表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
43/198

第四十三話〜新メニュー開発〜




 その日、私とフユナはお馴染みのカフェにやって来ていた。



「私はコーヒーとチーズケーキにしようかな」


「じゃあフユナはコーヒーに生クリーム乗ってるやつとチーズケーキにする」



 お馴染みのチョイス。このカフェのメニューはどれも美味しい。コーヒーも。ケーキも。サンドイッチも。

 ただ、どれもお馴染みになりすぎて、何か真新しいメニューが欲しくなってきたというのも正直な気持ちである。



「すいませーん!」


「はーい、ご注文ですね。どうぞー!」



 この人は看板娘のサトリさん。同じく、お馴染みになりすぎて真新しさが欲しくなってくる。



「そう……言うなれば、飽きてきた……」


「なんかものすごく失礼なこと言われた気がするけど……ほら、注文は?」


「そ、そうでした。ほにゃららほにゃらら」


「ほにゃららほにゃららー」


「はいはーい、ご注文ありがとうございます!」





サトリさん。お姉さん。新メニューはよ!



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「え、新しいメニュー?」



 注文した品が届くと、もれなくサトリさんも付いてくる。これもお馴染みすぎて、仕事は? ……と突っ込む気にもならない。



「はい。なんか真新しい物を食べたいなぁ……なんて」


「ならこれなんていかが?」



 そう言ってサトリさんはメニューの一つを指差した。そこには『ルノサンド』と書いてある。



「そのメニュー、味は最高ですけどネーミングのせいで複雑な気持ちになるので却下です」


「とか言いながらしっかり注文してるし……」


「ドキ……!」



 小腹が減ったので先程追加注文した。



「でもそうかぁ。ルノちゃん達みたいな常連さんはそんな事も思ってるわけね」


「いえ、ほんのちょこっと思っただけですよ? なんとなくマンネリ化しちゃうかな? みたいな。例えばこの『アネ・コーヒー』なんてマンネリ化を通り越して存在すら知りませんでしたよ」


「それ姉さんが考えたメニューだよ」


「え」




「ギロッ……!」



 ひぇ……お姉さんがわざわざ厨房から顔出して睨んできた……!



「どおりでなんだかいい感じなアレだと思いましたよ。一つ頼んじゃおうかなぁーてへぺろ」


「ルノちゃんはほんとに姉さんに弱いね……」



 そして追加注文した『アネ・コーヒー』を持ってきたサトリさんがある提案をしてきた。



「ルノちゃん達、良かったら今から厨房に来ない? 新メニュー云々の話もしたいし」


「え、私達も一緒に考えるってことですか? 楽しそうですね。喜んで」


「って姉さんが言ってたよ」


「……」



 チラッと厨房の方を見てみる。



「ギロッ……(ニコリ)」



 うわ、どうしよう……睨みながら笑顔になってる。



「わ、私なんてなんの知識もないから役に立ちませんよー? てへぺろ」


「フユナも何も力になれそうにないよー? てへ」


「そんな事ないよ。ルノちゃんは前回新メニュー作ってくれたし、フユナちゃんだってお客さんとしての貴重な意見が大切なんだよ」



 うーん、どうやらもう引き返せないみたいだ。



「仕方ない……フユナ。ここはお姉さんをヨイショヨイショしながら無難に乗り越えていこう(コソコソ)」


「うん、分かった。お姉さんのご機嫌を最優先して頑張るね(ヒソヒソ)」


「あの……二人とも聞こえてるからね?」



 とにかく方向性は決まった。お姉さんを持ち上げまくろう!



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 場所はカフェの厨房。私は前回のアルバイトで来ているのでこれで二回目だ。


「呼んできたよー!」


「こんにちは、お姉さん(ニコッ!)」


「お邪魔します(ニコ……)」


「よく来てくれましたね。ルノさん、フユナさん」



 よしよし、さっきの事はもう忘れてくれたみたいだ。



「せっかく来て頂いたので……どうぞ飲んでください」



 歓迎してくれているみたいで良かった。と、思ったのも一瞬。出てきたのは『アネ・コーヒー』だった。



「お、お姉さん……これは?」


「見ての通り、マンネリ化を通り越して忘れ去られた『アネ・コーヒー』ですよ?」



 完全に根に持ってる!



