第166話〜コロリンのコロコロ奮闘記〜
〜〜登場人物〜〜
・ルノ (氷の魔女)
物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。
・サトリ (風の魔女・風の双剣使い)
ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。
・フユナ (氷のスライム)
氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。
・カラット (炎の魔女・鍛冶師)
村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。
・グロッタ (フェンリル)
とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。
・ランペッジ (雷の双剣使い)
ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。
・スフレベルグ (フレスベルグ)
白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。
・レヴィナ (ネクロマンサー)
劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。
・コロリン (コンゴウセキスライム)
ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。
・フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ
魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。
・にゃんたこ (神様)
『天空領域・パラディーゾ』にその身を置く神様。『遊び』と称して様々な強者を襲撃する事が多々あり、その中でもルノは『当たり』らしい。
・フウカ (妖精王)
妖精の秘境『妖精郷』に住まう妖精の王。神様とは友人関係にあり、その実力も折り紙付き。風の魔法を得意としており、中でも【風刃・風華】は風魔法最強を誇る力を持っている。
ある日のこと。
「ルノ、お友達と遊んできますね」
お昼ご飯を食べ終えてさっそくとばかりに立ち上がった私は、空になった食器を片付けつつこれからの予定を告げました。その言葉を受け取ったルノは食後のコーヒーを飲みながら、何故だか戸惑いの表情と共に同じくお昼ご飯を食べ終えてコーヒーを飲んでいるフユナとレヴィナへと視線を彷徨わせます。数秒後、何かを悟ったルノは私を見つめ返しながら――
「コロリン。私も行こうか?」
「……」
何を悟ったかは分かりませんがその潤んだ瞳は間違いなく可哀想な子(私)を見ていました。「遊んできますね」と言ったにも関わらず一人で出ていこうとしたものですから孤独な時間を過ごすとでも思ったのでしょう。まったく失礼な。
「言っておきますけど今日はプウ、ペエ、ポオと遊ぶんですよ。一人じゃありません」
「プウペエポン? ……そうだ、フユナとレヴィナも行く? おやつでも持って皆でのんびりさ」
だから!
「小鳥の親子とリスと言えば分かりますか」
「あぁ、あの子達のこと? いつの間にか名前までつけてあげてたのね」
ようやく理解してくれたのかホッと一息つくルノ。事前にこのことを話しておいたフユナとレヴィナはルノの妙な勘違いを眺めながらクスクスと笑いを堪えています。
ちなみに小鳥の親がプウ、子がペエ、リスがポオ。
「ではそういう事なので今度こそ行ってきますね」
「うん、行ってらっしゃい。スライムに気をつけるんだよ」
「はい」
そんなこんなで本日は小鳥の親子とリス――プウ、ペエ、ポオとヒュンガル山でのんびりスローライフ。偶然出会ったあの日からすっかりお友達になってしまった私達は、こうして時々引き寄せられるように同じ時を過ごすようになっていました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
麦わら帽子を被って家を出た私を迎えてくれたのは、ひと足早く家の前で待機していたプウ、ペエ、ポオの三匹でした。五分前行動とは感心感心――などと思っていたら一時間程前にはやって来ていて、グロッタやスフレベルグと仲良く遊んでいたみたい。なんにせよ良いことです。
本日の目的地である『ヒュンガル山』には十分程歩いて到着しました。
「さてと……まずは注意事項です。山に入ってからですが、美味しそうな木の実が沢山あってもはしゃぎないこと。そこまでの危険はありませんが、急にスライムが現れたりしたら危ないですからね」
「ピピッ!」
