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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
151/198

第150話〜初めての妖精郷② 妖精王の実力〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。


にゃんたこ (神様)

『天空領域・パラディーゾ』にその身を置く神様。『遊び』と称して様々な強者を襲撃する事が多々あり、その中でもルノは『当たり』らしい。



「あ〜〜面白かった。まともに魔法を放ったのも久しぶりな気がするわ」


「私は死ぬかと思ったけどね……」


 清々しい表情で語る彼女の名は妖精王『フウカ』


 驚愕の名乗りを受けてから数分。私はフウカに連れられて近場の森にある二つの切り株に向かい合うように腰を下ろしていた。ちなみに偉大なる妖精王様は堅苦しい扱いをされるのが嫌ということで、私にも敬語は禁止という寛大な対応をしてくれた。よってこれからも言葉遣いは変わらず、呼ぶ時も『フウカ』でいかせていただく。


「では改めてフウカ。そろそろ妖精郷のことを教えてくれるかな? にゃんたこ様が言ってた『現地の人』ってたぶんあなたのことだと思うんだけど」


「そうね。アタシはにゃんたこの数少ない友達であり、偉〜〜い妖精王。その妖精王の目の前で『妖精の雫』に手を出したアンタは問答無用で消されなかったことにまずは感謝しなさい」


 むん。と胸を張る妖精王様は『偉い』を強調しすぎて逆に胡散臭い。感謝も何も先程私は問答無用で消されそうになったと記憶しているのだが……? まぁ、こうして生きているのだからその件は一旦置いておこう。


 それよりも。


「何回か話題に出てきたけど、その『妖精の雫』って何か特別な物なの? 確かに美味しいし力が溢れるしで良いことづくしだったけどそこら中にあったよね」


「それだけのメリットを実感しておきながらその価値が分からないなんて……アンタってとんだアンポンタンなのね。かわいそ」


「……」


 およよよ……と涙を流すジェスチャーと共に可哀想な人を見るような目を向けるフウカ。どうやらにゃんたこ様とは対照的で、この妖精王様は随分と表情豊かでいらっしゃるようだ。


「さっきのアレ。アタシの【逆巻く旋風】と正面からぶつかっておきながら無事でいられたのは半分『妖精の雫』のおかげよ。アンタも言ってたけどあれは一時的に魔力を高める効果があるの。その名の通り妖精郷でしか採取できない貴重なシロモノよ」


「なるほど。つまり雫の効果と私の実力が合わさって妖精王とも渡り合える魔法を発動させたってことか」


「はぁ? 何寝ぼけてんのよ」


「違うの?」


「全っっっ然違うわよ。アンタ、自分の魔法が無残に吹き飛ばされたのを忘れたの? 残りの半分はただの運よ」


「……」


 つまりあの場で私自身も無残に吹き飛ばされる未来も普通に有り得たと。それだけの魔法をいきなり撃ち込んでくれるとはなんという輩だ。妖精と聞いて勝手に天使に近いものをイメージしていたが、さすがにゃんたこ様の友達を名乗るだけはあるということか。暴君だ。


「とりあえず本題に入ろう。あのね、私はにゃんたこ様に『修行』をして来いって言われてやって来たの」


「ふんふん?」


「それで、飛ばされた先でにゃんたこ様の友達のフウカに出会った。つまり修行はフウカにお願いするって認識で合ってるかな?」


「そうねぇ。でもあの子の頼みとはいえ、いきなり押し付けられるのは癪だわ。そもそもアタシってば何も聞いてないし……ねぇ?」


 何やら含みのある表情でこちらに視線を送るフウカ。結果的に押しかけた張本人は私なので少しばかり心が痛むな。


「あはは……ごめんね? でもぶっちゃけ私も修行にこだわってる訳じゃないからこのまま帰らせてくれるならそれが一番嬉しいかな。ここに来たのも半ば無理やりだったから……」


「ふ〜〜ん? でもダメよ。せっかくの『おもちゃ』をこのまま手放したら勿体ないわ」


「おもちゃ……」


 キッパリと言い切った後に「うむ」と何やら考え込む素振りを見せるフウカ。なんだか嫌な予感がするなぁ。


「その前に一つ聞くわ」


 ほら来た。


「アンタはにゃんたこの何なの? はっきり言って人間が神様と知り合いなんて異常よ?」


「何その恋人みたいな質問。言われてみれば確かにそうかもしれないけど知り合いなのは本当だよ? 一言で言っちゃえば『友達』だね。どや」


「あはっ!?」


「な、なんで笑うのさ……?」


「だってアンタ……友達でしょ? さっきは『数少ない友達』って言ったけどにゃんたこの友達なんてアタシくらいよ? どれだけ飢えてたとしても人間と友達になるなんて信じられないわ」


