第1話 プロローグ 空から落ちてきた女の子
2019/5/21 編集&追記
「幸太、これを神社に届けてくれ」
「まじか、じーさん…神社ってあの森山神社か?めっちゃ遠いじゃん…」
「じーさんじゃない、店長と呼べ。バイト中だろうが」
「仕方ない、わかったよ…ちょっくらいってくる!」
「おう、気をつけろよ」
俺はこのうどん屋でバイトをしている。最近は毎日のように働いているのでかなり慣れてきた。でも今回みたいにうどんの配達とかはやっぱり疲れる…
なにせじーさん、いや俺の祖父 草壁五郎が1人で経営してる店だ。昔から代々続いているうどん屋の老舗で顧客は割と多いと思う。孫の俺としては老人のじーさんを手伝わざるを得ない。うどんの味は某グルメサイトで評価4点台を頂いている。つまりめちゃくちゃ美味いってことだ。テレビや雑誌の取材も何度も来たことがある。
そのためかやはり客が多い。俺みたいな若手のバイトはじーさんも重宝しているのだろう。バイトを外注して雇えばいいのに…って何度も言ったけれどじーさんは決まってこういう。
「俺の知らないやつに俺の味は預けられねえ」
うどん一筋で生計を立ててきたうどん職人は言うことが違う。職人というよりもう達人の域に入っていると思う。
もちろん俺はうどんつくりは手伝えないので配達や配膳、皿洗い、お客さんの整理など雑務をこなしている。
ちなみに俺の名前は草壁幸太。いうまでもなくうどんの達人草壁五郎の孫で、このじーさんと一緒に二人で暮らしている。じーさんとの暮らしは充実していてうどん一筋の生活って感じだ。
って誰に自己紹介してるんだ俺は…ははは。
どうでもいいかもしれないけど、俺はついこの前まで一か月くらい家に引き篭っていた。とある事情のせいで外出できなかったんだ。
俺に何が起きたかはいやでもすぐに知ることになるだろう。
今はどうしてるのかって?今はリハビリ中みたいんもんだ。こうして毎日じーさんの手伝いをして徐々に回復してきている。
「森山神社遠すぎ…やっぱ引き受けるんじゃなかった…」
森山神社は俺の住んでいる町と同じ地区にある割と大きくて由緒ある神社だ。ここら辺の住民はみんな初もうでの時はここの神社にお参りに来る。ただこの森山神社、唯一の欠点がある。
それは「山の上に」あることだ。
この意味が分かるだろうか…?この神社にたどり着くためにはそれ相応の体力とモチベがないといけない。
もうリハビリ終盤とはいえ体力全快じゃない俺がうどんをもって自転車で山道の上り坂を上るのはまあ苦行だった。
森山神社の神主さんは草壁うどんの常連さんでいつもはお店に来てくれるんだが、今日は事情があってか配達だった。常連さんだし断るわけにもいかない。しかも神主さんは俺に割とよくしてくれる。
でも俺から森山神社へ訪ねるのは珍しかった。だからこの坂道の大変さを忘れていた。
あともう少しで森山神社に着くという所で最後の難所の坂道で俺の体力はギブアップ寸前だった。
「あああ、疲れた…自転車押していくか…」
うどんが積まれた自転車からおりて押していく。これで少し楽になるかな。
ふと今まで自分が昇ってきた坂道を振り返る。するとそこには絶景が広がっていた。
坂道から見える景色は絶景で俺の住んでる街を見おろせる。5月というだけあって気温もちょうどいい。
「バイト中じゃなければここでゆっくりしたいなあ」
景色を見ながら歩くこと数分後…
「よっしゃ!!ついた!!」
やっとの思いで森山神社に辿りついた。これから配達という仕事が待っているのに俺の体力は底をついていた。
「あと少し頑張るか…」
俺は神社に向かって叫ぶ。
「草壁うどんです、神主さんはいらっしゃいますか?ご注文されていたうどんを届けにきましたー!」
しかし返答はない
ん?神主さんいないのかな、誰かほかにいないのか探してみよう。さすがに神社に誰もいないなんてことはないはずだ。
どうしたものかと神社の中をグルグルして神社の人を探す。
するとその時何かが僕の目の前を通り過ぎて落ちた。
「ドサアアアアアッ」
「ん!?!?」
いやいやめっっちゃびっくりしたぞ…驚かせるなよ…
と思いながら今僕を驚かせたものが何なのかを確かめに行く。
動物でもいたのかな…?
気になって恐る恐る近寄る。
落ちてきたモノを見て僕は度肝を抜かれた。
なんと落ちてきたのは人間だった、しかも俺と同じくらいの歳の女の子だ。
「お、おい…!大丈夫か!」
この時俺はこの出会いが俺の人生を大きく変えることを知らない。
そう、この先俺に降りかかる死の連鎖を…。
ドタバタコメディー始まります!