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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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五十六話〜透明になってみた〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の鍛冶屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。

 



 コンゴウセキスライムが私の使い魔となったあの日から数日後。


 私は朝からリビングのテーブルでコーヒーを飲みながらコンゴウセキスライムを転がしていた。



「コロコロ……」


「和むなぁ……」


「コロコロ……」


「……」



 どっかで流行ったハンド〇ピナーとやらみたいに、目の前にあるとつい触ってしまう。あれ、私は触ったこと無いけど。



「というか『コンゴウセキスライム』だと長くて呼びにくいから……」


「コロコロ……」


「きみはこれから『コロリン』ね」


「コロリン……」



 名前をつけたら心なしか転がり方が変わった気がする。



「ふふ。可愛いなぁ」


「コロリン……」


「……」



 癖なる……が、そろそろ朝ごはんを作らなければいけない。フユナとレヴィナもそろそろ起きてくる頃だろう。



「んじゃ、そろそろコロリンは戻ってね。ほいっと……」



 魔法陣が発動して、使い魔・コロリンは私の周りを漂い始める。



「さーて、今日の朝ごはんは(も)ルノサンドにしようかな」



 こうして今日も何気ない一日が始まった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 私は起床した二人に改めて、使い魔・コロリンを紹介した。



「「「ごちそうさまでした!」」」



 そして、私達は朝ごはんを食べ休憩中。ソファーでぼーっとする者。本を読む者。コーヒーを飲む者。私は……



「ぽけー……」



 ぼーっとする者。……に見えるかもしれないがちゃんと考え事をしている最中だ。



「ふむ……」



 グロッタや、スフレベルグに描いた魔法陣『危害を加えようとすると氷漬け』


 コロリンに描いた魔法陣『描いた者の周りを漂う』



「これはきっと何でもありだな」



 という訳で。



「えーっと、透明透明……」



 私は自分の手の甲に『透明になる』をイメージして魔法陣を描いた。

 普通に魔法でいいじゃん。と思うかもしれないが、そこはまぁ……ネタということで。



「よし、できた。発動……っと」



 魔法陣が輝きを増した。成功か?


 私は本を読むフユナ。そしてコーヒーを飲むレヴィナの方を見てみるが特に反応はなし。爆発した訳じゃないし当たり前か。



「とりあえず……」



 試しに立ち上がってみる……反応なし。フユナに近寄ってみる……反応なし。



「ふっふっふっ……」



 レヴィナに近寄って、耳に息を吹きかけてみる。



「ひゃあーー!?」


「ぷっ! ふふっ……!」



 反応あり。



「ど、どうしたの……レヴィナさん? ……あれ?」


「え? い、いえ……なんか耳にふーって……!?」



 どうやら成功しているみたいだ。私は一旦、元いたソファーまで戻って魔法陣を一時停止。何気ない顔で会話に加わる。



「なんだろう。幽霊とか?」


「じろー……」


「ひぇ……変な事言わないでくださいよ……」


「てへぺろ」



 これは面白そうだ。せっかくなのでこれで家族を観察してみよう。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 私は外に出てグロッタの小屋の前にやって来た。どうやらスフレベルグも一緒のようだ。



「やっぱりあの二人、仲がいいなぁ」



 そんな事を思いながら再び魔法陣を発動させる。そのまま近くに行ってみると何やら話していた。



「ところでスフレベルグよ」


「なんですか?」


「ここ最近、またしても我々の出番が減ってきてないか?」


「そうですか? ワタシはこの前登場しましたし、グロッタだって髭を抜かれてたじゃないですか」


「うぐ! できればもっとこう……勇敢な姿をだな……」



 グロッタとスフレベルグがそんな事をぼやいていた。安心したまえ、今まさに君たちが主役なのだよ。



「これもルノ様がニートなのがいけないのだ。この前も家の中で何やら楽しそうにしてたし! 羨ましい!」


「あぁ、何やらコンゴウセキスライムと戯れていましたね。ニートのルノにとっては最高の暇つぶしになったのでしょう」



 なんだかひどい言われようだった。そもそも私はニートじゃない!



「ん?」


「どうした、スフレベルグよ」


「じろー……」


「む? じろー……」





「ご、ごくっ……」



 え……バレた? いや、バレてるなら普通に声掛けてくるはず。


 すると突然。



「それにしてもルノ様はアホだな!」


「そうですね」



「!?」



「この前、サトリにイタズラをしてバレた時などもう面白くて面白くて……ゲラゲラ!」


「えぇ、まさにアホキャラでしたね。ふふ」



 なんだなんだ!? 急に私がディスられ始めたぞ。アホキャラアホキャラってひどすぎる!



「まぁ、でも」


「ん?」


「こうして、この場所で暮らすようになってからは幸せそのものだな」


「ふふ、そうですね。ルノもあれでワタシ達のことはちゃんと考えてくれてますからね」



 おぉ、今度はべた褒め。嬉しくてちょっと涙が出てきた。



「アホキャラだけどな。ゲラゲラ!」


「アホキャラですね。ふふ」





「……」



 やっぱりひどすぎる!



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 グロッタとスフレベルグの本音を聞けた私は再びリビングへやってきた。フユナとレヴィナがソファーに仲良く座って本を読んでいる。



「このシーンかっこいいよね。サトりんが兄弟子から一本取るシーン」


「あのスピード感のある戦い方は兄弟子の影響だったんですね。かっこいい……」



 私は透明のままソファーの背もたれまで回り込み、本を読む二人を覗き込む。


 移動中、フユナがこっちを見ている気がしたが気のせいだろう。話しかけてこないもん。



「レヴィナさん。休憩にしよ」


「はい、そうですね……」



 そう言ってフユナは本を閉じると後ろをチラ見。そして『んー!』と勢い良く伸びをする。その際、手に持った本が狙いすましたかのように『ゴチン!』と何かに当たった。



「うぎゃ!?」



 まぁ、私の頭なんだが。



「ルノ、そこにいるんでしょー?」


「え、ルノさん……?」


「……」


「ルノー!」



 フユナが見えているかのように本でバシバシと叩いてくる。



「いる! いるから!」



 私はたまらず透明化の魔法陣を解く。おかしいな……発動してるはずなのに。



「な、なんで分かったの?」


「だってほら」



 フユナがちょんっと私の使い魔・コロリンを突っついてきた。



「え、どういう事?」


「コロリンが丸見えだよ」


「はっ……!?」



 私自身は確かに透明になっていたが、コロリンがそのまま私の周りを漂っていた。そういう事だった。



「その魔法はもう禁止ね!」


「はーい……」



 こうして、思いつきで始まった私の悪巧みはあっけなく終わりを告げた。









 ちなみに後から聞いた話だけど、グロッタとスフレベルグも同じ理由で私の存在に気付いていたらしい。あのディスりはそういう事か。そういう事だよね……?


 少しだけ不安になった私でした。


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