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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
139/198

第139話〜氷の魔女は誰のもの?〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。……が、人間の姿になれるようになってからはちょっぴりヤンチャに。イタズラ大好き。


フィオ・リトゥーラ&オリーヴァ&バッカ

魔女に憧れて王都『リトゥーラ』からやって来たフィオ・リトゥーラ王女とその付き人のオリーヴァ(女性)とバッカ(男性)。三人とも金髪に翠眼。


にゃんたこ (神様)

『天空領域・パラディーゾ』にその身を置く神様。『遊び』と称して様々な強者を襲撃する事が多々あり、その中でもルノは『当たり』らしい。




 晴れ渡る青空を白い雲が程よく彩るある日のこと。



「おはようございます、先生!」

「遊びに来たよ」



 サァァァっと吹き抜ける心地よい春風に運ばれるようにやって来たのは王女様と神様という珍しい組み合わせの二人。当の本人達は特に約束をしていた訳ではないみたいなので偶然の悪戯といった感じだろう。


 何にせよ――



「いらっしゃい、二人共」



 こうして訪ねてきてくれたのだからまずは歓迎しようじゃないか。もっとゆっくり寝ていたいというのが本音だけど、早朝からの訪問というのは我が家でのイベント発生時にはよくあるパターンなので、もうすっかり慣れてしまった。


 そんな事を思いながら顔を綻ばせていると――



「ちょっと?」

「む」



 一触即発しそうな空気。自分で言うのもアレだが、この二人は私の事が大好きだ。それこそ恋をしていると言っても差し支えない程度には。



「「……」」



 王女様であり我が弟子でもあるフィオ・リトゥーラことフィオちゃん。そして神様でありながらもここ最近は妙に仲良くさせて頂いているにゃんたこ様。


 その二人の間に流れる不穏な空気がやけに新鮮に感じる朝だった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「はい。コーヒーしかないけど良かったらどうぞ」



「ありがとうございます、先生!」

「いただきます」



 場所は変わって自宅のすぐ横の庭。グロッタの小屋のすぐ脇に設置されたテーブルにて私、フィオちゃん、にゃんたこ様の三人は仲良く早朝のティータイムを満喫することになった。



「確かに仲良く、ですな。ゲラゲラ!」


「ちょっとグロッタ。その含みのある笑いは何よ……」


「ルノ様も気付いているのでは?」


「そりゃね」



 魔女、王女様、そして神様。立場の違う三人の人間が集まって同じテーブルで同じコーヒーを飲む。それだけ聞けば垣根を越えた素晴らしい関係に見えなくもないが――



「ちょっとにゃんたこさん? 言っておくけど先生は私のモノよ」


「なんでそうなるの。私のに決まってる」


「ふーーん。王女たる私に逆らうなんていい度胸してるわね」


「そっちこそ。こっちは神様だよ」


「神様!? ………………ぷっ!」


「……(プチーーン)」



 実際は少し違った。私の対面に座るフィオちゃんとにゃんたこ様は、友達同士の微笑ましいやり取り――と言って良いのか分からないが、何故か私がどちらのモノかという謎の口論を繰り広げている。にゃんたこ様の神様設定は内緒なんじゃなかったっけ?


 それはさておき。



「むぐぅ〜〜!?」


「くす」



 プチンとキレるにゃんたこ様にその悪いお口を氷漬けにされるフィオちゃん。これは喧嘩……いや、でもなんだかんだで一緒にコーヒー飲んでるしお互いツンデレということでいいのかな? とにかく賑やかだ。



「これくらいなら放っておいてもよろしいのでは?」


「ま、そうだね。私が介入し過ぎても良くないか」



 ということでこっちはこっちでのんびりさせてもらうとしよう。止めはしないからツンデレの二人は自由に羽を伸ばしてくれたまえ。私はグロッタのモフモフお腹で寝る。



「もう怒ったわ! バッカ……はいないんだった。オリーヴァ……もいない。もぉーー!!」


「くす。一人ぼっち」


「な、なんですって!?」


「一人ぼっち」


「に、二回も言った!? 神様なんてイタいこと言う厨二病のくせに!」


「……消し飛ばすよ」


「ふん、やれるものならやってみなさいな! あなたこそ私の炎の動物達に丸焼きにされるがいいわ! この厨二病めっ!」


「……(プチーーン)」



 静観者を決め込んだ私ではあるがこれは……



「行きなさい! 炎の〜〜犬猫鳥蛇鼠!」


「滾る紅炎 (×5)」



 一触即発。


 一瞬にして火の海と化す草原。



「まったく……」



 私のスローライフはどこへやら。さすがに止めるべきか。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 炎と言うにはあまりにも紅い炎。そして炎と言うにはあまりにも可愛らしい炎。二つの力が衝突するであろうその瞬間。


 ゴシャ!


