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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第六十三話〜カラットのジュース① 鍛冶師の差し入れ〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の鍛冶屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。

 



「ルノちん、久しぶりー!」



 ある日の朝。突然そんな元気な声が我が家の玄関から響いてきた。



「ほんとに久しぶりですね。バーベキュー以来ですか?」


「そうそう。まったく……ルノちんもフユナちゃんも全然遊びに来てくれないんだから……」



 そう言って若干不貞腐れているこの人はカラットさん。



「はは……すいません。なんだかんだで毎日何かしら予定が……のんびりしたり」


「ごめんね。カラットさん」



 実際はそこまで不貞腐れている訳ではないカラットさんがケロッといつもの表情に戻って聞いてきた。



「ところでそちらのお嬢さんは?」


「ひぇ……」



 そうか、レヴィナとカラットさんは今日が初対面か。



「実は、あれこれぺらぺら……という訳で我が家の一員に加わったレヴィナです」


「よ、よろしくお願いします……」


「なるほど。よろしくな、レヴィちん!」


「レ、レヴィちん……!?」



 懐かしい。私もカラットさんと初めて話した時は同じような反応だったっけ。



「ところで今日はどうしたんですか? ただ遊びに来ただけでも大歓迎ですけど」


「ふっふっふっ……今日はルノちん一家にプレゼントを持ってきたのさ」


「プレゼント? 新作のネタ装備でも完成したんですか?」


「あ、それは今度な」



 冗談半分で聞いてみたらほんとに新作があるみたいだ。



「今日は……ホラ! 私の手作りジュースを持ってきてあげたぞ!」



 ガチャン! と、数本のビンが入った箱を差し出してくるカラットさん。



「え、いらないです」


「ひどすぎる!」


「えぇー、だってこれ……なんだか怪しくないですか?」



 カラットさんの言う手作りジュースは妙な色をしている。具体的には紫色。ぶどうジュースだと言われたらそれでおしまいだけど、入れ物もよく分からないビンだし……



「安心してくれよ。私がルノちん達に毒を盛るわけないだろ?」


「そうですね。疑ったりしてすいません」



 という訳でお茶も兼ねて頂いたジュースを飲むことにした。フユナとレヴィナも加わって四人でテーブルを囲む。



「んぐんぐ……あ、なかなか美味しいですね」


「だろだろー?」



 口には出さないておいたが毒味的な意味も兼ねて私は一番に飲んでみた。うん、問題無し。



「いただきます、カラットさん!」


「おう、どうぞどうぞ! ……ニヤ」


「ん?」



 カラットさんが怪しい顔をした気がするけど……



「美味しー!」


「だろー? さすが、分かってるね!」



 カラットさんが実に嬉しそうだ。『やったぜ!』みたいな顔までしている。やったぜ……?



「ん……あ……?」



 フユナとカラットさんのやり取りを見ていたら突然……プツリと私の意識は途絶えてしまった。


 



 数分後。


 誰かの話し声で私は目を覚ました。なんで寝てたんだっけ……?



「うぅーん……あれ?」


「あ、ルノ……お、おはよう……」


「くっくっ……!」



 カラットさんがお腹を抱えて笑っている。そして……なんで私が目の前にいるの? しかも自分で自分におはよう言ってるし。



「???」


「えーっと……えーっと……! こっち来て!」


「うわわっ!?」



 なんで私は私に持ち運ばれてんの? そして何故に今、鏡でファッションチェック?



「これがルノ」


「うん、分かるよ。あれ? あー、あー」



 おかしいな? 私はちゃんといるけど喋ってる人物が噛み合ってないぞ。



「フユナ?」


「はい」


「私、ルノだよ」


「う、うん」



 んん……!?



「右手上げてみて?」



 私が右手を上げた。



「じゃあ、ルノは左手上げて」


「うん、はい」



 フユナが左手を上げた。



「「……」」



 オワタ。


 私とフユナの身体が入れ替わっていた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「はっはっはっ! 安心してくれよ、一晩寝れば元に戻るからさ!」



