3-3 愛なき国
学園の階段の一番下でミミックはいじけて階段を下りてくる幼女の姿をただぼんやりと眺めていた。学園の中はスカートを履く幼女が非常に多い。ジーンズというものが存在しないので、魔術師の正装といえばローブやスカート、スカートといえばやはり下から眺めるしかないだろう。やはり転移者っだからといって特典なんかはなかった。別段それ自体はなんとも思ってはいない。もし俺と同じような存在がここに来ることになれば最初の洞窟で息絶えていることだろうな…。どうして俺は生き残ってしまったんだろう。生きることにどれくらいの意味があり、どれほどの価値が自分にはあるというのだろうか?自分には対して価値がないのは分かっている。幼女を見たり、人の研究を盗み見たり、そういうことをして面白がるのが趣味の唯唯人生を謳歌している、人生を無駄に生きている存在だ。もし、戦争が起きても何もする気はないし、もし食糧危機が起きても何もしないだろう。社会のためにはなんの役にたたない存在、それが俺。そんな俺がどうして生きているのか?元有意義な死に方たがあったのではないか…?と憂鬱になりながらも視姦を続ける。誰も階段を下りてこない時がある。そういう時は自ら幼女ゴーレムを作り着色して階段を登ったり降りたりさせた。当然ペイント服なので実質はゴム裸であるのが尊くて良い。
アイキが悶々と自分の存在意義について悩んでいたころ、シャレンが愛のない国を作りたがっていると噂で聞き協力したいと申し出た人物が現れた。アイキはそんな人物と面会を開始する。
「貴方が、愛のない国を作りたいと言っている張本人ですか?実は私、その計画に協力を申し出たいのです」
「何故態々そんなことを?愛のない国を作ってどんな意味があるのです?仮想するのはいいかもしれませんが実際に作ってその国をどうしようというのですか?」
「特にどうとも…。ただそんな国があっても面白いかなと思っただけです。正直なところ新しい領地の統治方法としてはいい着眼点だなと、実験したくなったのです」
「わかりましたでは具体的にどうするおつもりですか?」
「ある土地を与えます。そこには人はまだ住んでない何もない土地です。そこで実際に愛のない国を成立させるための街を作ってみせなさい。それが出来上がれば私が視察に向かいます。そうして適切だと思われる領民を連れて行きます。それでその領民たちを観察すればよいのです」
「本当にやるのですか?容赦はしませんよ」
「はい、よろしいのですね?では領地はこの地図のこの斜線の部分全てです。期限は一年でどうでしょう?短すぎますか?」
「わかったやってみよう…」
「シャレンさん本日は通訳ありがとうございました。本日はこれにて失礼します。出来上がるのが楽しみです」
そう言って協力者は去っていった。愛のない国を本格的につくろう。そうしてどん底に誰かを落としてみる。たしかそんなことを考えていたなぁ…。そんなことできないだろうな。自愛という愛は消すことはできないだろうし…。できるだけ、、愛を少なくしよう。
アイキの愛のない国作りが始まった。どうやって愛を少なくするか?アイキは、人と全くかあ変わらなくても生きていける国を作ろうと考えていた。魔法で何とかする…魔法で人と関わらなくても生きていける世界にする。ゴーレムや魔法道具に詳しい、ドルチェ、カルミアの協力が必要だな。
中庭にあるブランコに乗ってブラーンとしていると、生徒たちの声が聞こえる。ああ、太陽が気持ちいい。このまま溶けてしまいそうだ…ダンジョンにこういう罠があれば嵌って動けなくなりそうなくらい、心地いい。
「今年もそろそろ学園祭の時期だな。今年はどんな出し物しようかなー」
「あ、人族魔族和平共存祭が行われるから気合入っているんでしょ?確かにあれは国を挙げての祭りだけど、学園祭とは関係ないんだからねーどうせ、学園祭で一儲けして、平和共存会議にやってくる可愛いおねぇさんとお付き合いになりたいとか考えてるだけでしょ?」
「どうしてそれを!」
「私とあなたは長い付き合いなんだからわからない訳ないでしょ?むしろどうしてわからないと思ったのかが不思議よ」
「確かにそうだった。お前は読心術が得意だった、忘れてたぜ」
「あなただけよ、読心術ができるのは」
「なんか言ったか?」
「何でもないわよ」
どこかのラブコメのような台詞が聴こえてくる。学園祭で出し物を出せるって本当か?国を作るのもいいけれど、学園祭の出し物をまずは考えないと、日程とその期限も聞いてこよう。
――学園祭の用意開始
まず、必要なものを書き出して、人形を操作して青空市場ですべて購入、白の塔シャレンの元に届けてもらうことにしよう。こういう時学園長からもらった身分証があって助かる。シャレンがシンディ、カレンと住んでいるので1105号室生徒の寮でいいか。買うべきものを、リストに纏める。
なにかの果実 60g
水 240g
砂糖 10g
瓶に30℃で5日保存でできたイースト 3g
小麦粉 300g
お湯 200ml
砂糖 20g
牛乳 15g
バター15g
塩 3g
「生乳、牛乳または特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去し、乳脂肪分を18.0%以上にしたもの」を瓶の中1/3入れる振る。水分を取り除く3回繰り返す残ったものがバター
小麦粉、砂糖、イースト、牛乳、塩を混ぜて練りながらお湯を入れる。バターを入れる。30分発酵15分休めて30分発酵190℃で15分焼く
挽肉 300g
玉葱 250g
