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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第八十九話〜レヴィナの日常① グロッタとお出かけ〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。

 



 私はレヴィナ。死霊術を操るネクロマンサーであり、カテゴリー的には魔法使い。こう見えて、不老不死で見た目は18歳。黒に近い紫色の髪を肩まで伸ばし、前髪は若干目にかかっている。この見た目か、それとも雰囲気か……『幸薄そう』なんて思われる事もしばしば。



「レヴィナ、ご飯できたよ」


「はい。ありがとうございます……」



 この人は氷の魔法を極めた、魔女のルノさん。私と同じく不老不死で見た目も18歳。

 旅の劇団として各地を巡っていた私に声をかけてくれた人であり、話してみれば何かと共通点があるこの人と私は共に暮らしている。



「今日の朝ご飯はルノサンドだよ」


「あ、美味しそうですね……」



 不老不死と言っても、いい事ばかりでもない。家族も含めて、周りの人達は寿命で先立ってしまい、当然、不老不死の人間は取り残されていく。今までも、こうして共に食事をしてきた人達がどんどんいなくなっていった。



「レヴィナは突っ込まないんだね。『またルノサンドかよ!』って」


「ふふ……そうですね。私は好きですから。これ……」



 だから……こうして深く考えること無く会話にできる日が来るとは思ってもいなかった。これまで沢山の人と出会ったのにどこかで一線を引いていた。友達は欲しい……けど、先立たれる悲しみを味わいたくないから。だからネクロマンサーになったのかもな……ゾンビならいつでも呼び出せるもんね。



「うぅ……レヴィナだけだよ……ルノサンドを愛してくれるのは」


「ほかのみんなは『ランペッジサンド』の虜になってしまいましたもんね……」


「『レヴィナサンド』もね」


「はは……すいません……」



 そういう意味じゃ今の環境……ルノさんに出会えて本当に良かった。すぐ近くの村『ヒュンガル』まで足を運べば、さらに二人の魔女……看板娘のサトリさんに、鍛冶師のカラットさんがまでいる。ずっと一緒にいられる人達がこんなに沢山いる。



「ん? どうしたの、レヴィナ。ニヤニヤしちゃって。昨日、ランペッジさんに『お顔が可愛い』って思われて嬉しかった事を思い出しちゃったの?」


「ち、違いますよ……嬉しかったですけど……」



 今日も、明日も。ずっとこの人達と一緒にいられる。カフェに行ったり、温泉に行ったり……何もせずにのんびりする日もあるかもしれない。それらの日常は、かけがえのない宝物として私の中に積み重ねられていくのです。






 お父さん、お母さん、見てますか? 私は今でもこうして……幸せに生きていますよ。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 朝食を終えた私が、村にでも行こうかと外に出たところ……



