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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第三十一話〜三人の魔女〜

 



 この日は珍しい組み合わせだった。現在、私の家のリビングには三人の魔女がいる。


 私。氷の魔女・ルノ。

 カフェの看板娘。風の魔女・サトリ。

 鍛冶師。魔女・カラット。



「こうして見ると、魔女二人と鍛冶師一人ですね」


「確かに。師匠って魔女っぽさが皆無じゃないですか?」


「おいおい、何言ってるんだ。ちゃんと『魔女』って書いてあるだろ?」



 うーん。ただ書いてあるだけ感が否めない。



「そういえばカラットさんはどんな魔法が得意なんですか?」


「師匠は鍛冶魔法が得意だよ(ぷっ!)」


「私は火の魔法だね。鍛冶師っていう立場上、よく使うしね(メキッ!)」


「ほうほう」



 サトリさんがやらかしてカラットさんに頭を握りつぶされそうになっていた。

 でもそうか、火か。私自身はほぼ氷の魔法しか使わない。サトリさんは風……というか最近に関しては双剣使ってる事の方が多い気さえする。



「なんだ、ルノちん。興味あるのかい?」


「そうですね。私はほぼ氷だし、サトリさんに関してはよくよく考えたら魔女要素がない気がしてきたので」


「ルノちゃん!? わたしだって一応魔女だからね!」



 自分で一応って言っちゃった……



「そうかそうか。見せてあげてもいいんだけど場所がなぁ。川にでも行く?」


「いいですね。川なら山火事になることも無いですしね」


「ルノちゃん。そういう事言わない方がいいんだよ?この人ならやりかねな」


「んじゃ、さっそく行くか!(メキッ!)」



 またやられてる。サトリさんも変な事言わなきゃいいのに……



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そうしてやってきた山の入口。

 ちなみにフユナはグロッタやスフレベルグと一緒にツリーハウスで遊んでいる。



「なぁなぁルノちん。よかったら川に着くまでの間、ルノちんの魔法も見せてくれよ」


「はい、いいですよ。それなら道中は私とサトリさんでモンスターを倒して行きますか」


「そうだね。なんか魔法使うの久しぶりな気がするなー」



 ほら、やっぱり。もうサトリさんは魔法使いじゃなくて双剣使いだよ!



「おや、さっそく現れましたね」


「一番はいただきだ!」



 そう言って勢いよくサトリさんが出る。



 ゴオオオッ!!


「「おー!」」



 風の刃が雷のスライムを切り刻んだ。なかなかの威力とキレである。



「サトリさんも魔女だったんですね」


「私はとっくに引退してネタで言ってるのかと思ってたよ」


「ちょっと! ルノちゃんも師匠もひどいっ!」



 とは言ったものの、私も久しぶりにサトリさんの風の魔法を目の当たりにしてちょっとテンションが上がってきた。


 と、次のモンスターが現れた。



「今度は火のスライムですね。よーし、次は私が……」


「ふふん! いただき!」


「あ!」



 ゴオッ!


 火のスライムが吹き飛んだ。



「サトリさん! 今度は私の見せ場だったのに!」


「ふっふっふっ、戦いは待ってはくれないのだよ。ルノちゃん」


「まったく。二人ともなにをそんなに気合い入れちゃってんだ」



 私達の様子を見てカラットさんが肩を落とした。


 その後も川に着くまでの道中、私とサトリさんのスライムの奪い合いは続いた。



「いた。水のスライム! 今度こそ私」


「おりゃ!」


「あー! またっ!」



 くぅ、一歩遅かったか。だんだん分かってきたけどサトリさんは魔法を撃つのが早いな。よーし、私も。



「む、土のスライ」


「とりゃ!」


「早過ぎる!」



 ちょっと! サトリさんが早すぎて全然倒せない! あ! さらにもう一匹倒してる!



「むむ……このままじゃまずい」


「ふふん、今のところ5対0だね」


「くぅ……!」


「二人ともほどほどにな? 私の存在が無くなってるぞ」



 確かに。だが、しかし! 私だってこのまま負ける訳にはいかない! 今だけは目の前に集中する。今から本気出す!



「お、見ろよ二人とも。あそこにスライムの大軍がいるぞ?」


「あ! 師匠ナイス! よーし……」



 チャンス到来!!



『迫る終焉氷の牙全てを砕け怪狼フェンリル!』←早口



「「!?」」



 バキャーーーン!!!


