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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第八十七話〜我が家の『ベッド&睡眠』事情〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。

 



 ある日の早朝。誰一人として起床していない時間帯。


 コロリンが人の姿になったことで、我が家のベッドの人口密度は増加していた。フユナ、私、コロリン、レヴィナの順で並んでいるのだが、一人増えただけ! なんてばかにできたものじゃない。このベッドは今まさに戦場と化しているのだ。



「うーー……」



 フユナは私と壁にサンドイッチされ……



「むぐ……」



 私の顔面にはコロリンの腕が上陸し……



「すやーー……」



 ぶっちゃけコロリンは快適で……



「う……ん……? ……ぐえっ!?」



 レヴィナは床に落下。



「むぐ……なんか苦しいと思ったらまたコロリンの腕か……」



 私は息苦しさで目が覚めてしまった。コロリンの奥を見ると何故かスペースが空いていたので、コロリンを転がして場所を確保。再び眠ろうとしたのだが……



「一度起きちゃったから眠れないや……起きよう……」



 目が冴えてしまったので、サンドイッチされていたフユナに場所を譲って、ベッドから降りようとすると何か踏んだ。



「うーー……!?」


「え……何でそんなところで寝てるの?」



 先程、落下したレヴィナだった。



「もう、レヴィナってば……そんな所で寝てて踏まれでもしたらどうするの」



 たった今踏んでしまった私が言うことではないが。



「しょうがないなぁ」



 レヴィナは起きる気配も無かったので、仕方なくベッドの上に戻しておいた。コロリンの上に置いてきたけど、抱き合ってるみたいでいかがわしい絵になってしまった。



「ベッド、もう一つ買わなきゃだめかなぁ……」



 そんな事を考えながら、今日も一日が始まりました。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ねぇ、グロッタ。ベッド作って」


「いきなりどうしたんです?」



 少々早い起床だったこともあり、暇を持て余した私はグロッタの小屋に遊びに来ていた。



「いやね、今我が家では一つのベッドに四人で寝ている訳だよ」


「なるほど。なんだかんだでコロリンの奴も人間の姿が馴染んでますな!」


「あはは、確かにね。スライムの姿でも過ごすとか言ってたのに、ずいぶんと人の姿が気に入っちゃったみたいだね」



 とは言え……ちょくちょくスライムの姿になって、私にイタズラしようとしてくることは多々ある。スライム状態=イタズラみたいな感じだ。



「まぁ、そういうことだからベッドが欲しいなーーってね」


「そういう事でしたらランペッジを召喚してみては? 無駄に器用な奴ならば、なかなかの物を作るはずですぞ!」


「ふむふむ、それもアリかもね。材料ならロッキの木で賄えるし……」



 料理も上手なランペッジさんのことだ。グロッタの言う通り、かなり上等な物を作ってくれると思う。



「ただ、そうなるとお礼をするのが怖いな。フユナだけじゃなく、コロリンまでくださいとか言われたら困る」



 なんたって、コロリンにあった時のランペッジさんの反応が『か、かわいいっ……!』だからな。ほぼ間違いなくお持ち帰りしようとするはずだ。



「よし、たまには自分でやってみようか。ベッドなんて寝れれば何でもオッケー!」


「大丈夫ですか、ルノ様?」


「ふふん、楽勝楽勝! とりあえず上まで行って材料集めてくるよ」


「集めた木は落さないよう頼みますぞ! 絶対ですぞ!?」


「はいはい。沢山落としてあげるから」



 という訳で、ドMグロッタは一旦放置してロッキの樹の上にあるツリーハウスへ。



「おや、ルノ」



 ツリーハウスの主、スフレベルグが朝食の虫を食べていた。タイミング間違えたな。



「やっほーー! お食事中にごめんね。ちょっと木を集めに来たよ」


「木?」


「ベッドが狭くなってきたから作ろうと思ってね」


「あぁ、コロリンですね」



 少ない言葉で通じるスフレベルグだと話が早い。まぁ、そうでなくても、お食事中なのであまり話すのも気が引ける。虫食べてるし……



「という訳だからちょっくら剪定がてら行ってくるよ。では、ごゆっくりーー!」


「はい、気を付けてくださいね(ムシャムシャ)」



 うげ、最後の最後でグロいものを見てしまった。



「気を取り直してと……ちゃちゃっと集めちゃいますか。それっ!」



 私は氷の箒に乗りながら、空いている手を枝が密集している所へ翳して風の魔法を発動させた。グロッタとのドMな約束もこれで果たせるしちょうどいい。



「ぎゃあああ!?」


「お、よしよし。ミッションクリアだね」



 次々に切り落とした木が落下していく。あとは太めの枝やらで良い感じに組み立てれば完成だ。ちょっとばかり加工するのが大変そうだが……



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おかえりなさい、ルノ」



 地上に戻ってきた私を出迎えてくれたのはコロリンだった。グロッタは頭に複数の枝を生やしながら眠っている。



「ただいま、コロリン。ずいぶんと早いお目覚めだね?」


「当然ですよ……なんか息苦しいと思ったらレヴィナが私の上に乗っかっていたんですから」


「へ、へぇーー?」



 ごめんね、コロリン。それやったの私です。



「ま、まぁそれならちょうどいいや。コロリンも一緒にベッド作る?」


「ベッド? ベッドを作ろうとしていたのですか?」


「うん。コロリンは快適に寝てだけど、フユナはサンドイッチされちゃうし、レヴィナなんてもはや床で寝てたからね」


「そ、それは申し訳ありませんでしたね……!」


「いやいや、あれは物理的に無理があっただけだよ。だからほら、一緒に作ろ!」


「仕方ありませんね」



 まんざらでもなさそうなコロリン。なんだかんだでこの子は構ってちゃんだからこうした共同作業は嬉しいのだろう。



「失礼ですね。構ってちゃんはルノのほうでしょう? スフレベルグに泣きついてたの見てましたからね」


「げっ、心を読まれた……」



 コロリンは何故か鋭い。私の使い魔とは言っているが、特別何かをしている訳ではないはずなのだが。



「あ、分かった。コロリンは私の事が大好きだもんねぇ」


「アホなこと言ってないで早くやりますよ」


「アホ……!?」



 なんだか釈然としないが、作業が始まってみれば思いの外いいコンビネーションであっという間にベッドは完成した。



「おぉ、良い感じだね!」


「ふふん、私の魔法も役に立つでしょう?」


「うんうん、すごいよコロリン! ちゅちゅちゅーー!」


「わっ!? ちょ、ちょっと……!?」



 完成したベッドは、私が魔法陣を描いて、さらにそこへコロリンがコンゴウセキ魔法を加えるというコンビネーションによって、半永久的に朽ちることのない最高の物になっていた。



「さてと。それじゃ寝室に運ぼうか」


「え、どうやって?」


「え、普通に私とコロリンでだよ」


「……」


「? ……あ」



 そこで私はやっと気付いた。ベッドが大きくて扉を通らない。



「ど、どうしようか?」


「……」










 結局、一度ベッドは解体してから寝室に運び、再び同じ工程を繰り返すことになった。


 そして……



「わーーい! これならぐっすり眠れるね!」


「やっと……ちゃんと眠れる……!」



 フユナはサンドイッチされることも無くなり、レヴィナも落下する心配が無くなって、家族全員がぐっすり眠れるようになったのでした。


 ちなみに私はというと、なぜかその日以降もコロリンの腕がちょくちょく顔面に上陸してきて、息苦しい思いをしたのでした。



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