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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第十八話〜グロッタと散歩〜




「そういう訳だからグロッタ。散歩に行こうか」


「はい! 突然ですね」


「暇になっちゃってね」



 なんせ今日は、フユナがサトリさんとの特訓に行ってしまったからね。同じ理由だからカフェにいっても仕方ないし。



「んじゃ、てきとーに歩こうか」


「……? 草原ではないのですか?」


「ずっと同じ場所ってのもつまんないでしょ? 今日は私がついて行くから、山に行こう」


「ははっ! 分かりました」



 どうやら喜んでくれたみたいだ。一気にテンション上がったのが分かる。



「とりあえず今日は山頂まで登って、休憩して、帰ってこよう。特に目的はないからゆるーくね」


「分かりました! お任せ下さい!」



 いや、だからそんなに気合い入れなくていいからね?



「ところでルノ様。今日はこのままでよろしいので?」


「うん。今日は誰もグロッタに驚かないって設定にしとくから、自分を解放してのんびりしなよ。捕食するのはなしね」


「それなら大丈夫です! 氷漬けになりますので!」


「またドMなこと言ってる。そんな事したら置いていっちゃうからね」


「ハァハァ」



 あ、ご褒美になっちゃうのか。



「ま、いっか。ほら、レッツゴー」


「ははっ!」



 今日はゆるーくがコンセプトだから深く考えないでおこう。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 山を歩くこと数分。


 ちょくちょくスライムに遭遇した。



「お、雷のスライムだ。おりゃ」



 カチーン!



「グロッタ。これなら食べてもいいよ? 美味しくないかもだけど」


「ぜひ、いただきます!」


「グロッタってほんとに何でも食べるよね。駄目なものとか無いの?」


「さすがに岩を食べたりはしませんよ」


「ふーん?」



 もはやそういうレベルか。



「ムシャ。スライムの雷と、ルノ様の氷でひんやりピリッしてなかなかですな」


「へぇー」



 そういうアイスあるよね。シュワシュワのラムネが入ってるやつ。



「それにしてもこの辺の山は平和だよね。グロッタは暴れたくなったりしないの? そうなったら困るけど」


「そうですね……わたくしは割と食べられればいいやみたいな所があるので、食事さえあればそんなことにはなりませんよ」


「なんかすごく納得出来るなそれ。たしかにグロッタが暴れた話ってカラットさんを食べようとしたやつくらいだね。……いや、私自身が襲われたね。助けたのに……『馬鹿め!』って……」


「あ、あれは……申し訳ございません……しかし! 助けて頂いたお陰でこうしてルノ様やフユナ様と散歩する事ができ、快適に過ごさせてもらってます! 感謝してます!」


「ふむふむ。特に意識してなかったけどそれなら良かったよ」



 さらに歩くこと数分。



「ん? なんか聞こえるね」


「なにか打ち合う音ですかな?」


「ふーむ」



 私はなんだろうと思いながら音のする方へ進んでみた。



「あ、フユナだ。サトリさんもいるね」


「ここで特訓していたのですね」


「ちょっと覗いてみようか。あ、バレないようにね。文字通り覗くだけだから」


「ルノ様が行ってあげれば喜ぶのでは?」


「だめだめ。今は特訓中だし、師匠と水入らずの時間を邪魔しちゃ悪いよ」


「なるほど!?」



 いや、だから! 声が大きいよ!



「ん? なんの声かな?」


「どうしたの? サトリちゃん」


「なんかグロッタみたいなアホっぽい声が聞こえたような。気のせいかな」



 私は咄嗟にグロッタを魔法で小さくして隠れていた。



「うぐぐ、アホだと……! ひどすぎる!」


「こ、こら。うるさくしたらバレるでしょ……グロッタはそのサイズでも声でかいんだからね……」



 私は音を消して、急いでその場から離れた。ちなみにグロッタのサイズは元に戻しました。



「いやー焦っちゃったよ。あの二人いつもあんな風にやってるんだね」


「フユナ様もサトリもいい動きでしたな!」


「ロッキの街でも驚いたけど、どんどん強くなってるのは嬉しい限りだね。あっという間に追い越されちゃいそうだ」


「またまたご冗談を! わたくしにこんな強力な魔法陣を施しておいて!」


「ははは! もっと強力なやつにしてあげようか?(ニコリ)」


「ぜひお願いします」


「だめ」


「ガク……」



 あれで足りないとか、どれだけドMなんだこの狼は!



