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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ


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201/206

第200話〜王都に現る双剣使いサトりん①〜


〜〜主な登場人物〜〜


・ルノ (氷の魔女)

 物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


・サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

 ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


・クレープ(クレープ屋の店主)

 王都『リトゥーラ』で出会ったルノと同年代の女性。魔女好きが故に強引な面もあったが今では立派な友達。好きな魔女様はルノ。



「祝200話! おめでと〜! ありがと〜! パフパフ♪」


 カンカン、ドンドン、パフパフ!!

 ヒュンガルのカフェでお馴染みのコーヒー&チーズケーキを注文し、配膳が完了したのを確認すると私はすかさず場を盛り上げた。

 コーヒーカップの縁をスプーンで鳴らし、ケーキが揺れるのもお構い無しにテーブルを叩き、バンドもかくやといった様々な音を静かなテラス席に響かせて私のテンションはMAXになる!


「ちょっとルノちゃん? さっきからめちゃくちゃうるさいんだけど。あとなんでパフパフ言ってるの? ヤンキー兄弟の親戚みたいだよ」


「パ……こほん。ようやく止めてくれましたね」


 静まり返ったテラス席でしばらくの沈黙する私とサトリさん。チラッと店内に目を向ければ今にもキレそうなお姉さん(店長)と目が合い、あと一歩遅かったらとんでもないことになってたなとホッと胸を撫で下ろした。

 すると「まったくもう」とため息を吐いたサトリさんがとても真面目な顔で。


「いいかいルノちゃん。そういうのは時と場合を選んでもダメ。わたし達しかいないからいいよねとかそういう問題じゃないの。ダメなものはダメ。ルノちゃんだって飲食店でそういう(自主規制)してる(自主規制)を見たら(自主規制)したくなるでしょ?」


「違うんです。私も作者にやらされただけで普段こういうことは一切しないんです。だからそんな真面目な顔で言わないでください。よく分からないですけどめっちゃ落ち込みます」


 皆さんも気を付けましょうね、と誰に向けたかも分からない言葉を心の中だけで呟いて現実に戻る。

 先程までの姿はどこへやら。目の前では勤務中にも関わらず華麗におサボりをキメるサトリさんが優雅にコーヒーを啜っていた。


「記念すべき日だというのに相変わらずで安心しましたよ。私は慣れないことやらされたのに」


「なんかこういうのも久しぶりだからねぇ。それで? 記念日とか言われてもあんまり実感が無いけどパーティーでもするの?」


「まぁ、これがパーティーと言えばそうですね。今日は初心に帰ってスローライフを満喫する日なんですよ」


 言いながらチーズケーキを口に放り込むと慣れ親しんだ濃厚な味が口いっぱいに広がり、続いてコーヒーを飲むとまるで実家のような安心感が心を満たした。なんだか久しぶりにスローライフを満喫している気がする!


「さすが記念日。コーヒーとチーズケーキがいつもより美味しい気がする」


「ほっこりしてるとこ悪いけどさ、そんなに暇ならどこか行こうよ」


「スローライフと暇をイコールで結び付けないでください。……私はいいですけどサトリさんはお仕事中じゃないですか。お姉さんに怒られちゃいますよ」


「ふっふっふっ……わたしがこうしておサボりしてるんだからつまりそういうことなのさ。ルノちゃんと一緒だね」


「はいはい。じゃあそろそろ食べ終わりますし私は先に外で待ってますよ」

 

「オッケー! すぐに準備してくるからちょっと待ってて!」


 冒頭の私に負けず劣らずのテンションになったサトリさんはグイッとコーヒーを飲み干したかと思うと、意気揚々と二階にある居住スペースへと駆け込んで行った。

 数分後「お待たせ〜!」と元気よく現れたサトリさんは腰まで届くローブにショートパンツ、腰にはキラリと緑色に輝く風の双剣『カラット・カラット』まで。

 カフェ店員のエプロンを脱ぎ捨てたその姿は久しぶりに見る冒険者スタイルだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 その後、案の定お姉さんに怒られたことを愚痴るサトリさんと共にのんびり歩いていると、いつの間にか『ヒュンガルヘようこそ!』の看板がある村の入口にやって来てしまった。

