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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第149話〜初めての妖精郷① 妖精さん、こんにちは〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。


にゃんたこ (神様)

『天空領域・パラディーゾ』にその身を置く神様。『遊び』と称して様々な強者を襲撃する事が多々あり、その中でもルノは『当たり』らしい。



 ここは神――にゃんたこ様が住まう天空領域『パラディーゾ』


 地上より遥か上空に浮遊しているパラディーゾは煌めく氷で作られた巨大な大地であり、当然のことながらそんな場所の周りには遮蔽物など一切存在せず、騒音による近所迷惑など気にする必要も無い。つまりここは神という強大な存在が思う存分魔法を行使できる数少ない場所なのだ。


 そして今日も今日とて、神の『遊び』と称したお戯れが行われている。


「いくよ。【滾る紅炎】」


「「ひいっ!?」」


 ゴオッ!! 放たれたのは紅く燃え上がる炎。まるで太陽が現れたかのように錯覚する程の熱にジリジリと肌を焼かれ、その眩しさに視界すらも奪われた私達はジタバタと情けない姿を晒している。


「ほら、きちんと対処して。次、いくよ」


「ちょ、まって!?」


「ばか! あの人はやるゼ!?」


「その通り。【逆巻く旋風】」


 迎え撃つ間も与えられずに放たれたのは圧倒的な『風の塊』だった。先程の炎に比べて熱いこともなければ視界を奪われることもないので随分とマシ――なんてとんでもなかった。


「「ぶえっ!?」」


 一瞬のうちに米粒のように小さくなるパラディーゾ。私達が吹き飛ばされたことに気付いたのは突風の影響で空いた口をやっとの思いで閉じることができた頃だった。ダメージこそ無いが、問答無用で対象を吹き飛ばし、かつブサイク面を晒すというとんでもない魔法だ。


「ゲホッ! 口の水分が全部吹き飛んだよ!?」


「私達自身もだゼ。だけどほら、ここならもう射程外だゼ? ラッキー!」


「確かに! これだけにゃんたこ様から離れれば――」


 逃げられる! そう思って振り返った瞬間、その考えがいかに甘かったかを私達は思い知った。


「それじゃあ帰ろうか」


「「ひっ!?」」


 いつの間に距離を詰めたのやら。再びにゃんたこ様が登場。


「【逆巻く旋風】」


「「ぶえっ!?」」


 私達はピンボールの玉ですか? そんなことを思いつつ巻き戻されるように吹き飛ばされ問答無用でパラディーゾに帰還。ここまで圧倒的な力を見せつけられてはもはや抗う気も失せるというもの。もういっそのこと世界の果てまで吹き飛ばしてくれた方が諦めがつくのだが……


「どうしたの? そんなんじゃおやつ食べながらでも手が余っちゃうよ」


「「プチ〜〜ン……!」」


 訂正。ここまでコケにされては『氷の魔女』の名が廃る。せめて一撃! 一矢報いるのだ!


「よし、ニセルノ。私達も成長するんだってところをみせてやろう!」


「おぉ! ここ数日間おもちゃにされてる恨みを今こそ晴らしてやろうゼ!」


 私。そして偽物の私『ニセルノ』の心が再び燃え上がる。二人の氷の魔女による怒涛の反撃でにゃんたこ様にギャフンと言わせるのだ!


「分かってるよね、ニセルノ?」


「もちろん!」


 コクリを頷きを一つ交わし、そして動く。


「迫る終焉、氷の刃! 全てを穿て! 【怪狼・フェンリル】!」

「迫る崩壊、破壊の鉄槌! 全てを砕け! 【氷拳・プーニョ】!」


 意思の疎通、連携はバッチリ。少ないやり取りで勝利を掴む決意を確認した私達は、高速で詠唱を完了させる。私は【怪狼・フェンリル】による数多の氷でにゃんたこ様を包囲。そして追い討ちとばかりにニセルノの【氷拳・プーニョ】による特大の氷塊が全てを押し潰しにかかった。


 しかし。


「咲き誇れ。零の導き――」


 今一歩届かず。淀みなく紡がれる詠唱はにゃんたこ様が健在の証拠。


 次の瞬間。


「【大輪・氷華】」


 煌めく氷の開花が凄まじい爆音と共に私達の氷を容易く吹き飛ばした――が、驚くには至らない。相手はあの規格外の神様なのだ。本命は次。ここまでを踏まえたのが今回の攻撃だ。


