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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
14/198

第十四話〜初めての家族旅行③〜 空中列車・恐怖・湖・お土産。そして締めの記念写真〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『危害を加えない』事を条件に開放された。





 私達が初めての家族旅行でやってきた街『ロッキ』そしてメインストリートにそびえ立つ、この街のシンボルである六本の樹の名前も同じく『ロッキ』

しかし、この街のシンボルはそれだけではなかった。具体的に言うと……



「ジェットコースターにお化け屋敷……」



 その頂上は完全に遊園地でした。



「ルノ。空中列車の樹だって! ここ行ってみたい」


「え、これ? これかぁーー?」


「うん。だめかな?」


「ガクガク……」



 グロッタがすでに怯えている。内心、私も怯えている。だが……



「もちろんいいよ。行こうか!」



 何食わぬ顔で応える私。という事でまずは空中列車の樹へ向かう事にした。樹と樹の間の移動はロープウェイのようなもので行われるので道中もとても楽しめた。ジェットコースターさえなければ。



「高ーーい! 見て見て! 街があんなに小さいよ!」


「これはすごいね。遠くの街まで見えそう」



 とか言いつつ、私が眺めていたのは目的地のジェットコースターばかり。到着してまず探したのはお馴染みの案内板。そこには示されていたのは何種類かの乗り物……無論、全てジェットコースターだった。



「へ、へぇ……? いくつか種類があるみたいだね」


「迷っちゃうね。これなんてどうかな?」



 フユナが指差したのは足が宙ぶらりんになるタイプ。ふむふむ……なるほどね。これかーー



「いいねいいね。うん……素晴らしい……」


「早く行こ! 次はあれで、その次はあれね!」


「……」



 皆さんもうお気付きかと思うが、実は私はジェットコースター苦手だ。高さ云々じゃなくて、なんていうか……こう、身体の中身が変な感じになるのが耐えられないんだよね。



「あの……ルノ様。わたくしも乗るので?」


「も、もちろんだよ。私達家族はいつでも一緒だよ」



 フユナがあんなにも楽しみにしているし、私が怖いからってそれを取りやめにしたら可哀想だ。フユナだけ行かせるなんてのは論外。せっかくの遊園地はみんなで楽しんでなんぼだ。



「そう……ここは遊園地。楽しもう。楽しもう。ブツブツ……」


「あれに……乗る……だとっ!? ガクガク……!?」



 そしてあっという間に順番が回ってきてしまった。まだ心の準備出来てないのにーー!?



「ワクワクするね、ルノ! 前の席だといいなぁ」


「え!? ど、どうかな。他にもお客さんいるからなぁーー? あはは」


「お待たせしました! 足元に気を付けてお乗り下さい。お連れのワンちゃんは専用のベルトをしてくださいね。では、どうぞ!」


「「……」」


「やったー!」



 私達は見事に最前列だった。どんまい、私。



「ルノ様……これ、本当に落ちたりしませんか?」


「も、もちろんだよ。変な事言わないでよ……」



 高い所は平気だけどやっぱり高いとプラスαで怖い!



「では、出発しまーーす!」



 ガタン!



「ひえっ!?」


「ワクワク!!」


「ガタガタガタガタ……!」



 上がってく……どんどん上がってく! この恐怖を煽るような時間がほんとにいやだ! あ、てっぺんだ……わーーい。



 ゴゴゴゴ……!



「ひゃあああ!?」


「わぁーーい♪」


「……」



 やばいやばい! 内蔵がおかしくなる! ……お?



「あれ……もう終わっちゃった?」



 ところが、目を開けると目の前にあったのは綺麗な空。あ、これ……やばいやつ。


 グワン! と、一気に景色が変わり、次に見えたのは地上だった。



「きゃあああ! わぁぁぁぁ! ひぇぇぇぇ!?」


「おもしろーーーい!」


「……」



 やばいやばい! 気絶する! 中身出るーー!?


