第159話〜氷の魔女・パワーアップ計画〜
〜〜登場人物〜〜
・ルノ (氷の魔女)
物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。
・サトリ (風の魔女・風の双剣使い)
ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。
・フユナ (氷のスライム)
氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。
・カラット (炎の魔女・鍛冶師)
村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。
・グロッタ (フェンリル)
とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。
・ランペッジ (雷の双剣使い)
ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。
・スフレベルグ (フレスベルグ)
白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。
・レヴィナ (ネクロマンサー)
劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。
・コロリン (コンゴウセキスライム)
ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。
・フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ
魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。
・にゃんたこ (神様)
『天空領域・パラディーゾ』にその身を置く神様。『遊び』と称して様々な強者を襲撃する事が多々あり、その中でもルノは『当たり』らしい。
・フウカ (妖精王)
妖精の秘境『妖精郷』に住まう妖精の王。神様とは友人関係にあり、その実力も折り紙付き。風の魔法を得意としており、中でも【風刃・風華】は風魔法最強を誇る力を持っている。
新年の挨拶回りを終えた日の翌日。
昨晩、遅くまで続いた新年会の反動か、我が家の家族達はお昼前だというのに未だ熟睡中。本来であれば私もこの空気に逆らうことなく惰眠を貪っていたいところではあったが珍しく目が冴えてそんな気分にはなれなかった。
「昨日の反動が違う意味で来てるのかな。寝起きなのにアドレナリン全開だよ……」
なんでもいいから魔法をぶっぱなしたい。そんな気分だ。私もだいぶフウカやにゃんたこ様に毒されてしまっているらしい。
「フウカににゃんたこ様……か。いい加減追いつきたいものだよ……はぁ」
思い出される昨夜の光景。私が編み出した【幻蝶・氷華】はあのにゃんたこ様にすら届きうるほどの成果を上げ、お褒めの言葉を頂いたほどだった。しかしその数分後には対策を立てられてしまい悲惨な結果に終わった――というのが昨夜の出来事。帰り際、追い討ちとばかりにフウカが言った「そんなの初見殺しなだけよ」という言葉には思わず涙を流したほどだ。
「あ、思い出したらまた涙が……ぐす」
いかん、悪いことを引きずるのは悪い癖だ。気持ちを切り替えなければ。
「前向きに前向きに……よっし。久しぶりに特訓でもしてみよう。打倒フウカ。打倒にゃんたこ様だ」
みんなの眠りを妨げないようにえいえいお〜〜と心の中だけで気合を入れていざ出陣。漲るやる気と溢れる魔力をもって、私は成長した未来の自分に思いを馳せるのであった。
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自宅のすぐ横に広がるお馴染みの大草原。そのど真ん中までやって来た私は冬の空気に晒されながら目を閉じ、瞑想を開始。寝起きにしてはなかなかの集中力を発揮していた。
「ん、魔力は問題なし。いくぞ」
まずは景気付けに一発。そう思った時だった。
「「ピピッ〜〜♪」」
「ありゃ。君たちは……」
どこからともなくやって来た親子と思しき二匹の小鳥が私の両肩に止まった。さらに足元を見れば身の丈ほどもあるモフモフの尻尾を引き連れたリスまでいる。いつかコロリンと仲良くなった小動物達だ。
「そういえば君達もあけましておめでとうだね。せっかく来てくれたのにアレだけど、今から魔法の特訓するからここにいたら危ないよ?」
「ピピピ!」
「違う違う。別に自然破壊するわけじゃないから大丈夫だよ。なんなら草原一帯に結界を張って流れ弾がいかないようにするから安心して。はい、いい子いい子。……って、お〜〜い?」
全てを理解した小鳥の親子とリスだがなかなかこの場を離れようとはせず、むしろ戯れ始める始末。平和な光景につい笑みがこぼれるがこれでは景気付けの一発なんてとても無理だ。
「仕方ないなぁ。それなら少しだけ面白いモノを見せてあげよう」