「じ、じゃあいただきますー! んー! なんともいえないアレな香りが最高ですね! そうだ、これを新メニューとセットにしてみたらどうですか? ヨイショヨイショ!」


「なるほど。それはいい案かもしれませんね」


「おぉ、ついにルノちゃんが姉さんを手玉に!」


「そうなんですか? ルノさん」



 サトリさん! 余計なこと言っちゃだめですよー!



「ギロー!」


「はは……ごめんね、ルノちゃん」


「こ、こほん。では気を取り直して……新メニューはもう決まってるんですか?」


「えぇ。新メニューはデザートを出します。あとは、最近のお客様がどのような味を好むのかですが……ふむ」



 お姉さんはそこで言葉を区切って考え込んでしまった。なるほど、ならばここは私達の出番だな。



「私はいちごのロールケーキにホイップクリームなんて乗ってたら最高だと思いますよ。フユナはどう?」


「え、えーっとね! フユナはホイップクリームをいちごのロールケーキの上に乗せちゃえば最高だと思います! あと、アネ・コーヒーも欠かせいと思います! よいしょよいしょ」


「ふむふむ……なるほど」



 おや? 頭から却下されない辺り、もしかしてなかなかいい線行ってるのかな? ……よいしょよいしょしてるフユナが可愛い。



「あの。お姉さん? こんな意見でよろしいんですか?」


「ふふ……やはりあなた達を呼んで正解だったようですね。いい物が作れそうです」



 どうやら新メニューのヒントになったらしい。これ、この前食べたスライムの事なんだけどな……美味しかったのは確かだけど。



「ルノさん、フユナさん。貴重なご意見ありがとうございます。お陰様でイメージが固まりました。」


「お力になれたなら良かったです」


「もしよかったら、また明日来て頂けますか? ぜひあなた達二人には最初に食べてほしいので」


「はい、ぜひ!」



 という訳で明日もお邪魔する事になった。最初はしょうもない意見だと思ったが、意外と参考になったみたいで良かった。

 お姉さんもかなり自信あるみたいだったし、明日が楽しみだね。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そして、やってきた次の日。


 私達はオープンと同時にカフェに訪れた。お馴染みの席へ座り、お馴染みのサトリさんがやって来た。



「いらっしゃい。ルノちゃん、フユナちゃん!」



 出迎えてくれたサトリさんは心なしか、いつもより輝いているように見えた。



「新メニューは完成しましたか?」


「ふっふっふっ。今から君達二人の驚く顔が目に浮かぶよ」



 おぉ、とんでもない自信だ。きっとサトリさんは完成品を知っているのだろう。



「さっそく持ってくるからちょっと待っててね!」



 そう言ってサトリさんは厨房へ向かっていった。



「ルノ。サトリちゃん、すごい嬉しそうだったね」


「うん。よっぽどいい物が出来たんだよ」



 するとサトリさんが戻ってきた。手には二つのお皿。なんだか緊張してきてしまった。



「さぁ、二人とも。堪能するといいよ!」


「「おー!」」



 私達の目の前に出されたのは新鮮ないちごにふわふわ生地のロールケーキ。そしてその上にはホイップクリームが乗っている。

 字面ではここまでだが、実物は実に美味しそうだ。



「では、いただきますね!」


「いただきます!」



 私とフユナはあまりの完成度に心を奪われていた。そして同時にそれを口に入れた。



「「美味しい!」」



 声が重なった。だけどそれも当たり前! これ、本当に美味しいよ!



「サトリさん。これ最高ですよ! いちごのロールケーキにホイップクリーム! 最高ですよ!」


「ほんとに美味しいよ、サトリちゃん! ホイップクリームをいちごのロールケーキに乗せちゃうなんてすごいよ!」


「でしょでしょー! てか、わたしにもちょうだい!」


「ガツガツ!」


「あー! ちょっとー!」





 こうして、カフェの新たなるメニュー『いちごのロールケーキ・ホイップクリーム乗せ』が誕生した。


 それから数日の間は新メニューを食べに来るお客さんが大勢いて、あまりの混雑によって私とフユナが再びアルバイトする事になるという一幕もありました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