第191話〜コロリンのコロコロ奮闘記 その3 終わらない恩返し〜
〜〜これまでの登場人物〜〜
・ルノ (氷の魔女)
物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。
・サトリ (風の魔女・風の双剣使い)
ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。
・フユナ (氷のスライム)
氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。
・カラット (炎の魔女・鍛冶師)
村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。
・グロッタ (フェンリル)
とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。
・ランペッジ (雷の双剣使い)
ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。
・スフレベルグ (フレスベルグ)
白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。
・レヴィナ (ネクロマンサー)
劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。
・コロリン (コンゴウセキスライム)
ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。
・フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ
魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。
・にゃんたこ (神様)
『天空領域・パラディーゾ』にその身を置く神様。『遊び』と称して様々な強者を襲撃する事が多々あり、その中でもルノは『当たり』らしい。
・フウカ (妖精王)
妖精の秘境『妖精郷』に住まう妖精の王。神様とは友人関係にあり、その実力も折り紙付き。風の魔法を得意としており、中でも【風刃・風華】は風魔法最強を誇る力を持っている。
・プウ、ペエ、ポオ(小鳥の親子とリス)
小鳥の親がプウ、子がペエ、リスがポオ。ペエのみが人間に変身できる魔法陣を身体に刻まれており、人間になってはプウやポオと一緒に村へ行ったりルノの家に遊びに来たりなどして美しい歌声を披露している。
・ライカ(獣王)
グロッタを以上の体躯と金色の体毛が特徴の獣の王様。何かあれば自ら動くところから同胞からの信頼も厚い。出会いが出会いなため、ルノからは『勘違いライオン』の烙印が押されている。
今日も今日とて冬の寒さに負けじと生い茂る芝生の上を、私もまた負けじと転がっています。
コンゴウセキスライムモードと人間モードを気分次第で使い分け、ジグザグに転がったり、最高速度を記録すべく草原の端から端まで高速コロコロ運動をしたりなどなど、とにかく気の向くまま転がり続け――その結果、ルノに「年頃の女の子が外で転がり回るなんていけません!」と注意されることがよくありますが、こればっかりは私の血がそうさせるので仕方ありません。こうして一人でコロコロしていなかったらまたひと騒動起きていたことでしょう。
「コロコロ〜〜コロコロ〜〜。コロコロリ〜〜ン」
さてさて。習性に身を任せて『コロコロ散歩』を続けていると一時間などあっという間。やがて草原のど真ん中にたどり着いた私はボンッと音を立てて人間の姿に戻り、仰向けに寝転がりながら大きく深呼吸をして体の中をリフレッシュさせました。これにて日課は終了です。
「さてと。天気もいいですし村にでも行きましょうかね」
視線の向かう先は地元の村、ヒュンガル。
たまにはスローライフ好きを自称するルノのように時間を忘れてカフェでのんびり過ごすのもいいかもしれない。そんな風に思ったはさっそく村へと続く道を歩き始めたのでした。
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村へ到着、そしてカフェまでの道すがら。
普段であればやかましいくらいの大声で客引きしているドーナツ屋さんのおじさん――ルノが言うところの『ドーナツおじさん』の声が聞こえてこないことに疑問を感じた私は、立ち寄る予定も無かったドーナツの露店の近くで足を止めました。
一歩、二歩、三歩……ゆっくり近付いてみるもやはりまだ聞こえない。いつあの大音声が聞こえてくるのかと変にドキドキしてしまいますが、ついに何事もなく露店の目の前にたどり着いてしました。
「あの大声が原因でクビに、なんてオチならちょっと面白いんですけどね。どれどれ?」
そんなことを思いながら『ドーナツ』と書かれた幟の影からそっと店内を覗き込み、僅かに会話が聞こえたと思った次の瞬間。
「じゃあ行ってきます」
「わっ。ちょっ――」
ドンッ!