「ピィ〜〜!」
「キキキ!」
浮かれ気味の声の数々に若干の不安が残るものの、この子達も自然を住処にしている立派な動物達なので心配はいらないでしょう。万が一、襲われたとしても私の『コンゴウセキ魔法』にかかればイチコロです。
「え? いつかの天変地異に比べればへっちゃら? あはは、確かにそうかも。ルノはスライムなんかと比べ物にならないような暴君ですからね」
そんな冗談を交えつつ、両肩付近を飛び回るプウとペエ、足元を歩くポオと共に緑の木々に彩られた山道をゆっくり進んでいく。ある時は道を外れて綺麗な草花に見惚れたり、またある時は耳に届く水のせせらぎに導かれてひたすら川沿いを歩いてみたりなどなど。
やがて小一時間が経とうとしたその時でした。
「「ピピピ〜〜♪」」
「キキ〜〜♪」
何を嬉しそうに、などと考えるまでもありませんでした。三匹が一直線に向かっていく先にあったのは、ここへやって来た目的である木の実の数々――グロッタとスフレベルグに教えてもらったという、美味しい木の実がなる立派な樹でした。あまりの興奮からか、はしゃぎ過ぎないようにとの言葉はどこかへ消え去ってしまったようです。
その証拠に。
「「ピィ〜〜!?」」
「キィ!?」
目の前ではプウとペエが空中で絡み合って落下したり、ポオが木の根っこに足を引っ掛けて転がったりなどなど。だから言ったのに……
「まったくもう。はいはい、木の実は逃げたりしないから落ち着いて」
そんな言葉も虚しく、何事も無かったかのようにピョンと元気良く起き上がった三匹は相変わらずのハイテンションで木の実の元へ。怪我もない様なのでとりあえずは一安心ということにしておきますか。
「はしゃぎたくなる気持ちも分かりますからね。ふむ……木の実のことは詳しくないですけどいい香り。これは食べられるのかな?」
遅れて到着した私を出迎えてくれた色とりどりの木の実達。一際甘い香りを漂わせる赤い実を手に取ってみると、その特徴から一目でベリーの類だと分かりました。一つ目から大当たり。さっそく味見でもしてみましょうか。
と、その時。
「キッ!」
「あっ、私のベリー!?」
なんということでしょう。私が今にも口に放り込もうとした至高のベリーが足元にいたポオによってビシッと叩き落とされてしまいました。いいでしょう、そっちがその気ならベリーの無念を私自らの手で晴らしてやります。
――と、思いきや。
「え? それは毒のある『トリカブベリー』って? ……なんだ、反抗期かと思っちゃったじゃないですか」
トリなのかカブなのかベリーなのかはさておき、今回は命拾いしました。防御には自信があるものの、毒への耐性に関してはまた別ですから。
「見た目や香りだけで判断しては危険と。どうやら私も気持ちが昂って視野が狭く……なんです?」
ポオから新たな教訓を得るのと同時にホッと胸をなでおろしていると、代わりにポイッと手に乗せられたのは先程のトリカブベリーと何ら変わらない赤いベリーでした。何故に?
「なるほど、分かった上でこの私に毒を盛ろうとするなんて悪い子ですね。お仕置しなければ」
「キ〜〜!?」
とまぁそれは冗談。パッと見ただけでは区別がつきませんがこちらは毒のない美味しいベリーなんだとか。ポオのモフモフのしっぽをこねくり回しながら貰ったベリーを頂くとそれはもう美味でした。
「う〜〜ん、甘酸っぱい。カフェのケーキも良いですけどこういった自然の味もなかなか癖になりますね」
「ピピ〜〜!」
「ピィピィ!」
つまみ食いの末にベリーの虜になってしまった私がうんうんと頷いていると、これでもかとばかりに次々と新しいベリーが降ってきました。言うまでもなくプウとペエです。
「わわっ。ちょ、こんなに食べきれませんってば」
気を利かせてくれたのは大変嬉しいのですが、量が量だけに素直に喜べないのが難しいところ。ポオに至っては真っ赤なベリーに埋まってしまいどこにいるのかも分からなくなって――あ、出てきた。
「よし、それじゃあこうしましょう。この分は休憩がてら今からみんなで食べる。残りの分はお土産に。自然の恵みに感謝しながら美味しく頂きましょうね」
両手で山盛りに掬った分は本日のおやつ。残りは袋に詰めてお持ち帰り。少しばかり多い気もしましたがこれだけあればルノ達も喜ぶでしょう。
「はい、じゃあいただきます」
「「ピピピピ〜〜♪」」
「キキッキ〜〜♪」
そのままの流れでベリーを恵んでくれた樹の根元に腰を下ろしていざ実食。食卓こそありませんが、同じ場所で同じベリーを食べる私達の姿は見る人が見れば家族と言っても遜色の無い関係に見えたことでしょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さてと」