 するとサトリさんが唐突にーー


「さて、久しぶりにロッキもいいけどリトゥーラは行ったことないんだよね。ルノちゃんはどっち派?」


「いやいや、その二択ですか!? 私はてっきり懐かしのヒュンガル山に行って冒険するのかと……」


「まぁそれでもいいんだけどさ、こういう機会だしせっかくなら遠出したいじゃん? てかルノちゃんてばここ最近リトゥーラに入り浸ってるって師匠から聞いたよ。ズルい!」


「入り浸ってませんし仕事! こう見えて私は『魔女』と『配達員』という二足のわらじを履いてるんですよ。半ば無理矢理ですけど」


 身に覚えの無い嫉妬で困るがこの流れだと行き先は決まったようなものである。サトリさんはリトゥーラに行きたいと言っているのだ。


「じゃあ決まり! これも師匠から聞いたけど箒を飛ばせばリトゥーラまで3分らしいね。王都が意外とご近所だったことに驚きだよ」


「全然ご近所じゃないですしそのレベルの話をするならかなりの速度が必要ですよ? あと3分は話を盛りすぎ!」


 急いで10分、死ぬ気で5分といったところか。早く到着すれば遊べる時間が増えるのは事実だが、どちらにしろ遊びに行く感覚で出すスピードではない。


「のんびり気ままに30分を目標にしましょう。間違ってもお互い煽って限界を越えようなんて考えないでくださいね? 最高記録なんて目指しちゃダメ」


「おっ、いいね。負けた方は王都の高級レストランで奢りね! はい、スタート!」


「ちょっと!?」


 バビュンッ!

 反論の余地も与えずに猛烈なスタートダッシュをキメるサトリさんは早くも空の彼方に消え去ってしまった。見えなくなる直前にはあっかんべーしながら文字通り私を煽って律儀に限界を超えさせようとまでして。


「許せない……! あっかんべーはどうでもいいけど高級レストランで奢るのは嫌だっ……!?」


 バビュンッ!!

 このレベルのレース(?)では致命的なまでの遅れを取り返すべく、私は過去最高の速度をもってサトリさんの背中に食らいついたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 いきなり始まった勝負だが勝ったのはもちろん私。

 本人も言っていたがサトリさんはリトゥーラに行ったことがないらしく、時々私の進行方向を確認しながら恐る恐る進んでいたので到着寸前で一気に追い抜いてやったのだ。


「なるほど、これが高みというやつですか。サトリさん……どうやらあなたは立場というものを弁えていなかったようですね」


「うぐぐっ……!?」


 私は露店で購入したホットなコーヒーを飲みながら地面に正座するサトリさんをチラッ。とても寒そうだったのでほぼ空っぽになった紙コップを彼女の目の前にコトッと置いて僅かなコーヒーを恵んであげた。


「あの、ルノちゃん……? 流石にそれはちょっと可哀想なのでは……」


 見ていられなかったらしい近くのクレープ屋ーー偶然の再会を果たしたクレープがとても可哀想な目でサトリさんを見ながらやって来た。


「さらっと登場したね。久しぶり……でもないのかな」


「はい、この前会ったばかりですからね」


 嬉しそうに笑うクレープはコーヒー片手に私の隣に座ると「こほん」と気持ちを切り替えて正座したままのサトリさんに同じ笑顔を向ける。


「初めましてサトリさん。私はクレープ屋をやってる『クレープ』といいます。新しい魔女様に会えてとても嬉しいです」


「……って言いながらコーヒー飲んでるこの子は誰なのルノちゃん。なんだかわたしと同じ匂いがするけど」


「聞いた通りクレープ屋のお友達ですよ。ほにゃららほにゃらら〜ってな感じで偶然知り合ったんです。同じ匂いなのはおサボりの基準が同じだからですよ」


「なるほど、仲間だった訳ね」


 周りを見ても今現在クレープ屋にいるのは私とクレープ、そして正座したサトリさんだけ。また魔女様魔女様と人が集まってくるかと思ったがこの異様な光景に飛び込む勇気は無いらしい。


「とは言っても人は集まってきてるので私は戻りますね。ご注文のクレープはこちらに置いておきます。ごゆっくりどうぞ〜」


 そう言って私とサトリさん、二人分のクレープを置いたクレープは颯爽と去る。まるで今回の主役はお二人ですとでも言うように。


「まったくもう、こんな寒空の下で正座させるなんてルノちゃんも悪魔だよね」


「まぁいいじゃないですか。私は別に高級レストランでもよかったんですよ?」


「ん〜! さすがクレープちゃんのクレープ! 美味し〜い!」


 パクパクモグモグ。

 私の隣に座るなりわざとらしくクレープを口に放り込むサトリさん。ちゃっかり私のクレープも摘んでる辺り、完全に罰ゲームから立ち直ったようである。


「ごちそうさまでしたっと。食べたら運動したくなってきちゃった。少し歩かない?」


「そうしますか」


 てな訳でクレープに「またね〜」と声をかけてから私とサトリさんはその場を後にした。

 現在地は露店が並ぶ通りの一角。確か国王のブレッザさん曰く、いつでもお祭り気分が味わえるのか売りなんだとか。気が付けば手にはヤキトリやトウモロコシが握られておりお祭りの恐ろしさを実感するばかりである。


「……と思ったら終わっちゃいましたね。引き返しますか? 私はまだまだ食べられますよ」


「魅力的な提案だけどわたし的にはあっちの方が興味あるなぁ」


 サトリさんが指差すのは分かれ道の一つ。私達が歩いてきた方向とはうって変わって、そちらはなんというか色味の少ないキチッとしたイメージだ。

 一般の人もいるが、割合的には鎧を纏った騎士や衛兵といった人の方が多い。さらに奥へと進むと「ハッ!」とか「せいっ!」などの気合いの入った声と共に激しい金属音が聞こえてくる。どうやら『そういう人達』が集まる区画のようだ。


「ふむふむ……騎士の養成所に衛兵の詰所、依頼を受け付けるなんちゃらかんちゃら等など。私、こういうのよく分からないのでノリで喋っていいですか?」


「平気平気。作者も含めてみんなそうだから。とにかく覗いてみよう!」


 気楽な感じで近くの建物を見上げるサトリさんは完全に田舎者の空気丸出しだ。この辺りは観光しても良いのだろうか?