お店から出てきた誰かと正面衝突した私は情けなく尻もちをついてしまいました。
あまりに急な展開だったので『コンゴウセキ魔法』で防御もできず、普通の人が味わう普通の痛みをお尻に感じ、至って普通に「いたた……」と顔をしかめてしまいました。
「す、すいません、大丈夫ですかっ!?」
そんな私を見て駆け寄って来たのは、パッと見ルノやレヴィナと同い年くらいの女性でした。
未だに尻もちをついたままの私の目の前でしゃがみ込んだと思うと、目線を合わせて改めて「大丈夫ですか?」と心配そうな眼差しを向けてきます。
そして頭から足先まで一通り視線を走らせると、次の瞬間には私の背後に回り込み、両脇に回した手にグイッと力を込めて、優しく立ち上がらせてくれました。
「いやいや、そんな子供じゃないんですけど」
「ふふっ、そうですね。お怪我はありませんか?」
どことなくお子様を見る目に納得がいきませんでしたが、それはそれとして、お互い様な状況だと判断した私は彼女と同じように謝罪しました。「いえいえ、こちらこそ」と。
「すいません、よそ見しちゃってて。えっと……」
「本当に大丈夫ですよ。怪我もありません」
言いながら何も問題無しと示すように地面に着いた手をヒラヒラして見せると、しかしお姉さんは安心するどころかギョッとする始末。事故直後は痛みを感じにくいなんて聞いたことがありますけど、まさか手のひらがゴッソリ抉れてるとか?
「……本当に大丈夫ですけど」
そんな馬鹿なと思いつつも一応の確認だけすると、多少の汚れはありましたが服と同じで少し叩けば落ちる程度の軽いものでした。妙な恐怖を与えないで欲しいですねまったく。
「あっ、ちゃんと消毒しないとだめですよ! お父さん、怪我人!」
「お父さん? って、うわ……!」
意味も分からず手を引っ張られる私は勢いのまま露店に連れ込まれました。
「お〜〜なんだ、お嬢さんとこの子じゃないか! 怪我したって?」
「うげ、やっぱりいた。いえ、私は身に覚えが無いんですけど……」
はて? と思いつつ、色んな部分の説明をお姉さんに求めたのですが、当の本人は私とおじさんだけ残して裏の方でゴソゴソと何かを探しています。
今更ですけどあのお姉さんはどこのどなたでしょうか。お父さんと叫びながら堂々とお店を物色する辺り、少なくともお客さんではないようですが。
「ふむ……じゃあそういうイベントっぽいので手っ取り早く聞いちゃいましょう。もしかしてそのお姉さん、おじさんの娘さんですか?」
「そうそう! 実は娘が久しぶりに会いに来てくれてなぁ! おじさん、今日は気分が良いからいくらでもサービスしちゃうぞ!」
「へぇ」
思いがけない暴露をしたおじさんはいつも以上に元気な声で「はっはっはっ!」と笑いながらスキップでこちらまでやって来ました。そして流れるような動きで差し出したのは揚げたてのドーナツ。意味が分かりません。
「どういうことです? 頼んでませんけど」
「状況はよく分からんが待ってる間ヒマだろう? サービスだから遠慮なく食べていきな!」
「ほう? ではありがたく」
よく分からないのは私も同じですが、とりあえず先程の件があるので手だけ洗わせてもらってから併設されたベンチに腰を下ろしました。
本当ならカフェの予定でしたけどサービスなら断る理由もありません。少しばかりやかましいという欠点はあってもドーナツ作りの腕は確かなおじさんの好意にぜひ甘えておきましょう。
「それにタダですしね。ふっふっ……」
ラッキーと心の中でガッツポーズ。遠慮なくいただきます――と言おうとしたその時。
「待ってくださいっ!」
「戻って来た……」
いざ実食! の絶妙なタイミングで現れたのは救急箱を持ったお姉さんです。
だからさっきから何を大袈裟にと思ったのも束の間、「手を貸してください」と言われた私は「はいはい」と半ば投げやりに片手を差し出し、空いているもう片方の手でドーナツを食べることにしました。
揚げたての絶品ドーナツに舌鼓を打っていると、「次は反対です」と再び声をかけてくるお姉さん。もはや返事もせず、解放された手にドーナツ持ち直して言われた通りにもう一方の手を――
「なんですこれ?」
不思議なことに、先程までお姉さんにいじくられていた方の手に包帯が巻かれていました。僅かにツンとくる消毒液の匂いと包帯と来れば治療されたのは一目瞭然。何故に?