「そういう意味じゃグロッタも結構な強さだよね。キャラのせいで台無しだけど」


「ふふん! なんたってわたくしはフェンリルですからね! ルノ様こそ魔法で右に出る者はいないんではないですか?」


「どうかな? 確かに氷の魔法に関してはそれなりに自信あるけど」


「ご自分で覚えたのですか?」


「うん、そうだよ。私、氷の魔法が好きでね。そればっかりやってたんだ。いつしかマンネリ化して、こんなのんびり生活になっちゃったけど」


「それはきっと極めてしまったということですな! わたくし、ルノ様程の氷魔法は見た事ありません!」


「んーそれだと氷の魔女を堂々と名乗れるから嬉しいね」



 そんな会話をしているといつの間にか山頂に到着していた。



「ずっと喋ってたからあっという間だったね。そこで休憩しようか」


「ははっ!」



 という訳で、お馴染みの売店で適当なパンやら飲み物やらを購入した。そして腰を下ろしたのはもちろん、あの泉の前。



「綺麗な泉ですな」


「あ、グロッタは初めてか。ここね、フユナと出会った場所なんだよ。泉と一緒に凍ってたの」


「おぉ! たしかにどことなく神聖なオーラを感じるような……!?」


「たぶんそれは気のせいだよ」



 うん……久しぶりに来たけど懐かしいな。今度はフユナも連れて三人で来ようかな。



「そうだ。さっき魔法の話してて思ったんだけどさ。グロッタ、珍しい氷の魔法とか知らない?」


「それなら、フェンリルに伝わる氷魔法がございますよ!」


「へぇ。見てみたいな」


「お任せ下さい! では、あそこの岩を。……ガウガウ!」


「なにしてんの?(笑)」


「ふふん、あれを見てください!」



 ゴシャ!



 なんと泉の向こう側にある岩が粉々になっていた。いつの間に!



「すごい! なにあれ! グロッタが急にアホな子になったから見逃しちゃったよ」


「ひどすぎる!」


「もう一回やって、もう一回!」


「お任せ下さい! ……ガウガウ!」


「ぷぷっ!」



 ゴシャ!


 おぉ、地面から氷の牙が出てきて岩を噛み砕いた。かっこいい!



「それ私にも教えてくれない?」


「はい! ルノ様の頼みとあれば!」


「あっ、でもあのかけ声? 詠唱? は恥ずかしいしどうしよう……」


「自分で聞いておいて!」


「はは、冗談だよ。ぜひ教えて!」


「ははっ。といっても、魔法はご覧になられたので、あとはイメージをすればルノ様ならできるはずですよ!」


「ガウガウって言わないとだめ?」


「正直、そこはそれっぽい詠唱をしていただければ大丈夫かと」


「ずいぶんゆるい魔法だね……」



 それからしばらくグロッタにも一緒に詠唱文を考えてもらった。その気になれるやつ。



「よーし。んじゃ、やってみるよ!」


「期待してます!!」




『迫る終焉……氷の牙……全てを砕け! 怪狼・フェンリル!』




 ゴシャ! バキバキバキ!!



「ルノ様!?」


「……」



 気付いた時には既に手遅れ。

 目の前の木々が氷の牙に飲み込まれてしまいました。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 私達は、あれからすぐにその場を離れた。



「ふぅ、あぶないあぶない。バレたら絶対怒られてたね」


「あの様子ならルノ様の地位はしばらく安泰ですね……」


「はは、ちょっと騒がしくなっちゃったけど今日は楽しかったね」


「うむ、そうですな!」



 うん、良かった。目的を決めて行くのもいいけど、そればっかりだと窮屈になっちゃうからね。


 と、そんな時。



「あれ……ルノ? グロッタも」


「おや、お二人さんデートですかい?」



 特訓帰りの二人にばったり会った。



「違います。ただの散歩ですよ」


「偶然だな。アホっぽい声のグロッタだぞ」


「え?」



ブチッ!



「ぎゃあああ!?」


「妙な事言ったら覗いてたのバレるでしょ!」


「ははっ!」


「グロッタ? 何か言った?」


「はい。山頂でルノ様が木々を根こそぎ」



 ブチッ!



「ぎゃあああ!?」


「フユナとの想い出の場所って言ったでしょ! 元に戻るまでその事は隠蔽するの!」



 ブチッ! ブチッ!



「わかりました! わかりましたから!」


「あっ、ルノ! グロッタのこといじめちゃだめだよー!」


「えっ、違うよ。毛繕いしてあげてるんだよ。てへ」


「ふーん……」


「せっかくだし、ルノちゃんもグロッタも一緒に帰ろうよ」


「そうですね」


「うむ」



 そうして、私達は四人揃って下山し、少しだけ慌ただしい日は終わりを告げたのでした。






「あ、そうそう。フユナ? しばらくは山頂には行っちゃだめだよ。色々あって色々あったから色々大変なの」


「? う、うん……? わかった」


 そういう事になりました。


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