 ゴゴゴ……ゴゴ……



「あ、終わっちゃったね」


「ほっ……」


「はっ!? ここは……?」



 とてつもなく長い時間に感じたが、騒いでいたらいつの間にか終わっていた。ひたすらに怖かっただけだが、周りから見たら私達はとても楽しそうにしていたことだろう。ちなみにグロッタは最初の方から気絶していたらしい。



「はぁ……はぁ……じゃ、じゃあとりあえず次の所(湖の樹)行こっか?」


「うん! 次の所いこう!」



 そして私達は次の(ジェットコースター)に到着した。



「「……」」


「次はこれだね!」



 今度は座るタイプのやつだった。


 その後もフユナのテンションは上がりっぱなしで、宙ぶらりんのタイプと座るタイプをもう一回ずつ乗った。それはすなわち、私が悲鳴をあげた回数であり、グロッタが気絶した回数でもありました。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「次はぜひ『恐怖の樹』へ行きましょう!」



 その時は、珍しくグロッタが提案してきた。



「え、急にどうしたの? またドM心に火がついたとか?」


「ふふん。わたくしはフェンリルですぞ。恐怖の樹と言うからには自信があるのでしょうが、このわたくしを恐怖させることが出来ますかな!?」


「さっきまで散々恐怖してたくせに。私もだけど……」


「フユナ怖いの苦手……」



 という訳で、次にやって来たのは『恐怖の樹』



「ふむふむ……やっぱりお化け屋敷みたいなものか」


「ルノ……ほんとに行くの?」


「や、やめとく? 何だったらグロッタだけ行ってもらおうか……」


「ひ、ひどすぎる!」



 ジェットコースター前の『家族で楽しもう』発言はどこへやら。しかし分かって欲しい……私はお化け屋敷も苦手なのだ。ところがフユナは。



「う、うーーん……行ってみたい気持ちあるから……行く……」


「わ、わかった。じゃあみんなで行……」



 覚悟を決めたその時。



「ぎゃあああ!!!」



 謎の悲鳴が聞こえてきた。言うまでもなくお化け屋敷から。



「はは……平気平気……」



 そして重い足取りながらも、入口に到着した。ここだけ見るとそんなに怖くなさそうだな。



「いらっしゃいませー♪ お客様、三名様でのご利用でよろしいですか?」



おぉ、受付のお姉さんの明るい声が気持ちいい。なんか大丈夫な気がしてきた。



「はい。お願いします」


「はい、ありがとうございます! 注意事項ですが、現れるお化け……もとい、ゾンビには気を付けてくださいね! なんなら攻撃してもオッケー! では、こちらからお入りください」


「ど、どうも……え、ゾンビ?」



 多少の疑問を残したまま、案内された扉から入ってみるとそこは室内という感じではなく、深い森といった感じだった。



「けっこう暗いね。ここだけ夜みたいだ」


「ル、ルノ……手、繋いでて……」


「あ、そうだね。はい」


「お二人とも、大丈夫です。なにか出てきたらわたくしが噛み砕いてやりますから!」


「それだとグロッタが氷漬けになるかもよ?」


「なんと!?」


「今、それもいいとか思ったでしょ」


「そんな事ありませんぞ! (キリッ)」



 そんな感じで、頼もしいグロッタさんに付いていく私とフユナ。さっきとは違って守ってくれそうな人がいるだけでだいぶ違うな。



「はは……今回はもしかして余裕かも……」



 ぐいっ。



「ん、何? フユナ」


「え?」


「え? 足掴んだら歩けないよ……?」


「……」



 掴んでいたのはゾンビでした。



「うっぎゃあああああ!?」



 リアルすぎる! 本物! 本物なの!? てかいつの間に湧いたの!?

