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使えない魔法使い。

「さあ、着いたよ!ここが僕らのアジトだよ!」

「ただの家だろ、格好をつけるな」

 ハヤトと呼ばれた軍服姿の男が言うように、案内された場所は古き良き日本家屋だった。

 小さな庭には軽く手入れしてあるようだが、建物自体が老朽化しているようでかなりボロボロな印象を受けた。

「疲れたし、早く入ろうよ」

 学ランを着た生徒が軽い足取りで玄関へと進んでいく。

「ほら、お前さんも早く」

 軍服の男に腕を掴まれて、私は家の中に連れられていった。

 っていうか普通、同世代の男子に強引にされるって少女マンガ的な展開だと思うけどさ、本当にやられると、ときめきも何も感じないものなんだね。


「ただいま!」

「どうも、お邪魔します」

「お邪魔します…」

 学ランの生徒が扉を開けると落ち着いた土間に、割烹着姿の穏やかなおばあちゃんが蜜柑を持って歩いていた。

「あら、お帰りなさい。それでその娘は?」

 笑顔で迎えてくれたおばあちゃんは直ぐに私の姿に気がついたようである。

 それを知ってたかのように学ランの生徒はおばあちゃんの前に私を差し出すように引き寄せた。

「新しい仲間さ、僕たちのね」

「へぇ?」

 思わず変な声が出てしまった。

 仲間?クラスメイトとはいえ貴方の存在を今日知ったばっかりなのに?

 何を考えているのか分からないし、絶対願い下げだ。

 でも、そんな私の心境とは関係無しに事は運んでいくらしい。

「そうかいそうかい」

 おばあちゃんは目を細めながら私を見て、また笑った。

「ゆっくりしていきなさい」

 蜜柑を持ったまま和室の襖を開けた。

 あのおばあちゃんのせいか少しずつ警戒感が薄れていく気がするんだよね。

「さあ、行こうか」

 学ランの生徒が靴を脱いでおばあちゃんが向かった方向とは別の部屋へ向かった。


 襖を開けると、目の前に仏壇があるだけの狭い部屋だった。

「『すごい殺風景な部屋だな』って思ったでしょ?」

「!?」

 私が驚いた表情を見せると、軍服の男が言う。

「これは魔法じゃ無い、こいつの特技だ。心を読むんじゃなくてそう思わせるだけだから、余程精神のおかしい人じゃ無い限り当てはまるものだ」

「ネタバラシしたら駄目じゃん…」

 悔しそうに睨みながら学ランの生徒は何か作業を始める。

 畳を外すと、そこには地下へと伸びていく階段が出現した。

「『まるで魔法みたい』って思った?」

「いえ、戦争中の防空壕みたいって思いました」

 私が答えた瞬間、見るからにその子は不機嫌そうに中に入っていった。

「お前さん、防空壕はもう少し汚いぞ」

「え、あ、すみません」

 肩に手を置かれた後、男も階段を進んでいった。

 私は階段の中を覗き込んでいた。

 このまま逃げても良かったけど、ここまで来たら入るしか無いだろう。

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