3.すこみなメンツ
私はいつか、遊びに自分から誘ったことはあまりないと言った。
そう、『あまり』。
だから、全くないというわけじゃないのです(`・ω・´)ドヤァ
その証拠がこちら!(じゃーん)すこみなメンツーっ!!!
いつめん5人のうち、カラオケ好きメンツ3人で作ったパリピ(?)メールグループなのだ!!
これを作ったのが、そう!この佐藤菊花なのであります(`・ω・´)ドヤァ←2度目の登場
すごいでしょ~見直したでしょ~ふっふっふ~
「じゃあ、今日は27日だから、2+7で9番の人ー。これ答えてくださーい。」
「はい!!江戸幕府です!」
「今数学だぞー」
「すみません聞いてませんでした!」
「こらー。」
また私は、ボーッとしてやらかしてしまった。
「あっはは!本当に、今日の数学の授業面白かったー!」
「もーっそんな笑わないでよー」
授業も終わり、車で親が迎えに来るというしおちゃんと一緒に廊下を抜けた。
「だって、もう理系に日本史ないのに江戸っ、ふふ、江戸幕府って!!」
「うわーん先生ぇー!!栞さんがいじめてきます~!!」
「きゃーごめんってー!」
と言いつつ、また笑いだす天草栞さん。階段踏み外しそう。
「てか菊花、最近様子おかしくない?」
「え?」
笑いが収まり、突然真面目っぽい声になった。
「いや、突然今デジャヴを感じたの。そしたら、この間のあの事件が思い当ってね。」
「事件…?」
「うん。」
そんなやばい事件おかしたかしら?この学校のイケオジ先生全員に告白しかけたことはあったけども…いや、未遂未遂。
「あれだよ。ミライが体育着忘れちゃって、菊花に借りに来た時の。ふふっ。菊花、ボーッとしながら、ミライに化学の教材渡したんだよ?教科書もノートも資料集も全部!!」
「それ事件なの!?」
「そうだよ!だって、それ渡された時のミライのびっくりした目!!あれは腹筋崩壊事件だよー!」
またこの人笑いだした。もー恥ずかしい~!!
「菊花。最近のおかしい…もとい、可笑しい行動の理由は何なんだい??」
玄関で靴を履き替えながら、しおちゃんが聞いてきた。
んー。別にしおちゃん達に隠しているわけじゃないんだけど、でも、なんか秘密にしたいから旅行のこと言っていないんだよね。
「うーん…実は今、究極の選択を迫られててね。」
「ほぅ。例えるなら?」
「例えるなら!?えー…宮城県産茎わかめか岩手産の茎わかめかくらい。」
「いや、難しい。」
あ、伝わらなかった。
…今悩んでいるのは、聖地巡礼卒業旅行(長い)の、私が行きたいところの最終選別。
多すぎても困るから、個人的に5つにしぼることにした。
でも、最後の五つ目が定まらない。どうしても迷う。
「ねーしおちゃん。」
「んー?」
「宮城か岩手、どっちか選んで。」
「また茎わかめの話?」
「ううん。何にも関係なしで。」
「えー…松本俊介様いるし岩手かな。」
「様。そっかー…ありがと。」
「てかなんで聞い…あ、お母さん来てる。じゃあね、菊花!」
「うん、ばいばい!」
****************signal,now?***************
「というわけで、岩手になりました。」
「え、きっか岩手県行きたいの?県内旅行って言ってたよね?」
「あ、ごめん選択肢の方言っちゃった。」
「???」
くりくりした目をぱちぱちさせる友人。今日私が駅ビルで待ち合わせたのは、アズマイちゃんと一緒に「すこみなメンツ」に入っている辻綾那ちゃん。ポニーテールがチャームポイントの、我らがリーダー的存在。今日は入部している弓道部がお休みらしく、会うことができた。
「きっか、岩手って何。」
「あ、岩手県は忘れて。迷ってた二つの場所が藤蚕ホールと市立図書館だったんだけど、しおちゃ…友達に選ばれたのは、藤蚕でしたって話。」
「ああ、なるなる。」
藤蚕ホールは、この地域が昔、養蚕が盛んで、生糸の名産地として知られていたことと、藤の花が県の花であることに由来する大きな市民ホールのこと。中学の合唱祭で行って以来行けてなかったから候補に入れていた。
「ちょっと待って。」
「ん?どうしたの綾那ちゃん。」
「いや、きっか、ボケてないよね?」
「…急にどうしたの。」
また、ジャージと化学の教材間違えるほどのミスした?綾那ちゃんが微笑みをこらえながら私を見た。
「だって、藤蚕と図書館、同じ場所にあるよ?」
「……あ、そうじゃん。」
綾那ちゃんが笑い出す。うわぁ、しかもうちの高校のすぐそばっていう…
「もー最近私めっちゃぼけてるじゃ~ん!!」
「はははっそれ自分で言う?」
「だって~…楽しみなんだもん。」
楽しみすぎて、空回りしているんだもん。いつもしてるけど。
「綾那も楽しみ。てか藤蚕、行きたいリストに入ってたよ。」
「本当!?やっぱ思い出の場所だよね~!」
「ごめん、きっか。綾那は図書館目当て。」
「うぇ~綾那ちゃ~ん!」
確かに綾那ちゃんは読書好きのイメージあるけども。
「ごめんって。まぁ、こういう風にかぶる場合もあるけど、皆それぞれ五個くらいは考えているだろうから大丈夫だよね。」
「うん。五個全部かぶってたら面白いね!」
「そうなったら、ルートづくりは全部きっかね。」
「何で!?」
「だって五個だけだと1日で終わっちゃうじゃん。つまらなそうだし、せっかく『旅行』って名がついているんだから、せめて十個くらいは候補あげとこうよ。」
「う、確かに。」
さすがリーダー。
「それに、ホテルでトランプとか…コイバナもしないとだしね~♪」
「ちょ、何でそんなに私を見るんですか綾那さん!」
「まだあの先生のこと想っているんでしょ~?舞依とかも気になるけど、きっかも聞いとかないと~」
「!!!いっ、いや、それは…っ」
ぽんっ、と頭の中に「あの先生」の顔が浮かぶ。あの授業。あの目。あの微笑み…
「まー、楽しみにしてるよ、青春少女!」
「あ、綾那ちゃんのバカ~!!」
「あ、そういうこと言ってると、きっかのオンリーコイバナショーにするよ?」
「いやあぁ!それだけはやめて~!!!」
ニマニマ笑う綾那ちゃん。そのイジリに懐かしさを感じながら、私は、まだ『あの先生』のことを考えていた。
菊花は生徒会で書記を務めています。生徒会は活動が少ないので、有意義に放課後を過ごせます。
でも、行事近くなると帰宅時間遅い。9時とか。