 私はこんがらがった頭のまま、フユナを抱えて猛ダッシュした。



「はぁはぁ……死ぬかと思った……」


「ふふっ、ジェットコースターみたいでちょっと楽しかった」


「ルノ様、こういうの苦手なんですね」


「ん、んーー? そんなことないよ。ほら、行こ」



 幸いここは見通しのいい道でたまに木があるくらい。これなら脅かしようがないでしょ。



 ぬっ……



「は? ひゃああああ!?」



 木! 木の影にいた! 完全に油断してたから腰抜けた!



「あわわわ!?」



 私が地面に座り込んで慌てていると、突然首が締まった。



「ぐえっ!?」


「わぁーーーー!?」



 フユナが腰を抜かした私を想って(?)助け出してくれた。しばらく引きずられたところでやっとの停止。服脱げてないかな?



「あ、ありがとう(?)フユナ。助かったよ」


「え、あ、うん……?」



 フユナも必死だったみたいだ。想像以上に怖いなここ。



「グロッタは平気なの? さっきから妙に静かだけど……」


「はい。特に驚くところが無かったので黙っていました」



 うむ……さすがはフェンリル。高い場所じゃないと強いな。



「じゃ、じゃあさ……グロッタ前歩いてよ。私達後について行くからさ」


「分かりました。お任せ下さい!」



 そこからは先のグロッタは正真正銘、勇者だった。



「むむ! あそこの影になにか潜んでますな!」



 そう言ってゾンビを回避したり。



「お、あのゾンビ……こっちに気付いていませんね。脅かしてやりましょう!」



 などと言って、逆にゾンビを驚かせたりしていた。こういう人、たまにいるよね。そして挙句の果てには……



「ぎゃあああ!? グロッタさーーん!」


「カブゥ!」



 ゾンビを丸ごといただく始末。



「あの、グロッタさん? それ人間……」


「何を言うのですか。今のはゾンビですぞ?」


「あ、うん……そうなの……?」



 よく分からないが食べた本人が言うのだからそうなのだろう。受付のお姉さんめ攻撃オッケーとか言ってたしな。



「ふむ、どうやらもう出口のようですな。やはりこんなものでしたか!」


「助かった……グロッタさまさまだね」


「うんうん。グロッタかっこよかったよ!」



 こうして私達は恐怖の樹を無事に抜け出すことができた。分かってはいたけど……私、絶叫系とか、お化け屋敷とか本当にだめだな。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 私達が『食事の樹』へやって来た時には既に時刻はお昼を回っていた。



「さてと、お昼は何食べようか」


「走り回ったからお腹すいちゃったね」



 周りを見回すと、ぐるっと一周囲むように色々なお店があり、中央にはたくさんのテーブルや椅子が並べられている。まるでフードコートみたいだ。



「すごーーい! 見るだけでも時間かかっちゃうね!」


「確かに……こりゃ大変だ」



 てことでとにかくぐるっとする私達。なんだかんだ早く決まって、私はロッキピザ。フユナは白身魚のロッキソース添え。グロッタはロッキステーキを選んだ。



「さて、天気も良いし午後は湖の樹に行って遊ぼうか」


「フユナ、この飛び込むやつやりたい!」



 案内の紙を取り出して指さすフユナ。



「フユナはこういうの得意だね」


「うん! ロッキの街に来れて良かった!」


「わたくしも恐怖の樹とかいうものはなかなか楽しめましたぞ!」


「うんうん。二人ともそう言ってくれるなら来た甲斐があったよ。それじゃ、さっそく行こうか!」


「おーー!」



 遊べる時間もこれで最後……いや、考えるのはよそう。家族旅行は最後まで楽しんで想い出を作らないとね!



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 『湖の樹』にやって来た私はまず、驚いた。てっきり巨大な湖かと思っていたのに、流れる湖やら、波がある湖なんてものが広がっていた。極めつけは、高い所から筒状に伸びた滑り台。あれは紛うことなき……



「まさか……ウォータースライダー!?」



 ここ、本当に異世界か!? と、突っ込みつつもテンションMAXな私は瞬時に着替えた。ちなみに水着は用意していなかったのでレンタルで済ませた。


 と、ここで思わぬ展開。



「おい、なんだあの子達、可愛すぎだろ」


「おれ、あの小さい子の方が好みだな」



 ん? 私のフユナがいかがわしい目で見られてるだと!?



