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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第192話〜物理のにゃんたこと不死身のランペッジ〜


〜〜これまでの登場人物〜〜


・ルノ (氷の魔女)

 物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


・サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

 ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


・フユナ (氷のスライム)

 氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


・カラット (炎の魔女・鍛冶師)

 村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


・グロッタ (フェンリル)

 とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


・ランペッジ (雷の双剣使い)

 ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


・スフレベルグ (フレスベルグ)

 白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


・レヴィナ (ネクロマンサー)

 劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


・コロリン (コンゴウセキスライム)

 ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


・フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

 魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。


・にゃんたこ (神様)

『天空領域・パラディーゾ』にその身を置く神様。『遊び』と称して様々な強者を襲撃する事が多々あり、その中でもルノは『当たり』らしい。


・フウカ (妖精王)

 妖精の秘境『妖精郷』に住まう妖精の王。神様とは友人関係にあり、その実力も折り紙付き。風の魔法を得意としており、中でも【風刃・風華】は風魔法最強を誇る力を持っている。


・プウ、ペエ、ポオ(小鳥の親子とリス)

 小鳥の親がプウ、子がペエ、リスがポオ。ペエのみが人間に変身できる魔法陣を身体に刻まれており、人間になってはプウやポオと一緒に村へ行ったりルノの家に遊びに来たりなどして美しい歌声を披露している。


・ライカ(獣王)

 グロッタを以上の体躯と金色の体毛が特徴の獣の王様。何かあれば自ら動くところから同胞からの信頼も厚い。出会いが出会いなため、ルノからは『勘違いライオン』の烙印が押されている。


 

 ある日のこと。

 カフェでのんびりしようと村を訪れた私の耳に突如として聞こえてきたのは、鈍器で何かを殴りつけるような音と立て続けに響き渡る悲鳴だった。


 視線の先にいたのは木製の双剣を構えた金髪の青年、ランペッジさん。

 あれは村の一角で行われている『一本取ったら勝ち』のアトラクション(?)であり、今ではすっかり見慣れてしまったある意味村の名物の一つである。

 言ってしまえば当たり前の光景なので、私も特に気にかけることもなく元気にやってるなぁくらいの気持ちで微笑ましく思いながら横を通り抜けようとして。


「ルノさん! 助け――」


「んっ?」


 バキャ! 


「ぎゃあああ!?」


 再び鳴り響く鈍器の音と悲鳴。そして何やら私に向かって片手を突き出しながらパタンと前のめりに倒れるランペッジさん。

 手合わせ中にも関わらず助けを求めるなんて勝負に真剣なランペッジさんにしては珍しい。まるでどこぞの規格外に延々と勝負を強いられているかのようだ。


「って、なんだ。相手はにゃんたこ様か」


 なら当たり前か、と一目で納得。ランペッジさんと対峙していたのは自前の杖を構えた神、にゃんたこ様だった。

 どうやら景品のロッキの結晶を絶賛乱獲中らしく、ランペッジさんが起き上がったのを確認すると慣れた手つきで杖を振り上げてすぐに次の勝負に突入している。

 このままではサンドバックにされて景品を奪われるだけの何の生産性もない時間を過ごすことになる――というランペッジさんの視線を受けるも、しかし残念ながら挑戦者のにゃんたこ様は次の一撃を見舞うべく上段に構えた杖を振り下ろしている真っ最中なので、私には見守ることしかできない。


 バキャ!


「ぎゃあああ!?」


「じゃあもう一本」


「待っ――」


 バキャ! バキャ! グシャッ!


「ぎゃああああ!?(×3)」


 連続で三本。餅つきの如く立て続けに打ち下ろされる杖と地面にめり込むランペッジさんを見ていたら、さすがに止めざるを得ないかと、良心に突き動かされた私はその場に割って入った。目の前で立ち止まった以上、このままスルーしたら見殺しにしたみたいで後味が悪いしね。


「にゃんたこ様ストップストップ。こういう商売をしてるのはランペッジさんなのでそれは私が突っ込むところじゃありませんけど、せめて起き上がるまで待ってあげましょ。起き上がったら、打つ。起き上がったら、打つ。それで」


