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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
154/198

第153話〜フユナのカチコチ成長記 その5〜


〜〜登場人物〜〜



・ルノ (氷の魔女)

 物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


・サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

 ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


・フユナ (氷のスライム)

 氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


・カラット (炎の魔女・鍛冶師)

 村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


・グロッタ (フェンリル)

 とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


・ランペッジ (雷の双剣使い)

 ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


・スフレベルグ (フレスベルグ)

 白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


・レヴィナ (ネクロマンサー)

 劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


・コロリン (コンゴウセキスライム)

 ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


・フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

 魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。


・にゃんたこ (神様)

『天空領域・パラディーゾ』にその身を置く神様。『遊び』と称して様々な強者を襲撃する事が多々あり、その中でもルノは『当たり』らしい。


・フウカ (妖精王)

 妖精の秘境『妖精郷』に住まう妖精の王。神様とは友人関係にあり、その実力も折り紙付き。風の魔法を得意としており、中でも【風刃・風華】は風魔法最強を誇る力を持っている。



『改めてよろしくね、フユナ』


 そう言って優しい微笑みを向けるのは妖精の女の子でした。突然やって来たかと思えばグロッタと真っ向からぶつかったり、お魚を奪い合ったり。

 そんなお転婆な妖精さんがわたしのお姉ちゃんになったのはつい先日のことです。


「よいしょっと。いい天気だから遊びに来ちゃったわ」


「また来たのか貴様は。妖精王とやらは随分と暇なのだな」


「なにお。フユナに言いつけるわよ?」


「ふん、その前に食らい尽くしてやるわ! ガウッ!」


「いいわ。今度こそアタシが躾てあげる!」


 ……


「も〜〜またやってる」


 今日も今日とて挨拶と言うにはあまりにも激しいやり取りが繰り広げられています。ぶつかり合う風と氷。初めて会ったあの日を思い出させるその光景を前につい微笑ましくなってしまったので、わたしも二人に倣って『あの日』を繰り返します。


「こら〜〜暴れちゃだめでしょ〜〜!」


「ぐお」


 二人のお戯れに交じるようにぼふっ! っと。わたしはグロッタの首に飛び乗り、数秒だけモフモフの感触に癒されてから視線を前に向けます。


 そして――


「いらっしゃい、フウカお姉ちゃん!」


「やっほ〜〜フユナ」


 妖精のお姉ちゃんができたなんて未だに信じられない。そんなことを思いながら、わたし達は共に挨拶をしながら笑顔を交わす。


 それが今日という一日の始まりでした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 数分後。


 「ちょっとグロッタ。アタシのフユナが勝手に暴れだしたんだけど?」


「なにを寝ぼけている。フユナ様は貴様のモノではないし、あれは暴れているわけではなく特訓しているのだ」


「冗談よ。……でも意外ね。フユナみたいな子が刃物を振り回すなんてギャップがまた――」


「フユナ様の洗練された双剣捌きを刃物扱いするとは……」


 朝の運動がてら氷属性が付与された双剣『カラット・カラット』を振り回しているとそんな会話が聞こえてきました。チラッと視線を向ければ、珍しくも呆れ返るグロッタと興味深そうにこちらを見つめるフウカお姉ちゃんの姿があります。


「……え? な〜〜に〜〜?」


 何か言っています。


「気にしないで続けて! 相手をイメージするのも忘れないで! カッコイイわよフユナ!」


 とのこと。そう言われると余計に意識してしまい、途端に恥ずかしくなってきました。


「でも確かに……ただ振るってるだけじゃダメだよね。よし、サトリちゃんをイメージしよう!」


 そうと決まれば気持ちを切り替えなければいけません。サトリちゃん――師匠の教えに則って『決め手となる一撃』を終点とし、一連の流れを素早く!


「はい、隙あり」


「……え?」


 突如背後に現れたのは百メートル程の距離を置いた場所にいたはずのフウカお姉ちゃんでした。それだけではありません。手にしていたはずの双剣はいつの間にかフウカお姉ちゃんの手に渡り、わたしの頭にコツンと押し当てられています。


「み、見えなかった……全然……」


「あはっ! なんたってアタシは――」


 妖精王。そういうことでした。たったそれだけの説明で納得出来てしまうのはその動きあってこそのもの。圧倒的……規格外……そんな言葉がピッタリです。


「ごめんね、驚かせちゃって。だけどグロッタの話を聞いてるうちにフユナが本気で双剣の訓練をしてるんだって思ってつい……ね?」


「う、うん。それは全然いいんだけど……本当にすごいんだね。フウカお姉ちゃんは双剣も使えるの?」


「そんなんじゃないわ。今のはただスピードにモノを言わせただけ。触ったのは初めてだし剣技なんてからっきしよ」


「そう……なんだ……」


 驚愕の事実とはまさにこのことでした。いくら妖精王とはいえ、まさか初めて扱う武器でここまで圧倒されるなんて。サトリちゃんに師事してからそれなりの時間を経て、双剣の扱いに関してはちょっとしたものだと自負していたので受けたショックは思いのほか大きかったです。


