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第5話 メニューと絵本


「わかっているとは思うけど、あなたたちにはイニーツィオの環境の管理をしてもらうからね。自分の仕事をすれば他は何をやっても自由よ。あと、そんなに畏まらなくてもいいわよ。私にとっては子供みたいなものだから。」


少し緊張感が和らいだ気がした。


「まず、メニューを開いてみてくれる?」


メニューとはこの世界のシステムの一つであり、知的生命体のすべてが持つ。メニューを開こうと思うだけで目の前に透明な画面が現れ、名前、種族、スキル、称号を確認することができる。その画面は自分にしか見えなく、他の人に見せる場合には自分が見せる範囲を決め、それを相手に見せることができる。


「正常に確認でき…」


シャドウの声はだんだんと小さくなっていき、驚くように目をみはっていた。他の皆もそれに気づいたのか驚き、そして、喜んでいた。称号[創造神の寵愛]である。称号は何か効果があるわけではない。例えば、アルファ村の村長であるなら[アルファ村の村長]、ベータ王国の王族であるなら[ベータ王国の王族]、魔物からガンマ街を救ったのなら[ガンマ街の英雄]と言ったように身分を証明したり、武勇伝として語ったりするようなものである。


私が授けた[創造神の寵愛]はおそらく彼らにしか与えない物だろう。私にとって特別な存在であるということを証明するものだ。彼らもこの世界の頂点で生みの親でもある私から称号をもらえたことが嬉しかったらしい。


「全身全霊でアリス様とイニーツィオのために生涯を捧げます!」


とシャドウは声を張った。他の皆もシャドウと同じ気持ちとばかりに頷いていた。私としてはちょっとしたサプライズのつもりであったが、効果が効きすぎたようだ。しっかり仕事をしてくれるなら問題ないと思い、行き過ぎたかにも思える忠誠心があっても良いと気楽に考える。


「ありがとう。まずは一通りこの世界を見て問題点を挙げてちょうだい。その間に力の確認もしておいてね。それが終わったら、他の精霊を創るから。」


私がそう言うと、一礼して散っていった。確認して戻ってくる前にしておきたいことがあった。知的生命体は皆、メニューが使えると言ったが、文字が読めなければそもそも話にならないのだ。原初の精霊は知識を与えたため、すぐに使うことができたが、他の生物が生まれるたびに知識を与えて回ることなど煩わしいし、知識の大切さを分かっている方が強くなることができる方が好ましい。


そのため、メニューに新しくライブラリを作ることにした。ライブラリには自分が取得したスキルの詳細を見ることができ、例えば、<火属性魔法:Lv.2>ならそのスキルのレベル2までで使える魔法名や効果について読むことができる。


文字を読めない人がメニューを開いたとき、ライブラリ内に初めから入っている文字学習という本が画面上に現れ、習得すればメニューが表示されるようになる。学習できる文字はひらがな、数字とアルファベット、カタカタ、漢字の4段階であり、習得したら次の段階に移れる形とした。漢字は私が生きていた時代の常用漢字のみとした。覚えた文字のみメニューに反映されるようになる。平仮名だけ覚えた場合、<火属性魔法:Lv.2>は<ひぞくせいまほう:れべるに>と表示される。


おそらく言語は統一されることになるだろう。学生時代に英語を猛勉強したのはいい思い出だが、それがない分こちらには魔法というものがあると考えればいいだろう。魔法がある以上、科学が発展することは考えにくいが、魔法は数多くの種類があり、それがますます派生していくように設定したため人間のような寿命が短い生物にとって学ぶことが尽きないだろう。


ライブラリを作り終わってもまだ帰ってこない。そのため、文字学習にちょっとしたおまけをつけることにした。数字とアルファベットまでを習得したら「原初の精霊」、漢字を一定以上習得したら「創造神話」という絵本をライブラリに追加されるようにした。「原初の精霊」についての説明がある程度書かれており、6人が格好良く描かれている。「創造神話」は私が誕生し、環境を整備し、原初の精霊が生まれるまでを簡単に描いてある。


この二つが与える影響は計り知れないが、それもまた観察するうえでは楽しみでもある。そうこうしているうちに、ノームとシルフが帰ってきたようだ。


「土には異常なかったよ。虫とか動物とかがいたらもっとよくなると思うよ。」

「アリス様!風が気持ちよかった!」


今は植物を一時的に植えただけである。人間や魔物を生み出す前に、念のため動物などでテストすべきだと考えている。風についても異常はないようで、シルフが気に入ったなら何よりだ。ノームとシルフといくつか会話を交わすと今度はウンディーネとウィルオウィプスが帰ってきた。


「生物がいないのが少し寂しいですが、水がしっかりと循環していたので問題ないと思います。」

「光については何も問題ありませんでしたわ。」


ウンディーネは真面目に、ウィルオウィプスは上品に言った。その刹那、サラマンダーとシェイドが帰ってきた。


「今は火山と溶岩湖くらいしか見るものはねえが、悪くなかったな。」

「闇の方も正常でございます。アリス様。」


ぶっきらぼうな戦士と優しい顔をした執事がそう言った。問題がないことが分かったので次の段階に移るとしよう。試運転を開始する。動物、魚、虫を生み出し、低位精霊を創り、何年か経過した後、それでも異常がなければ人間と魔物を創り出そうと思う。







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