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私、魔法使いになる?

 私は腕を中央の生徒に向けて伸ばす。

 その瞬間、手のひらから糸のようなものが発射された感触がした。

 しかし、指先や彼の方を見ても何も伸びてはいないようだ。

 それでも確かな感覚を信じ、手を今度は戻す。

 すると彼は引っ張られるようにこっちへ飛ばされてきた。

「あ」

 私は彼に正面衝突して、互いに吹っ飛ばされる。

 アスファルトを1回転半して、ものすっごく背中が痛い。

 一方で彼は綺麗に着地したみたい。

 自分で引き寄せたくせに何やってるんだろう。

 っていうか、何なの?さっきの感触は。


 と、すっかり忘れていたゴロツキの方を見る。

 さっきまで人がいた場所を不良は空振りしていた。

「はぁ?」

「え、何が起きたんだよ」

 取り巻きは、表情を驚きに変えこっちを見る。

 拳を戻したリーダーは口をにたっと開け、生徒ではなく私の方を睨んだ。

 とっさに寒気を感じた私は2歩下がる。

「お前、魔法使いか」

「え、いいや…その…」

 私が口ごもると、不良のリーダーは覗き込んで威圧するように言った。

「どうでもいいんだけどさ、勝手に出て来んじゃねーよ。

 魔法使いならおちょくられてんの分かってんだろ?このふざけた小僧を痛めつけんだからじっとしてろや、あぁ?」

 目は泳ぐくせに、手足が全く動かない。

 生まれて初めてだ、こんな怖い思いをするのは。


 と、不良の肩を誰かの手が叩く。

「あ?なんd

 ゴブっという音がして不良は横に倒れる。

 前を見ると、あの生徒が右手を振り切っていた。

 私と同じぐらいなのに、よく顔に命中したものだ。

「この野郎っ、何してんだ!」

 一回り小さい生徒を不良は腕を振り回して殴り続ける。

 だが、しゃがんだり下がったりするので一向に当たる気配がない。

「おい、囲めお前ら!」

 不良は叫ぶが、取り巻きは出てこない。

「お仲間さんならそこで寝てるよ」

「!!」

 あの子が指をさした先には伸びている2人の姿があった。

「てめぇ、ふざけた真似しやがって!」

 不良が右腕を引き下げ、ボクシングのように拳を打とうとした。

 すると、その子は軽々と不良の背まで飛んで交わし、仰け反った所を踵落としをするように蹴った。

「ダハッ」

 地に突っ伏した男は腕の力で起き上がった。

「うわっスゲータフだな」

「もういい、ぶっ殺してやる」

 不良はポケットから15センチくらいのナイフを取り出してきた。

「おー、こいつはやべーな」

 大げさに生徒が言うと、怒り狂った不良は生徒に突っ込んできた。

「死ね!」

 おおきく振りかぶって、斬りかかろうとした瞬間だった。


 ズドンという大きな音。

 不良の体には金属製の棘のようなものが刺さっていた。

 いや、よく見るとこれは大きな釘みたいである。

 そして、腹部を貫かれた不良は微動だにしない。

「な、なんだこいつは!」

 苦悶の表情を浮かべる不良を他所に、間一髪免れた生徒は背を向いた。

「よくここが分かったねハヤトくん!」

「うるさい、お前を探しに俺がどれだけ走ったか分かっているのか?」

 そこには仏頂面をした同じ年齢くらいの眼鏡の男が立っていた。

 その男は不良と同じぐらいの背をしており、膝まである軍隊服をベルトで止めている。

 まるで、違う世界から来たような雰囲気だ。

「貴様、俺に何をしやがった!」

「固定、俺の釘は刺した対象を動かなくさせることが出来る」

 彼は不良の方へ振り向き、面倒くさそうに呟いた。

「どうでもいいけど、ミノルに触るんじゃねぇ」

「クソが!どいつもこいつも、俺の邪魔ばっかりしやがって!」

 我を忘れたように不良は腕を動かそうとしているが、顔をしかめるだけで動く気配がない。

「おい、早く行くぞ」

 軍服男が再び不良に背を向け、路地を抜けようとする。

「はいはい、全くハヤトくんはせっかちだねー」

 学ランを羽織った生徒はその後ろを軽やかな足取りでついていく。

「くそ、待て!」

 不良は叫ぶが、2人は全く聞くそぶりを見せない。

 と、私は置いてけぼりのまま呆然と見ていたのだが。

「ほら、早く来てよ」

 その人の声で私は、まるで魔法で引き寄せられるように走った。

 後ろは振り向かなかった。

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