「違うだろ!?」


 と、ここでようやくめり込んだ地面から顔を引き剥がして起き上がるランペッジさん。

 さすがに不死身の称号は伊達ではなく、土で汚れてはいても顔は綺麗さっぱり元通りとなっている。やはりベテランは違うな。


「心配するだけ無駄だったみたいですね。ほら、歯、食い縛らないと次が来ますよ」


「そう思うなら助けてくれ! さっきから連続で挑戦してくるから休む暇もないんだ! このままではヤバい!」


「その割にはキレイなお顔してますけど。……あ、勘違いしないでくださいね? イケメンとかそういう意味じゃないです。褒めてません」


「なんでもいい! とにかく間へ!」


 本当にどうでもよさそうに言いながら勝負の場に私を割り込ませるランペッジさん。勝手に壁にしないで欲しいんですけど。


「ふぅ……ようやく一息つけるぜ。いや、本当に危なかった」


「この状況で一息つける度胸に驚きを隠せませんね。別に私が挑戦してあげてもいいんですけど? ん〜〜?」


「まてまてまて、これには深い事情があるんだ! オレだって心が痛い!」


 やりきった表情でキリッと「ようやく一息つけるぜ」とか言ってたくせに? というツッコミはさておき、私の内から滲み出る闇のオーラに気圧されたランペッジさんは深い事情とやらを説明し始めた。

 聞くところによると、本日は客足もイマイチで暇を持て余していたところ、ついにやって来たお客さんのにゃんたこ様に「いくらでもかかってくるがいいッ!!」と調子に乗ってしまったのが事の発端らしい。

 本人としては、次のお客さんが来たら交代くらいの軽いノリだったらしいが結果はご覧の通り。勝負は延々と続き、ようやく現れた私も所詮はただの通りすがりなので、今この場にいる挑戦者は相変わらずにゃんたこ様だけだ。


 つまり状況は変わらず。にゃんたこ様が再び杖を振り上げた。


「数えるのも面倒になってきたから『十本取ったら終わり』に変更しよう」


「ひぃッ!? ルノさ――ぎゃあああ!?」


 そしてバキャ!!! っと。

 静かに聞いていたと思ったらついに痺れを切らせたにゃんたこ様が杖を思い切り振り下ろした。ちなみに位置が位置なので巻き添えをくらいそうだった私はササッと華麗に回避しておきました。


「じゃあ次いこうか。二本目ならまだ余裕だよね」


「待て!? 上手いこと言っても誤魔化されんぞ! 休憩! 休憩タイムを要求する!」


「どうせ続くんだから一緒。少しは足掻いてごらん」


「ち、ちくしょう! こうなった思い知らせてやるぜッ!!」


 それからのランペッジさんは思いのほか奮闘し、回数を重ねるにつれて回避に成功したり、当たらずとも反撃に移るなどし、最後に至っては『カラット・カラット』まで使用しての激しい勝負でけっこう楽しめた。

 とは言ってもやはり相手はにゃんたこ様。最後まで立ち向かう姿には感動したが、それだけで実力差が無くなるなら苦労はしない。結構その後もランペッジさんは何度も地面にめり込んでは立ち上がり、一方的な蹂躙は景品の箱が空っぽになるまで続いたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 それから数日後。


「あっ、にゃんたこ様」


 今日も今日とてカフェでのんびりしようと思い村を訪れると偶然にゃんたこ様に出会った。


「そういえば昨日、ランペッジさんがロッキの結晶を譲ってくれって家に来ましたよ。これでしばらくはもつぜ、とか言いながらロッキの結晶を袋いっぱいに詰めて――」


 隣に並びながらふと思い出した出来事を話す。すると、私の言葉を聞いたにゃんたこ様は「いいね」と言いながら、心做しか目を輝かせて進行方向を変えた。せっかくだからカフェに誘おうと思ったのに。


「それは後でね。まずはこっち」


「こっちって……あ」


 わけも分からずついて行った先。そこにはランペッジさんがいた。


「ちくしょう! 売りやがったな、ルノさん!?」


「いや、全くの偶然ですけど……なんかすいません」


 正直ちょっと申し訳ない気持ちもあったが来てしまったのはしょうがない。

 せめてもの償いとして、私は観客としてランペッジさんの健闘を祈りながら最後まで見届けることにしたのでした。


























 一時間後。


「空になっちゃいましたね」


「…………」


 地面に顔をめり込ませたランペッジさんを背後に、私とにゃんたこ様は空になった景品の箱を見つめていた。たしか百個近くはあったはずなんだけどなぁ。


「ツケておけばいいよ」


 言いながら、ランペッジさんの元まで歩み寄って杖を振り上げるにゃんたこ様。まさか一振り一結晶で景品はまた後日なんて恐ろしいことする気じゃないだろうな。


「あの、流石にこれ以上ペッタンペッタンしたらランペッジさんが借金まみれになっちゃいますよ。今日はここまでにしてカフェでのんびりしましょ! ご馳走しますから!」


「……仕方ないね」


「ほっ」


 そんなこんなで物理に目覚めてしまったにゃんたこ様をなんとか宥めた私は、去り際に両手を合わせてランペッジさんが無事に復活することを祈ってからその場を後にしたのでした。





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