第五十二話〜つんつん大鷲・スフレベルグ〜
〜〜登場人物〜〜
ルノ (氷の魔女)
物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。
サトリ (風の魔女・風の双剣使い)
ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。
フユナ (氷のスライム)
氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。
カラット (炎の魔女・鍛冶師)
村の鍛冶屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。
グロッタ (フェンリル)
とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。
ランペッジ (雷の双剣使い)
ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。
スフレベルグ (フレスベルグ)
白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。
レヴィナ (ネクロマンサー)
劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気をしている。
ある日の昼過ぎ。
私はのんびりくつろごうと思い、フユナとレヴィナと共にツリーハウスにやって来た。
「なんだかここに来るのも久しぶりな気がするなぁ」
「スフレベルグ元気にしてるかな?」
「ここ、いい所ですね……」
そういえば、最近スフレベルグの出番が少なかった気がする。ついでにグロッタも。予測変換で名前が出てこないくらいに。
「きっと元気にしてるよ。ほら、いるいる」
「やっほー! スフレベルグ」
「つーん……」
「あれ……?」
「おや、ルノ様にフユナ様。それに幸薄……レヴィナ」
久しぶりに会ったら何だか様子がおかしいぞ。何故かグロッタもいるから聞いてみるか。
「つーん……つーん……」
「ねぇ、グロッタ。スフレベルグはどうしちゃったの? つんつん言って微動だにしないんだけど……壊れちゃったの?」
「スフレベルグは現在、いじけているのです!」
「え、なんで?」
「簡単です。ルノ様がここ最近ツリーハウスに来なかったからですぞ」
「あぁ、そっか。でもグロッタは普通だね」
「ふっふっふっ。わたくしはこれでも四十七話に出ていますので! ちなみにスフレベルグが最後に出てきたのは四十五話。それもちょびっとだけです! ゲラゲラ!」
「つーん……ツンツンツンツンッ!」
「ぎゃあああ!?」
うむ、グロッタは相変わらずでとりあえず一安心。
でも……なるほど。スフレベルグには悪いことしちゃったかな。ちょっと放ったらかしにしちゃってたかも。
「おーい、スフレベルグ?」
「つーん……」
「スフレベルグー?」
「つーん……つーん……」
「あの、スフレベルグさん……?」
「つーん……つーん……つーん……」
私・フユナ・レヴィナが話しかけてみたが返ってくるのはこの反応ばかり。なので、私はちょっと悪ふざけをしてみた。これってもしかして……
「おーい」
「つーん……×4」
「スフレベルグ」
「つーん……×5」
「ねぇったら」
「つーん……×6」
そして、数分後。
「ねぇねぇ、聞いてるー?」
「つーん……つーん………つーん……つーん……つーん……つーん……つーん……つーん……つーん……つーん……」
「ぷぷっ! ……おーい!」
「つーん……つーん……つーん……ルノ?」
お、ついに喋ってくれたぞ。
「うん?」
「ワタシで遊んでいるでしょう」
「うん。つんつん言ってて面白いからいつまで続くかなぁって」
「はぁ……」
「ふふっ、楽しかったでしょ?」
「たった今飽きてしまったところです」
どうやらスフレベルグも遊んでいた(?)みたいだ。まったく……可愛いやつめ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それからは当初の目的どおり、ツリーハウスにあるテラスでゆっくりした。
「でね、ここのシーンで友達になったのがすごい感動でー!」
「分かります……こういうの憧れちゃいます……!」
フユナとレヴィナは本の話題で盛り上がってるみたいだ。共通の話題があるっていいよね。
「ふぁ……なんだか眠くなってきちゃったな」
「ルノ。そんなところで寝ないでくださいね?」
「あはは、気持ちよくて……」
今の私はスフレベルグの背中の上にいる。まるで羽毛布団で寝ているかのようだ。
「こうして家族みんなでゆっくりするのも久しぶりだなぁ……これなら毎日来てもいいかも」
「寝るためにですか?」
「違うよ。またスフレベルグとつんつん耐久レースをするため。あとはこうしてコミュニケーションをとるためかな。(きりり……)」
「寝そうな声で何を言っているのですか……」
「すやー……」
「……」
私は寝てしまった。
「はぁ、まったく……」
「ふっふっふっ。スフレベルグよ、無理するな」
「何のことです?」
「久しぶりにルノ様達に会えて嬉しいのだろう?」
「つーん……」
「ゲラゲラ!」
そんな声が私にも聞こえたような気がした。これからはもっとこういう時間を増やしていこうかな。
「これこそ、まさに……スローライフ……むにゃ……」