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第1話 転生

目が覚めた。永遠に眠っていたくなるくらい気持ちよく寝ていた気がする。真っ白な30畳くらいの部屋の中にぽつんと置かれたベッドの上で眠っていたようだ。身体を起こし、前を見ると木でできた豪華な扉がある。そこだけ色づいていた。開いて出ていくべきだろうか。


私はおそらく死んだのだろう。病院の部屋にいるならば、何かしらの医療機器があったり、椅子やタンスのような家具があったりするだろう。


生きていた時の記憶はある。最後の日の記憶もしっかりしている。私はその日、仕事が終わり、家路につく途中であった。人が黒蟻のように群がる横断歩道を越え、揺れると肩がぶつかってしまうほど人が乗っていた電車に乗り、自宅の最寄り駅に到着したときだった。


電話がかかってきた。後輩からだった。彼は私の直属の後輩であり、大学である程度学んだプログラミングを会社で使えるようになるまで鍛え上げたのだから滅多なことで連絡を取ってくることはない。トラブルの予感だ。


「先輩。会社に戻って来てください。」

「何があったの?」

「部長が主導して作っていたプログラムでバグが見つかったらしくて、どこにバグがあるのかわからないから先輩を呼んでいます。」


同じ部署であるものの、たまに手伝ったりしているが、現在製作しているものが違うためよほどのことがない限り呼び出されるということない。


あと数分歩くだけで家についたのにと思いつつ、会社へ向かうことにした。電車に乗り、先ほど通った横断歩道を渡り、会社に到着した。すでに全員がPCと向き合って仕事をしていた。自分の席に着き、今日の帰り際に部長が話していたことを思い出しつつ隣にいた後輩に話しかける。


「部長があとは小さなバグを直すだけって言ってなかったっけ?」


後輩が画面から目を離さず答える。


「新人君が作業していたときに何もしてないのにバグが直ったのを報告してなかったらしいですよ。」


何もしてないのにバグが直るというのはプログラマにとって怖いことである。それをそのまま放置しておくことなど普通しないのだが、以前、同じようなことがあったときに大丈夫だったらしく放置していたようだ。いつもは笑顔の新人君も部長に怒られ、皆に迷惑をかけたことで落ち込んでいるのが目に見えてわかった。


その後、直しの作業も着々と進み、最終的に終わったのが午前2時であった。他のその場にいた同僚は明日も仕事なわけで、正確には今日だが、会社に泊まっていくだろうが、私は有休をとったためタクシーで帰ることにした。


「いや~。ホントに助かったよ。明日までだったんだ。」


帰ろうと立ち上がったとき、部長が話しかけてきた。


「明日の朝にでも見てもらおうと思っていたんだけど、君は休みだって聞いてすぐに電話したよ。君がいなかったら間に合わなかったよ。」


部長は納期に間に合ったからか安堵した表情で続けた。私は休日に出勤しないと決めている。今働いている会社から引き抜かれたときの条件として、休日出勤はせず、私のミスでない限り電話もかけてこないようにすると契約したからだ。部長と2,3会話をして会社を出た。会社を出ると幸運にもすぐにタクシーは捕まった。


乗り込み、家の場所を伝えると、タクシーは走り出した。いつもは歩いている交差点の横断歩道を通り過ぎたとき、正面からこちらに猛スピードで向かってくる大型のトラックが見えた。タクシーは回避しようとするがトラックはタクシーめがけて加速していた。斜め前にいるタクシーの運転手は必死だがもう遅い。私が最後に見たのはトラックの運転手が笑っている顔であった。


真っ白な部屋ではやることがなかったので、扉を開くことにした。立ち上がると妙に目線が低いことに気が付いた。私は29歳で死んだ。身長は165cmくらいだったはずだ。身体を確認してみると、身長が100cmくらいに縮んでいて、胸も薄くなっていた。これは5歳頃の身体ではないだろうか。天国では小さい頃の身体になるのか、まあここが天国だという確証はないけれどなどと考えていたとき、ガチャリと音がして扉が開いた。


そこには、50代くらいの優しそうな女性が立っていた。目鼻立ちがはっきりしていて、大きなブルーの瞳が印象的だ。


「起きたのね。こっちにいらっしゃい。」


彼女は優しく微笑みながら言った。彼女の肩先までかかっているサラサラとした銀色の髪はとても美しく見えた。







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