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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第二十六話〜大鷲がやってきた〜

 



 ツリーハウスが完成してからというもの、私は毎日のようにまったり生活を送っていた。気付けばもう一週間が経過していた。


 

「ふぁ……ツリーハウス……これは正解だったねぇ……」


「すやー」



 現在ここにいるのは私とグロッタのみ。フユナはサトリさんとの特訓に出掛けてしまった。



「前はそれでグロッタと散歩したっけか。ま、今日はここでのんびりするけどね」



 私はごろんと横になって空を見上げる。今日は風が強めだなぁ。雲の流れが速いや……


 そんな事を考えながら今日も一日まったり生活を満喫しようと思ってたのだか、とんでもない。




 今日は大鷲がやってくる日でした。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ん……あれ……?」



 いつの間にか寝てしまったみたいだ。これこそまったり生活の極致。



「そろそろお昼ご飯食べるか……」



 時間はちょうどお昼。私は持ってきたサンドイッチを食べることにした。立ち上がり荷物を漁る。すると突然、一際大きな風が吹いた。



「うわっ! な、なに?」



 それもそのはず。視線を上に向けると、そこには大鷲がいた。美しい白銀の羽根に覆われている。そしてなにより……



「でか! なにこれ! グロッタ並にでかい!?」


「ワンワン! ガルル!」


「た、助けて番犬フェンリル!こっち来る!こっち来る!」



 私は取り乱した。これ……連れ攫われるやつだ……


 ズシン!



「あ、あれ……着地しちゃった?」



 私はてっきりお持ち帰りされると思ったので意外だった。さらに……



「こんにちは、ワタシは大鷲のフレスベルグ。よろしくお願いします」


「え? よ、よろしく……??」



 自己紹介をされてしまった。よろしくって……何をよろしく? これからあなたをいただきます。よろしく! のよろしく?



「ね、ねぇ、グロッタ。あの大鷲? 捕食する相手に挨拶してるよ?」


「い、いや……捕食するつもりならとっくにそうしてるはずですが……?」



 さっきまで唸っていたグロッタも拍子抜けしたみたいだ。



「あ、あのスフレベルグさんでしたっけ? ご丁寧な挨拶は嬉しいのですが捕食されるのはちょっと……」


「フレスベルグです。捕食などしませんよ。空から立派な樹が見えたのでここに住もうと思って来たのです。光る結晶も美しい」


「は、はぁ……」


「ふん、貴様! 突然やってきたと思ったら何を言っているのだ!」



 おぉ、いいぞグロッタ番犬らしい!言ってやれー!



「ここはこのグロッタ様の家だ!(キリッ)」


「え、それもちょっと違うからね?」


「ガク……」



 うーん、なにやらややこしいことになってきたぞ。せっかく手に入れたまったりスペースにこんな大鷲がいたら落ち着いてコーヒーも飲めない。



「あのー申し訳ないんですけど帰っくれません? ここ、私のまったりスペースなので」


「駄目ですか……? ワタシをここに置いていただければ良いことがありますよ。たとえばこんな風に」



 そう言ってロッキの樹に向かって風を起こした。いや、これ魔法かな……?



「あっ、ロッキの結晶がなった!」



 しかも一つや二つではない。いつかの結晶フィーバーとまではいかないがそこそこ数はある!



「どうでしょう。これがお家賃ということで」


「分かりました。あなたがここに住むことを許可します。……ふへ」


「ルノ様……」



 こうして、私達のテラスハウスは大鷲の巣になった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 これからこの大鷲が住むにあたっていろいろあるので、私は調教を開始した。



「住むことは許可するけど、そもそもここはまったりするために造ったツリーハウスだからね。静寂を乱すようなことはしないでね?」


「はい、もちろんです。ワタシもその雰囲気に惹かれましたので」


「うん、ならよし。あとは捕食は論外だよ。ここには私とグロッタ、あとはもう一人、私の娘がいるから仲良くね」


「はい、そうして頂けるとワタシも嬉しいです」



 うんうん。最初はちょっと怖かったけど悪い人(?)ではないみたいだね。



「あの、ルノ様? 安全の為にこの大鷲にもわたくしと同じ魔法陣を施した方がよろしいのでは?」


「あーそうか。でもどうしよう……この子、グロッタよりお利口っぽいしなぁ」


「ひどすぎる!」


「ワタシはそれでも構いませんよ。捕食する気は無いという証明にもなりますから」


「そ、そう?」



 ぶっちゃけ不安が無いわけじゃない。どれだけ誓ったところで、空中に連れ攫われたりしたら終わりだもんね。



「ならそうさせてもらうね。また旅立つ時とか、危険が無い事が分かれば外すから」


「はい」


「あの、ルノ様? わたくしだいぶ永いこと魔法陣を施されたままなのですが?」


「グロッタはまだダメだよ。捕食されそうな気がする」


「ひどすぎる!」


「ははっ、冗談だよ。なんていうか、その魔法陣で氷漬けになるのってもはやグロッタの持ちネタじゃん?外したらグロッタじゃないよ」


「わたくしはいったい……」


「それに魔法陣外したら氷漬けになれなくなっちゃうけどいいの?」


「それは嫌です」


「……」



 出たよ、ドM!




 という訳で、私はグロッタと同じ魔法陣をフレスベルグにも施した。これで一通りの問題は解決したかな。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 それからしばらくして、フユナが帰ってきた。



「ただいまー!」



「おかえりフユナ。さっそくだけどちょっとおいで。上に紹介したい人(?)がいるの」


「? うん、分かった」



 そして再び上へ。



「ぽかーん……」



 フユナがアホっぽくなっている。可愛い……



「はい、スフレベルグ。自己紹介して」


「初めまして、今日からここに住むことになりました、スフ……フレスベルグです。よろしくお願いします」


「あ、よろしくお願いします……フユナと言います。氷のスライムをやらせて頂いております」



 フユナが緊張しておかしなことになってるな。まぁ、最初はこんなものだろう。



「よし、んじゃ自己紹介は終わりね。今日はこでスフレベルグの歓迎パーティーね!」


「やったー! スフレベルグの歓迎パーティー!」


「ワタシはフレスベルグです」



 パーティーという言葉を聞くと、フユナのテンションも上がって緊張がほぐれたようだ。



「じゃあ、私はグロッタを連れてくるね」


「ねぇねぇ、スフレベルグならグロッタ連れてこれるんじゃない?」


「あ、たしかに。どう?」


「可能ですよ。せっかくなのでお二人も乗ってみますか?」


「わーい! 乗る乗る!」


「んじゃお願いするね!」




 そういうわけで私とフユナはフレスベルグの背中に乗った。地上まで戻り、驚いたグロッタをそのままフレスベルグが脚で掴み、再び上へ。



「いい景色だね! 気持ちいいー!」


「これはいいね。上に行くのも楽ちんだ」


「ぎゃぁぁぁ! ガクガクガクガク!!」



 その日、新たな家族を迎えた歓迎パーティーは夜まで続いたのでした。



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