魔法使い’使い’と愉快な仲間たち?
土壁の狭い階段を進むと、上とは全く雰囲気の異にした洋風の部屋だった。
茶色いフローリングにテレビやソファなど、一般的なダイニングみたいである。
と、部屋の隅にあるソファに寝転がっている人を見つける。
古びたジャージに顔には縁日で売ってあるような猫のお面を被っている。
私には目もくれずに、携帯ゲームをいじっていた。
「改めてようこそ!我がアジトへ」
「言いたいだけなんだな、それをお前は」
男は既に面倒くさそうだ。
「それで、その…」
「ああ!そうだ!まだ自己紹介がまだだったね」
私の言葉を遮って生徒は話す。
学校生活を送る上ですごく苦手なタイプだ。
「僕は伊乃ミノル、魔法使い使いだ」
「魔法使い 使い ?」
私は首を傾げる、魔法使いならまだ分かるが、魔法使い使いってなんだ?
「こいつがそう名乗っているだけで、深い意味はない。二つ名と考えておけば結構だ」
軍服の男が訂正するように返事をする。
「俺は白城隼人、路地で話した通り釘を操る固定の魔法使いだ」
隼人と名乗った男は、若干私を睨みながら自己紹介をする。
「そこで寝ているのは平町正樹、こいつも魔法使いだな」
「何?呼んだ?」
ゲーム音が止み、仮面の男はこっちを向く。
と、ここで私の存在に初めて気がついたようだ。
「誰?この人は?」
「ああえっと、私は増田怜花です」
軽くお辞儀をすると、伊乃さんが右手を出してきた。
「よろしくね、怜花!」
「あ はい、えーっと伊乃さん」
「ミノルでいいよ、同世代だし」
「そうでした、クラスメイトですもんね」
そう言うと、ミノルは指を振って答えた。
「それは違うんだな、僕は学校に行っていないよ」
「え?」
どういう事?今日学校にいたじゃん?
「それはぼくの『存在の魔法』を使っただけ」
今まで興味無さげな顔をしていた彼が立ち上がった。
「ぼくの魔法は、対象の人間を特定の場所に居るということを周りに認識させる事なんだ。謂わばアリバイ作りだな」
仮面の男は幼稚な声で話すが内容が読み込めない。
「まだ分かっていないようだけど、つまりはお前も含めそこの学校の生徒・先生全員に、昨日まで居なかった『伊乃ミノル』がこの学校に在籍しているということを思い込ませていたっていうことだ」
これで理解出来ないなら放っておくよ、と彼は言ったが私でもこれでやっと理解することができた。
「魔法ってのは他の人間や魔法使いに道理を説明しようとしても出来ないもんなんだよ」
軍服の男、白城さんはそう続ける。
「俺も隼人で良い、仲間になった以上気怠い上下関係は嫌だからな」
と、彼も手を差し伸べてきた。
「はい、隼人さん」
私が手を握った瞬間、手を引き寄せて
「ただし、ミノルに何か危害を加えたら殺すからな」
と小さな声で言った。
怖っ。
何この人、めっちゃ怖いんですけど。