「毒は盛らないって言ってたのに……」


「もちろん毒じゃないぞ。これは私の立派な商品だ! (キリッ)」


「……」


 私は呆れ返って何も言えない。



「まぁ、身体に害は無いのが唯一の救いですね」


「そうそう! この際、楽しんだ方がお得だぞ?」



 まったく……盛った本人が何を言ってるんだか。



「でもたしかに……ふふ……」



 私は鏡の前に行って改めて自分の姿を見る。うむ、間違いなくフユナだ。かわいい。



「ル、ルノ……何してるの?」


「何言ってるの、ルノ?」


「え?」



 私はスイッチが入ってしまった。遊びだと割り切ればこうも楽しい事はないだろう。



「私は……ううん。フユナはフユナだよ!」


「えぇーー!?」


「あっはっはっはっ!」


「ふふっ……どっちがどっちだかわかりませんね……」



 おぉ、ウケたみたいだ。カラットさんもレヴィナも実に楽しそうだ。



「ちょ、ちょっとルノ! ややこしい事しないでよー!」


「何言ってルノ、ルノ? なんちゃって☆」


「う、うぅ……!」



 フユナが恥ずかしさで真っ赤になってしまった。外見は私だけど。



「ふふ……これは意外にいいものかもしれない」



 私はカラットさんがくれたジュースを手に取って黒い微笑みを浮かべる。



「ふっふっふっ! ようやくこの薬の凄さが分かってくれたか!」


「はい! てか、もはやジュースとすら言ってくれなくなりましたね」


「カラットさんのばかー!」


「おいおい、ばかはひどいじゃないかルノちん!」


「そうだよ、ルノ! きゃぴ☆」


「うぅー!?」



 すっかり調子に乗っている私とカラットさん。フユナには悪いけど、もう楽しませてもらう!



「あ、そうだ。せっかくなのでカフェにでも行きません?」


「お、いいね! ちょっくらサトリをからかいに行くか!」


「えぇ……」


「ルノさん……そのまま行くんですか?」


「もちろんだよ。レヴィナも行くでしょ?」


「は、はい……それじゃあ……」



 そういう訳でいざ!サトリさんのカフェにレッツゴー!



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おや、出かけるのですか?」



 玄関を出た私達を見てグロッタが尋ねてきた。


「ちょっとサトリさんのカフェにね。グロッタも行く?」


「は、はぁ……?」



 あ、そうか。今はフユナの姿だから戸惑うのも無理ないよね。よし……



「グロッタは今日もイケイケだね! フユナ、キュンキュンしちゃう☆」


「ぐふふ……ま、まぁ当然ですな!」



 グロッタがちょっと下衆い顔で嬉しそうにしている。



「ちょっとルノ! そんなのフユナじゃないよー! グロッタもそんなので騙されないで!」


「もう。どうしたの、ルノ?」


「ヤキモチですかな、ルノ様! ゲラゲラ!」


「もうっ! ……!」


「ん?」



 なんだろう。フユナまで下衆い顔になったぞ?



「ねぇ、グロッタ?」


「なんです、ルノ様?」


「好き♡」


「んなっ!?」



 グロッタが氷漬けになったかのように固まってしまった。なんか傷付くんですけど……



 こうして一通りグロッタをからかったところでタネ明かし。私やフユナだとややこしくなるのでカラットさんに説明してもらった。



「また貴様は余計な事を……」


「ははっ! でもイケイケとか好きとか言われて、まんざらでもなかっただろ?」


「ぐぅ……!?」



 グロッタが痛い所を突かれたみたいな反応をしているが顔はものすごくニヤニヤしていた。



「という訳だからこれからカフェに行ってくるよ」


「分かりました。わたくしは留守番しています」


「よろしくね、グロッタ!」


「は、はい! ルノ様!」


「それフユナね」


 なんだかフユナに対する返事に妙な熱が入ってる気がするな。中身がフユナだと分かったからかな。うん、そうに違いない。




 村までの道中では、新たなる発見があった。



「おぉ、なんだかいつもより速く動ける気がする!」


「フユナもなんだか魔力がいつもの何倍もあるような……」


「なんだか楽しそうですね……」



 私達はお互いのスペックに驚いていた。それを見たレヴィナもちょっと羨ましそうにしている。もういっその事、このままでもいい気がしてきたな。



「みんな、着いたぞー!」



 私達がはしゃいでいるとあっという間に村に着いた。なんだか全てが新鮮に見える。



「なんだかカフェに来るのも久しぶりだなぁ。ね、ルノ?」


「そ、そうだね。フ、フユナ……」



 ぎこちないながらもこちらに合わせてくれるフユナ。どうやら私達の茶番に付き合ってくれるみたいだ。




 ある意味、今日が初めてのカフェ。


 いつもとは違う姿というのもあってすごくテンションが上がってきた。私達の顔を見たサトリさんがどんな反応をするか楽しみだ。




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