「む? 幸薄そうで有名なレヴィナではないか」


「おはようございます、グロッタさん……」



 私が地味に気にしていることを言ってきたのは怪狼・フェンリルのグロッタさん。



「グロッタさんはいつも早起きですね……」


「お前が寝すぎなのだ、レヴィナよ」


「う、否定出来ない……」



 自覚はあった。私は昔からやけに眠りが深い体質で、人より早く起きることなんて滅多になかった。



「まぁ、眠れない体質よりはマシだがな! ゲラゲラ!」


「ですね……ところでグロッタさん、今日はお暇ですか……?」


「ふむ、そうだな」


「それなら一緒に村まで行きます? 特に何かするって訳ではないですけど……」


「いいだろう! なら、今日は特別に背中に乗せてやろう!」


「そ、それは嬉しいですけど……馬鹿みたいにスピード出さないでくださいね? 危ないので……」




 そういう訳で私はグロッタさんの背中に乗って村までの道を移動中。自分で言うのもなんだが、私がこうして誰かと二人きりで過ごすのも珍しい。



「グロッタさんも私に気さくに接してくれますよね……」


「急にどうしたというのだ?」



 のそのそと歩きながら言葉を返してくるグロッタさん。先程の言い付けはちゃんと守ってくれるみたいだ。



「いえ、なんとなく嬉しくて。ルノさんもそうですけど……あの家の人達はみんな優しいですね」


「レヴィナはルノ様がいなかったらその辺で野垂れ死にしていたかもしれんな! ゲラゲラ!」


「そ、そこまではなりませんよ……一応、演劇でお金は貰ってたんですから……!」


「ぎゃあああ!?」



 私が頭をゴツンと叩くと大袈裟すぎる悲鳴が森中に響いた。村までの聞こえたんじゃないかな。



「ふふ……」


「人を叩いて笑っているとは……ルノ様が言っていたぞ。そういうのは『どえす』と言うのだ」


「そう言うグロッタさんは『どえむ』ですよね……?」



 私は決して叩いた喜びで笑っていた訳では無い。誰かと冗談を言い合えるようになっていた自分に驚いたのだ。それにこうして私の名前を呼んでくれる……それだけの事が妙にむず痒がった。



「ぐぅ!? 言ってくれるではないか!」


「わっ……あんまりスピード出したら危ないって……!?」


「ゲラゲラ!」



 それでもこの状況を楽しんでる私はグロッタさんと同じ『どえむ』なのかな。いや、これただ単純に……楽しいんだ。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「うぇ……葉っぱが口に……」


「楽しかっただろう?」



 確かにちょっと楽しかった……最初だけ。途中から道を外れて森の中を突っ走り始めたグロッタさんのおかげで葉っぱやら枝やらが身体中にびっしり。



「はぁ……なんだか疲れました……」


「ところでこれからどうするのだ?」


「そうですね……うーーん……」



 と、その時……なにやら沢山の荷物を持った人物がやって来た。真っ赤な髪の毛を一つにまとめた女性だ。



「お、レヴィちんにグロッタじゃないか。また珍しい組み合わせだな」


「お、おはようございます……カラットさん」



 沢山の野菜やらを抱えたカラットさんが半分だけ顔を出して声をかけてきた。



「ずいぶんと沢山持ってますね……手伝いましょうか……?」


「悪いね、レヴィちん!」


「まったく……お前は遠慮という言葉を知らんのか」


「ん? もちろん持つのはグロッタな?」


「ぐはっ!?」



 そう言ってカラットさんは荷物を軽々と持ち上げてグロッタさんの背中に括り付けた。そんなに大変でもなかったのかも……



「さぁ、進め進め!」


「お、覚えてろよ……!」


「はは……頑張ってください……」



 一見、剣呑な雰囲気だけど、実際はそんな事はなかった。カラットさんの武器屋に到着するまでの道中ではなんだかんだで、会話が弾んでいたみたいだし。



「よーーし、到着! ご苦労だったな!」


「おい、まさかそれで終わりか? あん?」


「仕方の無いヤツめ。それならなにかご馳走してやるよ。レヴィちんもどうだ? そろそろお昼だろ?」


「は、はい……ありがとうございます。それじゃ、ぜひ……」


「おう! さ、上がった上がった!」



 こうして、少々早いお昼ご飯となった私とグロッタさん。カラットさんの部屋は床に座るタイプで、真ん中にテーブルが置いてある。そして壁際には沢山の棚があり……



「うわ、素材がいっぱいありますね……あ、これってグロッタさんの毛……?」


「あぁ、それは使い道が無くてな」


「き、貴様……引っこ抜いておきながら使ってなかったのか!?」


「ははっ、冗談だよ。それはついさっき頂いたものさ。ほら、そこ」


「あ、尻尾の毛が……」


「貴様! 今日という今日は許さ……ぎゃあああ!?」


「ほらほら、暴れたらホコリが立つだろ?」


「く、臭い……!」



 カラットさんが手に取ったのは何かの虫。これも素材なのか……とにかく臭い。



「すぐできるからその辺で適当に寛いでてくれな、レヴィちん」


「あの。私も手伝いますよ……?」


「いいっていいって。荷物を運んでもらえただけで大助かりだよ!」


「はぁ……わかりました……」



 実際に運んだのはグロッタさんだけど……



「あの、グロッタさん。大丈夫ですか……? うっ、臭い……」


「うぐぐ……お前も道連れだ、レヴィナよ!」


「ちょ……!? あっ、臭いっ……!?」


「ゲラゲラ! おえっ!?」



 グロッタさんに臭い部分……つまり鼻を押し付けられた私はそのまま倒れ込んでしまい、悪臭によって蹂躙されてしまった。










「まったく、もう……」



 それでもやっぱり楽しいと思ったのは、私が『どえむ』だからなのでしょうか。



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