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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第五十話〜変わらない愛情〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の鍛冶屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気をしている。

 



 ある日の事。



「行ってきまーす!」


「あんまり遅くならないようにねー!」





 またある日の事。



「行ってきまーす!」


「暗くなる前には帰ってきてねー!」




 そして、本日。


「行ってきまーす!」


「気をつけてねー!」



 私はいつも通りを演じて動揺を隠す。



「……」



 フユナが出掛けて静かになった我が家。リビングには私とレヴィナが残されている。



「……」


「ふむ……ふむ……ふふっ……!」



 レヴィナは読書中らしい。フユナに借りた本『双剣使い・サトりんのワクワク冒険記』を私の隣の席で読んでいる。



「……ふふっ!」



 チラッとレヴィナの様子を伺ってみる。実に楽しそうだ。初対面の時に受けた幸薄そうな印象はどこへやら。



「レヴィナ……それ楽しい?」


「え? はい……とても面白いですよ?」


「ふーん……」


「……?」



 そうしてまた読者へと戻るレヴィナ。ふむ……どうしようか。やはりここはレヴィナに。



「レヴィナ」


「はい……?」


「フユナがヤンキーになったかも」


「え……?」



 私は、そんな根も葉もない不安をレヴィナに打ち明けた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 リビングに沈黙が流れる。私自身も先の言葉を考えていなかったし、レヴィナにしたって突然こんな事を相談されても意味がわからないだろう。



「ど、どういう事ですか……?」



 レヴィナの方から沈黙を破ってくれた。



「ここ最近、フユナの外出が増えたような気がしてさ」


「そ、そうですね……」


「もしかして、変な(ランペッジ)に引っかかったりしてるのかな?」


「う、うーん……フユナさんも年頃の女の子ですし外出くらいは……」


「年頃の……!?」


「い、いえ……! 変な意味ではなくて……外に遊びに行くことくらいなんでもないのでは?」


「だといいんだけど……」


「フユナさんが帰ってきたらそれとなく聞いてみてはいかがですか……?」


「うん……そうだよね。それが一番手っ取り早いか」



 という訳でフユナの帰宅を待つこと六時間。



「あれ……ルノさん? ずっと待ってたんですか……?」



 レヴィナがちょっと引いていた。

 私はあれからずっとリビングのテーブルで不安に苛まれていた。だって……気になって気になって!


 すると。



「ただいまー!」


「フユナッ!?」


「ひぇ!?」



 私はフユナの声と共にガバッと勢いよく立ち上がる。レヴィナを驚かせてしまったが今は仕方ない。



「ルノ? 何して……」


「フユナぁ! おかえりー! ちゅちゅちゅ!」


「わわっ! ど、どうしたの!?」


「なんでもないよ……フユナが無事なだけで私はっ……!」


「???」


「フユナ……もし外出先で変な(ランペッジ)に絡まれたりしたら私に言うんだよ? 欠片も残さず消し去ってあげるからね……」


「うん……? わかった」



 結局その日はフユナが帰ってきたことに感動してご馳走を作って終わってしまった。




 そして次の日。



「フユナ。今日は村に行こうか」


「うん、行く行くー!」



 今日はフユナも暇みたいだったので私から誘ってみた。単純に一緒に出掛けたいのと、あとはフユナがここ最近、出掛けるようになったきっかけを知るためだ。



 村までも道程にて。



「それにしてもこうして二人きりで出かけるのも久しぶりな気がするね」


「そう? この前、一緒にカフェ行ったりアイスの材料買いに行ったりしたよ」


「あ、そう言えばそうだね。手作りアイス美味しかったよね」


「うん! ランペッジさんがあんなにアイス作るの上手なんてびっくりしたなー」


「!?」



 まさか変な(ランペッジ)に引っかかってるかと心配してたらまさかのランペッジさん!? まさかアイスにつられてしまったのか!?


 なんて考えていると村に着いてしまった。



「ルノーどこ行くー?」


「あ、そうだね。また温泉にでも……」


「おや? ルノさんにフユナちゃんじゃないか」



 出たな!ランペッジめっ!



「ギンッ!!」



 私はお姉さんばりの目付きで睨み返してしまった。しかし目の前では……



「こんにちは、ランペッジさん!」


「おー! 今日はお出かけか?」



 何これ!? いつの間にこんなに親しくなってるの! まさかほんとにアイス作りの姿に惚れて……!?



