67-2 海辺へと
チームを組み強敵に挑み続けた結果、目標の金額に届きつつあった。
天文学的と思えた数字も、継続して積み上げれば何とかなる物だったらしい。
それが溜まるのは、丁度今回の遠征が完了した頃合いだろうか?
「誰かに奪われる前に、設置してしまおう」
「奪われる心配何てする必要が何処にあるっていうの?」
「どんな手を使ってくるかもわからない、こんなに貴重なものなのだから!」
「早速、オプションを追加してしまいましょう…」
同好会の拡張オプションに既にダンジョンを使う部分が用意されている。
素材を手に入れるのが非常に困難、そう思えた灰色のテキストも今では感慨深い。
ダンジョンコカをセットして、ダンジョンが始動する。
この世界のルールに逆らえないという制限は付くけれど、大抵のことはできる様になる。
「何をするにも魔力が必要か…充填しなければ」
「ダンジョンの中にいればそれだけで、DPは増加していくみたいだけど」
「それはーどの位増える?」
微々たる量でも、積もり積もれば大きな領となる。同好会の中にいれば自然と増える。
つまり、沢山の人がいればいるほど、ポイントは流れる様に増えていくのだから。
でも今この同好会は非常に小規模。駐在によるポイント増加を望むよりも、魔力を注ぎ込んで増やす方が現実的。
「魔力切れを繰り返すだなんて…どこかの主人公の幼少期になったみたいですね…」
「使えば使うほど魔力が増大する、という話だなー」
「読んだことあるのですか…?そのような架空の話が、現実になりつつある今…フィクションが現実になりつつありますね…」
全くあり得ない話が、ありえる話へ。ファンタジーが現実的な話へ。今の所ジャンルを変える必要はないだろうけれど、魔法が浸透していけば行くほどその分類方法を考え直す必要が出てくるだろう…。
「一番コストの低い物で様々な日常生活品を出すことが出来るみたい…」
「おつまみには間食には、不自由しなくなりそう」
「魔石を大量に投入していくのが、一番ゲージが溜まるかも…」
今まで通り敵を倒して来るだけでいいのだから、それ程困るという事もない。
飛躍的に自由度が上がった。体に負荷をかける市販の重り、それを体にジャストフィットさせることが出来る。重りだけではなく、諸々の装備品全て。
基本的にダンジョンは人を呼び寄せて、ポイントを得るのがベースの考え方。
でも、こうして折角占有できてしまったのだから身内でのみ使用したいという考えを暫くの間は通す予定だ。
「少し、気分転換で水辺に行きたいのだけれど…良い装備品は無いかな…」
「錆びない泳ぎやすい装備、かつ防御力が高い…か。難しい注文ね」
「普通のスポーツウェアでー行けばー」
「攻撃を受けなければ問題ない、か」
防御力は魔力を纏うことで補おう。
ささっと着替えて、訓練用のボールを背中に持ちながら新しくできたエリア、『海辺』へと足を運ぶ。
様々な人が遊んでる、遠目でも良く分かる。
ここでは様々なコートが使われないまま空いている。
人も沢山来て使用しているが、それでも尚空きコートがある。
それはこの世界がゲーム世界であり、幾らでもコートを作り出すことが出来るから。
ただその分、一つのコートに対して観戦する人の人数は少ない。
人目を気にせず遊ぶことが出来る、というメリットもあるが、人の注目を浴びたいというのならそれなりのプレーヤーになる必要がある。
今回持ってきたボールは、特殊なボールで非常に重く設計されている。
それを何個か使って、対戦することが出来るのだ。
「でも、対戦相手が見つかるかな…それまではコートの中で自主練かな」
ボールを使った訓練は様々ある。特にこのボールは重い。以てコートを走り回るだけでも訓練にはなる。
ここは海辺なので足場は砂地。速度に鈍足の補正が掛けられる。
特に一般参加を期待していたわけでもなく、下見をしているだけだったので時間経過でこの場所を去る。
今は様々な種類の競技が流行ってる。
今まであった球技では、非常につまらない。
身体能力が大幅に強化され、元々のボールでは耐久力が足りない。
その為に、更に頑丈なものが使われるようになったし、地面も踏み込みに耐えることのできる強度が求められるようになったあ。
今までは空中がルールに記載されることはなかったが、空を歩き滞空出来るので、その辺りのルールはきちんと定める必要が出てきた。
「とやかく説明するより、実際どういう物か目で見たほうが分かりやすいです…」
有名なルームを観戦する。2vs2の対決。
二人はかなり鍛えているらしく、変則ルールで決着をつけるらしい。
今流行りなのが、色々なルールを混ぜて一つに盛り込むスポーツ。
ちょっと前までは、ボール自体を色々なものに変更してプレイするのが流行っていた。でもやっぱりボールは球状の方が使いやすいというい観点から次第にボール自体の形の変更は廃れていったみたい。
「これ、どっちが勝ってるんです?」
「最終的に、マッチポイントを取ったほうが勝ち。その勝負が何回か行われてて…」
今は最終ラウンド、ほぼ終わるところ。良くは分からないけれどどちらかの競技でフィニッシュを決めたほうが勝利らしい。
二人とも人間では考えられないほど超常的な動きをしてる。
「ボールを殴るという時間、そこから予測される軌道、それらを的確に予測できる以上先回りされて受けられてしまう」
そして決着はつかなくなる。相手の受けよりも強い打撃を与えるしかない。
蹴りと打撃でボールが二つのチームを行ったり来たりする。
ネットに当たって跳ね返されない限り、勝負が簡単に付くという事はない。
このラストゲームも例外に当てはまらず、ラリーの応酬。
ただ、ラストだけあって両者のスタミナは完全に削り切られている。