「「煌めく彗星! 【輝氷の射手】!」」


「……む」


 氷の破片が舞い散る中、一瞬隙をついて距離を詰めた私達。左に私、右にニセルノ。正面を見つめるにゃんたこ様の死角を狙うように左右から伸ばされるのは、詠唱と共に待機状態となった【輝氷の射手】だ。


 ほぼゼロ距離からの外しようの無い二箇所同時狙撃。勝利を確信した私達はそれでも油断せずに全力の一撃を放つ。


「「ずどん!!」」


 今度こそ勝ちを確信した私達の表情には笑みが浮かび、彗星の如く美しい尾を引く氷弾は狙い違わずにゃんたこ様へと一直線に突き進む。完璧な一撃だ。






 そして――






「くす」


「「!?」」


 ドギャッ!!


 私達は意識はどこかへ吹き飛んでしまった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「いつまで寝てるの」


 背中に感じるのはひんやりとした氷の感触。顔を照らすのはにゃんたこ様の魔法ではなく正真正銘、自然の太陽だった。


「あれ……? え?」


 ゆっくりと身体を起こせば目の前に広がる景色がここは相変わらずのパラディーゾだと教えてくれる。すぐ隣にはニセルノがひっくり返っておやすみ中のようだが、おそらくこれは私が目覚める前の状況を物語っている見て間違いないだろう。……なんで?


「状況は理解してる?」


「う〜〜ん……おでこに盛大なタンコブがあること以外は特に。あの、私達ってにゃんたこ様から一本取りました……よね?」


「残念。それどころか自滅だよ。お互いの一撃でね」


 にゃんたこ様の説明によると、最後に放った【輝氷の射手】による狙撃が、あろう事か私とニセルノに直撃したらしい。いや、意味が分からないんですけど。


「私達、にゃんたこ様を狙ったはずですが……?」


「うん。だから躱したの。ヒョイっとね」


 説明しながらにゃんたこ様はスっと一歩下がる。嘘偽りがないならそれは何の変哲もない、本当にただの一歩だ。


「……あの場面で? たったそれだけ?」


「あとは説明した通りだね。二人して目の前でバタンキュー」


「…………」


「くす」


 私は神という存在の強大さに改めて泣いた。あの距離で私達の魔法を躱すだけならいざ知らず、一矢報いてやろうとら放った全力の一撃を利用し逆に自滅させるとは。もはや勝負にすらなっていないじゃないか。


「あそこまで近付けただけでも進歩だよ」


「あのにゃんたこ様が褒めてくれた!?」


 嬉しい! ……が、やはり同時に悔しくもある。今日だけではない。ここ数日間あらゆる攻めをイメージして実行してきたが、そのどれもが『二人がかり』というハンデを頂いた状態にもかかわらず虚しい結果に終わっているのだ。それこそ今言われたように近付けただけでも進歩だと褒められる程度に。


「重く考える必要はないよ。遊びなんだから気楽にいこう」


「まぁ……そうですね。たしかに遠慮なく魔法をぶっぱなせるって意味ではとても楽しいですし」


 言ってしまえばにゃんたこ様に負けることなんて出会った時からそうだ。神様にお褒めの言葉を頂いただけでも良し。これが今の実力だというのを受け入れることもまた進歩だ。前向きに行こうじゃないか。


「でも流石と言いますか、あの連携を捌くなんてにゃんたこ様は底が知れませんね」


「神様だからね」


「左様ですか……」


「うん」


 最後にくすっと笑うにゃんたこ様。私達もなんだかんだで長い付き合いだ。その笑顔は友人に向けるそれだというのは分かったので同じ笑顔でそれに応える。思えばこうして笑顔を交換できるようになったのもまた進歩だとしみじみと実感した瞬間だった。


「さてと。それじゃあ私は帰ってゆっくりしようかな。今日はフユナも家にいるし……ふふ」


 昨日も一昨日もイチャイチャしたばかりだがやはり疲れた後の癒しほど嬉しいものはない。それがフユナとの時間なら尚更、そこにグロッタやスフレベルグ、レヴィナやコロリンが加わって賑やかになればどこかへ遊びに行くというのもアリだ。


「うん、いいねいいね。じゃあにゃんたこ様。私はこれで」


「まって。この後は暇?」


「いえ。フユナとイチャコラしようと思ってたんですけど……どうかしました?」


 にゃんたこ様がこんな質問を投げかけてくるのは珍しいがデートのお誘いだろうか? それともいつかのように突発旅行イベント? なんにしてもにゃんたこ様と過ごすというのならそれも良いかもしれない。またロッキの温泉にでも行くか? 今度は皆でね。


「違う。それはまた今度ね」


「あはは……行くのは決まってるんですね。じゃあいったい?」


「ルノ。あなたにはこれから修行へ行ってもらいます」


「お断りします」


 何故なら心はもう既にスローライフモードになっているからだ。仮になっていなくてもお断りします!


