00-01.コータとリオ
SF再挑戦です。
「ソロモンよ、私は帰ってきた!」
タイムリープものSFです。よろしくお願いします。
「進路が違ったって幼馴染じゃなくなる訳じゃないんだからさ」
僕のその言葉に幼馴染のリオの表情が明るくなった。
彼女の頬が赤く染まっているのは夕焼けのせいだけではないだろう。
艶やかな黒髪。腰まで伸びるその美髪はまるで絹のような滑らかさだ。前髪からは形の良い眉毛が覗く。白雪の様な透明感のある肌、桜色の柔らかそうな唇。儚さを湛えたその翡翠色の瞳に今にも吸い込まれてしまいそうになる。
そんなリオが照れたように俯いて、その綺麗な唇で言葉を紡ぐ。
「そう……だよね。離れても繋がってる、よね」
「言い方がロマンチックだなぁ」
「ふふっ、けど本当のことだよ?」
そう言ってリオは笑う。
「リオの機体を僕が整備するんだ。それでリオは国を護る。すごく魅力的じゃない?」
「……ふふっ、そうだね」
「だろ? だから卒業したらまた会おう。たかが五年だよ」
「五年かぁ、長いなぁ」
そう、軍が運営する各学校の就学期間は五年。卒業を迎えた僕たちは二十歳になっていると言う事になる。
僕は日本の【防衛学園】へ。
リオはアメリカの【国際連合学園】にそれぞれ進学する。
お互いの夢を叶えて再び五年後に再会しようと約束する。
「……五年後、な」
「う、うん。五年後、ね」
僕がそう言うとリオは翡翠の瞳をふせて頷いた。そして僕は差し出されたリオの細くて美しい小指に自らの小指を絡ませる。
「……」
「……」
お互いに目は合わせられない。けれどしっかりと結ばれた小指を解く事なく僕達は歩き出す。
長く伸びた2人の影が仲良さげに揺れる。
僕は工学を学んで整備士になる為に。
リオは巨大人型機動兵器MKのパイロットになる為に。
リオへの想いはまだ伝えない。
僕自身がリオの重荷になってしまうのではないか。夢に向かって羽ばたくリオの足枷になってはいけない。
想いを伝えるのは夢を叶え合った五年後だ。
僕は小指から伝わるリオの体温を感じながら心にそう誓った。
こうして僕、コータ・アオイと彼女、リオン・シロサキは別々の道を歩むことになった。
◇
日本が所属する国際連合機構と北欧諸国連合軍、通称〝レイズ〟との戦争が終結してから五年。
僕は【防衛学園】を卒業し、今日行われる日本軍及び国際連合軍への入隊式典を控えていた。
防衛学園に入学した僕はひたすらに自分を磨いた。
卒業後、一部の卒業生にしか与えられない特別な勲章を勝ち取るために。
一般的な成績で軍隊に入隊したところで宇宙を含めて配属先は無数にある。その星の数程ある配属先がリオと同じになるなんて事は奇跡でも起こらなければあり得ない。
ただその勲章を与えられた卒業生の配属先はかなり絞られる。
僕はリオと同じ部隊に配属されたい一心で陰湿なイジメや不正が横行する防衛学園での五年間を耐える事が出来たんだ。
入学当時は皆それぞれの正義や信念などを持って入ってきたはずなのだけれど、実技などで明確にランク分けされる実力主義の教育方針だったために他者を蹴落としてまで上にあがろうとする者が現れ始めた。
多くの生徒はホントに最悪な奴らばかりだったけど、教授たちは素晴らしい人が揃っていた。中でもMK開発の第一人者と言われるアカギ博士やその他、著名な教授たちと仲良くなれた。それだけでも防衛学園に行った甲斐があったというものだと思う。
既存のMKの設計段階の裏話だったり、研究中の新素材のことだったり。在学中に僕もその研究に参加させてもらってもう少しでその素材も完成する。
まだまだ課題の残る素材だけど、それが完成すれば今後のMKの活躍の幅が飛躍的に広がるはず。
この五年間、僕は頑張ってきた。そう胸を張って言える。
それもこれも明日からのリオとの任務に就くため。
アメリカに渡ったリオもアカデミーで頑張っていたらしく、パイロットライセンスを取得することはもちろんの事、国際連合機構随一の名門校であるアカデミーをなんと首席で卒業した。
そんなリオに国際連合軍は新型MK〝ライラック〟を与えると発表した。
この〝ライラック〟は数機同時に開発された新型MKのうちの一機で他の何機かは既に任務についている何人かのエースパイロットが搭乗する事になっているらしい。
どのパイロットも前大戦時に活躍して教科書に載っている様な英雄級のパイロットばかりだ。
そこに名を連ねるだなんて、本当にリオは頑張ったんだなって思う。
僕も明日からはその新型MKとリオ達と月にある基地での任務に就く事になっている。
今から始まる入隊式典でその新型MKもお披露目されるらしい。
成長したリオに会える事を思うと気持ちが高鳴った。
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次話はこの後20時頃更新。