「む。ならどうしたら信じてくれるのさ。さっきも言ったけどここに飛ばされてきたのはにゃんたこ様のおかげだよ?」


「それなのよねぇ。最初はなんだかんだ理由をつけてアタシに極悪人を始末させようと送り込んだのかなって考えたけど、アンタってばそんな風には見えないし。何よりあの子に始末できないモノなんて存在しないし……困ったわ」


 なら素直に私を信じてくれれば良いのでは? そんな風に思った時だった。


「勝負した方が早いわね」


「なぜ!?」


「簡単よ。仲良くなる要素はいくつかあるけど、あの子が興味を持つきっかけなんてほとんどが『遊べる』かどうかだもの。友達を語るならこの意味、分かるわよね?」


「実力で証明しろと」


「そそ。それでアタシを納得させることが出来たら信じてあげるわ。修行でもなんでもオッケーよ」


「どっちにしても私にとっては辛い未来しかなさそう。まぁいいか」


 私は別に疑っていた訳では無いが、どうやらフウカがにゃんたこ様の友達だというのは本当のようだ。さすがに性格をよく分かっていらっしゃる。


「覚悟は出来た?」


「なんか死ぬみたいで嫌だなぁ。殺さないようにだけお願いね……?」


「そんな心配は必要なし。アンタがにゃんたこに認められた『友達』なら……ね?」


 ギラリと光る瞳にはにゃんたこ様に似たモノを感じることができた。おそらく先程の一撃はほんのお戯れに過ぎなかったのだろう。これは私も気を引き締めて挑む必要がありそうだ。


「分かった。それなら私も本気で行くよ! (ゴクゴク!)」


「はぁ。それだけ雫に頼っておいてよく言うわ。別にいいけど」


 なにはともあれ気合いは充分。エネルギー補給もバッチリ。


 こうして妖精の頂点『妖精王』フウカとの戦いが突如始まることとなった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 場所は変わって再び草原にやって来た私とフウカ。周囲のそこかしこには『妖精の雫』の存在を示す虹がかかっており、勝負を繰り広げる場所にしてはあまりにも美し過ぎたがそれが妖精郷というものなのだろう。このまま争うことなくお昼寝でもできたら最高だろうなぁ……なんて思ってしまったのも無理はない。


「さて。一応聞いておくけど毛加減は必要かしら?」


「お任せするよ。必要と思ったならその時はして欲しいな」


「気の抜ける答えね。せいぜいそうならないように努力しなさい。じゃあ始めるわよ」


 努力と言ってもそもそも何をすれば終わりの勝負なのか不明なので私には全力で応えるだけの道しか用意されていない。初めてにゃんたこ様と魔法合戦を繰り広げた時のようにやれるだけやってみよう。


「幸いなことに今回は『妖精の雫』という強力なドーピングがあるからね。ふっふっ……なんだか燃えてきた!」


「はいはい。ほら、早く来なさいよ」


「言われずとも! うりゃ!」


 バキン! 開戦の合図となったのは地面からフウカを穿つべく放たれた氷の槍による一撃だ。これは私が最初に覚えた魔法だが、前述の通り『妖精の雫』の効果もあってその威力は【怪狼・フェンリル】に勝るとも劣らない脅威となって襲いかかっていた。


「へぇ? こういう単純な魔法、アタシは好きよ」


 そう言うフウカは一切避ける素振りを見せない。初手から好印象の魔法をチョイスした私を認めてくれた――わけではもちろんなかった。


「それっ!」


 それはすなわち余裕。フウカが選んだのは私の魔法を利用した飛翔だった。どんな原理かは分からないが、槍の先端につま先をぶつけるとそのままクルリと回転。貫かれることも無く空高く舞い上がったのだ。


「さ、今度はアタシの番よ」


 そう言ってニヤリ。獲物を狩る目でこちらに狙いを定めたフウカの掌には瞬時に風が渦巻き一つの塊を完成させた。そして「どん!」という掛け声と共に放たれたそれは、属性の違いはあれどとても既視感のある魔法ーーだが。


「おっと!」


「あら。やるわね……?」


 まだ出会って間もないが、ここまで気の強そうなフウカを見てきた身としては驚きの表情を見られたのはちょっとしたラッキーだった。私としては放たれた風の弾丸を躱しただけなのだが、どうもそれが意外だったらしい。


