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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ


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第九十九話〜王都『リトゥーラ』② 王女様のマブダチ?〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。

 



 フカフカの座席。適度な揺れ。



「うとうと……」



 さすがは王都の馬車。お昼寝するのにこれ程適した物がこの世に存在するだろうか?



「先生?」



 少なくとも今の私にとってはここが最高の寝床であることは間違いない。これだけでも出てきたかいがあるというものだ。



 しかし。



「先生ぇーーせっかく一緒にいるんですから構ってくださいよぉ!」


「んーー……」



 そう言ってユッサユッサと私の身体を揺すってくるフィオちゃんはとても暇そうだ。王女様にとってこの馬車は珍しくもなんともないらしい。



「おーーきーーてーーくーーだーーさーーいーー!」


「うぅーーん……あと五分だけ……」


「それ、絶対に起きる気ない時に言う言葉じゃないですかぁ!」



 バレたか。『あと五分=起きる気なし』はこの世界でも共通の認識みたいだ。



「ダメだよフィオちゃん、せっかくルノが気持ち良さそうに寝てるんだから。……フユナも眠くなってきちゃった……ふあぁぁ……」



 私の快眠を守りつつ、身体を預けてくるフユナ。



「むぅ……せっかく美味しいケーキがあるから食べようと思ってたのにぃ」



 こちらは、わざとらしく誘惑してくるフィオちゃん。どちらも捨て難い。



「じゃあ先生は放っておいてみんなで食べましょ!」


「それならフユナも食べるーー!」


「うぎゃ!?」



 悲しい事実。私 < ケーキ


 フユナがガバッと起き上がってしまった。ちなみに私もフユナに身体を預けていたのでそのまま壁に激突。



「うぅ……せっかく気持ち良く寝てたのに。……私も食べる」


「はーーい、どうぞ先生!」



 してやったり! というフィオちゃんの可愛い笑顔が、最高の眠気覚ましになった事は心にしまっておくことにしよう。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 あれから数時間後。



「先生、そろそろ着きますよ?」


「んぁ……あと五分……」


「今度こそは本当にだめです!」



 って言っても、私だって今度こそは快眠していたのだからもう起きたくない。とは言ってられないか……



「うぅーーん……王都? 見えてきたの?」


「はい、もうすぐそこですよ!」



 フィオちゃんの言葉に従って窓の外に目を向けると、目の前には巨大な街が見えた。



「え、これ全部王都……?」


「そうですよ♪」


「……」


「……」


「…………………………やば」



 今まで大きい街と言っても、ロッキしか行ったことのない私にとっては衝撃だった。『すぐそこですよ』と言ってからそれなりの時間が経ったというのに未だに正門に辿り着けていない。



「あの……フィオちゃん。同じ所をぐるぐるしてるだけじゃないよね?」


「……? あたりまえじゃないですか。そんな意味無いことはしませんよ」


「で、ですよねーー」



 王都……恐るべし。


 結局、正門に到着したのは一時間程経過してからだった。あと五分どころか、一時間も寝ていられたじゃないか……



「いやいや……それにしてもすごいねぇ」



 正門をくぐると、王城までまっすぐ続くメインストリートがあるのだが、それがまたとんでとないスケールだった。道幅は当然広い……



「ねぇ、フィオちゃん。これ、お城に着くまでに日が暮れちゃわない?」


「またまたーー! 先生は大袈裟ですね! でも時間かかるのは事実ですので、先にお昼食べますか?」


「うん、そうしてもらえると助かるかな。良かったら良いお店とか紹介してよ」


「まっかせてください!」



 今思い出したが、オリーヴァさんが『王都にはお昼頃には到着する』と言っていたのは文字通りそいうことだったのか。王城までの道程はまた別と。



「オリーヴァ、バッカ。これからお昼にするからどこかオススメのお店に行ってちょうだい」



 御者台に通じる糸電話のようなもので指示を出すフィオちゃん。



「しかしこのあたりにお嬢が満足する店がありますかね? 王城で食べた方がいいのでは?」


「バッカの処遇はこの後検討するとして。いいのよ、先生と食べるお昼ならなんでも美味しいんだから。そうだ、あの『早くて、安くて、美味しい』お店に案内しなさい!」


「なるほど、お任せを!」



 そんなどっかの丼物屋みたいなのが王都にあるのかよ! と突っ込みたくなったが、そこはこの土地の人達を信じてみよう。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「では皆様。足元にお気をつけてください」



