第八十五話〜新生コロリン⑤ カラット・カラット&カラット・カラット&カラット・カラット〜
〜〜登場人物〜〜
ルノ (氷の魔女)
物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。
サトリ (風の魔女・風の双剣使い)
ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。
フユナ (氷のスライム)
氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。
カラット (炎の魔女・鍛冶師)
村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。
グロッタ (フェンリル)
とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。
ランペッジ (雷の双剣使い)
ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。
スフレベルグ (フレスベルグ)
白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。
レヴィナ (ネクロマンサー)
劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。
コロリン (コンゴウセキスライム)
ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。
「「ごちそうさまでした!」」
快晴の空の下、昼食の『レヴィナサンド』を食べ終えた私達の身体は、今すぐにでもお昼寝しようと訴えかけてくる。いつもならそれに迷わず従うところだが、今は状況が違う。
「よし、フユナ。カラットさんのところへ行こうか。双剣、修理してもらわないとね」
「うんっ!」
『カラット・カラット』をどれだけ大切にしていたか知っている身としては、すぐにでも修理してあげたかったのだ。それを私自身がしてあげられないのが少し残念ではあるが。
「ほら、コロリンも行くよ。せっかくだからカラットさんにも紹介するから」
「カラット……私、あの人苦手なんですよね。双剣(×3)やら槍やらにコンゴウセキスライムを使ってるみたいじゃないですか。敵ですよ、敵!」
「コロリンよ、分かっているではないか! アレは我々の敵だ!」
「そうだそうだ!」
コロリンとグロッタが結託した瞬間だった。グロッタってば、まだ根に持ってるのかな……
「まぁまぁ。カラットさんも悪魔みたいに強いけど悪魔じゃないからさ。決め付けはだめだよ」
「仕方ないですね……」
「よし。んじゃ、ちょっと行ってくるよ。お留守番よろしくね!」
「ははっ! 我々(レヴィナ、グロッタ、スフレベルグ)にお任せを!」
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という事でやって来ました、カラットさんが経営している村の武器屋『カラット』
カラットさんに『カラット・カラット』を譲り受けた場所てもある、この武器屋『カラット』は思い出の場所でもある。
「ちょっと……カラットカラット言ってばかりだと頭の中がカラットだらけになるのでやめてくださいよ」
「でもカラットさんの『カラット』でしか『カラット・カラット』は修理できないんだから仕方ないでしょ?」
「うーー!?」
コロリンの反応が面白くて、ついついからかってしまう。そんなことを思っていると、フユナが私の袖をくいっと引っ張ってきた。
「ん、どうしたの? あ、分かった。フユナも構って欲しいんでしょ」
「も、もうっ! そんなにはっきり言わないでよーー!?」
「あはは、フユナは可愛いなぁ。心配しなくても私のナンバーワンはフユナだよ! 今はコロリンの章だからコロリンを構ってるだけ!」
「わーーい!」
「なっ!? それは聞き捨てられませんね! 私を使い魔認定したくせに話が終わったらポイする気ですか!?」
「そ、そんなことないって。コロリンもナンバーワン! フユナもナンバーワン!」
「「ぶーーぶーー!」」
二人からものすごいブーイングを受けながらも無事に到着。扉を開けて店内に入ると、思わぬ人物に出くわした。それも二人。
「お、いらっしゃい。ルノちん! フユナちゃんも!」
この人は店主のカラットさん。
「あれ、ルノちゃん?」
「ん、ルノさん?」
そしてこの二人が思わぬ人物その1、その2だ。
「ちょっとルノちゃん! もっとまともな紹介してよ!」
「まだ金欠だのロリコンだの言われた方がマシだったぞ」
「あはは……」
サトリさんと、ランペッジさんだった。よく考えたらこの二人はカラットさんの弟子なのでいても不思議ではない。
「でも、お二人揃って今日は何を……はっ!?」
「ル、ルノ……ほら、サトリちゃんとランペッジさんは……」
「そ、そうだったね……すっかり忘れてたよ……」
「「???」」
二人は『なんだ?』みたいな顔をしているが、私は少し前にランペッジさんが『サトリはオレのもんだ!』と、言っていたのを思い出して動揺してしまった。
「よく分かんないけど、わたしは双剣を修理してもらいに来たんだよ」
「オレも同じさ」
「え、お二人もですか?『カラット・カラット』ですよね?」
「そうそう。わたしはポロッと落としたら割れちゃって……」
「オレはポケットに入れたまま座ったら折れた」
「……」
スマホかよ!