「よく見てください。ここにも同じように擦り傷があります」
私の手のひらをチョンとつつくお姉さん。そこは確かにうっすらと赤くなっており、言われてみると僅かにヒリヒリするような気がしました。
「そう……ですね。一応、と言っていいレベルですけど」
「これは『怪我をしている』って言うんです。原因となってしまった私が言えたことないですけど……」
「まさかこの怪我の治療をするために私をここへ?」
「…………」
私の言葉に無言で頷くお姉さん。予想以上に重く受け止められていた事実にドーナツを食べる手を思わず止めてしまいました。
指摘されてようやく意識する程度の軽い怪我なのに。現に私は全く気にしてなかったのに。
「あの、念の為にお尻もいいですか?」
「はっ?」
若干、天然発言が聞こえましたけどこれも素なのでしょうか。
「う〜〜ん。ふざけてる……訳ではなさそうですね」
シュンと項垂れるお姉さんは至って真面目でした。だからと言ってこの場でお尻を見せるなんて真似は絶対にしませんが、こんな無傷に等しいものを怪我認定した上に親身に治療までしてくれる……世の中には素晴らしい人がいるんですね。
「ちょっとそこのお父さん。純粋に育て過ぎたのでは? 私が男性だったらどうなってたか分かりませんよ」
「はっはっはっ! 自慢の娘だからなぁ!」
「左様ですか」
今のやり取りの間に治療を終えたお姉さんが救急箱を片付けながら「静かにっ!」と、まるで入院患者を気遣うように人差し指を口に添えておじさんを注意していました。
父親の背中を見て育ったならああはならないハズなので恐らく母親の方の影響でしょう。ちなみに顔もあまり似てません。
「ここまでしてもらっては申し訳ないので何かお礼をしなきゃですね。ドーナツは別にしても色々と貰いすぎちゃいました」
「とんでもありません。そんなことしてもらったら終わらなくなってしまいますよ。いいですか? 今のは加害者が被害者にお詫びをした、というだけなんです。それに対してお礼されてしまっては延々とループしてしまいます」
「ではお姉さんが堪えてください。私はお礼をしますので」
「とんでもありません。そんなこと――(以下省略)」
「あの、もしかしてすでにループしてます……?」
思いのほか強情なお姉さんは引く気は無い様子。ですが、ここまで良くしてもらってタダで引き下がるのは私としても後ろめたさが残ってしまいそうなので。
「じゃあ名前だけ教えてください。今後、何か困った時は私が力になる、ということで覚えておいてあげます」
「とんでもありま――」
「これ以上はループさせません!」
「むぐっ!?」
ドーナツを揚げながら面白そうに見ているおじさん顔負けの大音声で一刀両断。問答無用で口を押え、最後に「これは決定事項です」と無言の圧力を加えてお姉さんを黙らせました。
「わ、分かりました。ではそういうことにしましょう。……クレープです」
「どこの誰が好物のことを聞きました? 名前ですよ。お・な・ま・え」
「ですからクレープです。私の名前は『クレープ』といいます」
「…………」
クレープ。いったい何を言ってるのでしょうこの人は。
「ちょっとそこのお父さん。娘さんがこんなことを言ってますけど」
じろっと目を向けるもおじさんは笑顔で頷くばかり。嘘は言ってないぞ、ということでしょうか。
「怪しいですねぇ。おじさんはともかくお姉さんはそんなキャラじゃないと思ってたんですけど……もしかして私を謀ろうとしてるとか? 言葉にするのは恥ずかしいですけど、お姉さんはすごく優しくて良い人だから意地でもお礼をさせないために話を逸らせてるって可能性はありますね。う〜〜む……」
なんにせよこの私を謀って有耶無耶にしようとするなら許せません。そんな思いを込めた視線をお姉さんにぶつけて尋問は再開されます。
「で、どっちです? あなたは私をハメようとする『腹黒お姉さん』ですか? 過ぎるが付く程の『優しいお姉さん』ですか?」
「たしかに私はそんな出来た人間じゃありませんけど腹黒ではありません! 正真正銘、私の名前は『クレープ』です! お父さんも笑ってないで何か言って!」
「はっはっはっ! いいじゃないか! 友達同士、気が済むまでやりな! ほら、ドーナツの差し入れだぞ!」
「もぉ〜〜っ!?」
圧をかけたり、涙目で弁明したり、終始笑い続けたりなどなど、自分で言うのもあれですけど賑やかでちょっと楽しくなってきました。
結局、最後の最後まで自分の名前はクレープだと言い張るお姉さんに圧をかけ続けましたが結果は変わらず。良くしてもらった手前、私もドーナツを三つ食べた辺りで身を引くことにしたのでした。
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それから一時間後。
「あっ、そうだ! 私、おつかい頼まれてたの忘れてたっ!?」
