第五十四話〜氷の魔女のスローライフ?〜
〜〜登場人物〜〜
ルノ (氷の魔女)
物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。
サトリ (風の魔女・風の双剣使い)
ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。
フユナ (氷のスライム)
氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。
カラット (炎の魔女・鍛冶師)
村の鍛冶屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。
グロッタ (フェンリル)
とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。
ランペッジ (雷の双剣使い)
ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。
スフレベルグ (フレスベルグ)
白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。
レヴィナ (ネクロマンサー)
劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。
突然押し掛けてきて、家族になると言い出したお子ちゃま看板娘・サトリさん。
現在は、そのサトリさんが作ってくれたお昼ご飯をツリーハウスで頂いているところだ。もちろん家族全員で。
「流石ですね、サトリさん」
「美味しいよ、サトリちゃん!」
「最高です……」
全員がサトリさんの料理をべた褒め。サンドイッチやサラダ、スープなど。特別な料理ではないが、一つ一つの質がとても高い。
「おい、スフレベルグ! 食いすぎだぞ!」
「何を言ってるんですか。食事なんだから食べなきゃ意味ありません。ムシャムシャ!」
「こしゃくな! ガツガツ!」
グロッタとスフレベルグに関してはもはや獣と化している。元からだが。
「こんなに喜んでくれるなら作ったかいがあったよ」
「良かったらこれからも作ってください。……作るだけ」
サトリさんが一瞬、期待するような目をしてきたので一応釘を刺しておく。明日には帰るノリのくせに……
「まぁ、いたいなら好きなだけいてもいいんですけどね」
「え、ルノちゃんなんか言った?」
「いえ、お気になさらず」
なんだかんだでサトリさんとも長い付き合いだ。無下にはできまい。
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私達は、特にやることも無いのでテラスのテーブルでのんびりしていた。
「ねぇ、ルノちゃん。暇だからどっか行こうよ」
「えー。私はここでのんびりしてるのでどうぞお好きなように」
「ちょっと! さっきまでの天使なルノちゃんはどこに行ったのさ!」
「天に召されました」
どっか行こうと言われても……どこに? サトリさんは状況が状況だからカフェは無理。カラットさんの武器屋は……なんか違う。となると……
「じゃあ温泉でも行きますか?」
「えー、今は温泉はいいや。ルノちゃんだけで行っておいで」
「まったく……せっかく私が考え抜いたプランなのに」
「うーん、こうして考えてみるとあの村って遊べるところが少ないよね」
「小さな村ですからね」
「……」
「……」
それからしばらく沈黙が続いた。だが別に気まずい訳じゃない。元々、今日はのんびりする日だ。
「ぽけー」
「うとうと……」
サトリさんが寝そうになっている。カフェの仕事で疲れているのだろうか。
「けど何だろう。この姿を見ると無性にイタズラしたくなる……そうだ」
一度やったネタだが、またくすぐってやろうっと。ふふふ……
私はプランを固めてからスフレベルグの元へ行った。
「ねぇ、スフレベルグ」
「なんですか?」
スフレベルグはツリーハウスの屋根の上にいた。その下にはグロッタもいる。この二人、何気に仲良いな。
「さっきくれた羽より長いやつってある?」
「ふむ……残念ながらさっきのが最長ですよ。グロッタの髭なんてどうですか?」
「んー?」
グロッタの髭か。見てみるとやけに長い髭が一本だけある。いい感じかも。