「『お二人も』って……フユナちゃんのも折れちゃったのか?」
カラットさんが少々戸惑いながら聞いてきた。
「ごめんなさい、カラットさん。これ……直るかな……?」
「あらら、こりゃまた見事に……」
フユナが申し訳なさそうに、折れた双剣『カラット・カラット』をカラットさんに差し出した。
「いやいや……驚いたな。まさか三本も折れるなんて」
「その双剣ってたしか斬れ味は落ちないんでしたよね。強度の方は?」
「あぁ、確かに斬れ味は絶対に落ちない。強度の方だって『絶対』とは言えないだけでかなりのもんだぞ? サトリとランペッジはネタとしてもフユナちゃんのは一体どうしたんだ?」
「実はこの子とフユナが特訓して……ペラペラペラペラーー」
「なるほど……で、さっきから気になってたんだけどその子は?」
「コロリンです」
「「「えっ!?」」」
カラットさん、サトリさん、ランペッジさんの声が重なった。
「ルノちゃん……もしかしてフユナちゃんと同じ……?」
「当たりです」
「か、かわいいっ……!?」
「ちょっと、ロリコンさん。いやらしい目で見るのはやめてください……」
「ちょ!? 名前!」
「さっきその方がマシって……」
「普通の方がもっとマシ!」
なんとなく予想は出来てたけど、やっぱりランペッジさんはコロリンにメロメロだな……サトリさんという人がいるというのに。
「はい、てことでコロリン。ご挨拶して」
「えっと……サトリにカラットにランペッジでしたね。改めてよろしくお願いします」
「あ、そっか。スライムの時からルノちゃんといたからわたし達の事も知ってるのね」
「そうですね。特にランペッジはよく覚えてますよ」
「お、おぉ!」
「特訓の時、すっ転ばせたのが印象的ですね」
「お、おぉ……」
一瞬、覚えてもらえてた事にものすごい嬉しそうな顔をしたランペッジさんだったが、それも一瞬で絶望の顔に変わった。どんまいです。
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「んじゃ、修理の事だけど……幸いな事に、今日は『カラット・カラット』の元となっているコンゴウセキスライムのコロリーヌがいる!」
「コロリンですけど」
「だめか?」
「まぁ、構いませんが」
「うむ」
それにしてもコロリンがいるからってのはどういう事だろう。
「カラットさん。まさかコロリンを素材に使うんですか? それなりに情も移っちゃってるのでそれはちょっと……」
「安心してくれよ、ルノちん。ほらアレだ。同じコンゴウセキのコロリンに『カラット・カラット』にちょちょいと干渉してもらってピタッ! みたいな感じだ」
「は、はぁ……そんな事ができるんですか?」
「うん、たぶん。どうだ? コロリーヌ」
「ふふ、簡単ですよ。一瞬でくっつきます」
「え、ちょっと待って。それじゃ、ここに来た意味……」
「し、仕方ないでしょう? カラットに言われて気付いたんだから」
うーーむ……無駄足だった感が否めないが、そもそもここに来なければこの解決策も見つからなかった訳だし良しとしよう。
「良かったね、フユナ。すぐに直るってさ!」
「うんっ! ありがとう、カラットさん! コロリン!」
こうして、難しいと思われていた『カラット・カラット』の修理は、コロリンの手によってあっけなく終わった。もちろん、サトリさんとランペッジさんのも。
「でも……こんなに早く直るなら氷の双剣もいらなかったね」
地味に気合い入れて作ったので少し残念だ。ところが……
「ううん、そんな事ないよ。ルノから貰ったやつも大切にするよ!」
「フ、フユナーー!? やっぱりフユナは最高だよ! ちゅちゅちゅ!」
「わわっ!?」
「あ、こら! フユナちゃんはわたしのだよ!」
「なんだと!? オレのフユナちゃんに手を出すのか!」
ぎゃあぎゃあとフユナを巡って争う私達は、遠目に見たら好きな子を取り合っている子供のように見えたことだろう。だが、好きなものはしょうがない!
一方、コロリンは……
「まったく……あんなにはしゃいじゃって。………………羨ましい」
「はっはっはっ! コロリーヌには私がいるだろ?」
「はいはい。そういう事にしておいてあげますよ」
思いの外、仲良くなったコロリンとカラットさんでした。