「見て見てルノちゃん! あそこ、本当に闘ってる人達がいるよ!」


「訓練所みたいですね。衛兵の詰所に併設されてるってことは少なくとも本職の人達ってことですかね?」


「アレで見習いだったらヤバくない? くぅ〜! わたしも闘いたくなってきちゃった……!」


「どうどう。双剣はしまってください。今の私達はただの観光客なんですからね」


「分かってるけどさぁ」


 分かってなさそうな様子で今日に双剣ジャグリングをするサトリさん。気持ちは分からなくもないが人通りのある場所でそういうのはいけません。


 と、そんな時。


「コラ〜ッ!! そこの貴様! 何をしている!?」


 ピピピピィ〜!

 慌ただしい声と共にやって来たのは鎧に兜、全身を鉄で覆い尽くしたガチガチの衛兵だった。どうやらこの辺りで不届き者が現れたらしい。


「なんでルノちゃんは笑ってるの?」


「ぷっ……! す、すいません……兜を被ってるのにどうやって笛を吹いてるのかなって……急に思っちゃって……」


「バカだなルノちゃんは。被る前から咥えてるに決まってんじゃん」


「ずっとですか……ぷふっ!?」


 なんてアホなことを話していると件の衛兵は私達……いや、正確には私の目の前で止まった。そして。


「魔女様、ご苦労さまです!」


「へっ?」


 ビシッと敬礼する二人の衛兵。訳も分からず固まる私。その横で「なになに!?」と同じく訳も分からずに拘束されるサトリさんを見ながら少しだけ笑った私でした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 場所は変わって先程の訓練所、そのとなりに併設された詰所の一室。


「申し訳ございません! てっきり魔女様が賊を捕らえていただいたのかと……!」


「大変申し上げにくいのですが、やたらと武器を抜かれてしまうとこちらもなかなか……!」


 要するに、軽い気持ちで双剣を振り回していた(ジャグリング)サトリさんの姿が通りかかった衛兵の目には不審者として映ったんだとか。反論の余地もありません。


「まったく。私が擁護してあげなきゃ今頃は磔にされてたんですからね。本当にもう、この子がすいませんでした」


「ぐぎぎっ……!?」


 恥を押し殺すように歯をギリギリと鳴らすサトリさんはどうやら反省していないようなので力づくで頭を下げさせた。

 衛兵さんが「もう大丈夫ですので……」と折れるまでそれは続き、ようやく解放される兆しが見えると一気に空気は緩んだ。


「ちょっと。緩ませないでくださいよ。一体誰のおかげでこんな……」


「ルノちゃんも人が悪いよ。魔女様なんて崇められちゃってさ。知り合いだったなら先に言ってよ」


「そこは否定させてください。王都の人達は一方的に知り合いになっちゃうんです」


 多少は慣れたにしてもやはり魔女様魔女様と一方的に来られるのは対応に困ってしまう。今回みたいに私にとっては初めましての場合だと特にね。


「こほん。とは言えこちらにも非があったのでこの通り謝罪させてください。お騒がせ致しました」


 しっかり切り替えて頭を下げる辺りは流石サトリさん。私も地元のノリが抜けきっていなかったのでここは王都なんだと改めて自覚しよう。


 これにて一件落着。と思いきや衛兵の一人がサトリさんを見ながら何やら不思議そうに。


「失礼ですが魔女様。こちらの方は……」


「あっ、そうですよね。こちら、サトリさんといいまして私の友達です。この人も魔女で、なんと双剣まで使います」


「「おおっ!?」」


 王都の人間らしく魔女と聞いた瞬間に湧き上がる衛兵二人。しかも私とは違って武器まで扱えるということで近いものを感じたらしく一気に柔らかい雰囲気になった。


「聞いた話では訓練をご覧になっていたとか。よかったら少し見学していきますか?」


「いいんですか!? あっ、できれば模擬戦なんかもやってみたいなぁ! なんて!」


「もちろんでございます! ささ、こちらへ!」


 私そっちのけで盛り上がるサトリさんと衛兵二人。正直、通りかかったから風景のひとつとして見ていただけでサトリさんほど興味無いんだよな〜なんて思ったが時すでに遅し。

 流れに逆らえなかった私は衛兵の一人に「どうぞ魔女様も!」と言いくるめられ、成り行きのままに訓練所に案内されることになったのだった。




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