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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第六十四話〜カラットのジュース② ルノ=フユナ〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の鍛冶屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。

 



 カランカランー!


 私達はサトリさんが働いているカフェにやって来た。久しぶりにカフェに来たかったというのもあるが一番の理由は遊ぶため。いろんな意味で。



「こんにちは、サトリちゃん☆」


「こ、こんにちはー」


「こんにちは……」


「お、フユナちゃんにルノちゃん、レヴィナさんも!」


「サトリ、遊びに来たぞー!」


「あれ? 珍しいですね。師匠とルノちゃん達が一緒に来るなんて」


「そんなことないぞ。なんたって私はルノちん達の親友だからな」


「きゃっ♡ カラットさん大好きっ☆」


「「……」」



 早くもフユナとレヴィナはついていけないみたいな顔をしている。



「ちょっと師匠! フユナちゃんは私の愛弟子なんですからね!」


「サトリちゃんも大好きだよっ! ちゅちゅちゅ!」


「こらこらーこんな所でだめだよ! 今日のフユナちゃんは積極的だなぁ。ふへ」



 私の強引な愛情表現でサトリさんがだらしない顔になっている。



「ほら、ル……フユナ。こんな所で話してたら邪魔になっちゃうからとりあえず座るよ」


「はぁーい!」



 という訳でお馴染みのテラス席へ向かう。ここまでけっこう自由にやってるのだが、バレる気配はなかった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「それにしても久しぶりだねぇ。また忘れ去られたのかと思ったよ」


「あ、それ私も思った。ルノちんは薄情なんだから……」


「そ、そんなことないよーですよー!」



 現在は開店してからすぐの時間帯なのでお客さんは私達のみ。当然サトリさんも私達の席で寛いでいる。


 私達はそれぞれコーヒーを注文。レヴィナは『いちごのロールケーキ・ホイップクリーム乗せ』も注文していた。



「お、レヴィちんはそれ好きなのか?」


「はい。食べてみます……?」



 そう言ってカラットさんにおすそ分けするレヴィナ。意外と相性がいいのか、早くも打ち解けている気がする。



「んじゃ一口もらおうかな。ばくっ!」


「あぁ……!?」


「うんうん……こりゃ美味いな! じろー……」


「も、もうだめですからね……!?」



 カラットさんの大きな一口。ホイップクリームを半分ほど持っていかれてレヴィナがショックを受けていた。



「ところでルノちゃん」


「「はい?」」


「え?」



 しまった。不意に話しかけられたからつい返事をしてしまった。



「ま、間違えちゃったー! てへぺろ☆」


「ははっ、おちゃめさんめ! このこの!」


「あ、やったなー! つんつん!」


「うぅ……!?」



 私とサトリさんがそんなやり取りを繰り広げているとフユナが見つめてきた。『なんでこれでバレないの? フユナはそんなキャラに思われてるの!?』と目で訴えてきている。



「どうしたの、ルノちゃん。今日は静かだね? いつもはもっとアホ……賑やかなのに」



 この人いまアホって言おうとしたぞ。いや、もはや言ってたけど。失礼な!



「そ、そんなことない……ですよー!」


「ふーん? あ、そういえば姉さんも会いたがってたよ。よかったら後で……」


「その必要はありませんよ」


「えっ!?」



 当然現れたお姉さんについ反応してしまった。心臓に悪いから急に湧いてこないでほしいな……



「皆さんお久しぶりですね」


「姉さん、厨房はいいの?」


「えぇ。いまはルノさん達しかいないから」



 うーむ……姉妹揃ってサボりとは。理由まで同じ。



「お姉さん。サボりは行けませんよ。めっ!☆」


「……」



 私はフユナの姿なのでいつもよりオープンで接する事ができた。



「フユナさん、あなた……じろー……」


「な、なんですか? そんなに見つめられた恥ずかしいですよー! つん!」


「ぐふっ!?」


「あ……」



 けっこうな威力でお姉さんの脇腹をつついてしまった。いや、大丈夫だ。今の私はフユナ……今の私はフユナ……!



 ガシッ……!



「え……?」


「フユナさん、私は残念です。あなたまでルノさんのようになってしまって……」



 メキメキ……!



「ぎゃあああ!? ごめんなさいごめんなさい!」



 お姉さんの相変わらずの威力で私はフユナらしからぬ悲鳴をあげてしまう。



「ぷっ! くすくす!」



 そんな私の姿を見てフユナがとても楽しそうにしていた。くぅ、こんなはずじゃ……




 すると、思わぬ救世主が。



「おいおい、私のフユナちゃんになんてことするんだ」


「カラット。あなた、また下らないことを……」


「あぁん? 勝負すっか? お? お?」


「ギンッ!」



 などと言って二人は火花を散らし始めた。何この展開……深い因縁でもあるのだろうか。


 私、フユナ、レヴィナ、カラットさん、サトリさん、お姉さんが集まり、まるで身内の飲み会みたいになってしまった。静かな空気が売りのカフェだったのになぁ。






 それからどのくらい経っただろうか。カフェには徐々にお客さんが増えてきた。どうやらそろそろお昼の時間になるようだ。



「さて、それじゃわたし達はそろそろ仕事に戻るよ」


「うんっ、頑張ってねサトリちゃん☆」



 サトリさんとお姉さんが仕事に戻ろうと席を立つ。んじゃ私達も帰るか。



 なんて思っていると。



「では、ルノさん。またいらしてくださいね?」


「……?」



 お姉さんが私の肩に手を置いてにこやかに言ってきた。



「え、えー? お姉さん、ルノはそっち! 私はフユナだよっ☆」


「ルノさん」


「……きゃぴ☆」


「とぼけても無駄ですよ」



 メキッ……!




 カラットさんとの勝負に勝ったお姉さんによって私の悪巧みはすべてバレてしまった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 カフェからの帰り道。



「うぅ……頭がいたい……」


「ルノが調子に乗るからだよー!」


「ふんふふーん♪」



 カラットさんとはカフェを出たところでお別れした。薬の効果は一晩寝れば切れるとのことらしいので、特に問題はない。



「ところで、随分とご機嫌だね。レヴィナ?」


「ふふっ……これ、カラットさんがお土産にって買ってくれたんです」



 レヴィナが自慢げに見せてきたのはお土産用に包まれた『いちごのロールケーキ・ホイップクリーム乗せ』だった。大きな一口の件、罪悪感があったのだろうか。



「あとでみんなで食べましょう……!」



 まぁ、レヴィナにこんなに喜んでもらえたのだからカラットさんも本望だろう。



「それにしても、お姉さんは鋭いね。あれはきっと最初から異変に気付いてたよ。『じろー……』って言ってたもん」


「ふふっ、これからはお姉さんの前じゃ下手な事出来ないね?」


「はは、ほんとだね」




 そんなこんなで、私達の身体は一晩寝てすっかり元通りになった。


 とは言っても、カラットさんにもらったジュースはまだ残ってるのでまたいつでも入れ替わることは可能だ。





 ちなみに。




 元に戻った時、私が頭を握り潰されたダメージが残っていてフユナは一日中頭痛に苦しんでしまったのでした。


 ごめんね、フユナ☆




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