「……」


「あ、違うのよフユナ。アタシが言いたいのはそういうことじゃないの。たしかに武器の扱いを学ぶのはとても大切よ。だけどね、それ以上に大切なのはそれを可能にする『身体』なの。そういう特訓はやってる?」


「身体?」


「そう。今のはアタシという極端な例ではあるけど、簡単に言ってしまえば最高まで身体を鍛えればある程度の技術の差はカバーできるモノよ。よく言うでしょ『当たらなければ怖くない』って。魔法にも言えることだけど、当てるにはスピードがいる。当たったなら次にダメージを与えるパワーがいる。そして最後にその二つを最大限に活かす技術。その三つがかみ合えばアタシのようになれるわ」


「なるほど……」


 思い出されるのはサトリちゃんの姿でした。風を彷彿させるスピード。決め手となる一撃に乗ったパワー。そして攻撃の弾き方や背後を取る技術。確かに全てが満遍なく達人の域に達しています。


「じゃあさ。走り回って体力つけたり、腹筋運動とかして身体を鍛えればいいのかな?」


「腹筋」


 わたしなりに理解して出した答えでしたが、それを聞いたフウカお姉ちゃんは急に固まってしまいました。伝えたかった意図とは違う解釈をしてしまったのでしょうか?


「あの……フウカお姉ちゃん?」


「……はっ!? ご、ごめんねフユナ。腹筋がバキバキに割れたアンタを想像して絶望してしまったわ。アタシとしたことがなんて間違いを……!」


「???」


 よく分かりませんが本当に絶望していることだけは理解できました。


「訂正するわ。アタシやルノを思い出してごらんなさい。筋肉ムキムキのマッチョなんてどちらにも当てはまらないでしょ?」


「うん。……つまり身体を鍛えるのもほどほどにってこと? その腹筋バキバキ(?)にならない程度に」


「まぁ、そんなところね。ルノならともかくフユナの場合はそれになっちゃうと失うモノの方が大きいから絶対ダメ。お姉ちゃんとの約束よ」


「うん、わかった」


 とは言ったものの、やはり強くなりたいという気持ちは捨てきれませんでした。スピード、パワー、技術の三つが大切なのはフウカお姉ちゃんの説明とサトリちゃんの動きで理解できたのでなんとかそれらを身につけたいものです。


「すぐには無理……だよね。そんな簡単に強くなれるなら苦労しないもん……」


 しょぼん、と落ち込むわたしでした。フウカお姉ちゃんの手前、甘えてしまう自分がいたのかもしれません。そういった部分も含めてまだまだ未熟ということなのでしょう。




 ……と、思ったその時でした。


「時間制限ありで良ければなれないこともないわよ」


「え?」


 まさかの答えでした。『時間制限あり』という言葉は気になりましたがそれ以上にわたしの興味をひいたのは強くなれるという意味合いを含んだ言葉です。


「あくまでも一時的にだから何の解決にもならないけど『強さ』を体験するのはいい経験になると思うわよ。自分こんな風になれるんだって思えるでしょ? フユナの可愛さが失われずに明るい未来も見える。最高じゃない」


「うん! それってどうすればいいの?」


「よくぞ聞いてくれた。……ちょっとだけ待っててね」


 そう言ってフウカお姉ちゃんは空高くに飛び立ってしまいました。そして一分もしないうちに戻ってきたかと思えばその手には小さなビンが握られています。妖精郷から何かを持ってきたみたい。


「はいこれ!」


「お水? くれるの?」


「そそ! んでもってそれを早く飲んでみて! 妖精郷から持ち出すとすぐに駄目になっちゃうから!」


「う、うん! ゴクゴク!」


 少々の不安も一緒に飲み干すように謎のお水を一気に流し込みます。すると果汁のような甘味が口内を満たし、ゴクンと喉を通った瞬間……驚くべきことにフウカお姉ちゃんが目にも止まらぬ速さで拳を打ち込んできました。


「避けて!」


「〜〜っ!」


 驚きによって硬直していた身体をなんとか動かしましたが、既に拳は目前まで迫っていました。これはどう足掻いても躱せない。すぐさまおとずれる痛みを我慢しようとしたその時でした。


「あ、あれ……? えっ?」


 痛くない。直撃しなかった。それどころか目の前にいたはずのフウカお姉ちゃんがあんなにも遠くに――


「おや、フユナ様いつの間に?」


「わぁ!?」


 グロッタです。いつの間にわたしの後ろにやって来たのでしょうか?


