1.
木になってしまった。
全てあのじじいせいだ…
……
……
あぁぁぁもう!
比喩をフィーユに聞き間違えてた時点でやばいと思ったけど、本当に頭いってんのかよ!
とりあえず、疑問に思っていたことを全部ライブラリー先生に聞いてみよう。
使えるものは使っていく主義なんだ。
一通り聞き終えた
うん、よくわからん。
まずこの世界には魔力とかいうものがあるらしい。
魔力がなんなのかはわからないけど、とりあえず物理法則とか諸々を無視できちゃうスーパーパワーらしい
そして魔力のせいで変異したものが魔物らしい。
うん謎すぎる
とりあえず、魔力でできることは魔法を使うか魔道具を作ることだけらしい。
次に種族
この世界には大きなくくりとして『総称』そしてその中に『種族』そして最後に『個体』がある。
私の場合、魔物の中のエルダータレントの中の一人という感じらしい。
総称には五種類あり、それぞれ格付けされている。
上から順に
『天上人』『魔界人』『人類』『魔物』『無生物』
ということ。
天上人と魔界人早く小競り合いを起こし、人類は魔物を敵とみなしているそうだ
怖っ
戦争とかマジでごめんなんだけど…
そして最後にスキルと称号
スキルとは何かしらの条件を満たした時に獲得できる技術、能力らしい。
スキルにはノーマル、ユニークがあるらしく、ユニークは生まれ持った特殊なものらしい。
そして称号。
これも同様、何かしらの条件によって解放されるらしく、身体能力のほか、スキルにもプラス補正がかけられる。
これもわけわからん
そしてここまでの質疑で、分かったことがある。
私、前世の記憶がほとんどない。
今まで気づかなかったが、名前の時に気づいた。
自分の名前を思い出せなかったのだ。
まぁ、ろくな記憶ないし消えても困らないけどね?
(でも文字はやめるんだよなぁー)
まぁ、まずはスキルをとりあえず一通り使ってみよう。
スキルを使ってみた。
うん魔力感知と身体操作はわかった。
魔力感知で視覚は確保できた。
身体操作を使うと、木の枝をわさわさしたり、根を使って移動できたり、ツタを使ったりできた。
だが隠蔽は全くわからん。
使ってみても実感はない。
天啓に至っては使えないときている。
あ、ウニョウニョツタ動かすの意外と楽しいわ。
そして大切なことがわかった。
身体操作を使用して、身体のどこがどう動くのかを確認した時…
(これ口じゃね?)
空気を必死に送り込むと、あぁぁぁというかすれた音が出た。
口と言うべきか、うろと言うべきか、とりあえずそれっぽいものがあるのを発見した。
そして口があると言うことは当然食事をするということで…
『トレントは肉食です。』
うわぁぁ…
こんな体じゃ火も使えないし、生ってことだよね?
うわぁ…
聞かなきゃよかったよ…
どうにかして肉以外で栄養を摂取しようと色々と聞いていたところ、不可能なことがわかってなお消沈した。
そこで、捕食について聞いてみたところ…
『魔物の捕食には大きく分けて二種類あります。一種類目は飢餓感を満たすための捕食と、魔物には必ず存在する魔石を捕食してエネルギーを得るための捕食です』
どうやらただ肉を食えばいいのではなく、魔物に存在する身体の中心、心臓みたいなものを食べる必要があるそうだ。
つまり、木の私も十分に狙われる可能性があると言うこと。
うわぁ…
身体をバキバキにおられて魔石を貪られることを想像してしまった。
(とりあえずほか魔物を食べればいいのかな?)
『肯定します。』
この機能便利だな
なんでも返してくれるライブラリーに感謝しつつ、根を這い上がらせ、のそのそと動き出す。
うわっ
わかってたけど歩きにくい。これは特訓しなくては。
しばらく歩いていると、狼のような魔物に遭遇した。
デカすぎて、かわいいなんて気は微塵も起きない。
(近寄ろうにも、バレた時のリスクを考えるとなぁ)
『隠蔽の使用を推奨します。』
おぉ!
ライブラリーちゃんはそんなこともできるのか!
よしお姉さんあなたのこと信じるよ!
