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【2】テイムする少年

「知らない天井だ」


 我は目を覚ますとそうつぶやいた。

 誰にも聞こえないような音量で。


「頭が、痛い」


 そう頭を押さえてつぶやく。頭を押さえる手があるかすらわからないくらい感覚が狂っていたのだろう。頭に何も届いていないし、手に頭を押さえた感覚すらない。

 我は今我の置かれている状況を理解するために、「ステータス」を開き、スキルを確認する。

 名前はなく、Lvは1、そして、スキルは数えきれないほど多く持っていた。どれもLvは1の最弱クラスだったが、ないよりはマシ。程度のものだ。

 我は「暗視」を使用し、自分の目に入るものを確認する。

 一言でいうと、目に入った物はすべて、「岩」であった。空洞のような場所で目を覚ましたようだ。

 我は少し風の吹くほうへと歩みを進める。

 歩いていると、大広間のような場所についた。

 そこには池があり、園池は我の美しいはずの姿を映し出せそうなほど済んでいた。

 我は池へ歩み寄り、魔王である我の姿をしっかりと確認した。

 その姿は黒光りして、輪郭はきれいな楕円を描いていた。

 「まるでブラックホールだ」とそう思った。

 それぐらい深い黒だった。

 我は手を伸ばす。

 その時、伸ばせる手などないことにようやく気付いたのだ。


「えっ?」


 我は思わず声を出してしまい、池の中に映る姿をしっかりと確認する。

 我は思った。「これ、いわゆるスライムに転生した件では?」と。

 そんなことを考えているうちに遠くから声が響く。

 男二人組だ。声だけではそこまでしかわからない。

 我は前の人間に近い姿とは違い、明らかに魔物の姿なため、我は一先ず岩陰に隠れた。

 耳を澄ませる。


「いいか?お前は勇者として生まれたのと同時にテイマーだ。ここの洞窟には、言い方は悪いがなかなか使えるやつがうじゃうじゃいるはずだ。そいつに強制的に「テイムLv2」をかけるんだ。そうすれば、俺がいる限り、たいていの魔物は言うことを聞くようになる。そこからは一人で頑張れよ?」


「うん!わかった!」


 男二人組の片方は成人済み、もう片方はまだ6歳にも満たしていないような声をしていた。

 勇者の仲間になれば、ほかの勇者、昔の勇者と交流があるのでは?そうすれば、いつぞやの黒髪の勇者に敵が討てる!そう考え我は、足音が、約5m以内に響いたときに声を出した。


「我は「元」魔王だ」


 ガサッと警戒するように後ろへ引く足音が鳴る。


「元魔王様が、俺たちになんのようだ?勇者は先に潰しておこうって?」


「おこうって~??」


 彼らを兄と弟と置いた場合、兄の真似をして、弟がいじらしく言う。


「ふふっ。そんなことはない。ただ、ある者に恨みを持っていてな。それを果たしたいだけだ」


「そいつはここにいる。だから来るなとかそういうやつか?」


 警戒は解かない。判断としては正解だが、少し寂しいものだ。

 我は大きく息を吸い、岩陰から身体を出しながら言う。


「我、「元魔王のスライム」は、お前達、「勇者」のパーティに入りたい!それを言いたいのだ!」


 我の身体を見て弟は「あははっ!かわいい!」と笑いながら、警戒せずに近づき我の身体にべたべた触る。

 兄は、顔を強張らせ、


「「黒い」スライム?」


 と問う。


「いかにも。我はスライムにしては珍しい。というより、初めての「黒い」スライムでな。上級魔族間では黒の魔族が上位、最上位だとされるから、我は、「元魔王」ということもあり、最上級の魔物に転生したのだと思われる。スキルは様々持っているぞ。どうだ?我を仲間にして一緒に旅をしないか?」


 そう話すと兄はため息を吐き、弟はかわいらしく我に乗っかる。


「見て!このスライム超ぷにぷに!」


「あっ、忘れていた。こういう時はあれを言うのだよな。おっほん「ぷるぷる。僕悪いスライムじゃないよ」」


 兄は警戒を解きはしないが、軽く「クスッ」と笑う。

 きりっと目を変え、口を開く。


「現勇者と元魔王が仲間になるなんて聞いたことないが?それと、」


 我は割り込んで言う。


「ならば、我われがこの世で初めての元魔王と現勇者のパーティだな。もともとモンスター、魔物、魔族等と組む予定だったのだろう?いい機会ではないか」


 兄が「でも、」と口を挟もうとすると弟が兄に近寄り「この子テイムしたい!」と叫ぶ。

 兄はため息をつき、弟をなでながら言う。


「いいのか?初めてのテイムがスライムで。これからあまり魔物テイムできなくなるかもだぞ?」


「うん!だって、モンスター、魔物はさ、しゃべることができないんでしょ!?その点この子は話せるよ!ぷにぷにだよ!ね?いいでしょ!?」


 兄は「うーん」と呻き、数秒悩んだ果てに弟に押し負け、


「いいよ。そこまでいうなら。テイムしておいで」


 そうやっていい、我のほうへ弟と一緒に歩み寄る。


「完全に信頼したわけではないからな!」


 そう、きつい口調で言い放つ。


「信頼してくれ。勇者は「絶対に」死なせない」


「「約束」だぞ」


「あぁ」


 このやり取りを終えると同時に弟は「テイムLv1!」と叫び我の身体を光が包み込んだ。

 いい感じ()。

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