「いや、違う……?」


「気付いた? 今のはフユナがアタシの攻撃を後ろに下がって躱したのよ。身体強化は『妖精の雫』がもたらす効果の一つ。さっき飲んだやつね」


「ほ、ほんとに……?」


「お姉ちゃんはウソはつかないわ。しかもそれだけじゃない。一時間くらいは多少の傷を受けてもすぐに癒してくれるし、魔力も充実するの。すごいでしょ?」


「……」


 まるで別世界を見ているようでした。自分ではない自分を動かしているような……そんな感じ。


「まだ信じられないようね。いいわ、それなら実戦でその『強さ』を試してみましょ。さぁアンタの出番よ」


「え?」


「む?」


「………………私?」


 フウカお姉ちゃんの視線の先。わたしとグロッタが振り返ってみれば、そこにいたのは思わぬ強敵。起床して様子を見に来たルノでした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『今のフユナはパワー、スピードが桁違いに上がってる。技術に関しては素晴らしい師匠がいるみたいだから問題なし。あとはいかに勝負するかをよく考えてやってみて。応援してるわよフユナ!』


 そんな言葉をわたしに授け『強さ』を実感してこいとばかりに勝負の世界に投げ込むフウカお姉ちゃん。相手はまさかのルノです。手抜きなどして勝てる相手ではないので一気に攻めます。


「ちょ! まっ!? フユナ! 一旦ストップ!?」


「耳を貸しちゃだめよフユナ! ルノはいかなる手を使ってでも勝ちに来る勝負の鬼よ! 妖精郷に来た時だって『妖精の雫』をガブカブ飲んで攻めてきたんだから!」


「こらフウカ! フユナに変なこと吹き込まないでよ!? うわ!?」


 空を切るのは双剣による数多の斬撃達。パワーアップした身体に徐々に慣れてきたにも関わらず未だに一撃すら入れられないのはさすがの一言でした。時には地面から現われた氷の槍が斬撃を阻み、時には氷の弾丸が双剣を弾き、それを突破したと思えばサッと頭を下げて見事に回避。周囲に浮かぶ数本の杖達も厄介でした。


「えいっ! やっ! 当たらないよ〜〜!?」


「当てなくていいから! 私、死んじゃうってば!?」


 そんなわけにはいきません。一本すら取れないようでは今までと何も変わらないのだから。


「フユナは強くなりたいの〜〜! 今日という日をこれからの目標にするの〜〜!」


「そんなの目標にしちゃいけません! フユナはいつからそんな物騒なこと考える子になっちゃったの!?」


 打ち鳴らされるのは双剣と氷がぶつかり合う音。以前までのわたしであればここまで激しく動けば疲れもするしその隙に押し込まれてしまったことでしょう。それが今となっては『対等』と言ってもいいくらいの勝負を演じることができているので自分でもびっくりです。……雫を飲んだ今だけの期間限定ですが。


「ルノ! フユナは強くなってるかな? これを目標にしても大丈夫!?」


 と、言いつつ一発、二発、三発。手を出すことも忘れません。


「わっ! っと! 強くはなってる! け・ど! 目標にはしなくていいよ!」


「む〜〜!!」


 ルノからすればまだまだ合格ラインには程遠いということでしょうか。本気を出してもらえないこの状況を見ればそれも当然かもしれません。


「気にしないでフユナ! まずはルノから一本取るっていう目標を達成するのよ! 考えるのはそれからでいいわ!」


「フウカ!? あとで覚えてなよ!?」


「あはっ! アンタもフユナの気持ちに答えてあげなさいな!」


 ナイスアドバイスです。これでルノの気持ちにも火がついてくれたならラッキーなのですが果たして?


「ならこれで終わりだよ! ――迫る終焉、氷の牙。全てを穿て! 【怪狼・フェンリル】!」


 たしかに火はついたようですが、残念ながら極小の火でした。本来なら周囲一帯に終焉をもたらす氷の牙も今はわたしの周辺に現れたのみ。それも傷付ける目的ではなく拘束を目的として。


「なら一本取っちゃうもんね! 覚悟〜〜!」


 こんなことを言うのもアレですが手加減をしてくれていたおかげで助かりました。両手両脚を拘束すべく放たれた四本の氷。右手は躱すと同時に左手を狙う氷を迎撃。脚に関しては捕まりこそしたものの、パワーアップした身体能力によって強引に破壊。そのままの勢いでルノの懐まで潜り込むことに成功しました。


 そして――ガンッ!