 私の詠唱と共にスライムの大軍が辺り一帯ごと、特大の氷の牙に飲み込まれた。十匹は倒したかな。もちろんそこには何も残らなかった。



「ふふ、これで5対10。一気に逆転ですね」


「ルノちゃん……キミ、アホ! どんだけ強力な魔法撃ってんのさ! 見てよ! 何も残ってないよ!?」


「どうやら本気を出しすぎた見たいですね(キリッ)」


「まったく。相変わらずだな、ルノちんは……」



 そうして私は無事に勝利し、川に辿り着いた。いつの間に勝負になってたんだろう?



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ふー着いた着いた。気合入れすぎちゃって疲れたよ」


「ほんとですね。……サトリさん? 罰ゲームが待ってますよ」


「え……何させる気?」


「そうですね……そこの川でお昼ご飯のお魚をとってきてください」


「なーんだ、そんなことか。それなら……」


「あ、魔法は禁止ですよ」


「……」


「魔法は。禁止ですよ?」


「悪魔!」



 そしてサトリさんは素手で魚を捕まえ始めた。ずぶ濡れになりながら頑張っているがまだ一匹も捕まえることができていないようだった。



「さて、私達は火の準備でもしとこうか」


「はい。ついに見せてもらえるんですね」


「もちろんだ。驚くなよー?」


「ドキドキ」


「とう」



 ボッ!



 魚を焼くために集めた木に火がついた。



「どうだ?」


「火の魔法で火がつきましたね」


「ドヤァ」



 え、終わり? もっとこう……火柱が!? とか、炎の龍だと!? とかそういうのを期待してたんですけど。



「おーい、魚捕まえてきたよ! あれ、どうしたの? ルノちゃん」


「見てください。カラットさんの火の魔法で火がつきましたよ(ドヤァ)」


「うん」


「……」



 ですよね。期待して来たのに、ただバーベキューしに来たみたいな感じになっちゃったよ。



「じゃあ、とりあえず焼きましょうか」


「いえーい!」


「お、ルノちんが焼いてくれるのか?」


「いえ、今日はサトリさんが焼いてくれるそうです」


「まだ罰ゲーム続いてんの!?」


「もちろんですよ。今日のサトリさんは私達のお世話係です」


「ルノちゃんの悪魔! 魔人! 魔女!」


「仲いいなぁ。二人とも」



 そうして、私達はサトリさんが焼いてくれた魚に舌鼓を打つ。自然の中で自然のものを食べるっていいよね。



「さて、そんじゃお昼食べた事だし帰るか!」


「え? 魔法は? ほんとにさっきので終わりですか?」


「ん、そうだよ? 火ついただろ?」


「またまたー! 火柱出したり、炎の龍出したりは?」


「ルノちゃん!?」


「火柱に炎の龍か。いいなそれ」


「師匠!?」



 お。やっぱりそういうのあるのかな? だよね。カラットさんも魔女なんだから。そしてなんでサトリさんは焦ってるのかな?



「ルノちゃん、まずいよ……師匠、ああ言ったらほんとにやるよ? やらかすよ?」


「でも川の近くだし大丈夫じゃないですか?」


「やっぱりルノちゃんはアホなの? スライムの大軍を一瞬で消し去ったのは誰! 鏡見てものを言いなさい!」



 うーん、何を言いたいんだろう? 私は魔法でスライムの大軍、及び周りの森を消し去った……だけ……



「……」


「よーし、ではご期待に応えようじゃないか! 見てろよルノちん!」



 そう言って川に向かって手をかざすカラットさん。次の瞬間。



 ゴウッ!


 巨大な火柱が川を吹き飛ばした。



「さらに、くいくいっと!」


「!?」



 なんと火柱が形を変えて龍になった! 周りの木を飲み込んで最後に地面に衝突。



「わ、わわっ!? 師匠やりすぎ!」


「サトリさん! 消火しないと!?」


「んー我ながらいいできだな!」



 ……魔女が三人揃うと危険だな。森を消し飛ばしたり、川を吹き飛ばしたり。サトリさんが天使に見えてきた。



「てか……今思い出したけど私、森消し飛ばしたの二回目だ……気をつけないと」




 その後、私とサトリさんの必死の消火活動により山が全焼する事はなんとか防げた。


 そしてこの日、カラットさんの名前は更新されました。


『魔女鍛冶師・カラット』から『炎の魔女・カラット』へと。



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