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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第七十四話〜温泉旅行③ ジェットコースター&お化け屋敷〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の鍛冶屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。

 



 家族で露天風呂を満喫した次の日の朝。


 温泉のおかげで旅の疲れも取れて快適に目覚めることができた私達は部屋に運ばれてきた朝食に舌鼓を打つ。メニューは前回のようにロッキの実を使ったものがほとんどだが、どれも美味しい。



「うむ、最高だな!」



 そして目の前には朝食とセットになってやって来たランペッジさんが。この人といいサトリさんといい、なぜいつの間にかセットに加わってくるのか。



「ちょっとランペッジさん。なぜさも当然のようにこの場にいるんですか」


「ふっふっふっ。食事はみんなでした方が楽しいだろう?」


「それは否定しませんけど」



 まぁ、いいか。どうせ出発前には呼びに行くつもりだったし。



「ねぇルノ。今日はどこ行くの?」


「そうだね……またロッキの樹に登ってみる?」


「わーーい! また空中列車に乗りたい!」


「「なっ!?」」



 私とグロッタが戦慄した。前回、空中列車……いわゆるジェットコースターに乗った時大変だったからなぁ……



「あ、やっぱり違う温泉に行ってみるってのはどうかな!?」


「ルノ様最高! ルノ様最高!」



 必死に回避しようとして宗教じみたやり取りをする私達にフユナはというと……



「え……行かないの……?」


「……」



 いやぁぁぁ! そんな潤んだ目で見つめてこないで! 私達がいじめてるみたいになっちゃうよ!



「何言ってるのフユナ。もちろん行くよ? そのためにここまで来たんだから」


「やったーー!」



 フユナの喜ぶ姿がとても眩しい。眩しいが……!



「あの……ルノさん……? その空中列車って何です……?」


「空中列車とはね、身体の中身がおかしくなる乗り物だよ……」


「意識も飛ぶかもしれませんな」


「えぇ……!?」



 レヴィナが真っ青になってしまった。ちょっと脅かしすぎたかな。



「オレは好きだぞ。アレ」


「あぁ……ランペッジさんは好きそうですね」


「それなら一緒に乗ろうよ、ランペッジさん!」


「フユナ!?」


「お、いいな! 何回でも付き合うぞ!」


「やったーー!」



 付き合うだと!?



「フユナ! そんなので釣られちゃだめだよ! どさくさに紛れて手とか握られちゃうかも!? 下手したらもっと卑猥な……!」


「おいおい、オレが変態みたいに聞こえるじゃないか」



 フユナの匂いを辿った人間が何を言っているのやら。



「いや、それよりもどうやってこれを回避するか。うぅ……怖い……」



 私が苦悩しているとポンと叩かれた。振り返ってみるとスフレベルグが私の肩に手を……いや、翼? を置いていた。なにこれ、ちょっと面白い。



「ルノ。諦めましょう」


「ぐすっ」



 この一言で私の心は折れた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 宿を出た私達はさっそくロッキの樹にやって来ていた。



「うぅ……今日に限って空いてる……」


「楽しみだね、ルノ!」


「ソ、ソウダネ」



 最初に乗るのはシンプルな座るやつ。



「え、待って。なにあのレール……なんかパワーアップしてない!?」


「回転が加わったみたいですな……」



 ヤバいヤバい! 前回は気絶してたグロッタをちょっと笑ってたけど今回は人事じゃないぞ!?



「次はフユナ達の番だね!」


「「ガクガク……!?」」



 私とグロッタは恐怖でいっぱいいっぱいだった。レヴィナは初めてだからか、あまり怖いという実感はないらしい。スフレベルグに至っては、遠くの木の枝にとまって自然の一部と化している。



「くぅ……スフレベルグめ!」


「サササッ……!」


「あっ、グロッタまで!?」



 くぅ……あの二人は後でお仕置きだな。



「ルノ、フユナ達の番だよ!」


「ワーーイ」



 ここまで来たら仕方ない。この際、覚悟を決めよう。死ぬわけじゃないんだ!



「はーーい、では足元に気を付けてお乗り下さいね」


「は、はひ……」



 係員に促され空中列車に乗り込む私達。先頭にはフユナとランペッジさん。その後に私とレヴィナ。



「では、出発します! レッツゴー!」


「あわわわ……」


「いたたた!? ルノさん! 大丈夫ですから……!」



 私は隣にいるレヴィナの手を力いっぱい握っていた。だって怖いんだもん!