「いったぁ!?」


 千載一遇のチャンスをモノにすることにも成功。双剣を裏返して鈍器と化した一撃が見事にルノの脛を捉えました。しかしチャンスはまだ続きます。


「いまだ〜〜!」


 膝をついて強打した脛を擦るのに必死なルノ。当然のことながら頭はがら空きでした。コブの一つくらいは作れるかもしれません。


「……と見せかけて!」


「へっ!?」


 視線を頭に向け注意を逸らす。せっかくがら空きな場所を犠牲にしてまで狙うのは果たしてどこか? どうやらルノを出し抜くことに成功したようです。


「ここっ!」


「ぎゃあ!?」


 一度目で打ち抜いた方とは逆の脛に見事な一撃が入り、それにはたまらずルノもダウン。ゴロゴロと草原を転げ回りながら必死に両方の脛を擦っています。


「いいわよフユナ! そろそろキメちゃいなさい!」


「うん!」


 言われずともそのつもりでした。ゴロゴロと逃げてるのか逃げてないのかよく分からないルノに一気に接近し、今こそ『決め手となる一撃』を――


「それっ!」


「わぶっ……」


 ルノの顔面を捕らえるように両手でサンドイッチ。それで終わりです。


「えっと……フユナ?」


「えへへ〜〜いつかは自分の力だけでこんなことができれは一人前だよね。目標にしてもいい?」


「な、なんかホッとしたよ……あはは」


 初めてルノから一本を取ることができたのは最高の思い出。きっと忘れられない日になることでしょう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ほら、じっとしてなさい。早くしないと雫が消えちゃうんだから」


「うぅ、いたい〜〜……!」


 激しい勝負も終わり、すっかり平和になった草原では未だ傷跡が残るルノとそれを甲斐甲斐しく治療するフウカお姉ちゃんの姿がありました。それを目の当たりにしたわたしはすっかり現実に引き戻されて申し訳なさでいっぱいです。


「あの……ごめんねルノ。痛かったよね」


 赤を通り越して青くなっている負傷箇所を見れば言うこともないことでした。しかしルノは――


「ま、まぁまぁ。たしかに痛かったけどフユナの成長に繋がったなら大歓迎だよ。私の知らない間に随分と成長したんだね」


「うん。……あ、いや」


「ん?」


 思い出しました。今日の強さは決して本来の力ではないことを。褒めてもらえた手前、それを言うのも気が引けるというかなんというか……


「とうかした? そんなに謙遜することないよ?」


「ううん、違うの。その……えっと……?」


「うん?」


 ついつい視線を逸らすとルノの治療をしているフウカお姉ちゃんと目が合いました。助けを求める心がそうさせてしまったのかもしれません。兎にも角にもそれだけの反応でルノは全てを察してしまったようです。


「はは〜〜ん? そう言えばフウカってば随分とノリノリだったよね。楽しかったかな?」


「あら、なんの事かしら。でもたしかにフユナの動きには目を見張るモノがあったからあながち間違いでもないわね。うん」


「……よし、フユナ。今から面白いモノを見せてあげるね。偉大な妖精王様が氷漬けになるよ!」


「あっ、こら! なに勝手に飲んでるのよ!? 卑怯者!」


「フユナのためなら卑怯者にでもなんでもなるっ! ドーピング行為を容認する人はお仕置きだよ!」


「まったく、どの口が言うのかしら。真っ二つになっちゃっても知らないからね!」


 余った『妖精の雫』を奪い取ったルノは遠慮なく飲み干してしまいました。するとわたしの時と同じようにあらゆる能力が強化され、そのままフウカお姉ちゃんと勝負を始めてしまいます。




 その様子はまさしく天変地異そのもので――


「咲き誇れ。零の導き! 【大輪・氷華】!」


「吹き荒れろ、孤高の疾風! 【風刃・風華】!」


 ドカン! バキン! ガシャン! 


「……」


 あまりの実力差を前に空いた口が塞がりませんでした。先程までの接戦だと思っていたモノはいったいなんだったのか……そう思わざるを得ません。悔しいですがこれが実力の差なのでしょう。


「ねぇ、グロッタ」


「なんですかな?」


 たしかに二人の協力もあって『強さ』というものを実感することはできました。だからこそなのでしょうか。今も目の前で繰り広げられている『本当の強さ』は確かな努力の積み重ねが必要不可欠なんだと理解できます。






 だから――


「フユナもっと頑張るよ。満足するにはまだ早いもんね!」


「うむ、その意気ですぞ!」


 そう心に誓ったわたしでした。



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