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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第九十話〜レヴィナの日常② 突然始まったアイスパーティー〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。

 



「ごちそうさまでした……」


「まぁまぁだったな!」



 カラットさんに昼食をごちそうになった私とグロッタさんは、失礼ながらカラットさんの部屋で寛がせていただいている。



「おーーい、デザート食べるか?」


「いただこうか!」


「ちょっとグロッタさん……少しは遠慮して……!」



 流し場で食器を洗い終えたらしいカラットさんの言葉にまったく躊躇なく答えるグロッタさん。正直、私も食べたいけど……



「そう遠慮するな、レヴィナよ」


「そうだよ、レヴィちん。グロッタが言うことじゃないけどな!」


「おいこら! 髭を引っ張るな! あっ、抜けた!?」


「お、素材ゲット!」


「はは……それじゃ、お言葉に甘えて……」



 カラットさんが用意してくれたのは桃がふんだんに使われたゼリーだった。綺麗な見た目とこの香り……食べる前から美味しいのが分かる!



「なんだ、急に女子みたいなものを出してきたな。今更女子力アップを狙っても遅いぞ? ゲラゲラ!」


「よし、レヴィちん。グロッタの分も食べていいぞ」


「や、やった……!」


「ひどすぎるっ! あ、こら! 本当に食べるな! お前こそ遠慮しろ!?」


「はっはっはっ! いいぞ、レヴィちん!」



 そんなやり取りがありましたが、ちゃんとグロッタさんにもあげました。半分ほどですが。



「さてと……んじゃ私はそろそろ仕事に戻るかね」


「え、あの……カラットさん……?」


「あぁ、レヴィちん達は別にここでゆっくりしてていいぞ? 仕事って言ってもどうせすぐそこだし」


「そうか。では遠慮なく! すやーー」


「えぇ!? いえいえ……! 私達もこの辺で失礼しますね。ほら、グロッタさんも起きて……!」



 さすがに人様の家で本人が仕事中の中、寛ぐなんて気が引ける。



「そうか? んじゃ、また好きな時に遊びに来てくれな! ルノちんにもよろしく言っといてくれな」


「はい、お邪魔しました。色々とごちそうさまでした……」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 私達が外に出た時には昼下がりの太陽が村を照らしていた。あと一時間もすればおやつの時間といったところか。思いの外、カラットさんと過ごした時間が長かったみたいだ。



「あ、そうだ。あそこでアイス買いましょう……!」


「今食べたばかりだろうに。レヴィナは食い意地が張ってるな!」


「う、グロッタさんも似たようなものじゃないですか……じつは前にもルノさん達と食べに来たんですけど、その時はちょっと気分が悪くてあまり食べられなかったんですよ……」


「それなら仕方ないから一緒に食べてやろう!」



 という訳でいつか来たアイス屋さんにやって来た私達はさっそく購入。私はシンプルなミルク味で、グロッタさんは色んなフルーツが使われたミックス味。



「ふふ……グロッタさんも乙女みたいなチョイスですね……?」


「んなっ!? 自然の味と言ってもらおうか! レヴィナこそそんな牛から出た汁のアイスなど!」


「ちょっと!? なんでそういう表現をするんですか……!? これはミルクです! ミ・ル・ク!」


「だから牛の(ミルク)ではないか」


「おぇ……も、もういいので早く食べましょう。ほら、行きますよ……」



 私は二人分のアイスを持ちながら村の中央の広場に向かった。あそこなら手頃なベンチもあるのでちょうどいい。



「あ、美味しい……!」


「ガツガツ……もう無くなってしまった!?」


「え……もっと味わって食べないと……」


「よく見るとそのアイスも美味そうだな(ゴクッ)」


「だ、だめですからね……!? これは私のです!」



 少しでも油断したらガブッといかれそうな雰囲気だった。うぅ、ゆっくり食べたいのに……



「お、レヴィナさんじゃないか」


「あれ、金欠さん……?」


「おい、それ吹き込んだの絶対ルノさんだろ……」



 突然私の目の前に現れたランペッジさん。この人も村に滞在しているらしく、何かとよく出会う。下手したら私より登場してるんじゃないかな。悔しい……



「そのアイス美味そうだな(ゴクッ)」


「うわ……グロッタさんが増えた……! あ、あげませんからね……!?」


「ははっ、そんなグロッタみたいな事は言わないさ!」


「貴様、見てたのか……やらしいやつめ!」


「ははっ、偶然さ! せっかくだからオレも買ってこようかな。まだここにいるんだろう?」


「そうですね……まだアイスも残ってますし……」


「ならすぐに行ってくる!」


「ランペッジよ。このグロッタ様の分もよろしく頼む」


「ふっ、欲しかったらオレより先にアイス屋に到着してみせるんだな!」


「なんだと!? こしゃくな!」



 ビュン! とものすごいスピードでアイス屋さんへ向かう二人を見て、ほっと一息つく。



「やっとゆっくり食べられる……んーーやっぱり美味しい……!」



 そのまましばらく無言でアイスを堪能した私。やはりリピートしたくなるだけあって、文句ない味だ。おかげでグロッタさんほどではないが、私もけっこう早く食べ終わってしまった。



