女子高生と、不良と、魔法使い。
「じゃあねー」
「うん、また明日!」
私は香澄と校門の近くで別れた。
今日も退屈な授業だったし、適当にコンビニでお菓子でも買って帰ろっと。
そう思って、リュック型の鞄を背負いながら大通りを抜けた。
車の排気音が少し気になって、イヤホンをする。
最近のところ、同年代のバンドにどハマりしているけど中々みんな分かってくれない。
まだ、売れる前だから知られていないけど、絶対ブレイクするはずだ。
と、何か裏の路地が気になった。
もしかしたら近道になるかもしれない。
太陽の当たらない暗い道を進む。
もしこれがフィクションの世界だったら、不良とかにカツアゲされるのであろう。
まあ、こんな時代にそんな奴らなんていないと思うけど。
いた。
なんて、前時代の人間なんだって考えていた。
そんな訳なかった。
だって、彼らは人間じゃなかったんだもの。
なんでこんな短期間に何度も魔法使いに出会うのか?
普通、クラスに1人居たら良い方なんだけどな。
幸いにも絡まれるのは私ではなかった。
既に3人で小柄な1人の子を囲んでいたのである。
私は何もなかったかのように去ろうとした。
いやだってさ、バリバリの文化系な私に彼らを相手にできるわけがないし。
それに普通に怖いもん。わざわざ虎穴に入る必要なんてないでしょ。
「あんさ、本当にやめてくんない?そういう真似」
「どういうことですか?」
「とぼけやがって、分かってんだろ!」
それでも、少し罪悪感と好奇心が残っていて、私はイヤホンを外しちょっと近づいてみた。
あれ?真ん中の囲まれた子って、昼間の魔法使いの人?
確か、心を読める魔法が使えるっていう。
てことは、なんかイカサマでもさせて金を巻き上げさせられていたのかな?
「あんだけ、教室で大きな声で自分は魔法使いだって言っていいと思ってんのか?あぁ?」
「それの何が悪いんですか」
「ふざけてんじゃねぇぞ!お前のどこが魔法使いなんだ!」
え?どういうこと?
「お前はただの人間なんだろ?俺たちをおちょくってんのか!」
「いやいやまさか、僕は魔法使いへの偏見を直そうと考えているだけですから」
「頭おかしいだろ!魔法使いには魔法使いの考え方があるってもんなんだよ!人間の分際で勝手にしゃしゃり出てんじゃねー!」
いやいや、突然の展開で混乱してきた、えっと…つまり…
と、一歩後ずさりしたところで小石の音が鳴って彼らに気づかれてしまった。
やばい、っていうかちょっと待って?
あの不良達って確か同じクラスにいなかったっけ?
「あ!ちょうど良かった!怜花ちゃん、僕を助けてよ!」
「え、いや無理無理無理!」
「なんだゴラァ!いつからいたんだ!」
なんなのこの状況、本当に次から次へと急すぎるでしょ!
「いいから、僕を助けたいって願って!」
「えぇ?どういうことだよ」
「お前もごちゃごちゃうるせーんだよ!」
不良のリーダーが生徒に殴りかかる。
このままじゃ絶対ヤバい。
とりあえず、この子を助けないと!
私の手が微かに光った気がした。