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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第165話〜冷え症のレヴィナさん〜


〜〜登場人物〜〜



・ルノ (氷の魔女)

 物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


・サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

 ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


・フユナ (氷のスライム)

 氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


・カラット (炎の魔女・鍛冶師)

 村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


・グロッタ (フェンリル)

 とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


・ランペッジ (雷の双剣使い)

 ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


・スフレベルグ (フレスベルグ)

 白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


・レヴィナ (ネクロマンサー)

 劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


・コロリン (コンゴウセキスライム)

 ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


・フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

 魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。


・にゃんたこ (神様)

『天空領域・パラディーゾ』にその身を置く神様。『遊び』と称して様々な強者を襲撃する事が多々あり、その中でもルノは『当たり』らしい。


・フウカ (妖精王)

 妖精の秘境『妖精郷』に住まう妖精の王。神様とは友人関係にあり、その実力も折り紙付き。風の魔法を得意としており、中でも【風刃・風華】は風魔法最強を誇る力を持っている。



 それはレヴィナとのんびり村を散歩をしていた時のこと。


「うぅ、寒い。早く春にならないかなぁ……いや、春は花粉が辛いからやっぱり夏……は暑いから秋がいいなぁ」


「私は冬が好きですよ。アイスが特に美味しい季節って感じで……」


「それなら夏じゃない? レヴィナって本当にアイス好きだよね」


 などとツッコミつつもその気持ちが理解出来る部分もある。炬燵に入りながら食べるアイスは最高だもんね。


「さてと。んじゃ休憩がてらホットな店内でアイスでも食べようか」


「アイス! だったらあっちにしましょう……!」


「ちょ、えぇ!?」


 どこからそんな元気が出てきたのか、アイスと聞いた瞬間に私の手をグイッと引っ張り、行こうとしていたカフェではなくレヴィナお気に入りのアイス屋へ連行されてしまった。

 そして手慣れた様子で買ったアイスは一個、二個……三個、四個と、何故か一人一個ではなく二個。両手にアイスとなった私とレヴィナは仲良く噴水広場までやって来てベンチに腰を下ろした。


「あの、レヴィナさん? なんで両手にアイスなんですか? それにここ、全然温かくない……」


 あくまでもアイスが美味しいのは夏、または炬燵に入った状態のどちらか。少なくとも極寒の噴水広場でという今の状況は間違っている!


「もしかして一つで良かったですか……? なら一つもらっても……?」


「あ、うん。いや、そうなんだけどそうじゃないような……」


 微妙に話が食い違っているような気がするけどまぁいいか。

 私はせめて足だけでもと思い、ベンチから立ち上がり真後ろにある噴水の水を魔法で温めてにゃんたこ様式の噴水足湯を完成させた。


「う〜〜ん、極楽極楽。はい、んじゃこっちのアイスはあげるね」


「あ、ありがとうございます……!」


 パァっと喜びに満ちた表情を見せるレヴィナは本当に嬉しそうだった。アイス一つでここまで喜んでくれるとこちらまで嬉しくなってしまう。まぁ、買ったのはレヴィナなんだけど


 ――なんて思っていると。


「うひゃ!?」


「え……?」


 ここでまさかの不意打ち。アイスの受け渡しの際にちょこっと触れたレヴィナの手が氷のように冷たかった。


「あの、どうかしました……? やっぱりあげない、とか……?」


「いや、そんな意地悪はしないけど、レヴィナってば寒くないの? アイスの食べ過ぎで身体までアイスになってるよ」


「えぇ……?」


 私の言葉に困惑気味のレヴィナだが、こちらも決して冗談で言っている訳ではない。目を閉じていたらどちらがアイスか分からないんじゃないかな。


「レヴィナも一緒に入ったら? にゃんたこ様式噴水足湯」


「じゃあ遠慮なく……あっつい!?」


 チョンとつま先を入れただけでこの慌てよう。やはりアイスの食べ過ぎで身体までアイスになっているようだ。ちなみに噴水の温度は温めたとはいえ普通のお風呂かそれよりぬるいくらいなのだが……なんて感じに少々冷めた目で見つめていると。


「私、冷え症なんですよ……」


 とのこと。だから私にとっては気持ち良くてもレヴィナにとっては熱く感じたらしい。


「お風呂に入る時なんかも全身浸かるまで時間かかっちゃうんですよ……。ゆっくり足先から温めていかないといけなくて……」


「ははぁ、冷え症も大変なんだねぇ」


 それなら今度温泉に行ったら背後からお湯をぶっかけてみようか。ザブ〜〜ンっとね。


「あの、ルノさん……なんか悪いこと考えてません……?」


「あはは、何のことかな? それよりこのアイス美味しいね」


 などと白々しいことこの上ないセリフを言いつつ大きなくしゃみを一つ。どうやらレヴィナとの付き合いはいかに寒さと向き合うかが鍵になっているのだと実感した瞬間だった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 その日の夜。


「ひゃあああ!?」


 すっかり夜も更けて全員が寝静まった頃、突然コロリンが奇声を発しながら私の方にゴロンと逃げるように寝返りをうってきた。怖い夢でも見てしまったのだろうか?


