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第2話 世界の管理者

扉を開いた彼女についていくと、先ほど寝ていた部屋より少々大きいくらいの空間があった。窓はなく、代わりに様々な色や形の扉がたくさんあった。真っ先に目についた中央に置かれた10人ほどが座れる円卓には3人ほどが集まって談笑しているようだ。その周りには色とりどりのソファーやテーブルが置かれており、そこには寝ている人やぼーっとしている人がいた。


円卓に座っていた彼らはちらりとこちらを見て微笑んだがすぐに興味を失ったようで、また話し始めた。私は彼女に連れられて円卓を通り過ぎ、斜陽のような鮮やかなソファーに隣り合って座った。


「少し戸惑っているようだけど、先に説明させてくださいね。」


右隣に座っている彼女が言った。彼女と話しているとおばあちゃんと話しているときのような優しさで包まれる。背が低くなり、少々見上げて会話しているからだろうか。


「はじめに自己紹介しましょう。私はアナといいます。呼び捨てで構いませんよ。」


彼女、アナは言った。


「私はアリスです。日本から来ました。」


ここで日本といって通じるのだろうかと思ったが、それを知っているようであった。私が死んだ原因も教えてくれた。


「記憶はあると思うけど、アリスちゃんが乗っていたタクシーがトラックと衝突して亡くなったようね。タクシーの運転手は相当恨まれていたみたいね。」


完全に巻き添えである。しかし、不思議と怒りは沸いてこない。そのことはあまり気にならなかった。所詮、生前である。今の状況の方に興味がある。


「まず、ここがどこなのか教えなければいけませんね。ここは神界です。正しくは創造神界といい、創造神が自由に出入りできる空間です。」


理解できない言葉が並ぶ。まず、無神論者だった私にとって神がいること自体驚いているのだが、創造神とは何だろうか。


「創造神とは世界を管理する神のことをいいます。簡単に言えばその世界の神の中で一番偉い神に事ですね。」


アナはさらに説明を続ける。


「ここは創造神界といいましてが、創造神はほかの神と違ってその世界に永遠にとどまっている必要がありません。この空間にきて他の創造神と話し合ったり、自分の世界やほかの世界を観察したりできるのです。」


そんな空間になぜ私がいるのだろうか。もしかしてと思い訊ねてみた。


「私は創造神になったということでしょうか?」


アナは頷き優しく微笑んでいる。


「理解が早くて何よりです。普通、新たな創造神が必要な時は今ある世界で神になった方々から選ぶのですが、神ではないですが一番適性があったアリスちゃんを選びました。神格を得ていましたしね。」


アナによると神格とは神になるための資格のようなものだという。その世界の創造神が神格を得たものを神にするかどうかを選べるそうだ。戦って英雄のような活躍をしたり、たくさんの人を救って感謝されたりすると神格を得られることがあるらしい。


だが、私は平和な日本で暮らしてきた。戦ったこともなければ多くの人を救ってもいないだろう。


「アリスちゃんの場合は達観の境地に至って神格を得たようですね。それも5歳の時に。この場合は、長い間武器を作り続けた職人のように年老いた方が多いですね。普段無表情な地球の創造神も驚いていましたよ。」


そう言ってその時を思い出したのか、ふふふと小さく笑った。アナやほかの神々も5歳にして神格を得たものだから目をつけていたのだという。神は神格を得たときの姿なのだという。だから私は小さい体になったのだ。


私はものづくりが好きなのでどんなで世界を創ろうかと心が躍った。プログラマーになったのも一からシステムを作り出してみたかったからが。また、私はシミュレーションゲームのように発展するのを観察することも好きである。それも創造神になることになった理由かもしれない。


世界の説明を聞いているとふと疑問に思ったことがあった。核戦争のように大地が汚染されて生物が滅んだとしても、力を使えば再び生物が暮らせるようになるのだという。つまり、終わりがないのだ。


「創造神が死ぬということはあるのですか?」

「それはないわね。創造神の死は管理者を辞めたくなった時ですね。管理者を辞めるとその世界は消滅し、別の世界の輪廻へ送られるのよ。」


創造神が自分の世界へ関心が無くなったら終わりということだ。アナは今いる創造神の中で最も古参であるが、5名がやめていったという。今ある世界は私が管理する世界を含めて8つ。私の世界は第21番世界というらしい。ちなみに地球は第19番世界で比較的若い世界だ。


「説明は以上です。とりあえず自分の世界に行ってみるといいですよ。力の使い方が分かると思うので。」


私はアナにお礼を言い、期待に胸を膨らませ、自分の世界に降り立った。







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