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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第195話〜種から芽が出た〜


〜〜これまでの登場人物〜〜


・ルノ (氷の魔女)

 物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


・サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

 ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


・フユナ (氷のスライム)

 氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


・カラット (炎の魔女・鍛冶師)

 村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


・グロッタ (フェンリル)

 とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


・ランペッジ (雷の双剣使い)

 ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


・スフレベルグ (フレスベルグ)

 白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


・レヴィナ (ネクロマンサー)

 劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


・コロリン (コンゴウセキスライム)

 ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


・フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

 魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。


・にゃんたこ (神様)

『天空領域・パラディーゾ』にその身を置く神様。『遊び』と称して様々な強者を襲撃する事が多々あり、その中でもルノは『当たり』らしい。


・フウカ (妖精王)

 妖精の秘境『妖精郷』に住まう妖精の王。神様とは友人関係にあり、その実力も折り紙付き。風の魔法を得意としており、中でも【風刃・風華】は風魔法最強を誇る力を持っている。


・プウ、ペエ、ポオ(小鳥の親子とリス)

 小鳥の親がプウ、子がペエ、リスがポオ。ペエのみが人間に変身できる魔法陣を身体に刻まれており、人間になってはプウやポオと一緒に村へ行ったりルノの家に遊びに来たりなどして美しい歌声を披露している。


・ライカ(獣王)

 グロッタを以上の体躯と金色の体毛が特徴の獣の王様。何かあれば自ら動くところから同胞からの信頼も厚い。出会いが出会いなため、ルノからは『勘違いライオン』の烙印が押されている。


 早朝。

 

「あっ、ルノ、おはよう」


「おぉ〜〜フユナ、おはよう」


 起床した私は、一足先にリビングにいたフユナに出迎えられて挨拶を交わした。

 朝からフユナの笑顔が見れるなんて今日は良い日になりそうだ。……まぁ、目を覚ました時にはベッドに見当たらなかったので分かってたけど。


「ねぇねぇ、これ何の芽かな?」


「め?」


「ほら、この前ペエちゃんがくれたやつ」


 上機嫌でさっそくコーヒーでも淹れようかとキッチンに向かうと、なにやら食卓の椅子に座っていたフユナが箱を持って聞いてきた。

 ペエがくれたやつ――ベリーやクルミ、ドングリなど、様々な自然の恵みが詰め込まれていた箱のことだ。その中に紛れていた花の種のことを言っているのだろう。手元に視線を落とすと確かに可愛らしい緑の芽が見えた。


「そういえば花の種は食べないからってずっと放置しちゃってたな。なんだろうね? 詳しそうな人に聞いてみよっか」


「詳しそう人?」


「そう。実は狙ったように現れたライオンがさっきからこっちにチラチラと視線を送ってきてるの。ちょうどいいや」


 出来れば自分で答えて博識アピールをしたかったが知ったかぶりは教育によろしくない。なので私は先程からわざとらしく窓の景色に映り込んでいる暇そうなライカをちょいちょいと手招きして呼び寄せた。


「ずいぶんと偉くなったではないか魔女よ。この我を顎で使おうとは」


「構って欲しそうに見てたくせにこのツンデレめ。顎で使うつもりは無いけど聞きたいことがあるの」


「これって何の芽か分かりますか?」


 フユナが件の箱を差し出すとライカはその巨大な顔を寄せて匂いを嗅ぎ始めた。何度か鼻を鳴らし、次に目で確認。たっぷり時間をかけて唸っていたかと思うと、やがて「ふむ」と何かに納得して顔を上げた。