隠蔽を発動して、のそりのそりと近づく。
(バレてないよね?それじゃあ…えい!)
ツタを二、三本まとめて狼もどきを串刺しにする。
うぇぇーなんか血が滴ってるよ…
気持ち悪い
ズシュッと刺した時の手応えはかなりくる
まぁ食べ物には敬意と感謝をしなきゃね
いただきまーす
ツタを使って、大きな狼を口に放り込む。
食べるというより、放り込んだという感じが正しい。
咀嚼しないだけ救われた気分だ。
でもこの木の中ってどうなってるんだろ?なんか溜まってる感じはしないし、どちらかというと消えた感じだ。
『異空間です。限度はありますが、ある程度備蓄することも可能です。』
ふぇー
なんかすごそう。
いわゆるこういうところでオタ知識というものが役に立つのだろうが、残念ながらそこらへんの知識は疎いのでよくわからない。
狼もどきを口に放りんだ数秒後、ピロリンという音とともに、アナウンスが流れる。
『経験値が一定値に達しました。種族レベルが上がります。
称号ー捕食者を手に入れました。
身体操作のレベルが上がりました。』
およよ?なんか色々きたぞ?
ライブラリーさーん!
『種族レベル、スキルレベルが上がりました。種族レベルは、魔石から手に入るエネルギー、経験値によって上昇します。スキルのレベルはスキルの反復しようや、一定の条件によってレベルが上昇、参加することがありますや。』
なんと素晴らしい回答。
私の聞きたいことを全て答えてくれた。
種族レベルは生き残るためには上がるしかないのだろう。
この世界の生態系は、上位は固定されており、下位の者たちが常に入れ替わるという構図が出来ている。
そして上位のものの多くは、おそらく長い時を生きているだろう。
ここでは、長く生きる=強さ という相関関係ができている。
(ご飯を高さ食べれば食べるほど強くなる。わかりやすい世界だなぁー)
そんなことを考えながら、レベルアップした身体操作を使ってみる。
おぉ、なんかツタがよりイメージ通りに動くようになったぞ?
タコってこんな気分なのかな…?
あれからしばらくたち、種族レベルは5、身体操作はなんと5まで上がった。
レベル5の身体操作は初期とは比べ物にならないくらいできることが増えた。
まず、大雑把ではあるが解体ができるようになった。
ツタを使って縛る、引きちぎる、串刺す以外にも、切り口は汚いが、切りつけられるようになった。
そんな身体操作を使って作ったもの。
それがこちら!
餌とるくんマークII〜!
食べずに少しだけ取り分けた肉を使い、隠蔽で隠れながら他の魔物をおびき寄せ、ツタで作った罠で一気に仕留める。
とても効率的で愛用している
え?
なんでマークIIなのかって?
これはマークIを作った時に遡る
マークIはツタをカゴ状にして釣り上げるつもりだった。
だが私はくしくも魔物の意地というものを舐めていたのだ…
マークIを初めて使用したその時、カゴに押し込むまでは上手くいき、むふふと笑って早速捕食しようとしたのだが。
目の前に吊るした途端、暴れた狼もどきはカゴを突き破って襲いかかってきた。
幹に爪を立て、牙で皮を剥ごうとしてきたのだ。
まじで焦ったよ…
軽くトラウマになり、餌とるくんの開発を断念しようとすらした。
その失敗を踏まえ、餌とるくんマークIIでは即殺、即食をモットーに、餌につられた瞬間、串刺しにするシステムに変更した。
ちなみに、ビジュアルは最悪だ。
元JKの言うことではないって?
ぶっちゃけJKだったことなんてほとんど覚えてない。
そして分かったのだが…
魔物の飢えはめちゃくちゃきつい。
1日だけ実験で何も食べなかったのだが、次の日には他のことなど考えず、狩りに夢中になっていた。
これは考察だが、おそらく魔物は極度に本能を強化されており、食べる生き残るについては妥協や我慢ができないのだろう。
人間の理性を保っている私でさえ、1日しか持たなかったのだ。
とりあえずそんなこんなで、効率的な狩を考えた私だったのだが…
現在、絶賛大ピンチである。