 到着したのは王都の中でも一際目立つお店だった。大きく掲げられている看板には『レストラン・オウト』と書かれている。



「ふむ、我ながらなかなかのチョイスね。あ、ちなみに先生へのお土産はこのお店から取り寄せたものなんですよ?」


「うん、名前からしてそうだろうなぁとは思ったよ……」



 名前はちょっと残念だけど、お土産の味が良かっただけに期待感は高まる一方だ。



「この『レストラン・嘔吐』からはなかなかいい匂いがしますな!」


「こら、そこ! 字が違う! これから食事するって時に変な事言ってるとお仕置きするからね!」



 せっかく考えないようにしていたというのに。



「でも大丈夫? ちょうどお昼時だしお客さんで溢れかえってなきゃいいけど……」



 私のそんな心配は杞憂だった。



「これはこれはフィオ・リトゥーラ様! ようこそお越しくださいました! え、席? ハハハッ、そのような心配はございません! オラ、散れ散れ!」



 ガシャーーン! サッサッ……ピカーーン!



「……」



 ナニコレ、ヤクザ?



「ねぇ、ルノ。私、別のお店に行きたいのですが……」


「だめだよコロリン。ここで私達が出ていったらお客さん達の犠牲が無駄になる……!」



 正直、私も同じ気持ちだった。だって、王女様が来た瞬間に手当り次第にお客さんを放り投げて席を空けちゃうんだもん。



「さ、先生。座りましょう?」


「は、はい……」



 フィオちゃんだけでなく、あの知的なオリーヴァさんまで平然としている。バカさんは楽しそうに笑っているだけだが。



「これも王都では日常風景という訳か。恐ろしい……」


「先生、何食べますか? ちなみに私のオススメはこれとこれと、あとこれ!」


「ん、どれどれ?」



 ちょうどその時。やけに私達に視線が集まってる事に気付いた。



「と、言うよりも……私?」



 そう言えば王都には魔女がいないと聞いたのでそのせいかな? それにしては尊敬やら憧れといったものとはかけ離れている気がするのだが……



「ルノさん……私達、刺客に襲われたりしないですかね……? あと、王女様に言葉遣いとか気を付けた方が……」


「あ、そういうことか」



 レヴィナが不安になるのも仕方の無いことだった。あくまで私達が一緒にいるのはこの国の王女様なのだ。



「でもね……」



 そこでチラッとフィオちゃんに目をやると。



「先生! 私、これが好きなんですけどよかったら食べてみてくださいよ! 美味しいですから!」



 王女様本人がこの調子なので、私達が今更対応を変えたところで無意味だと思う。



「ま、そんなに硬くならなくていいんじゃない? 私が言うことじゃないけど」


「そ、そうですね……」



 こうして、なんだかんだとあったが、次々に運ばれてくる料理には全員が大満足だった。オウト料理最高!










 そして食後。


「先生先生、お待ちかねのお土産ですよ! 見てください、ほら! チーズケーキに、プリンに、ほにゃららほにゃららーー! ちなみに、先生なら多分これが気に入ると思いますよ!」


「お! フィオちゃん、分かってるね! じゃあこれを我が家に一つと……フィオちゃんにも買ってあげる!」


「いいんですか!? ありがとうございます、先生!」



 こんなやり取りを繰り広げたおかげで、たった一日の内に『王女様とやけに仲のいい魔女』の噂は王都中に広がったのでした。




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