「おーい、グロッタ。なんでその髭だけ長いの?」
「これはある日突然生えてきました。なので育てているんです!」
「ふーん?」
あれかな? たまに身体のどこかに長い毛が一本生えるみたいなやつ。
「それ、ちょうだい」
「!?」
「あっ、めっちゃ警戒してる」
「だ、だから言ってるでしょう! 育ててるんです!」
「そんなおじさんくさいこと言わないでさ。ぐい」
「あっ!? 引っ張らないでください!」
「ちょっと触らてせよー」
「は……ふぇ……!?」
「ん?」
「ぶえっくしょん! ……プチ」
髭をいじっていたらグロッタが大きなくしゃみをした。とっさに横を向いてくれたのは素直に褒めておこう。
「てか、なんか変な音がしたね」
「あっ!?」
「どうしたの? ……あ」
「……」
くしゃみの時に横を向いた勢いで私がいじっていた髭が抜けてしまった。
「あの……グロッタ? 髭、ありがとね? てへぺろ」
「……」
グロッタが白い灰になっているみたいだ。これは後で返してあげよう。
「けどこれで……ふふふ」
私は異常に長い髭を持って、熟睡中のサトリさんの元へ戻った。
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「すやー」
「……」
テーブルに戻るとサトリさんはさっきよりも深い眠りについていた。
「ふふふ……隙だらけですよ、サトリさん」
その時。
「ルノ、何してるの?」
「……」
フユナとレヴィナがやって来た。相変わらずレヴィナはイタズラしたそうな顔でサトリさんを見ている。やはりドSキャラ確定か。
「そうだ。三人でカードめくりでもしようか?」
「うん、やるやるー!」
「いいですね……」
「ふふふ。最後まで残った人は罰ゲームが待ってるよ」
「「え……?」」
私の言葉に二人は不安そうな顔を浮かべる。だけど私はもう決めたのだ!
「負けた人はこれでサトリさんをくすぐる!」
「「おー!」」
二人が笑顔になった。レヴィナはなんとなくそうなるだろうなとは思っていたがフユナもか。そういえば、氷漬けのサトリさんをくすぐってた時も楽しそうだったもんな。
そういう訳でゲームスタート。
カードめくりは得意なので正直、負けないだろうなとは思っていた。しかし……
「そ、そんな……!?」
「やったー!」
「ルノさんが罰ゲームですね。ふふふ……」
一発目で負けた。腹黒いことを考えていたからバチが当たったのだろうか。
「まぁ、いっか。元々やろうとしてたし。ふふふ」
では、お待ちかねのイタズラタイムだ。
「ふっふっふっ。実はバレないように作戦は考えてあるんだよね。こちょこちょー」
私は髭の先端でサトリさんの鼻をくすぐる。すると朝と同じような反応が返ってきた。
「はっ……ふぇ……!」
「ぷっ、くすくす!」
「ふふっ……!」
フユナとレヴィナが必死に笑いを堪えている。
「よーし、とどめだ。こちょこちょ!」
「ふぇっくしょん!?」
サトリさんくしゃみと同時に勢いよく起き上がった。私はというと……
「すやー」
寝たフリ。これが作戦。
「な、なにっ……!? ふぇっくしょん! 鼻がムズムズする……」
「すやー」
「……」
私には見えないが、どうやらフユナとレヴィナの目が全てを語っていたらしい。しかもイタズラに使った髭が長すぎて丸見え。そこまで考えてなかった……
「ふ……ふふ……ルノちゃん?」
「す、すやーーすややーー!?」
「……フユナちゃん。レヴィナさん。ちょっと手伝って? (ニコッ)」
「「はい……」」
その後。
「あはっ! あはははっ!? ゲラゲラ!」
私はフユナとレヴィナに押さえつけられて、サトリさんの気が済むまでくすぐられ続けたのでした。
ちなみに。
あの異常に長い髭は、用が済んだ後グロッタの頭に植え直しておきました。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
『☆氷の魔女のスローライフ☆』を書き始めて今日でちょうど一ヶ月が経ちました。
まだ一ヶ月。なんて思いもしますが、こうして物語を書いていると一年くらい経っていると錯覚してしまいそうです。少しは成長したかな?
これからも気ままに更新していくので『☆氷の魔女のスローライフ☆』をよろしくお願いします!
にゃんたこ(*ΦωΦ*)