「それくらいならこうしてにゃんたこ様と散々撃ち合ってきたからね。――煌めく彗星! 【輝氷の射手】!」


 出会ってから今日に至るまで、私はにゃんたこ様との『遊び』で散々【輝氷の射手】の撃ち合いを繰り広げてきたのだ。負け続けているとは言っても、その時間が確かな自信となって私の中に積み重ねられている。狙撃対決なら望むところだ。


「ずどん! へ?」


「はぁ!?」


 ずどん! とは言ったが、放たれたのモノはそんな効果音では可愛く見える程に昇華していた。おそらく『妖精の雫』によるドーピング効果がもたらした結果だろう。威力・大きさ・スピード共に数倍にも跳ね上がったそれは本家の足元を掬える程度には異常だった。こりゃすごい。


「ははっ。魔力も全然減らないしテンション上がってきちゃったよ。ずどん! ずどん!」


「くっ!?」


 誰がこんな展開を予想できたことだろうか。氷の弾丸が風の弾丸を真っ向から弾き飛ばし、ときにはフウカの髪の毛を高速で掠めていく。場合によってはにゃんたこ直伝の【大輪・氷華】を使うことも視野に入れていたのだがとんでもない。もう既に私の魔法があの妖精王を押している。これは思ったよりもヌルゲーなのでは?


「まさかアンタ……!?」


「ん、何かな? ずどん!」


「このっ!!」


 何か言いたげなフウカに耳を傾けつつずどん。あわよくばこのまま一本取って終わりにしたかったがさすがにそこまで甘くはないようだ。焦りを見せつつも、フウカは『パァン!!』と両手を勢い良く閉じて氷の弾丸を受け止めた。そして手元を見つめながら数秒。そこでようやく確信を得たように言った。


「間違いない……! 『グラスファーレ』!」


「え、今さら?」


 何をそんなに驚いているのやら。にゃんたこ様のお友達だというなら氷魔法の頂点『グラスファーレ』の存在は百も承知のはず。

 その力は氷魔法とはそもそもの格が違い、言うなればドーピングを施した今の私のようにスピードやパワー等の全てが圧倒的な強化された状態に似ている。にゃんたこ様のような規格外が相手でなければ思い切り胸を張れるのだが、そう意味ではフウカも同じなので正直なところあの驚きの意味が分からない。


「ねぇ、ちょっと――」


「今思えばあの時【逆巻く旋風】を二発も使わされた時点でおかしいのよ……! そんな奴が『妖精の雫』を飲んだらチートじゃない! 卑怯よアンタ!?」


「あ、そういうことか」


 つまりは今の私は、並の氷魔法をゆうに凌ぐ『グラスファーレ』を使える身でありながらも『妖精の雫』によってそれを更に強化してしまった状態だという事だ。そりゃチート扱いされても致し方ない。


「あはは、もう遅いけどね。――ずどん!」


「わっ!? アタシともあろう者が失態だわ……!」


「いい加減信じてくれたかな?」


「はんっ! これでやっと互角よ! 【逆巻く旋風】!」


「すどん!」


 一度は負けた【逆巻く旋風】に向かって強化された【輝氷の射手】を放つ。するとどうだろうか。驚くべきことに風の暴力を氷の弾丸たった一発が貫いてしまったのだ。


「生意気なっ……! このアタシの風を――」


「ずどん!」


「きゃあああ!?」


「あら……」


 なんだかんだで会話しながらも器用に躱すものだからまだ余裕があるのかと思い狙撃してみればまさかのヒット。羽の一部が欠損し、フウカが草原に落下してしまった。なんだかいたぶっているみたいな雰囲気になってきてしまったな。


「いたたた……!?」


「なんか……ごめんね?」


 まさかの落下に少々ヒヤッとしたが、見たところ骨折などの大きな怪我は無いご様子。だがこれ以上痛めつけるのも心が痛むので出来ることなら降参して欲しいものだ。


「も、もう怒ったわよ! 妖精王の逆鱗に触れたことを後悔しなさい!」


「いったい何を――げっ!?」


 本来であれば苦戦を強いられるはずの妖精王との勝負を『ヌルゲー』評価してしまったが故か。にゃんたこ様のお言葉を借りるのであれば今の私はすっかり『遊び』気分だったのだろう。だからこそこんなヘマを犯してしまったのだと心底後悔した。


「ゴク! ゴクゴク!」


「ちょ、待って! 飲み過ぎでしょ!? さっきまでチートとか言ってたくせに!?」


 まさかの妖精王によるドーピング行為。偶然にも落下地点には数多くの虹が存在しており、同じ数だけ『妖精の雫』が湧き出ていたようだ。しかし驚くべきはそれだけではなかった。


「ふぅ。ちょっと予想外だったけどこれで対等ね?」


「いやいや……!?」


 対等? これが!?