「ギロッ……!」


「あ、あの子怖ええ!?」


「ばか、親に決まってんだろ!」


「あの若さでか!? あの視線といい、たまんねーな」



 私は私で変な性癖の人に目をつけられた。



「ギンッ!」


「おい、あの犬やべぇ」


「フェンリルみたいな気迫を感じるぞ」


「大人しくしてた方が身のためだな……」



 フェンリルみたいな(グロッタ)のおかげでフユナは守られた。良くやった!



「さっそくだけどあのウォータースライダーに行ってみよう!」


「おーー!」


「ギロ! ギロ! ギロッ!」


「グロッタさん? もう睨みは効かせなくていいからね?」



 少々問題は起きたがそれも仕方ない。フユナは可愛いからね。もちろん私も!



「ねぇ、ルノ。みんなで一緒に行こうよ!」


「お、いいねーー!」



 という訳で、先頭にグロッタ、それを抱くフユナ、そのフユナを私が抱いて滑る形になった。



「はい、お次は三名様ですね。ではどうぞーー!」



「やっほーーー!」


「気持ちいいーー!」


「ガクガク……!」



 これもだめらしいグロッタには申し訳ないが、一分近く掛かるこのウォータースライダーを私とフユナは存分に楽しませてもらった。そして最後にはお決まりの……



 バッシャーン!



「ガボッ!?」



 先頭のグロッタがモロに水を飲んでいた。



「次はあれ行こ!」



 あれは先程、フユナが行きたがっていた飛び込むやつだ。これは一人用だったので私とグロッタは下で見学する事にした。



「助かった……あれも内蔵がおかしくなるんだよね」


「わたくしもホッとしました」



 そんな事を話していると、フユナの出番がやってきた。上から手を振っていたので私もそれに応える。天使がまいおりるぞ。


 そして……



「とーー!」



 ザッパーーン!



「おぉ、すごい!」


「さすがです、フユナ様!」



 フユナは着水するまでに見事な回転を入れていて、完全に注目の的だった。



「きゃーー! かっこいい!!」


「可愛いーー! 最高!!」



 そんな声と共に巻き起こる大勢の拍手。なんかもう、アイドルみたいな扱いになってるな。



「はは、これはもうフユナの独壇場だね」


「ふふん、当然ですな!」



 全く注目されていない私とグロッタは、人知れずドヤ顔をしてしました。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 楽しい時間というものは経過も早いもので、あっという間に夕方になってしまった。


 湖の樹を後にした私達は、家族旅行の締めにふさわしい『お土産の樹』にやって来ていた。



「あったあった。ロッキの苗木とーー」


「ルノ。サトリちゃんと、カラットさんにもお土産買っていってあげようよ!」


「ん、そうだね。うちの分と二人の分。三つ買おうか」



 私達がお土産に選んだのは、ロッキの詰め合わせ。ジュースやジャム、クッキーなど色々入っているものだ。



「うん、こんなもんかな」



 少々、名残惜しいがこれで本日の予定も全て終了だ。


 するとフユナが。



「ルノ。あれ」


「ん?」



 あ、なるほど。言わんとしている事が分かった。



「記念写真か。いいね、撮ろう撮ろう!」



 てことで、忘れちゃいけない! 家族旅行最後の思い出作り!



「いらっしゃいませ! 記念に一枚いかがですか?」


「はい、三人でお願いします」


「はい! では、そこに並んで笑ってくださいねーー!」



 フユナはグロッタを抱いて、その隣に私も並ぶ。


 そして。



「じゃあ、いきますよーー! はい、ヨーグルト♪」



 カシャ!











 こうして、初めての家族旅行は無事に終了。


 最後に撮った記念写真は、その締めにふさわしい笑顔で完成し、末永く我が家に飾られることになるのでした。




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