なにもバンバン魔法を連発するだけが特訓ではない。『量より質』という言葉があるように、百匹の蝶より一匹の蝶のほうが良い成果を生むこともあるのだ。なので――
「舞い踊れ、零の導き。【幻蝶・氷華】」
手のひらから放たれたのはたった一匹の幻蝶。昨日はにゃんたこ様やフウカに対抗するために数の暴力を選んだが、やはり強力な分、あの数を放つには段階を踏んでいかなければならないという欠点があった。消費魔力、手間、それらを総合的に考えて出された結論がこの少数精鋭だ。
「いいねいいね。ほら見てごらん。綺麗な蝶だよ。捕まえられるかな〜〜?」
「「「〜〜♪」」」
広大な草原を飛び回る美しい幻蝶を追いかけ回す小鳥とリス。捕まえたとつついてみればヒョイと躱され、追いついたと思い飛びついてみればスルリとすり抜ける。そんな不思議な現象を目の当たりにしても、悪意がないと理解した小動物達は実に楽しそうだ。
「じゃあもう二匹追加。これで一匹ずつね。最初に捕まえた子にはご褒美があるよ〜〜?」
とは言ってもその名の通り蝶は幻なのでどれだけ頑張ったところで捕まえることなど不可能だ。ちょっと意地悪だったかな。
「でも……うん。いい感じ。おかげでだいぶ手に馴染んできたよ」
ヒュンヒュンと緩急をつけた動きはかなり生き物のそれに近付いている。自分の手足、とまではいかずとも近いレベルで操ることはできているので、この調子なら【大輪・氷華】と【グラスサークル】の補助が無くとも自由にコントロールできるようになるはずだ。
「なんだか特訓に付き合ってもらっちゃって申し訳ない……って聞いてないか。もういいや、とことん遊んであげるよ」
同じ特訓でも楽しい方がいいに決まってる。思えば初めて魔法を覚えたあの頃もこうして魔法の一つ一つに楽しみを見出しながらいつの間にか凄まじい特訓をこなしていたなんてことがよくあったっけ。懐かしいな。
「長らく忘れていたような気がする――ってこら。喧嘩しちゃだめ。一人一匹ずつって言ったでしょ? 仲良くしないと寒い寒いだよ!」
「「「〜〜っ!?」」」
「あははっ」
揉み合いを始めた小動物達にチョチョイと幻蝶による吹雪のお仕置きをしてやるとすぐに大人しくなった。これで一安心……と思いきや共通の敵が私になったことで連携攻撃を仕掛けてくる始末。出会った当初のような怯えが無くなったのはいい事だが遠慮なくつついたり齧ったりするのはやめて欲しいな。
「さてと。だいぶいい練習になったし君達にはお礼を言わないと――って痛い痛い! そろそろ齧るのやめて! ご褒美ならあげるから!?」
ツンツンガジガジ。ご褒美が貰えると分かるとやっとそれが止まる。もしやここまでの流れは計算だったのでは? なんて思ってしまうほどの見事な連携攻撃にたまらず降参の意を示した私は小動物達をグロッタとスフレベルグに預けてご褒美の件は同じ類の二人に見繕ってもらうことにしたのだった。
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その後、特訓のかいもあって私が操れる幻蝶の数は十匹までパワーアップし、意志を共有するかの如く完璧なコントロールが可能になった。手を上げれば空へ舞い上がり、適当な障害物をキッと睨みつければ意志を汲んで魔法をぶつけてくれる。完璧だ。
「ふっふっ……我ながら自分の才能が怖くなってくるね。今なら格付け第二位のフウカとならいい勝負ができそうだ。うふふ……!」
もう二度と初見殺しなんて言わせない。なぜなら幻蝶と氷の杖という組み合わせまで思い付いてしまったのだから。
「幻蝶で惑わせてずどん。私に近付いてきたなら周りで待機状態にさせておいた氷の杖で防御。隙の一つでも見せようものなら幻蝶&氷の杖、そして私による一斉射撃でずどん」
これはもう勝ったな。でも勝負するのはしばらく控えておこう。……別にしばらくの間は優越感に浸りたいからとか、また対策立てられてショックを受けたくないとかでは決してない。
「よし。今日はもう終わりだ。久しぶりの達成感が持ちいいなぁ。ふんふんふ〜〜ん♪」
と、鼻歌交じりに歩みを進めたその時だった。
「「「〜〜♪」」」
「お」
無事にご褒美を受け取ってきた小鳥の親子とリスがホクホクの表情で戻ってきた。それぞれが抱えているのは溢れんばかりの木の実が詰まった小袋――実際にポロポロと袋からこぼれ落ちているそれは、グロッタとスフレベルグが同じ動物としての立場から選んでくれた逸品だ。
「良かったね。でも落とした木の実は勿体ないからちゃんと拾うんだよ? ……無理か」
来た道をそのままなぞる木の実の道標。それを拾っては新たな木の実を落とし、拾ってはまた落とす。おかげで同じ道を何度も往復するだけの無駄な時間がひたすらに流れるばかりだ。
「そんなに欲張って貰ってこなくてもよかったのに。仕方ないから私が君達のお家までお届けに参りますよ」
本人達はそんなつもりはなかったのかもしれないが、特訓を手伝ってもらった私自信が何もしないというのも申し訳無いしね。