 ガタン! と揺れて空中列車が進み出した。徐々に上に上がっていき綺麗な景色が広がっていく。それを楽しむ余裕などないが。



「ヤバい……来る……来る……!?」



 空中列車がてっぺんに到着した。ひぇ……


 ガタンッ!



「キターー!」



 周りから見たら楽しんでるように見えたかもしれないが、半分おかしくなっていただけだと思う。



「おぉ……けっこうスピード出るんですね……」


「な、なんで!? なんで普通にしてられるの!?」



 そう言っている間にも空中列車は上に行ったり下に行ったり。ほんとに気を失いそうだった。



「あ、ルノさん……」


「な、なにっ!?」



 それ以上聞かなくてもレヴィナの言わんとしていることが分かった。目の前のレールが捻れているのだから。



「うぎゃーー!?」


「おぉーー」



 もはやどっちが上かも分からなかった。空中で振り回されてるみたいだ。


 どうやらそれがラストスパートだったらしく、空中列車は終点へ到着していた。



「はぁ……お、終わった……?」


「そうみたいですね……ふふっ!」


「ほっ……」



 レヴィナにちょっと笑われた。変な顔していなかったか心配だけど、無事に終わったからもういいや。



「楽しかったね、ランペッジさん!」


「何言ってるんだ! まだ次があるぞ!」


「わーーい!」



 そういえば怖すぎてフユナとランペッジさんのやり取りを見てる暇が無かったな。いや、それよりも……



「えっ? 次……?」


「うん。次はあれだよ!」



 フユナが指さす方には足が宙ぶらりんになるタイプの空中列車があった。



「そ、そういえばあんなのもあったっけ……」



 私は再び戦慄した。


 結局、あの後何回乗ったかは覚えていないが無事に終わったらしい。



「楽しかったーー!」


「もう一回だけ乗るか!?」



 空中列車好きが二人いるとこういうことになるのか。勉強になったな。



「ほ、ほら次は別のところに行こ? まだまだあそぶところはいっぱいあるんだしさ!」


「分かった、次の機会にとっとくね!」



 次の機会か……もう恐怖しかないな。



「次はどこに行くーー?」


「そうだね。次は安らぎの」


「あれにしましょう!」



 誰……? と思ったらレヴィナだった。初めてこんな元気な声聞いたな。



「珍しいねレヴィナ。何かいいのあった?」


「ちょいちょい……」


「うん……? ……あっ!?」



 次のアトラクションは『恐怖の樹』に決定。いわゆるお化け屋敷だ。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ここのお化け屋敷も一度来たことはあるとはいえ、私の苦手なジャンルなのは変わらない。


 薄暗い森。どこからお化けが出てくるか分からない恐怖。残念ながら前回のヒーローであるグロッタは空中列車の前でスフレベルグと逃亡したままだ。



「おぉ……雰囲気ありますね……」


「ほんとに思ってる? ねぇ、ほんとにそう思ってるの?」



 レヴィナの顔はかつてないほどに輝いていた。ネクロマンサーという立場上、こういったものには惹かれるのだろうか。


 そんなレヴィナの袖を掴みながら恐る恐る進む私は既に限界が近かった。



「ル、ルノ……絶対に手を離しちゃだめだよ……?」


「も、もちろんだよ。安心して」



 左手でレヴィナの袖を掴み、右手はフユナと繋ぐ。そんな形で進むこと数分。それは突然聞こえてきた。



「きゃあああ!?」


「うぎゃーー!? なにっ!?」



 聞こえてきたのは後からだった。振り返ってみるとランペッジさんが四つん這いになって頭を抱えていた。



「ちょっと、ランペッジさん! どこの女子ですか!?」


「び、びっくりした……」



 下手したらお化けより怖かった。レヴィナは冷ややかな目でランペッジさんを見ていた。



「い、いや……じつはこういうのは苦手でな。てへぺろ」


「全然かわいくない……」



 グロッタのような立ち位置を期待していたが駄目そうだ。



「うぅ……これはもうレヴィナしかいないよ……」



 そんな調子で中盤くらいに辿り着いた頃、見覚えのある場所に出た。これはあれだ……見渡しはいいけど、たまにある木の影にお化けが潜んでるやつ。



「こ、ここならまだ心の準備もできるな……」



 予想通り、木の影からちょろっとお化けが隠れているのが見えた。ふふん、ワンパターンめ!


