第二十五話〜氷の魔女のツリーハウス〜
昨日開催されたヒュンガルのお祭り。そして人気投票を終えた次の日の朝。
「ふぅ、お祭りが終わったと思うとなんだかさみしいなぁ。みんなで踊ったのはいい想い出だし、人気投票も楽しかった(?)なぁ」
これは家族旅行を終えたあの時の気持ちと似ている。今回はもう呑み込まれないけどね!
私はそんな事を考えながら、朝食を完成させた。
「フユナー! 朝ごはんできたよー」
「はーい!」
さて、今日からまたのんびり平和に生活していこうかな。
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朝食を終え、片付けも完了。現在の場所はグロッタの小屋のすぐ横。外にテーブルと椅子を出してくつろいでいる。
「ぽけー……」
私は特に何かをするわけでもなく、空を見上げていた。
「グロッタ。ルノがおばあちゃんみたいになっちゃったよ……」
「ついにボケてしまいましたな」
なんだかヒソヒソ話してるみたいだけど聞こえてるからね!
「とりあえずコーヒーでも持ってこようっと。フユナもいる?」
「いるー!」
「オッケー」
そしてコーヒーを持ってきて、さらにくつろぐこと一時間。
私はまだぽけーっと空を見上げていた。
「おばあちゃん暇そうだね」
「きっとあれは寝ているのですよ」
また失礼な事言ってる! そんなスキル持ってないからね!
そこでふと、ロッキの樹が視界に入った。ロッキかぁ。
「ツリーハウス造ろうか」
「えっ?」
「フユナ様、あれは寝言ですよ」
「あ、そっか」
いいかげん私の事ボケ扱いしないで! フユナも納得しないでよ!
「二人だってロッキの街で見たでしょ。樹の上にいろんな施設があったやつ」
「うん。あれを造るってこと?」
「イメージはそんな感じかな。あの上に家みたいな建物を造って今日みたいな日にのんびりするの」
「ガクガク……!」
グロッタが想像しただけで震え始めた。
「面白そう……フユナもやりたい!」
「うーん、でも材料はどうしようかな。そんなにたくさん持っていくのも大変だしなぁ」
「てっぺんの木をそのまま材料にしちゃうのは?」
「それだ!」
さすが私の娘!
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まずは下見だ。例の如く、氷の箒に二人で乗っている。
「広さは文句なしだね。材料の木も思ったよりありそうだ」
「ルノ、あの一番高い所に造ろうよ」
「お、いいね。きっと綺麗な景色が見えるよ」
ということで、場所も決まったし建築開始だ。
「とりあえず土台がないと始まらないからね。おりゃ!」
ビュオオオ!
私は風の魔法で余計な木を切り落とした。
ヒュー……バラバラ……
「ルノすごーい!」
「ふふん、サトリさん程ではないけどね」
バラバラと木が落ちていく。あとは材料にするための太めの木を取りつつ、土台を造る。
下に落ちた細かい木は細部を完成させる時に使おう。
グサササ!
「ぎゃぁぁぁ!?」
ふむ……? まぁ、いいや。もう慣れたから突っ込まないよ。
作業を開始してからは、割と早く土台は完成した。
「うん、いい感じ。これだけ土台がしっかりしてれば好きなように建築できるね」
「どんな感じの家にするの?」
「ふむ、そうだね。せっかく景色が良いからテラスを大きめにしたいな。家自体は実際に住むわけでもないから小さくてもいいや」
私的には、天気のいい日にテラス席でまったりできれば家はさほど重要ではないのだ。
「じゃあ、グロッタもゆっくりできるくらい大きなテラスにしよ!」
「うーん、グロッタは来てくれるかな……? でも、そうだね。それくらいの造ろう!」
そして。
「やったー! 完成!」
「……」
うん、完成! テラスが広くて素晴らしい! これなら毎日でもここで過ごしたくなっちゃうな!
「でも家の方はさ、もはやグロッタの小屋だよね」
「そういうことは深く考えちゃいけないんだよー!」
そうだよね。フユナ、たくましくなったなぁ。
ちなみにグロッタの小屋といっても、そもそもグロッタ自身がとても大きいのでそれなりに大きい。が、やはりそれでも普通の家よりは確実に小さい。
「ま、でもこんな立派なテラスが出来たわけだし文句なしだね!」
「ねぇねぇ、せっかくだからお昼はここで食べようよ!」
「あ、それ最高。さっそく用意しに行こうか!」
私達は一旦地上に戻ってきた。
なぜかグロッタの頭には髪の毛のように沢山の枝が刺さっていたが、早く完成したテラスでお昼を食べたかったのでスルーした。
「よし。サンドイッチにコーヒー。それとクッキーにケーキも持っていこう」
なんだかこれからテラスに引き篭るみたいな雰囲気になっているけど、今は完成の喜びに包まれているので仕方ない。
「よし、準備オッケー。フユナー? 用意できた?」
「うん! サトりんの本に、カラットさんにもらった光る双剣。それにロッキのビスケットも持ったよ!」
よかった……舞い上がってるの私だけじゃなかった。
「ほら、グロッタも行こ。上は広いから平気だよ?」
「しかし、ルノ様……その建物はてっぺんにあるのでしょう?」
「うん、そうだよ。グロッタの小屋とこの辺の広場がそのまま上にあるみたいな感じかな」
「わたくしはどうやって上に行くので?」
「小さくして運んであげるよ。なんなら目隠しとかしてあげるよ?」
「そ、そういうことでしたら……」
「よし、決定ね。それじゃ、フユナ! グロッタ! 行くよー!」
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そうして三人仲良く箒に乗って移動する。途中グロッタがガクガクしていたが、きっと上に着いたら驚くぞ!
「よーし、到着」
「グロッターもう目開けて大丈夫だよー!」
「ビクビク……おぉ!」
よしよし、驚いてくれたみたいだ。誘ったかいがあったってもんだね!
「んじゃ、さっそくお昼にしよう」
「わーい! サンドイッチ!」
「最高の景色ですな! チラ……!」
グロッタが恐る恐る周りの景色を眺める。興味はあるみたいだ。
そんなグロッタの後にはコソコソと近づくフユナの姿があった。
「……わっ!」
「ひえ!? お、驚かさないでください、フユナ様!」
「ふふっ!」
そんな微笑ましいやり取りの後、昼食を食べ終えて時刻はお昼ちょっと過ぎたくらい。
夕方になるまで、コーヒーを飲んだり、お菓子を食べたりしながら、一日中まったりと過ごしたのでした。