……しかしなんの恨みがあるのか、私の恩返しを邪魔するものが現れた。
「おうおう。変なのがいるな?」
「動物なんかと会話してやがるぜ。ボッチか? ゲラゲラ!」
目元まで隠すフード。物騒な棒切れを片手に喧嘩腰の言葉。新年早々チンピラが現れた。
「そっちが誰? 一応、ここは私の土地なんですが」
「は〜〜ん? 地面に名前でも書いてあんのか?」
「うわぁ、めんどくさい人……」
二人のうち背の低い方、チンピラBがそんないちゃもんをつけながら絡んでくる。そしてもう一人は――
「鳥にリスか。焼いて食っちまおうか!」
小動物達を隠すように立つ私の背後。つまり小動物達の前までやって来たチンピラAがリスを摘み上げた。小鳥の親子だけは飛んで逃げたようだが移動手段が地面しかなかったリスはそうもいかなかったようだ。
捕まってしまったリスはジタバタと暴れ、抱えていた袋の中身は地面に散乱してしまう。その行為は私の感情を爆発させるのに十分だった。
「離して」
「あん? お友達が捕まってご立腹ってか? だったら奪い返してみな!」
そう言って棒切れを握っている方の手を大きく振りかぶるチンピラA。話が早くて助かる。
「もう知らないからね!」
「ぐわっ!? こいつ……!」
サッとしゃがんで棒切れを回避した私はそのまま立ち上がると同時に拾った土をチンピラAの顔に投げつける。結果はご覧の通り、目に走る痛みに耐えきれず摘んだリスを振り落とした。
「よっ……と! 危ないから君達は逃げといて。……ごめんね」
相手の脇をくぐるように走り抜けた私は落下中のリスをそのままキャッチ。数メートルの距離を置いたところで解放してやった。これで目標はほぼ達成だ。
「ほぼ……ね」
残りの目標は言うまでもない。突然絡んできた名も知らぬチンピラ達の撲滅だ。
「この野郎……! おい、やっちまうぞ!」
「ったりまえだ!」
初動から接近。それだけの動きでこのチンピラ達が常人でないことは理解できた。一思いに撃ち抜いてやろうかと考えていた私は不覚にも少々驚いてしまった。
「それならそれでちょうどいいね。私達の力を見せてあげる」
私達、というのはもちろん私と小鳥の親子、そしてリスのことだ。
相手は常人ではないとしてもオーバーキルになってしまうのは明らか。それでも被害者にあの子達も含まれているのだから共に積み上げた力を見せつけるにはうってつけの相手だろう。
「「くらえっ!」」
先手を譲ったのはせめてもの情け。だが当然くらってやる気はさらさら無いので私は一発目を後ろに引いて躱し、追い打ちとして放たれた二発目は手で受け止めると同時にそのままずどん!
だが――
「!?」
相手の獲物はなんの変哲もない棒切れ。それがへし折るつもりで撃った【輝氷の射手】の弾丸を受けたにもかかわらず傷一つ無い。
「どうしたぁ!?」
「棒切れに手も足も出ないんじゃお友達は守りきれねぇなぁ!?」
一瞬の困惑を見逃さなかったチンピラがここぞとばかりに攻め立てる。剣術の類を学んでいるであろう攻撃はその身体能力も相まってなかなかの脅威。……しかしそれだけだ。
「また受け止めやがった!?」
「こいつ!」
キィン! っと一際高い音が響き渡る。同じ受け止めたでも今回は二本の氷の杖による防御だ。しかも受けたと同時に獲物ごと氷漬けにするオリジナル製なので相手は武器を手放さない限り逃げることもできない。
「立て直すぞ!」
「お、おう!」
武器を捨て距離を取るチンピラ達。気付いた点はさすがだが……もう遅い。
「舞い踊れ、零の導き。【幻蝶・氷華】」
凍り付いた棒切れを切り離すと同時、氷の杖の先端から放たれた幻蝶の数はそれぞれ五匹ずつ、計十匹。この数は長々と特訓に付き合ってくれた小動物達のおかげである。
「これが私の限界。だけど……あなた達はひとたまりもないよね?」
「ひっ!?」
「う、動けねぇぞ!?」
最後の最後、私の視界が捉えたのはチンピラ達が怯える表情。しかし同情の余地が無いことは当然ながらリスをつまみ上げたあの瞬間に決まっていた。つまり私が複数の氷の杖でチンピラ拘束し、とどめに幻蝶と氷の杖、全ての砲台を余さず使った強烈な一撃を叩き込んだことはこれまた当然のことなのでした。
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「やぁやぁ、無事に終わったよ。きっつ〜〜いお仕置をしたからもう大丈夫だよ」
「「「〜〜♪」」」
チンピラの撃退が完了し草原が静まりかえると、遠くで様子を見ていた小鳥の親子とリスが元気に駆け寄ってきた。ちゃんと逃げろと言っておいたのに仕方ない子達だ。
「それにしても失礼な輩だったよねぇ。結局なんだったのかな?」
「「「???」」」
一緒になって小首を傾げる私達だが答えは出ない。輩の気持ちは輩しか分からない、ってね。
「おっとと。また悪いこと引っ張る癖が。いかんいかん」
ここはひとまず前向きに考える。あれはただの実験台だ。……うん、スッキリした!