サラダ油 大さじ1
パン粉 大さじ4
牛乳 大さじ5
大蒜 1/2
塩 小さじ1
砂糖 小さじ1
胡椒 少々
ケチャップ 大さじ3
ウスターソース 大さじ2
醤油 大さじ1
玉葱を微塵切りにするサラダ油で焼く、10分炒める、挽肉玉葱パン粉牛乳大蒜塩砂糖胡椒、練って焼く。
以上の工程でパンとハンバーグができる。それにハム、サラダ、トマトを挟んでハンバーガーにして売り出そうか…。抑も、食材として手に入らないものがあれば、それは諦めるか代用品を探さなければいけない。あと、魔法で手順を容易にする方法を見つけてコストダウンを考えよう。水分を取り除く、と言った過程は【整理整頓】スキルで省略できそうだ。【整理整頓】で果実からイーストが抽出できたらいいのに…。まぁ、それは無理だけど、緑の塔の賢者がいたら【付与魔法―時間加速】で食物の時間を加速させてくれただろう。そんなことを徒然と考えていたら夜も更けてきた。ハイエレンに会いにいく。【脳内メモ】をいつものように再生。いつものように嫌味を言われたが気にはしない…。そして、学園祭のことについての情報を得る。
『出店しても構わないか?ハンバーガーショップ、食料品店を開きたい』
「構わないよー。じゃあ、その日までにこれが申請書で、これが経費でー、っと経費は降りないかぁ、あと場所はこちらで決めさせてもらってもいいかなーじゃあ、この入口のすぐ隣でお願いしようかなー…ここなら学園長権限で自由にできるからー、じゃあ当日まで頑張ってねー」
明日市場に向かって…、そういえばお金持ってなかったなぁ…どうしよう。まずは金策から始めないと駄目だなぁ…。売れるものは沢山あるんだけど価値が高すぎて市場には流せそうにもない…なんとかしないと…。ま、また明日考えよう…。
次の日、カレン人形をシャレンに渡し、シャレンがドルチェに販売した。そのお金で学園祭で物を販売する元手を稼がなければならない。アイキは街の中から造型師を探し訪れる…。白の塔付近で造型師をやっているのは一人しかいなかった。木の彫り物なんかを売って暮らしている、コッリヒさんだ。木の彫り物をシャレン人形に幾つも作り出させ、それを売る…。そんなこんなを続けていると結構な金額になった。彫ったのは学園の生徒達(この世界には肖像権というものがないので、特に咎められることはないだろう)。
アイキは裏路地から白の塔へ帰ろうとする時、喧騒があった。何か揉めているようだ。ヒンゲンという東方にあるといわれる伝説の島国の剣士とドーゲンという東方にあるといわれる伝説の導術師が戦いになりそうな雰囲気だった。それを止めたのは通称屋根裏王子と言われているアッシュベルト=クロイツだった。「裏路地で喧嘩をするには俺の許可をっとてもらわわないと困るなぁ、叔母さん、叔父さん」「オバさん?どこの誰が年増だって?」「そう思うんなら掛かってきな」といって裏路地に逃げ込むアッシュベルト…。「これはやられたねぇ…どうやらこれ以上喧嘩するのは野暮ってもんだね、今回は見逃してやるよ」「よく言うぜ、婆さん」
そんなやりとりがあったが、白の塔には無事帰ることができた。早速、青空市場に向かうのだが、誰かが人混みに飲まれて倒れている。助けてあげようとアイキはその子供を口の中に入れる。ペロリ、この味は男の子だな。名前はピコ。どうやら裏路地で逞しく生活しているらしい。職業はセンシティヴソーサラー、既に数多くの魔術を使えるため生活に不自由はない、様だ。ただ体はまだ小さいのでいろいろ下に見られるのが気に食わないらしい。そして、青空市場で目的の食材をいくつか購入してアイテム袋に入れておく。時間が停止しているわけではないので、冷凍保存が必要だな。それはドルチェ先生に後で頼むとして、この子はどうしよう…。とりあえず学園に連れて行ってみよう。アイキは少年を捕食して学園長の所まで連れてきた。【脳内メモ】を送りつけピコを保護もしくは学院生にしてもらうことにした。
「ねぇ、ミミックさんまた僕を入れてよ…狭くて暗いところに」
何故かピコが懐いた。俺のことを探し出しては、入れて欲しがる。仕方ないので口の中に入れたり出したりしてピコと遊ぶ時間が増えた。そんなに狭い所が好きなのだろうか?よく分からないが、ピコが楽しそうならそれでいいのかもしれない。木と木を繋げてあとは販売所を作るだけ…最悪の場合、詰所の窓口で販売すればいいだけだ…別になくてもなんとかなる。チラシでも作ろうかなと迷っていると、何やら喧騒が聞こえる。一年生と二年生徒が争っているようだ。
「私には愛している人が居るの…だから、あなたとはもう付き合えないの、ごめんなさい」
「なんだとそんなの認めないぞ…今までどれだけ我が家が支援してきたと思っているんだ?決闘だ。決闘で白黒つけようではないか!」
どうやら痴情の縺れというやつらしい。決闘することになったのは男装していたイチカ。決闘相手は二年B組のサフィス。サフィスはキララと婚約していたがそれを破棄されることを不服だという。まぁ…そうかなぁ…金銭的に援助していてそれをなかったことにされた…のなら決闘も止むを得ないだろう。婚約詐欺の様なものだからなぁ…。そしてこの決闘は学園祭が開かれる当日、イベントとして演習場にて行われることになった。大々的に宣伝され数多くに人が見に来るというその学園祭の場で痴話喧嘩をするとは世も末だな…。まぁ盛り上がれば良いという学園祭なら、それでもいいかなぁ。
決闘では相手が死ぬまでやります。死んだら復活するのでまた死ぬまでやります。以下ループ…まさかね




