのノートパソコンから伸びたケーブルの先を辿って行くと、


「……ぼうりょ……ウエハラ」

「ふふっ、そうだ暴力女だ」

「誰が暴力女よ誰が!」


 つい口に出てしまった僕の言葉に吹き出しているカレンさんを見たウエハラが腰に手を当てて一喝した。

 ほんと沸点が低いな。ちなみに言うとウエハラはアニメ声なので全然怖くない。


「ウエハラ三佐、ちょっと動かないでください」

「ったく、動けって言ったり動くなって言ったり……」

「……自分の機体の為なのに」

「あ!?」

「いや、なんでも」


 「んな事わかってるわよ」とぶつぶつとぼやくウエハラの身体、手首や膝、肘などの関節、更にはあたまにまで多数の装置が取り付けられており、研究員の合図で武道の型の様な動きをひと通りこなしていく。


 全身に取り付けられた機器でウエハラの動きをトレースして取り込んでいるみたいだ。


「取り込んだデータを“ライオウ”のソフトウェアと同期させて挙動に反映させようとしているんだ。人体に近い動きが出来る機体だからこそそこは拘りたいらしい」


 カレンさん曰く、パイロットが思う『こう動いてほしい』というイメージに対して“ライオウ”の動きがあと一歩足りないんだとか。

 それをプログラムで改善しようとしているが、やはり自分の体を動かすのとは訳が違うのでそのギャップに苦しんでいるらしい。


 見たところ“ライオウ”は近い距離での戦闘、例えば槍や剣の間合いではなく、もっと近い……ナイフや、そう、拳の間合いで活躍するだろう。


 装甲を極端に削って軽量化を図り、得た機動力を最大限に発揮して接近。高出力のジェネレータから生み出されるトルクで渾身の一撃を放って撃破。


 エディが得意とする戦法と似ているけど、コンセプトはまるで別物だな。


「ちょっとカレン、薬の方がひと段落ついたんならコッチ手伝いなさいよ」

「やれやれ……」


 工学と医学、薬学に通じているカレンさんには休んでいる時間は無さそうだ。


 僕も可能なら同席させてもらいたいけど、ラボの方で作業があるからそれが終わってもまだやっていたら見学させてもらおう。すごく興味深い試みだ



最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

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