4.いつメン、ミーティング!
全員集合!
自宅。私はパソコンと向かい合っていた。画面の中には、丸いアイコンが四つ。
『もしもーし。聞こえますー?』
『おー、聞こえるよー。』
「聞こえるー!」
『聞こえるよー。』
『……。』
『あれ、全員いる??』
「舞依ちゃん、入ってないよ。」
『東さん、またやらかしたんか。』
『もー、舞依ぃー…』
あきれたため息が聞こえた。
今日は、仲良し五人メンツ―通称・いつメン―で、オンラインミーティング!!
皆が考えた行き先を発表・決定するんだ!!
でもアズマイちゃんだけ入れてなくて、別のメールアプリでずっとsosを送ってる!私も悲しい!!
『ガガガッ…』
あ、アズマイちゃんが入ってきた!でも、何かを叫んでいる顔しか映ってない。
『舞依、マイクオンにして。カメラは切っていいから。』
綾那ちゃんが伝えると、アズマイちゃんはオッケーサインを出してカメラを切り、
『皆さん、お騒がせしましたーっ!!』
と声を出した。よかった。これで始められる!
綾那ちゃんがお叱りの言葉をアズマイちゃんに言ったところで、ミーティングは始まった。
『よーし、じゃあ始めてこー。誰から言うー?』
『東さんと部長はトリでいいんじゃないか?代表者だし。ワタシから言ってもいいかい?』
と、プリンのアイコンの太田原星凪―セイナちゃんが言った。え、私たち最後!?
『あ、それよき。あたし最後でいいかな。』
アズマイちゃん採用しちゃった。うーん…まあいいか。なぜか連打している綾那ちゃんに続いて、私もグッドスタンプを送った。
『じゃあ行かせてもらうぞ。私が選んだのは、古倉川、深間神社、藤蚕ホールとメリーランドの四か所だ。』
斜線がいっぱい書かれたメモ帳のページをめくり、最終候補の五か所が書かれたページの下に書き足していく。古倉川は書いてなかったな…『メリーランド』は遊園地で、皆が楽しめる乗り物もあるから候補に入れてあった。
『なんか、懐かしい場所めっちゃあっていいね。』
『いや、逆にそこら以外は思いつかなかった。』
『うけ~。じゃあ、次は…莉乃、行ける?』
『あ、わたし?…わかった。』
優しい声で、きれいな夜景のアイコンの伊藤莉乃ちゃんが返事をした。
『えっと…私も星凪ちゃんと同じで、深間神社とメリーランドは候補に入れて、あとは藤蚕駅と花宮湖もいいんじゃないかなって思います。…ちなみになんだけど、宿泊するところも温泉旅館がいいです。』
「そ、そこまで考えてるの!!」
『莉乃、いいじゃーん!』
『あ、ありがとう…。』
照れたように莉乃ちゃんが話した。かわいい。
『じゃー、順番的に綾那か。綾那はー…』
綾那ちゃんが言っていく。その次に私、最後にアズマイちゃんが言った。
…うーん。
『なんか、かぶってるとこいっぱいあったね。』
『うんうん。』
「それ言おうと思った。」
『さっきも言ったけど、やっぱり行くところって限られているんじゃないか?』
『それなー。だってここ…田舎だし。』
田舎って言っちゃった。田舎だけど。山と湖が観光地の田舎だけど。
『東、それ言っちゃダメなやつ。』
『え、ごめん。』
『で、でも、いい思い出がもっとできそうな場所ばかりだよね!近いところばかりだから行きやすいし!』
『莉乃氏、いいこと言うじゃないか。』
「その通りだね。」
『じゃあ、場所は決定でいいかな?』
おっけー、と言いながらグッドスタンプを送った。皆も送ったらしく、ポンポンと同じマークが浮かぶ。
『あっはは、なんかいいね。久々って感じ!』
『それ!てか、まじでこのメンツで会わなすぎて草。』
『綾那氏、草なんて言うんか?』
『うん。え、最近だっけ、草って言葉。』
『高校からじゃない?』
『まじで?そんな経つかー。でも皆、声とか話し方とか全然変わんないね。』
「そうかな?」
『てか、女子って声変わりするもんなの?』
『東さん、そこツッコむのか?』
『え?違ったっけ…?』
「違うね。」
『うぇ~…』
あっはは、変わんないな、アズマイちゃん。皆も変わらない。そして、このやり取りも。
…時が戻ったみたい。今、皆バラバラの高校で日常を暮らしているのに、こうやって中学の頃のように話しているのが、なんだか不思議な感じ。
笑い声と話し声が絶えないパソコンの前で、私はふと、あの頃の私を思い返していた。
♪皆のアイコン♪
菊花→自作のイラスト(上手)
舞依→パンケーキの写真(美味しそう)
綾那→背景も青いイルカの画像(美しい)
星凪→プリンのイラスト(可愛い)
莉乃→近所の橋で撮った夕焼けの写真(綺麗)