なんやかんやあった末に一緒にドーナツを食べていたお姉さんが突然の声を上げました。そういえば私とぶつかる直前に「行ってきます」なんて言ってましたね。
「どこへ行くんです? 自称『クレープ』のお姉さん」
「も〜〜まだ言ってる。いえ、私は元々すぐそこの山までベリーを採りに行く予定だったんですよ。ドーナツのトッピングに使うやつなんですけど……」
「そうそう。でもあの山には猛毒の『トリカブベリー』があるから気を付けろってな!」
「トリカブベリー? あれならちょっと加熱処理すれば問題なく食べられますよ」
思い出すのは数日前、朝食の席でのこと。
ルノが新発見だと喜んで持ち帰ったトリカブベリー。猛毒として知られるそれが、簡単な加熱処理で絶品のソースに生まれ変わったのは驚きでした。ホットケーキにつけて食べた感動は今でも忘れません。
「本当ですか? そんな簡単なことで食べられるなんて初耳ですけど」
「まぁ、作者の力で最近そうなったので知らないのも無理ありません。山に入ってちょっと脇道に逸れれば結構たくさん見つかるはずですよ。健闘を祈ります」
「脇道、ですか。う〜〜ん……そうだ!」
パンっと手を合わせて立ち上がるクレープ。何故かその目は光り輝いており、しかも私を熱心に見つめていました。嫌な予感しかしません。
「ふふっ、さっそく困ったことになりましたよ」
「そうですか。何を期待してるのかはこの際どうでもいいですけど私はこの場から動きませんからね。今日はのんびりスローライフと決めてるんです。ドーナツはタダですし」
「ねぇお父さん。この子、さっきなんて言ってたっけ?」
「何でも一つ言うことを聞く、だったなぁ」
「そこまで言ってませんけど!?」
私の叫びも虚しく、クレープは出かける準備を始め、おじさんは「よろしく頼む!」と絶妙に遠い安全地帯で頭を下げていました。
お礼をしたい気持ちに嘘はありませんが、少なくとも今日はもうそのつもりは無かったので気が進みません――と嘆いたところで後の祭り。なぜなら既に準備を終えたクレープが目の前にいるんですから。
「仕方ないですね。私も恩知らずな真似はしたくありませんから特別に秘密のベリー収穫ポイントに案内してあげますよ」
「ふふっ、ありがとうございます。えっと……」
「んっ?」
気持ちを切り替えていざ出発。そんな私を正面から見つめるクレープは言葉を詰まらせていました。
「……あぁ、そうでしたね」
名前を聞いておいて自分は名乗っていないことに今更ながら気が付きました。恩人にとんだ失礼を。
「コロリンです。ほら、行きますよクレープ」
「はい、コロリンちゃん」
思わぬ出会いから始まり、二人きりでの山歩きに発展するなど誰が想像できたでしょう。少なくとも私の予定では今頃カフェでのんびりしているはずでした。
慌ただしい展開の変化でしたが、こうして出かけてみれば『優しい』を絵に描いたようなクレープとの時間はあっという間に過ぎ去ってしまいました。
後の話題のネタになるのは間違いなさそうですね。
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その日の夜。
「なにこのベリーの山? レヴィナ、これ知ってる?」
「あっ、それ……。コロリンさんがお土産のベリーだと言って置いてましたよ……。たしかクレープがどうとか楽しそうに話してくれたんですけど……最後にお礼にならないだとか、誰のために採ったんだとか、複雑そうに呟いててちょっとよく分からなかったです……」
「ふ〜〜ん? 村で美味しいクレープ食べて気分良くなっちゃったのかな? で、普段からお世話になってます〜〜ってことで私のために採ったベリーだったけど、帰ってきてレヴィナしかいなかったから激おこ、って感じか」
「ひどいっ……!?」
「あはは、冗談冗談。にしてもこんなに沢山どうしようか。普通のベリーならそのまま食べても良かったんだけど……これ、ほとんどトリカブベリーだよね。加熱処理は確定だからまた前みたいにソースにしちゃう?」
「いいですね……! 明日の朝はホットケーキにしましょう……!」
「――ということで、分けてもらったベリーは家族みんなで美味しくいただきましたよ。結局、道案内しただけになってしまったのでお礼ができたかは疑問ですけど」
「そんな。私も初めての土地だったので案内してくれたのは本当に助かりましたよ。それより、その流れだと私ってコロリンちゃんに食べられちゃってますよね? ちゃんと誤解は解きましたか?」
「説明がややこしかったのでそのまんまですよ。どうしてもと言うなら顔を合わせた時にでもまた改めて紹介しますので、それまでは『美味しいクレープ』として生きてください」
「も〜〜」
こうして、今日も今日とてドーナツの露店で面白おかしく過ごした私は、昨日と同様に『美味しいクレープを食べて帰ってきた』ということになったのでした。
めでたしめでたし。