「詳細は現地の妖精が教えてくれるよ。思う存分鍛えてもらって、そして私の『遊び』に笑って付き合えるくらいに強くなって戻って来て」


「いやだ! 私はこれからまったり過ごすんです! 職権乱用はずるい! 何より意味不明! そんな『妖精』とかいう頭お花畑みたいな言葉には騙されませんよ! それなら既にフユナという可愛い妖精が家にいますから!」


「最後の魔法。『勝ちを確信した一撃』で自滅した事、どう思う?」


「うぐっ!? それは悔しかったですけど……」


「レッツゴー」


「ちょ!?」


 まんまと誘導された私は反論も逃亡も許されずに白い光に包まれる。それならせめてニセルノも一緒に――そんなことを思った時には既に私の身はパラディーゾには無く、どこかへ飛ばされてしまった後だった。






「くす。頑張ってね」


 確かに聞こえたその言葉を最後に私の意識はプツンと途切れる。どうやらしばらくはスローライフを満喫することは叶わないようです。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 目覚めは草原の上。ゆっくりと目を開くと映ったのは不思議な空だった。太陽と呼べるものが存在しないにも関わらず、周囲は昼間の明るさに満たされているという謎現象。まるで夢の世界にやって来たかのような錯覚に陥る中、大の字で寝転がったままの私は顔だけを横に向けて状況確認を行う。


「…………」


 結論。ここは『秘境』だった。


「……夢?」


 やっぱりね――なんて現実逃避しそうになる自分に喝を入れるがそれでもこの現実を受け入れることは容易ではなかった。なにせ視界に映る全てが『美しい』の一言に尽きるのだから。

 周囲に広がるのは緑の芝生。そして水源が存在するのだろうか、所々に湧き出した水が大小様々な泉を作り出している。しかし驚くべきはそこではない。


「そこも。あっちも。全部に虹ができてる……! うわ、めっちゃ綺麗!?」


 一つの泉に一つの虹。双子のように並んだ泉に双子の虹なんて面白いものまである。

 更に近くに寄ってみれば、泉を飾り立てるように生い茂る可愛らしい植物についつい心が踊ってしまった。緑の茎の先にちょこんと咲く花がいかにも『妖精』といった風貌で、良い香りも相まってこの場所が『秘境』だというイメージを根強くさせる。遠目から見れば小さな蝶が集まっているかのようだ。


「うん、ほんとに綺麗。それにこの泉……ただの水じゃないよね。なんかいい匂いがする」


 フワっと香るのは甘さと爽やかさが同居した匂い。未知なる香りに導かれるように水に手を伸ばし、勢いのままに掬いとってみると気付いた時にはゴクリと一口飲んでいた。なんという魅了効果か。


「ん、スッキリとした甘さのジュースみたいだね。しかもお腹は膨れるし魔力も溢れるような……?」


 まるで魔法の水だ。この神秘的な空間においてこの効果。もしかしたらかなり貴重なモノかもしれない。空き瓶でもあればお土産に――そんなことを考えている時だった。


「ちょっとアンタ! なに勝手に飲んでんの!」


「ぶふっ!? ゲホゲホッ!!」


「あはっ! びっくりしてやんの」


 欲に飲まれるがままに二口目を口に運んだ瞬間のことだった。頭上からかけられた気の強さを感じる言葉にドキっとしつつ、視線を上げるとそこにいたのは一人の……人間?


