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平井のエッセイ・日常系とか旅行記とか

滝虹コレクション

作者: 平井敦史

 皆様、滝はお好きでしょうか。私は大好きです。

 というか、前作で称名滝(しょうみょうだき)について熱く語ってしまったので、バレバレかもしれませんが。


 滝の魅力は色々ありますが、水しぶきに陽光が反射して美しい虹を描くのも、醍醐味(だいごみ)の一つでしょう。


 落差日本一の滝、称名滝に虹がかかる様子は、前作「日本一の滝の通行止めが解除されたよ。やったね。(旧題「日本一の滝は今、見に行けません。もうちょっとだけ待つのじゃぞ。」)」に載せてありますので、そちらをご覧いただくといたしまして(はい、宣伝です)。

 私がこれまでに撮影した滝×虹の写真を公開しつつ、あれこれ語っていきたいと思います。撮影技術やカメラの性能については、なにとぞ寛大な目で見ていただければとm(_ _)m



 さて、一口に滝と言っても色々ありますし、どんな滝でも虹がかかるかと言えばそんなことはありません。


 まず大前提として、北向きに流れ落ちている滝――つまり日差しが直接当たらない滝は、こと虹に限って言えば残念ながら問題外です。


 また、ある程度流量が多くないと、日光を反射するための水しぶきが足りず、立派な虹は出現しません。

 ただし、滝の形態によっては、流量の割に水しぶきが多く、虹が出現しやすい、というケースはありますし、その逆もあります。


 つまり、東~南~西を向いて流れ落ちていて、ある程度以上の量の水しぶきが飛散している滝、というのが最低条件となるわけです。


 でも、そのような条件を満たしている滝でも、晴れてさえいれば常に虹がかかっているわけではありませんよね。


 そもそも、虹はどのような条件の時に見ることが出来るのでしょうか。

 太陽光を反射する微細な水滴が一面に漂っていること、という条件は満たしている前提で、まずは太陽がちょうど背後から差し込む形になる必要があります。

 そして、太陽と観測者を結びそこから更に延長した線を軸として、観測者を起点とする角度約42°の線をぐるっと回転させた円周上に、虹は現れるのです(つまり、通常は地面より下になるため一部の弧しか見えませんが、虹って実は円形なのです)。


 ……え、この説明じゃわかりにくいですか? ではもう少しわかりやすく言い換えると、背後から差し込む太陽光と、観測者の視線が、滝付近の水しぶきのスクリーン上を頂点として、約42°の角度を形作る時、虹が現れる、と考えても、当たらずとも遠からずです。


 では、そこからどのようなことが導き出されるでしょうか。

 まず一つ目。太陽の位置が上がるほど、虹が現れる位置は下がっていく、ということ。

 太陽の位置が高くなる正午前後、それも季節が夏至近く、ともなれば、真南を向いて流れ落ちる滝が激しく水しぶきを上げ、そこにギラギラの太陽が照り付けても、虹はせいぜい滝壺付近のごくごく低い位置に現れてくれればまだ良い方。滝を横切るような立派な虹を見ることはとうてい叶いません。


 まあ、南中(なんちゅう)高度が低くなる冬至付近なら、正午頃でもある程度高い位置にかかる虹を見ることもできる可能性がありますが、冬場だと日差しが弱くなってしまい、虹の鮮明さも下がってしまうのがジレンマですね。


 ちなみに、南中高度の求め方は、夏至の時が90°マイナスその地点の緯度プラス23.4°、冬至の時が90°マイナスその地点の緯度マイナス23.4°、春分および秋分の時が90°マイナスその地点の緯度、です。

 ――こうしてみると、北緯35°線(静岡の沼津市、京都市、広島の三次市などを通るライン)上での冬至の南中高度は31.6°。もっと北ならさらに下がるわけで、冬の太陽って思ってた以上に低い位置にあるんですね。


 そして二つ目。太陽と観測者と滝がほぼ一直線に並ぶ必要があるため、滝の向きによって、虹が現れる時間帯は限られるということ。

 たとえ、山影などで遮られることなくほぼ一日中日差しが差し込む滝であっても――実際にはそんな滝はめったにありませんが――、斜めから差し込む日差しでは虹はかからないということです。


 なので、虹を見るのに適している滝の条件は、真南よりも、南東~東、もしくは南西~西を向いて流れ落ちる滝。そこに、東向きなら午前の比較的早い時間帯、西向きなら午後の比較的遅い時間帯に、見に行くのが良いでしょう。季節はやはり、日差しがまだまだ強く、それでいて太陽の高度は次第に下がっていく晩夏から秋口あたりが狙いめかと思います。


 もちろん、滝と鑑賞できる場所との位置関係、あるいは日差しを遮る山影などの影響で、この方角から差し込む太陽がある程度以下の高度になる時期でないと虹は見られない、なんてこともありますので、あくまで一般論ですが。


 ちなみに、前作で取り上げた称名滝の場合は、雪解け水で流量が爆発的に増え、傍らにハンノキ滝も出現する春~初夏がお薦めです。



 はい、ではお待たせいたしました。

 写真の披露を始めましょう。


 まずは、静岡県富士宮市の白糸(しらいと)の滝。全国に山ほどある「白糸の滝」の中でも、随一の知名度を誇る滝ですね。

 この滝は、富士山の噴火による溶岩の層の間から伏流水(ふくりゅうすい)が溢れ出る、いわゆる「潜流瀑(せんりゅうばく)」と呼ばれる形式なのですが、滝幅がゆうに100mを超え、高さも26m程度という横長な滝のため、水しぶきのスクリーンが滝全体を覆いやすい、つまり虹がかかりやすい滝の一つです。