 ところが。



「うっきゃーー!!?」


「うわっ!?」



 パタン……!


 またしても女子のような悲鳴。私達とは違って、ランペッジさんの心の準備は出来ていなかったらしい。



「気絶しちゃったよ……」


「ど、どうする? ルノ……」


「ふふ……お任せ下さい……」



 するとレヴィナがゾンビを呼び起こした。久しぶりにネクロマンサーの本領発揮だ。



「なんか今回は妙にマッチョだね」


「きっとこの辺りでマッチョの人が亡くなったのでしょう……」



 こうして、気絶したランペッジさんはマッチョなゾンビにズルズルと引きずられながら進んだ。うつ伏せのままだから顔が削れないか心配だな。



「なんだか急にお化けが出てこなくなりましたね……」


「た、確かに……」


「も、もしかしてこのゾンビの人にびっくりしてるんじゃない……?」



 ありえる。このマッチョなゾンビを見て近付こうと思う人はいないだろうな。



「あ、もう出口に着いてしまいましたね……」


「助かったぁ。今回はレヴィナ様々だったよ」


「レヴィナさん、カッコよかったよ!」


「そ、そうですか? ふふ……」



 私達の賞賛にレヴィナはとても嬉しそうにしていた。



「それならもう一回入りましょうか……? ふふふ……!」


「あら……変なスイッチ入っちゃった?」


「ルノ、なんとかしてーー!」



 その後、覚醒してしまったレヴィナをなだめて、なんとか二度目の突入を回避することに成功した。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ふぅ、やっと休憩できる……」



 ちょうどお昼の時間帯。『恐怖の樹』から出た私達はお昼ご飯のために『安らぎの樹』に来ていた。ある意味、私が一番来たかった場所だ。



「遅かったですな! ゲラゲラ!」


「ワタシはのんびりできて良かったですよ」


「あっ、出たな! 逃亡した恨みは忘れてないからね!」



 グロッタとスフレベルグも無事に合流した。あとは……



「あの、ランペッジさん? 大丈夫ですか?」


「あ、あぁ……」



 マッチョなゾンビに引きずられた結果、ランペッジさんのお顔はボロボロになっていました。本人は気絶してたので訳が分からない様子。さすがに可哀想なので回復の魔法をかけてあげた。



「さて、無事に全員合流できたしお昼にしようか」


「うん! お腹減ったーー!」



『安らぎの樹』にはいくつかお店もあって、お昼を食べられるようになっていた。ほとんどがロッキサンドのお店だが。



「前回は食事の樹で食べたからね。ここで食べるのは初めてだしちょうどいいや」



『安らぎの樹』は一面芝生になっていて休憩するにはもってこいだった。中央にはちょっとしたライブでもできそうな広場もある。



「んじゃ食べよっか!」



 人数分のロッキサンドとドリンクを購入して芝生の上に座る。なんだかピクニックに来たような気分になってくるな。



「「いただきまーす!」」



 外で食べるロッキサンド最高! 自宅のツリーハウスとちょっと似ているけど、一面芝生ってのも解放感があって良いね。



「午後もたくさん遊ぼうね!」


「あ、それじゃあ次は……」



 その時。中央の広場からアナウンスが聞こえてきた。



「さぁ、今から受付スタートです! 腕に覚えのある方はぜひ参加してみてくださいねーー!」



 何かのイベントだろうか?



「ルールは簡単。参加者同士、一対一で勝負して一本とった方が勝ち!」



 なんだかどこかで聞いたようなルールだな。



「ふっふっふっ。これはオレのためにあるようなイベントじゃないか」


「あ、いた。張本人」



 ロッキサンドを食べ終えたランペッジさんが勢いよく立ち上がった。もう食べちゃったのか。



「頑張ってください。私達はここで応援してますね」


「頑張ってね、ランペッジさん!」


「フッ、任せろ!」












 まさかのイベント発生。私達は見学する側なのでちょっとした余興くらいにしか思ってなかった。


 ランペッジさんが優勝するだろうとは思っていたがまさか決勝の相手が『あの人』だとは誰も想像もしていなかっただろう。


 ドンマイです。




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