「飛んでる……?」


 肩までサラリと伸びた美しい白髪と小柄な体躯を持った可愛らしい女の子が……飛んでいる。それだけなら魔女の私にも可能なので特につっこむこともない。驚いたのはその背中に半透明の美しい羽生えていたからだ。それを認識した瞬間、頭の中に浮かんだのは今も足下に生い茂る『妖精』を彷彿させる花だった。


「え、うそ? そういうこと? 本物の妖精?」


「そ。アタシは妖精。で、アンタは誰? 妙な真似はしないでね」


「へ?」


「はい動いた。なおれ」


「!?」


 ぐい。興奮のあまり一歩踏み出した足が強制的に動かされ気をつけの姿勢になる。こちらに向けられる手、そして微かに見えた渦巻く風。信じられないことに私の動きに合わせてピンポイントで放った風魔法がこの結果を生み出したのだ。風の魔女を名乗るサトリさんでもここまでの芸当は無理だろう。

 

「答えるまで逃がさないわよ。やっぱり『妖精の雫』を奪いに来た輩でしょ?」


「……あ、いや」


 綺麗な景色にまさかの芸当。ここに至るまでの数々の初体験によってつい反応が遅れてしまった。何から説明すればいいか悩むところではあるが、とりあえず相手は妖精なので命の危険が無いことだけは救いだ。


「はい、さようなら」


「ちょ、まってまって!? 結論出すのが早い! ルノ! ルノです! どこにでもいる平凡な魔女です! 無理矢理飛ばされてきたんです!」


「魔女ぉ?」


 圧倒的な圧力はそのままに、目を細めて怪訝な表情を向ける妖精さん。その見た目で『問答無用で消す』みたいな発言をされるとあまりのギャップでトラウマになりそうだからやめてほしいのだが。


「ふ〜〜ん? 魔女のくせに平凡を語るなんて悪いお口かしら。 ちょっと失礼」


「は、はぁ」


 ストンと目の前に着地した妖精さんは私の胸元くらいの背丈で思いの外小柄だった。改めて見ると、サラリと伸びた綺麗な白髪とパッチリとしながらもキリッとした瞳も相まって、どちらかと言うと『お姉さん』のような印象を抱く。サトリさんのお姉さんじゃないよ?


「ふんふん。ん〜〜……うん」


「あの……いったいなにを?」


 私のおでこに手を当てふんふんうんうん。まさかどこぞの神様みたいに人の記憶を覗くなんて悪趣味な真似をしてるんじゃなかろうな?


「なるほどね。まぁいいわ」


「なにとぞ命だけは……」


「何言ってんの。もう動いていいわよ」


 ひとまず物騒な考えは改めてくれたらしい。にゃんたこ様といい、この妖精さんといい、私の周りにいる規格外達は暴君が多いのでつい身構えてしまうな。


「さて。 改めて聞くけどアンタは何をしてたの? 真っ先に『妖精の雫』に飛びついて飢えた獣みたいだったけど」


「私も理不尽に飛ばされたとしか。あとは修行……かな」


「………………へぇ?」


 お姉さん的雰囲気が一変。花咲くような笑顔を見せる妖精さんは果たして何を思ったのか。少なくとも次の言葉で私は一つだけ理解した。


「吹き飛べ。【逆巻く旋風】!」


「は!?」


 にゃんたこ様と同じ魔法を詠唱したことにも驚きだが、それ以上に向けられる対象が私自身なことに驚愕を禁じ得ない。だが考えるよりも先にこちらも相応のモノをぶつけなければ何処とも知れないこの場所で空の彼方へ飛ばされてしまう。それだけは御免だ!


「【怪狼・フェンリル】!!」


 咄嗟に手を地面に置き詠唱。すぐさま正面に展開されるのは数十本にも及ぶ氷の牙。防御だけを目的としたそれはやがて幾重にも重なった強固な盾を完成させ、風の暴力を防ぐことに成功した。ひとまず安心。そんな油断と共にホッと息を吐いたときには既に『それ』は来ていた。


「【逆巻く旋風】!」


「ちょ!?」


 脅威の最上級風魔法二連発を前に、私の魔法は為す術もなく吹き飛ばされる。にゃんたこ様がいると言われれば信じてしまう程の『規格外』が今まさに目の前にいる彼女だった。


「ぽか〜〜ん……」


 開いた口が塞がらないとはまさにこのことだ。頭の中を支配する疑問は多々あるが、その中でも最優先で確認するべきことは一つ。


「あなたはいったい何者なの……??」


 妖精さんはその質問を待っていたとばかりニコリと笑い、そして言った。






「アタシの名前はフウカ。この妖精郷を統べる妖精の王よ。ようこそ、平凡な魔女さん?」


「妖精……王!?」


 訂正。


 見た目麗しい妖精さんは規格外も規格外。妖精の中の『頂点』でした。




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