なんやかんやと盛り上がって当初の予定以上のベリーを食べ終わった頃には既に夕方に差し掛かっていました。楽しい時間はなんとやらですね。
「名残惜しいですがそろそろ帰りましょうか。……ん?」
帰ろうとした矢先のことでした。地面に張り付いたお尻がもう少しゆっくりしたいと主張する中、チラリと隣の方へ視線をずらすとそこには帽子部分に所狭しと詰め込まれたプウ、ペエ、ポオの姿がありました。どうやら疲れて眠っているようです。
「私の大切な帽子がベッドに……仕方のない子達ですね」
あれだけはしゃいでいたのですから当然と言えば当然ですね。起こしてしまうのも可哀想なので、ベリーが詰まった袋と重量の増した麦わら帽子を優しく抱き抱えて出発することにしました。とんだ大荷物です。
「ふぅ、これじゃまるで子守りをするお母さんですねぇ」
ゆっくりと歩を進めながらなんとなしに視線を落とすと、そこには今もスヤスヤと眠りこける三匹……とベリーが。自分の元で全ての信頼をおくように無防備な姿をさらけ出してしまわれてはそれも悪くないなんて思ってしまいますね。何より癒される。
「ルノもこんな気持ちなんでしょうか。いや、私のことは換金目的で持って帰ってきたとか言っていたような」
もし本当にそうなっていたらカラット辺りに売り飛ばされてあの槍でカチ割られた末に武器として加工され……今頃は双剣となってフユナに振り回されていたかもしれませんね。
「プウとペエで言うと焼き鳥にして食べられる、みたいな」
「「……っ!?」」
不意に漏れた言葉にビクッと反応を示すのはもちろんとプウとペエ。何か怖い夢でも見ているみたい。
「この世は弱肉強食ですからね……焼いて食べちゃうぞ……?」
「「……っ!?!?」」
「あはは」
面白いくらいに反応するのでついついからかいたくなってしまいますね。どれ、じゃあ次はポオを。
「え〜〜と、丸呑みしちゃうぞとか? それとも……」
そんなしょうもないことを考えながらボ〜〜っと歩いているのが運の尽きだったのでしょう。こんな山の中で弱肉強食を語ってしまうなんて我ながら馬鹿でした。
「……え?」
突如、ヒュンと何かが目の前を横切る。あまりにも不意をつかれた出来事に思わず立ち止まって視線を上に向けてみると、飛び立って行ったその何かはスライムでありながら飛行能力を持った『トリスライム』でした。そしてその口に咥えられているのは一匹のリス――すなわちポオ。と、ここまでで約数秒。この状況では命取りでした。
「あ。……ちょ、ちょっと待って!?」
私が走り出した時には既にトリスライムの姿は周囲の木々によりも上空にありました。スピードはそれ程でもありませんが、空を飛ぶ手段が無いこちらとしてはそれだけでも脅威。同じ飛行能力を持つプウとペエに至っては突然のことに怯えきってしまって麦わら帽子の中で震えています。やはりここは私が何とかしなければ。
「私の前で弱肉強食を語るつもりですか。コンゴウセキスライムを怒らせるとどうなるか教えてあげます!」
早速とばかりに唱えたお得意の『コンゴウセキ魔法』は、あらゆるモノにコンゴウセキの超防御力を付与する魔法。それを今も抱えているベリーにかけ、カッチカチの弾丸を完成させればあとは簡単。
「それっ!」
自身にもかけたコンゴウセキ魔法によって少しばかり強化された身体能力も相まって、ベリーの弾丸はそこらの大木程度なら撃ち抜ける威力となっていました。ポオに直撃したら大変なことになりますがそこは自分のコントロールを信じるのみです。
ところが。
「あ、おしい!?」
とは言いましたが実際のところ当たる気配は皆無でした。もちろん、私のコントロールが皆無な訳ではなく!
「スライムとはいえ流石はトリですね。こしゃくな……!」
ぶつくさ文句を垂れながらも一発、二発、三発。その全てがもれなく星になって空の彼方へ消えていきました。このままでは埒が明きません。
ので、走りながら一つお願いを。
「プウ、ペエ。このままではポオが危険です。私はあの憎きトリスライムを見失わないように追いますのであなた達はルノを呼んで来てください。家の場所は分かりますよね?」
「「ピ、ピィ……!」」
「大丈夫。怖くない、怖くない。さ、お願いしますよ?」
震える背中を押すようにプウとペエを空中に優しく放り投げ、無事に飛び立つのを見送ると再びトリスライムに視線を戻しました。
「さてと。ああは言いましたが、あくまでも私の手でお仕置できるのが一番ですからね。覚悟!」
ただ眺めているだけなど以ての外。なにより今も空中で怖い思いをしているであろうポオを想うと心が痛む。こんな状況に陥れてしまった自分自身を不甲斐なく思いつつもそれは後だと言い聞かせ、一刻でも早く助けるために私は全力をもってトリスライムへの狙撃を再開しました。
そして数分間の激闘の末ようやく――ぐしゃ!