 そして。


「この状態ではまだ分からんな」


「うわ〜〜……」


 なんて無駄な時間を――とは言うまい。『分からない』ことが分かったのだから。


「獣王様でも分からないならしょうがないよね。もう少し育ててみれば分かるかもしれないからそれまで……あっ、フウカお姉ちゃんはどうかな?」


「フウカか。たしかに妖精の王様だし自然にも詳しそうだね」


 と、別の希望に目を光らせているとライカが口を開いた。


「貴様はフユナと言ったか。そんなに気になるのか? 期待するような物ではないかもしれんぞ?」


「はい! もしそうだとしてもせっかく芽が出たなら成長した姿が見たいです!」


「そうか……興味を持つのは良いことだ。よし、では特別に【獣王の息吹】を使って一気に成長させてやろう。いつも同胞と良くしてくれている礼だ」


「やった〜〜! ありがとうございます!」


 まさかの提案に飛び跳ねながら喜ぶフユナ。良い行いが巡り巡って自分に返って来た、という感じだ。


「――これでよし。しばらくすれば答えも出るだろうからその後は好きにするがいい。今後とも同胞達と仲良く頼む。さらばだ」


「はい、 ありがとうございました!」


 これで私達の疑問は解決したも同然だ。

 成果が出るまではもう少しかかるそうなので、その間に私はフユナと協力し、芽吹いた種を庭の一角に植え直して期待に胸を膨らませながら小さな芽を見守ることにしよう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 


 しばらく待っていると、あるタイミングでいきなり画面が切り替わったかのようにニョキっと大樹が現れた。

 雲を突き破る勢いのロッキの樹ほどではないが、二階建ての我が家に堂々と並ぶ程度には大きい色鮮やか広葉樹だ。正直、あの小さな芽がここまで立派な樹になるとは思ってもいなかったので驚いている。

 それはフユナも同じだったようで。


「すご〜〜い! 瞬きしたら樹になってたよ!?」


「あっ、そっち? まぁ、そうだよね」


 間違ってはいない。事実、私も思ったし。


「でもベリーの樹とはちょっと違うね。クルミかドングリかな? いや、どっちの樹も知らないけど」


「そんな感じだよね! 楽しみ〜〜!」


 あわよくばリンゴみたいな大きめの果実がたくさん実ってちょっとした果樹園に――そんな妄想で盛り上がる私達の頭の中はいつの間にか広がった夢で埋め尽くされていくのだった。


























「フユナ〜〜お姉ちゃんが来たわよ〜〜……って、こんな樹あったっけ?」


 しばらく二人でバンザ〜〜イ! と喜んでいると、どこからともなく舞い降りたフウカが突然現れた大樹に目を丸くしていた。

 

「実はほにゃららほにゃらら〜〜ってことがあってさ。あわよくば果樹園を作れないかなぁなんて思ったり思わなかったりしてたの」


「フウカお姉ちゃん、これって何の樹か分かる? ベリーできるかな?」


「果樹園? ベリー?」


 夢を語る私とフユナを見たフウカの目が点になる。やがて、何か可哀想な人でも見るかのような視線を向けながら実際「可哀想だけどフユナ……」と語り始めた。あの、私は?


「残念だけどこれはただの『樹』よ。それ以上でもそれ以下でもない、本当にただの樹」


「……え?」


 ズガ〜〜ン! フユナに雷が落ちた瞬間だった。


「本当に……? もっと成長すれば……」


「フユナ。お姉ちゃんはね、あなたのためなら心を鬼にして真実を伝え続けるわ。この何の変哲もない樹に夢の果実はできないの。少なくとも人間の食べ物じゃないわ」


「えと……クルミも? ドングリも? リンゴ……も?」


「できないわ」


「そん……な……」


 ズガガガ〜〜ン!

 トドメの三連雷でいよいよフユナはその場に崩れ落ちた。


「そう落ち込まないで。大丈夫、使い道はあるわ。アタシの風魔法で切り刻んでやれば木材になるし、なんなら今すぐ怒りの業火でキャンプファイヤーをしてもいい。ルノに頼んで氷像の刑に処してやれば綺麗なオブジェにもなるわ。どれがいい?」


「……ううん、いいの。ありがとうフウカお姉ちゃん」


 落ち込むフユナをよしよしと撫でながら物騒な提案をするフウカに、フユナは全てを悟ったように微笑んだ。ていうかこんなに自然に厳しい妖精王が存在してもいいんだろうか? 


「フウカ、ちょっといい?」


「なに? 今はフユナの介抱で忙しいんだけど」


「うん、まぁ、それは有難いんだけどあんまり物騒ことはしちゃダメね? 一応こういう可能性も受け入れての結果だから一つの経験として見守ってあげて」


「そうなの? だったら仕方ないわね。……仕方ないけどアタシはフユナの笑顔が見たかったわ。くうぅッ〜〜……!!」


 そんなこんなで、小さな種から始まった物語は何故かポッと出のフウカが一番悔しがるというよく分からない結果に終わったのでした。




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