「よしよし。怖くないよ〜〜?」


「何を勘違いしてるのかなんとなく予想できますけど違います。なんか布団の中で冷たいモノが足に……」


「冷たいモノ?」


 逃げる程の冷たさとなるとそれこそ氷の類になってくるが、それが布団の中にあるかと問われたら少々疑問だ。もしかして寝ぼけたフユナが氷のスライムに戻ってるとか?


「それはないね。なぜならここにかわいい寝顔があるもん」


 私の左側にはかわいい天使が絶賛熟睡中だ。そうなるとフユナの暴走という線は消えたことになる。残る原因はただ一つ……というかコロリンが逃げてきた方を見れば『氷のように冷たいモノ』の正体は一目瞭然だ。


「やっぱりレヴィナか。まさかこんなところでも冷え症の弊害が……」


「一人で納得してないで助けてくださいよ。……ひゃあ!? また触ってきた!」


「こら。みんな寝てるんだから騒がないの」


「だ、だって……!?」


 私も昼間にレヴィナの冷え症には驚かされたので物申したいコロリンの気持ちはよく分かる。だが深夜に騒いでは迷惑なのでここはひとまず落ち着かせて……はて、どうしたものか。


「それならルノがもうちょっとそっちに詰めてくださいよ。もしくは場所を交換してください」


「詰めるのは構わないけどそれやるとフユナがサンドイッチになっちゃうよ。場所の交換は……あはは」


 苦笑いと共に思い出されるのは昼間の光景。うひゃ!? なんてみっともない声をあげる自分は客観的に見るとなかなかに恥ずかしい姿を晒していたんだなと思う。なので場所の交換は却下!


「まさかこの私を見捨てる気ですか! このっこのっ!」


「わ、分かったから落ち着いて。仕方ないなぁ」


 吹雪から逃れるように私の身体を乗り越えようとするコロリンは早くも冷え症モードのレヴィナにお手上げのご様子。もしかして今後は私がレヴィナの隣で寝ることになるのかな? 奥からフユナ、コロリン、私、レヴィナってな感じに。


「それは別に構わないんだけど冷たいのは困るな。……そうだ」


 別に大して悩むことでもなかった。靴下を履かせる。それで終わり。


「んじゃこの靴下を……あ、こら、逃げないでよ」


「うぅん……くすぐったい……!」


「ぎゃ!?」


 不意打ち再び。靴下を履かせることに集中していたところ、私の顔面目掛けて放たれた氷の槍(レヴィナの足)が突き刺さった。寝ぼけているんだろうけど容赦ないな。


「いたた! 鼻血出てるし……!?」


「まだやってるんですか? もう諦めたらどうです?」


 鼻血が滴る私をよそに、場所を交換した瞬間に手のひらクルリンしたコロリンが快適そうな表情でそんな提案をしてくる。当然、引く気は無い!


「鼻の恨みを思い知れ!」


「むにゃむにゃ……!」


「ぎゃあ!?」


 そこから約一時間。快適な睡眠のために奮戦する私の顔面に突き刺さった氷の槍の数はもはや数えるのも馬鹿らしくなるほどに。そして右足、左足と靴下を履かせることに成功した時にはすでに私の顔面は血塗れになっていたことをここに記しておく。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 人知れずベッドの中で激戦が繰り広げられた日の翌朝。


「ひえっ! ルノさんの顔面が酷いことに……!?」


 そんな奇声を発しながら飛び起きのは珍しく早起きのレヴィナ。おかげですぐ隣で寝ていた私も目が覚めてしまった。


「てか人の顔見ながらその言いようはあんまりだよ」


「あ、すいません……でも本当に大丈夫……あれ? 私、靴下なんて履いて寝たかな……?」


 キョトンとしながらそんなことを言う姿からも分かる通り本人は昨晩の出来事を覚えていない様子。まぁ、起きてたらあんな乱暴なことしないもんね。


「で、昨日はよく眠れたかな?」


「え? 言われてみればいつもよりポカポカしてて快適だったような……もしかしてこの靴下のおかげ……?」


「そうかも。これからは寒い時それを履くといいよ。じゃないとまた私が血塗れになっちゃう」


「よく分かりませんけど……ありがとうございます……?」


 何はともあれこれで冷え症対策はバッチリ。今後は突然の冷たさに驚くこともないだろう。









「ねぇ、コロリン。なんでルノは血塗れになってるのかなぁ?」


「あぁ、フユナは寝てたから知らないんですね。あれはレヴィナがやったんですよ。氷のように冷えきった足でそれはもう何度もね」


「えぇ!? やっぱりそうだったんですか……!? 夢かと思って……ごめんなさいルノさん……!?」


「あはは、気にしないでいいよ」




 めでたしめでたし。



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