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第3話 地形と神殿


第21番世界。私が管理することとなった世界である。地に降り立った私がまず目にしたものは一面の草原だった。私の膝くらいの草で埋め尽くされていた。360度見渡す限りの地平線が続き、明らかに地球ではない場所であるとわかった。


不意にこの星の情報が頭に入ってきた。膨大な情報量であった。この世界の状況や生命の創り方など管理者の知識というべきものだった。普通の人間なら耐えられないような情報量だが、神になったからだろうか並列思考かつ高速演算で処理できるようになっていたことに感動した。


この星には海も山もなく、さらには空気もない。大地の起伏がないまっさらな平地であり、足元に生えている草は疑似的なものであった。アナの言っていたことがすぐに理解できた。創造神は何でもできるということだ。エベレストより高い山だって、マリアナ海溝より深い海だって自由自在に生み出すことができるだろう。しかし、極端なものを造ると、どこかしらに影響が出てしまうのでやるつもりはない。


美しい地形を造ろうといろいろ思い描いていたが、初めにしなければならないことがある。世界の名前である。この世界に命名することで、正式に私が管理することができるのだ。私はイニーツィオと名付けた。新たな世界の始まりであった。


次に決めなければならないことは、魔法の世界にするか否かである。これは、知的生命体の文明が終わるたびに変えることができる。魔法が使える世界というのは魔素という魔力のもとになる物質が世界中に満ちているのだという。おそらく地球は魔法の世界ではなかっただろう。もっとも、超古代文明などがあったのかもしれないが。


私の中で答えはすでに決まっていた。創造神になったとわかった時から剣と魔法のファンタジーの世界にしようと決めていたのだ。日本で暮らしていたからか、ファンタジーの世界に憧れがあった。科学の世界とは違い、どう発展していくのか観察してみたいのだ。


イニーツィオを魔素で満たし、地形の創造へ入る。4つの大陸といくつかの島を造り出し、そこに山や平地などを造っていく。一口に山といっても様々な種類があり、常に溶岩が噴出していて周囲に真っ赤な湖を造り出している火山や、凍り付いてしまうほど寒く山頂は常に雪で満たされている世界最高峰の山脈や、周囲は広大な砂漠であり岩石でできているものなどがある。


海は深いところではマリアナ海溝と同等の深さがあり、浅瀬では透明度が高く美しい砂浜もある。大きな船が通れるような運河や、光に反射してきらきらと揺れる泉に流れ込む小川からはせせらぎが聞こえてくる。


空気を満たし、植物を植えれば生物が生きることができる環境の完成である。植物は地球に生えていたようなものから、魔力がこもった魔法の世界ならではのものまで創り出した。地形の完成が間近なところで一つ問題が生じた。


地形にこだわりすぎて、魔素の流れが悪くなってしまったのだ。高低差などの問題でそうなってしまったのだ。このままにしてしまうと魔素だまりができて、魔力だまりとなり、そこから予期せぬ生物が生まれてしまうことがあるのだという。一種のバグである。


しかし、これは地形を造っているときに気づいていた。解決する方法は簡単である。魔素を拡散し循環させる装置を造ればいいのだ。周囲の魔素を魔力に変換してそれを動力とし、魔素を世界中に循環させる魔道具である。初めての魔道具制作であったが創造神だからか簡単に作ることができたのだが、この魔道具は一辺が3メートルの立方体ほどの大きさがあり、世界各地に設置しなければならないのだ。


そのため私は、世界各地に神殿を建設することにした。神殿は神自身が建てるものではないとは思うが、今後の計画で私は神の存在を人間などの知的生命体に伝えるつもりであるし、自然を管理する存在である精霊を創るので精霊たちと交流できる場をつくるつもりでいた。私の別荘的な意味合いもあるが。


いずれ発展していけば私を崇める教会ができるだろうが、人間の組織などほとんどが腐敗している。私は自分の名を使って不正をすることを許さないし、神を大義名分にして戦争が起きることも馬鹿らしい。そのため初めからそのような勢力が生まれないようにするつもりである。私は誰かが神格を得ても、相当気に入らない限り神にするつもりはない。


建設した神殿はすべてモデルが異なっていて、パルテノン神殿やアンコールワット、清水寺など様々である。境内は100メートル四方であり、中央に神殿が建っていて、周りは美しい泉や木々に彩られた空間になっている。海底や砂漠、雪山などの過酷な場所では神殿のみとなっている。内部の構造はすべて同じで2つの部屋からなり、私の等身大の立像がありお祈りをする部屋と、魔素を循環させる魔道具を置く部屋がある。


魔道具の部屋には私以外が入れないようになっており、境内は聖域となっているため、私と精霊だけが自由に入ることができる。人間や魔物などが入ることができるのは、参道と祈りの部屋のみとなっている。神殿全体がシステム上不破壊で、何も持ち出すことはできない。


こだわりすぎて時間がかかったが、これで生命を生み出す準備が整った。まずは世界中の自然を維持し恵みをもたらす精霊からだ。







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