「ねぇねぇ、次も来てくれるの?」


「明日だろう? もちろん行くさ」


「えぇ!?」



 う、うそでしょ……!? 私がいるのに目の前でデートの約束とか……! もうそんなにオープンな関係にまで発展してるの!?



「そ、そんなぁ……」



 ガク……



 私はその場に膝まづいてしまった。終わった……もうオワタ……



「んじゃ、オレはもう行くけど。また明日なー」


「うん、バイバイ」


「……」



 二人はそんな会話を交わしてにこやかに別れていった。私は当然、抜け殻のようになって……



「あれ、ルノ? おーい」


「ぽかーん……」



 もはやその後の記憶はほとんど残っていなかった。その日、ただ何となくフユナと温泉に行ってひたすらぽかーんとしていた事だけは確かだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ついにフユナとランペッジさんのデート(?)の日がやって来てしまった。



「行ってきまーす!」


「い、行ってらっしゃい……」



 私は朝から生ける屍と化していた。レヴィナが呼び起こしたゾンビと言われても不思議じゃないくらいに。



「仕方ないか……二人が決めたことだもんね……応援してあげよう……」



 そんな呟きがリビングに響いたが……



「やっぱり見に行こう」



 あくまで見に行くだけ。それだけだ。もう応援すると決めたのだ。



 そうしてやってきたのはいつかフユナとサトリさんが特訓していた場所だった。



「こんな山の中で一体何を……ぐぐ!」



 現在、私は茂みに隠れて二人の様子を眺めていた。何やら二人は少しの距離を置いて向かい合っている。



「まさかあれは……」


「プロポーズですな」


「ひぇ!?」



 突然の声に振り向くとグロッタがいた。



「もう、びっくりさせないでよ。いつの間に着いてきたの?」


「ふっふっふっ。わたくしも気になってしまいましてな」


「ふーん……」



 まぁ、いいか。この際仲間がいた方が安心する。


 と、思ったのも束の間。ついに二人が一歩踏み出した。だめだ……やっぱり耐えられない!


 そして私が飛び出そうとした時。



「ルノちゃん? それにグロッタも。そんな所で何してんの?」


「「ビクッ!?」」



 そこにはサトリさんがいた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 私とグロッタの尾行はサトリさんにバレてしまい、そのままフユナとランペッジさんに合流した。



「ぶっ! あはは! じゃあ何、ルノちゃんはフユナちゃんとランペッジさんが付き合ってると思ってたの?」


「ま、まぁ……」



 私は尾行していた理由を全部話していた。そしたらこのような反応が返ってきた訳だ。



「アホだなぁ、ルノちゃんは。ランペッジさんにはただ特訓に付き合ってもらってただけだよ」


「……」


「ゲラゲラ!」



 私は恥ずかしすぎて何も喋れなくなっていた。てか、グロッタだって勘違いしてたくせに!



「ルノさん。オレがフユナちゃんに手を出すはず無いだろう?」


「いや……ランペッジさんはロリコン説が浮上してるので分かりませんよ」


「ひどすぎる!?」



 まぁ、でも勘違いだったなら良かったか。無駄な心配しちゃってたな……



「ルノ?」


「ん……?」


「フユナのことそんなに心配してくれてたんだね!」


「え? まぁ……勘違いだったけどね」


「ふふ。ありがとね!」



 うっ……なんて眩しい笑顔なんだ。自分の行動が恥ずかしい。


 私がしばらく俯いていると……



「ルノ?」


「ん?」


「フユナはこれからもルノと一緒だから大丈夫だよ!」



 やばい。なんて嬉しい言葉なんだ。そして泣きそう……とりあえず……






「フユナぁ! 大好きだよー!」



 私は顔を見られないようにフユナに抱きついたのでした。



    


お陰様で五十話を突破しました!


いつも読んでくれている皆様。ありがとうございます。


ここまで読んで面白いと思ったら、ぜひ感想を書いて頂けると嬉しいです!書いて頂かなくても読んでもらえたなら充分嬉しいです!


どうぞ、これからも『☆氷の魔女のスローライフ☆』をよろしくお願いします。


              にゃんたこ(*ΦωΦ*) 

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