【3】テル
「君の名前は何?スライムくん!」
我はそう問われ、答える。
「我に名前などいらない。「魔王様」だとかでも呼べばいいさ」
「ま、マオウサマ?なんかよびづらいから、名前つけてもいい?」
「発音が少しおかしいが。まぁ、貴様は一応我の主であるからな。許してやろう。どんな何したい?」
我は「うーん」と口元に手を置き考える弟の姿をまじまじと見つめる。
生まれて初めてしっかりとした名前で呼ばれる、名前を付けてもらえるため、心なしか、うれしいような気分になっていた。
「そうだなぁ、スライムくんだし、リ〇ルとk」
「やめろぉっ!スライムだからってそんな名前はやめてくれ!」
「えー、わがままだなぁ。なら、スライムだし、ライムくんとかは?」
「まぁ、無難な名前でいいのではないか?」
普通過ぎるかもしれないが、ちゃんとした名前を付けてもらえ、我は少しうれしく思い、少しほほを赤らめた。頬などはありはしないが。
「ライムって呼び捨てにしたほうがいいかな?」
「どちらでも構わ」
「そうだな。スライムのほうが強くたって、いわばお前の奴隷みたいなもんだからな」
そうやって兄は言う。
「じゃぁ、ライム!帰ろ!」
我は、兄のせいで少し不快になりつつ、我は弟に「わかった」と伝え、弟たちのいる場所へ歩み寄る。
帰り道で我は兄に問われる。
「そういえば、レベルはいくらくらいなんだ?元魔王なんだから、流石に40,50はいっているだろう?」
「は?もちろん1に決まっているが?」
我がそう言うと兄はあきれたような顔を浮かべる。
「先ほどそこの洞窟に生まれてきたのだ。当たり前だろう?」
兄はため息を吐く。
ちょっとの雑談もはさみながら、我らは洞窟を後にする。
洞窟の外は見事なまでの快晴であった。
「人間界というのは。とてもきれいなものだな」
きれいな青。さらにすべてが明るく彩られていた。
木々の緑、薄茶色等様々な、魔界にはない、明るい色で染まっていた。
「人間界ってすごいでしょ?」
そう弟が問う。
我は珍しく明るい口調で、「あぁ!そうだな!」と答える。
兄は軽く笑い、
「じゃぁ、帰るぞ。ライム、テル!」
我と、弟は承諾の言葉を同時に発する。
「そういえば主、貴様のことはなんと呼べばいいのだ?」
「m?普通に名前でいいよ~?「テル」って名前!」
「そうか。テルか。いい名前だな。これからよろしく」
そう言いながら、粘膜から手のようなものを作り出し握手をする。
テルは「うっ」と言いつつ苦笑いで握り返す。
今日中に出すために急いだんでないよう薄め。