「そうだ。木の実がダメになっちゃったから新しいのを――って……」
どういう訳か小鳥の親子とリスは揃って先程落としてしまった木の実の元へ。どうやら袋だけは肌身離さず持っていたらしく、それにせっせと木の実を詰め込み始めた。
「「「〜〜♪」」」
回収完了。そんな意味を込めて私に袋を見せつけてくる。これが良いんだって。
「あはは。無事で良かったよ。君達も木の実もね」
そんなやり取りを経て今度こそ森に帰っていく。少々のトラブルはあったものの、全てがつつがなく終わりを迎えることができた。……と思いきや。
「あれ? また戻ってきた」
それはどこかで見たような光景。溢れんばかりの木の実が詰まった小袋――実際にポロポロと袋からこぼれ落ちているそれを拾い集めては同じ道を行ったり来たり。懲りない子達だ。
「ま〜〜た同じことしてるんだから。はいはい、私がお家までお届けに参りますよ。まったく……」
こうして私は全員分の小袋を片手に、小動物達の家まですたこらと歩いて行くのでしたとさ。
めでたしめでたし。
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「いてて……なんだよアレ!? 話が違うじゃねぇか!」
「蝶が出てきてもあねごは隙だらけって……動けねぇんじゃ話にならねぇよ! ゲラゲラ!」
怒りの込められた圧倒的な力に吹き飛ばされたチンピラ二人組は小動物達の住む方角とは真逆の森まで盛大に吹き飛ばされていた。命が助かっただけでも良かった、などと神に感謝しながら。
「まったく。使えないわねぇ。剣術だけはちょっとしたモノだと思ったらとんだマヌケじゃない」
やれやれ。そんなため息と共に姿を現したのは裏で糸を引いていた黒幕――妖精王だった。
「言っとくけどね。あの子を前にして友達や家族に手を出したらマジで殺されるわよ」
「今さらだな! ゲラゲラ!」
「変なモン飲ませておいてあんまりだぜ! ゲラゲラ!」
「最初に言ったじゃない。『ルノにふっかけろ』って。ま、結果的にちゃんと練習相手になってくれたからいっか。なんにせよあの子も腐らずに考えてるみたいで安心したわ。……後であの小動物達には謝っておくのよ」
つまりはそういうことだった。この一件は妖精王の気まぐれから始まった氷の魔女・パワーアップ計画。
ヒュンガルという名の村で棒切れをを使った遊びに興じていたところを妖精王に買われ『妖精の雫』によるドーピング、さらには魔法によって超強化された棒切れまで託されてのちょっとした依頼――ゲラゲラと特徴的な笑い方をするこの二人のチンピラ兄弟は当て馬として利用されたに過ぎなかったのだ。
「さてと。それじゃあアタシはそろそろ帰ろうかしら」
「まだやることがある」
と、ここで現れたのはもう一人の黒幕。
「そうだった。よろしくねにゃんたこ」
「ん」
にゃんたこと呼ばれた圧倒的な存在が手をかざすと二人のチンピラが光に包まれる。そしてわずか数秒。光から解放された二人の視界には森が広がるばかりで、お互いの顔を見合わせた兄弟は状況が理解できずにゲラゲラと笑うばかり。
「くす」
全ての真相は闇の中へ。妖精王と神の悪巧みが明るみに出ることは完全に無くなった瞬間だった。