 実際、画像検索しても虹がかかった写真がネット上にあふれている状態ですので、今更私の拙い写真を載せるのも若干気が引けるのですが……。まあグダグダ言ってないで思い切って参りましょう。

挿絵(By みてみん)

 こちらの撮影日時は2014年10月25日の9時45分頃。午前中のなるべく早い時間に見に行かれることをお勧めします。

 あと余談ですが、富士宮やきそば美味しいですよね。



 続きましては、宮崎県都城(みやこのじょう)市の関之尾滝(せきのおだき)。これも、高さは18mほどなのに対して横幅が40mほどある、横長の滝です。

挿絵(By みてみん)

 撮影日時は2018年2月14日10時25分頃。ここも午前中のなるべく早い時間が良いでしょう。正直、この時は訪れるのが少し遅かった感がありますね。


 ちなみに、この関之尾滝。滝の上流部分に、世界有数と言われる甌穴群(おうけつぐん)を擁しています。甌穴(おうけつ)とは河底や河岸の岩石面上にできる円形の穴で、小さなくぼみに入り込んだ小石が急流に転がされて穴をえぐり拡げたものです。

 中々に見ごたえのある風景でしたが、人間の身長の高さから写真を撮ってみても、いまいち迫力は伝わらない感じです。ドローンで空撮とかしてみたら面白そうですが……、集合体恐怖症気味で蓮コラとか絶対無理、という方にはお勧めできません。



 お次は、兵庫県養父(やぶ)市の天滝(てんたき)。落差98mにもなる、兵庫県を代表する滝です。

 この滝について特筆すべき点は、滝壺付近の真下から見上げるだけでなく、左岸側の登山道を登って行って、途中の滝見台から眺めたり、登山道をさらに登って真横から見たりも出来るという、いろんな角度から鑑賞出来る滝という点です。

 意外と、滝を見ることが出来るポイントって普通は限られてるんですよね。

 これは滝見台から撮影したもの。

挿絵(By みてみん)

 撮影日時は2020年10月14日8時0分頃。かなり秋も深まった時期の、相当朝早い時間でないとみることは出来ないので、正直かなりレアな写真だと思います。


 なお、この天滝ですが、本稿投稿時点(2022年6月4日)では、土砂崩れの影響で通行止めとなっているようです。残念。一日も早い復旧を願っております。



 さてお次。徳島県海部(かいふ)海陽(かいよう)町の轟九十九滝(とどろきくじゅうくたき)。正確に言うと、九十九滝と呼ばれる滝群の中の最大の滝である轟本滝(とどろきほんたき)です。

 ここは、落差58mの滝が岩盤を深く浸食していった結果、苔むした岩の扉が隙間を開けたその奥に滝が隠れているような形になり、何とも幽玄な雰囲気を漂わせています。

挿絵(By みてみん)

 滝壺付近にひっそりと虹がかかっていますね。

 撮影日時は2016年1月15日12時10分頃。時期や時間次第ではもうちょっと見栄えがする写真も撮れるかもしれませんが、滝の向きや撮影スポット、山影などの関係から、これくらいが限界かも。


 ただ、この滝の本来の持ち味は、最初に書いたように、その幽玄な雰囲気。虹にこだわって快晴の日を狙うより、ちょっと曇り気味、何なら小雨が降っているぐらいの方が雰囲気は楽しめるかと。訪れる時期も、苔の勢いが盛んな梅雨の時期以降から秋ぐらいまでがお薦めです(そういう時期に行ったこともあります)。

 まあ、ものすごい山奥にあるので、車がないと……いや車でも、アクセスは中々しんどい所ですが。個人的にはお気に入りの滝の一つです。



 さて、そろそろ弾丸(タマ)も尽きてきたので、次で最後にしましょう。

 これも兵庫県。鳥取県との県境に近い、宍粟(しそう)市の逆水(さかみず)の滝。

 落差は30m程度の小ぶりな滝ながら、綺麗な虹がかかることで、知る人ぞ知る滝であり、かつてはアクセス困難な「幻の滝」と呼ばれていたそうです。

 まあ現在でも、氷ノ山(ひょうのせん)の登山道へと至る狭い砂利道を延々走らないといけないのですが。

挿絵(By みてみん)

 撮影日時は2017年10月10日15時25分頃。

 滝の真ん中やや上あたりに、かすかに虹がかかっているのがおわかりいただけるでしょうか。肉眼で見たら割と良い感じだったんですけどね。写真だといまいちわかりづらいですね。

 もう少し風があって水しぶきが舞い上がっているような日は、かなりすごいのを見ることが出来るそうですが……。



 いかがでしたでしょうか。滝と虹の魅力が皆様に伝わったのなら嬉しい限りです。


 あと、有名どころの滝だと、日光華厳の滝も中々良い虹がかかるようで、ネット上にもその手の写真が沢山上がっています。滝の向き的には、午前中の比較的早い時間でしょうか。

 ただ、あの辺りは年間を通じて晴天率が低い地域らしく、実際私も二回行って二回とも天気はいまいちでした。なので、よほど運が良いか、何度もアタックするかでないと、見るのはちょっと難しいかも。



 なお、滝はその性質上、見に行くのに危険を伴う場合もありますので、くれぐれもお気をつけて、お楽しみいただければと思います。

 では最後に一句。


 滝音(たきおと)や 七色(ないろ)に染まる 朝の風

そのうち良い写真が撮れたら、加筆追加していきたいと思います。

ご感想、お待ちしております。

また、おすすめ滝情報などございましたら、是非!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 滝に癒されました。ありがとうございます。 特に白糸の滝のお写真綺麗です。 〉宮崎県都城市の関之尾滝 ダイナミックな滝ですね!コレは是非見に行きたいです。 滝は場所によっては足場が悪い…
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