 欠損した羽はすっかり回復し、溢れ出す魔力はもはや別人。確実に私の時よりも『妖精の雫』による恩恵が大きいのは気のせいではないはずだ。だからこそ心の底から思った。


「ほんっっっとうにずるい!?」


「当然でしょうが。アタシは妖精でアンタは人間。受ける恩恵が平等だと思う方がおかしいのよ。さ、もう終わりにしようかしら」


「『終わり』って物騒な意味の方じゃない……よね?」


「終わりは終わりよ。死になさい」


「やっぱりそっち!?」


 これにて立場はすっかり元通り。とんだドーピング大会になってしまったものだとツッコミを入れつつ迎え撃つ策に思考をめぐらせるが、やはりこの根本的な力の差は厳しいモノがある。


「えっとえっと!? あの魔力からして多分魔法の威力は桁違いになってるから【逆巻く旋風】の威力も桁違いで! ど、どうすれば〜〜!?」


「選択肢なんて無いでしょうが。アンタの全力をぶつけないと本当に死ぬわよ?」


「ひっ!?」


 すっかり取り乱す私にフウカの鋭い視線が突き刺さる。それだけで悟った。今こそにゃんたこ様直伝の最強魔法を使うしかないと。


「わ、分かった! 全力でやるからちょっとだけまって!? えっと……!」


「はぁ……緊張感のない子ね。いいわ。せめてもの情けよ」


 フウカの両手には既に充分すぎる魔力が集まっていた。にゃんたこ様譲りの最強魔法と『妖精の雫』による魔力増強。この二つを合わせても勝てるかどうかは分からないが、手段がこの一つに絞られているおかげで私は過去最高の集中力を発揮していた。


「良いわね」


 ボソッと呟かれる言葉が私の耳をほんの少し震わせたがひとまず後回しだ。

 今はだけは極限まで高められた集中力に身を任せ、最高の一撃放つ。恩恵を受けて膨れ上がる膨大な魔力。その全てをこの魔法へ!


「咲き誇れ、零の導き! 【大輪・氷華】!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





















 咲き誇る大輪。全てを零にする氷の華。そんな美しさと力強さを重ね備えた魔法が存在するとして。――行使できる者が未だかつていただろうか?


「……」


 いた。たった一人だけ。


 頭をよぎるのは唯一の友、神『にゃんたこ』の姿。魔法の鍛錬を苦とも思わず『遊び』と称して延々と上を目指すその姿は、このアタシをしても尊敬を禁じ得ないほどだ。


「…………」


 まさかそんな存在がもう一人いるなんて思いもしなかった。『妖精の雫』の恩恵を受けているとはいえ、この魔力は異常だ。おそらく素の力でも相当の実力者。それこそ神に気に入られるほどの。やはり『覗いた記憶』に間違いはなかったらしい。あの子の友達だというの納得の『力』だ。


「…………ふふっ」


 柄にもなく心が踊っているのが分かる。たしかに最初はほんのお戯れだった。しかしいざ手合わせしてみればどうだろうか。久しぶりに現れた規格外を相手にした『遊び』と称した魔法合戦が今、最高潮に達している。


「良いわね」


 出会って間もない人間ではあるがその集中力が極限まで高められているのだけは分かる。さらに紡がれる詠唱は驚くべきことに聞き覚えのあるものだった。その魔法をアタシはよく知っている。


「咲き誇れ、零の導き!」


 魔法の名は【大輪・氷華】


 神にのみに許された氷の最強魔法。それをあの人間はこの局面で物怖じせずに放ってみせたのだ。ならばこちらも『妖精王』の名に恥じぬ魔法を返さなければ失礼というもの。


 選択肢は一つ。風の『最強魔法』で応えるとしよう。


「吹き荒れろ、孤高の疾風」


 膨大な魔力をこの両手に。そして解き放つ。


「【風刃・風華】!」


 ただ速く。ただ鋭く。それだけを極めた風魔法の頂点が氷の大輪を真っ二つにした。




 

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