「あれ? 当たった……?」
放ったベリーが十発目に差し掛かった時のこと。ここに来て覚醒したであろう一撃が美しい尾を引く煌めく彗星となって、狙い違わずトリスライムを貫きあっという間に絶命させました。少々納得のいかない幕切れを前に、ポオが腕の中に落ちてくるその時まで私が棒立ちになっていたのはここだけの秘密にしておきましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「見ましたか? 私の一撃。外れたと思い――いえ、むしろ外れたはずなんですけどそれでもトリスライムを見事に撃ち抜いて『パァン!』って響いたあの音。いきなり覚醒しすぎた気もしますけどおかげでポオもバンジージャンプしただけで済みましたね」
「キキ〜〜」
終わってみれば実に呆気ないものでした。結局、助けを呼びに向かったプウとペエも撃ち抜かれたトリスライムが見えたのか、ルノを連れてくることなく戻って来ました。
「でもポオが無事で本当に良かったですよ。プウとペエもよく頑張ってくれましたね」
全てが終わり、改めて帰路に就く私の腕の中には再び麦わら帽子に仲良く収まった三匹と、少しばかり量を減らしたベリーの袋がありました。今回は多少のベリーが犠牲になっただけで済みましたが毎回こう上手くいくとは限りませんね……と、静かに反省。
「はい、ただいまっと。せっかくなので入りますか?」
「ピィ!」
「ピピッ!」
「キキキ!」
帰り着いた見慣れた家を前に、ぜひどうぞとお誘いの言葉を投げかける。せっかくなのでフユナとレヴィナにもこの子達を紹介してあげようと思ってのことです。
「ただいま帰りましたよ。おや?」
慣れた足取りで廊下を進みリビングの扉を開けると、そこにはルノ、フユナ、レヴィナの他にももう一人、見知った顔の人物がいました。
「あ、おかえりコロリン。ついさっきにゃんたこ様も来てさ」
「そうなんですね。いらっしゃいにゃんたこ」
それは神様を名乗るルノのお友達、にゃんたこ。ここ最近はすっかり我が家に馴染んでしまったおかげで、もはやなんの驚きもなく受け入れてしまいました。せっかくなのでお土産のベリーも分けてあげるとしましょう。
「これは私とこの子達からのお土産……あ、ちょっと?」
テーブルの上にベリーの詰まった袋を持っていこうとしたその時。プウとペエが視界に捉えたにゃんたこに向かって一直線に飛んで行き、両肩に着地したかと思えばそのまま寛ぐように丸まってしまいました。安心して羽を休めるその姿は私以上に信頼を預けているようで、まるで命の恩人に感謝の意を示しているような……なんだか妬いてしまいますね。
「あなた達、飼い主が妬いてるよ」
「別に妬いてませんけど!?」
的外れもいいところだ。私の見事な狙撃でも見せてあげましょうか。
「残念だけど今日は帰り道にちょっと寄っただけだからもう行くよ。またね」
「え、にゃんたこ様もう帰っちゃうんですか? せっかくお茶でも入れようと思ったのに」
同感。ですがにゃんたこにもにゃんたこの予定があるのでしょう。猫のように気まぐれなだけかもしれませんが。
「じゃあお土産は沢山あるので少し持っていったら――」
どうです? と、その言葉を言い終わるよりも早く、プウとペエが袋から摘んだベリーをにゃんたこに渡しました。先程から行動がお早いことで。
「……くれるの?」
「「ピピ〜〜♪」」
「そう。ありがとうね」
にゃんたこが微笑みながらプウとペエを撫でるその様子はなんだかとても珍しい光景でした。そして出遅れたポオも負けじと一つ二つとベリーを持って駆け寄ると、同じように微笑みながら受け取るにゃんたこ。
そして最後にポオを優しく撫でながら。
「必死に頑張ってくれたお友達に感謝だね」
「……! キキキ〜〜♪」
「???」
イマイチよく分からない言葉と共にこちらをチラリ。そして何の事か問い詰める間も無くにゃんたこは帰ってしまいました。ポオは何かに気付いたようでしたがいったい?
「ピピ〜〜!」
「ピィ!」
「キキ、キ〜〜♪」
う〜〜ん?
「なんかにゃんたこ様のことで盛り上がってるみたいだよ?」
「ベリーをプレゼントできたことがそんなに嬉しかったのでしょうか?」
謎は深まるばかりですが動物には動物にしか分からない世界があるということなのでしょう。よく分かりませんがにゃんたことも良い関係を築けたみたいなので何の問題もありません。
「じゃあ私達は私達でコロリン達のお土産を食べようか。えっと、プウとペエとポオだっけ。君達も一緒に食べよう」
「そうですね。フユナとレヴィナにもちゃんと紹介しますからどうぞ座って」
とは言っても椅子では大きすぎますし、テーブルの上ではお行儀が悪くなってしまいますので自然と私の膝の上、ということに。そのままルノと共にフユナとレヴィナが席につくのを待っていると――ポトッ、ポトッ、ポトッと三つのベリーが私の手に乗せられました。
「もう少し待ってくださいね。すぐにフユナとレヴィナが」
「ちょっと違うんじゃない?」
「……?」
たしかに。言うなればこれは先程にゃんたこにベリーをプレゼントしていた時と同じ雰囲気です。
なるほど、これは――
「「あ、り、が、と、う」」
と、言っている。ルノも同じ解釈をしたとなればこれは私の勘違いではないみたいですね。何に対してかまでは分からないみたいですが私にはしっかり伝わりました。
なので。
「どういたしまして」
真っ直ぐ過ぎる感謝の言葉を前に、隠しきれない照れ笑いを浮かべながらその一言だけ返しておきました。
あれくらいの奮闘は当然ですよ、と。
そんな意味を込めて。