「うーーん、私も一緒に行けばよかったかな……」



 もう一つ食べたいなーーなんて思っていると、グロッタさんとランペッジさんが戻って来た。



「おかえりなさい……またずいぶんと沢山買ってきましたね……?」


「意外と美味そうなのが多くてな。ほら、レヴィナさんも良かったら好きなのどうぞ」


「えぇ……いいんですか……?」


「この男、買う時にレヴィナの好みを教えろとうるさくてな。ちゃんと『牛の汁だ』と言っておいたぞ!」


「おぇ……」



 せっかくなのでご好意に甘える事に。なんだか今日は色んな人にごちそうになっちゃってるな。



「じゃあ、これを……」



 私が手に取ったのは、ミルク味といちご味が混ざったやつ。私の好みを聞いたというだけあって、どのアイスもミルク味が混ざっていた。



「い、いただきます……」


「よっこらせっと」


「わっ……!?」



 アイスを食べようとしたところ、私のすぐ横にどかっと腰掛けてきたランペッジさん。ちなみにグロッタさんはベンチには座れないので目の前の地面に座っている。



「ん? どうかしたか?」


「い、いえ……!」



 不意に近くに座られたのでドキッとしてしまった。ホラ吹きさんだと分かってからはすっかり気にしてなかったのに……!



「ホラ吹きって何の話だ?」


「人の心を読まないでくださいよ……!?」


「はっはっはっ!」



 ホラ吹きと言ったのは言うまでもなく、温泉に言った時の事だ。『ルノさんを一撃で倒した』みたいな。まぁ、笑い話だ。



「ランペッジさんは今日は何を……?」


「あぁ、今日はフユナちゃんの特訓に付き合ってて今終わったところなんだ。フユナちゃんとサトリもその辺にいるんじゃないか?」


「そうだったんですね……言われてみれば今日は朝からフユナさんが出掛けていきましたね……」



 そんな話をしていると狙ったかのようにフユナさんとサトリさんが現れた。これがルノさんの言っていた『ふらぐ』というやつか。


 そして私の姿を見つけた二人の第一声はというと……



「「レヴィナさんとランペッジさんがデートしてる!?」」


「はっはっはっ! これは偶然だな、お二人さん!」


「えぇ!? 否定してくださいよ……!?」



 そんなこんなで、のんびりとアイスを食べていただけなのにいつの間にかアイスパーティーのようになってしまった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「なーーんだ……おかしいと思ったんだよ。ねぇ、フユナちゃん?」


「うん。だってランペッジさんはサトリちゃんと……」


「ん? 何か言った?」


「な、なんでもないよ。てへ」



 どうやら誤解は解けたみたい。この小さな村で噂なんてされたら一瞬で広まってしまう。



「ま、それならそれで……ほら、フユナちゃんもどんどん食べてね」


「わーーい! ありがとうサトリちゃん!」


「あの……それ買ったのオレ……」



 最初と比べてずいぶんと賑やかになった。あれだけあったアイスもどんどん減ってもう一個しか残っていない。



「……」


「ゴクッ」



 それを狙っている人間(?)が約二名。言うまでもなく一人は私。もう一人は……こちらも言うまでもない。



「グロッタさん……沢山食べたからもういりませんよね……?」


「何を言っている、レヴィナよ。身体のサイズが大きいということはそれだけ食べる量も多い。つまり……分かるな?」


「だ、だめです……! それを考慮しても食べ過ぎです……!」


「ふっふっ……いいのか? 最近また腹が出てきたのでは?」


「あっ!? ちょっと気にしてたのに……!」


「そのわりにずいぶんと食べてるではないか! ゲラゲラ!」


「もう怒りました……! いただきますっ……!」


「なっ!? この食いしん坊めっ!」



 そうして、私とグロッタさんがガバッとアイスに飛びつこうとした時……


 ヒョイ!



「「あっ!?」」


「いただきまーーす!」



 最後の一つ……そのアイスがフユナさんの手に。



「しゅん……」



 恥ずかしながらショックを受けてしまった私。ここまでもそれなりに食べたというのに……



「これを機にダイエットすることだな!」


「うぅ……!? 私、最後にもう一つだけ買ってきます……!」


「待ってレヴィナさん。フユナも行くーー!」


「んじゃ私も行こっかな!」


「もちろんオレも」


「ではわたくしも」



 結局その場の全員でアイスを買いに行くことに。ルノさんと暮らすようになってからはこうしてみんなと何がする事が増えたがやっぱり楽しい。こんな事ならルノさんとスフレベルグさんも呼ぶべきだったかな。









「ねぇ、フユナちゃん。レヴィナさんとグロッタ……ずいぶんと仲良くなったみたいだね?」


「うん……なんだかデートしてるみたいだったね」


「だよね。これはまさかのカップル誕生……?」



 そんな声が後ろを歩く二人から聞こえてきて、またしても誤解を解くハメになった。これも大切な思い出の一部として心にしまっておこうかな……



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