 間に割り込むように現れた一本の氷槍がそれを相殺。辺り一帯に氷や水、そして蒸気を撒き散らした。



「はい、そこまで」



 それをやったのはもちろん私。フィオちゃんの先生であり、にゃんたこ様のお友達なのだから当然、止めるべき所は止める。


 ……と思ってやったのだが。



「先生! 守ってくれてありがとうございます!」

「あれくらいどうってことないのに」



 件のお二人は少々違った捉え方をしてしまった模様。どちらかを守った訳ではなく、さすがに危ないので止めただけなのだけれど。



「おっと、何か勘違いをしているのではなくて? 先生は私の味方をしたのよ」


「何言ってるの。こっちに決まってる」


「いや、二人とも勘違い……」



 これで状況はほぼ振り出しに戻ってしまった。フィオちゃんはともかく、にゃんたこ様の魔法に関しては私もそれなりに本気を出さないと止められないので正直しんどいものがある。――本来なら。



「にゃんたこ様も手加減するくらいなら素直に遊べばいいのにねぇ」


「ツンデレですからな。ゲラゲラ!」



 フィオちゃんの魔法は相変わらずの自由自在な炎の動物。しかしにゃんたこ様の魔法は私との魔法合戦で繰り出してきたような規格外ではなくフィオちゃんの力に合わせた小さな魔法だった。それもご丁寧に五匹の動物に合わせた大きさで。


 どうやらツンデレはツンデレでもにゃんたこ様の方が一枚上手のツンデレらしい。


 そんな事を思う私を他所に二人は――



「見てみなさいな。先生はどちらかと言うとこっち側にいるでしょう。つまり私の味方よ!」


「全然違う。私寄りにいる」


「はぁ!? いま一歩近付いたでしょ! このズル!」


「……」


「ふふ。沈黙は肯定と同義なのは世の理よ! これだから厨二病はっ!」


「……(プチーーン)」



 またしても厨二病と煽るフィオちゃんと、それに対してプチプチするにゃんたこ様。なんともしょうもない争いである。こりゃ私がどちらかを選ばないと終わらないパターンなのでは?



「はいはい分かったよ。それじゃ『私が誰のモノ』かについて、直々に判決を下します」


「ありがとうございます、先生!」


「結果は見えてる」



 自分が選ばれることを微塵も疑っていない二人に対して私の答えは。



『私が。じゃなくて二人が私のものだよ!』


『もぉ、先生ってば欲張りなんだから♪』


『も、もうそういうことでいいよ……(照)』



 そんな感じに一件落着のシナリオを思い描いていたその時。



「お〜〜い、ルノ! 朝ご飯できたよ〜〜!」


「ん」



 突如割り込んできた声。振り返ってみれば視線の先には私の可愛い可愛い初めての家族であるフユナが、家の窓から咲き誇る花のような笑顔を向けているではないか。ここでまさかの乱入者の登場により順位は変動。


 その結果。



「優勝はフユナに決定! おめでとう!」


「なに〜〜? よく聞こえないよ〜〜? 冷めちゃうから早く来てね〜〜!」


「はいは〜〜い、すぐに行くよ〜〜!」



 不毛な争いはこれにて終了。私は二人の手をとってフユナお手製の朝ご飯に引き寄せられるかの如く踵を返す。



「という訳でフィオちゃんとにゃんたこ様は同列の二位! だから二人共仲良くね。はい、一緒に朝ご飯を食べましょう!」


「「……」」



 左手にはフィオちゃん。右手にはにゃんたこ様。両手に花の状態となった私は、その対立していた空気を打ち破るかのようにいつもよりも軽い足取りで二人を引っ張っていくのでしたとさ。


















 そんなこんなで朝食後の席にて。



「え、ルノはフユナのモノ?」


「そうそう。フユナが優勝したから私はフユナのものになったの」


「えーー? いらない」


「ひどい!?」



 衝撃だった。言葉を返すことができたのが不思議なくらいに。フユナにフラれた!


 と思ったら。



「ルノはモノじゃなくて大切な家族だよ?」


「!!」



 再び衝撃。私は今度こそ言葉が出てこなかった。もちろん、嬉しすぎるが故に。


 なので。



「私もフユナが大切だし大好きだよ! ちゅちゅちゅ〜〜!」


「うわっ!? ちょっとルノ、恥ずかしいよーー!?」



 恥ずかしいと言いながらもまんざらではない様子のフユナへ、私はただひたすらに最大級の愛を伝えることにした。


 一方、それを見ていたフィオちゃんとにゃんたこ様は。



「く、悔しい……!」


「許せない」



 さらに――



「私達のことなど眼中に無いみたいですよ」


「そうですね。私は悲しいです……」



 コロリンとレヴィナも加わって計四人分の嫉妬の視線に晒された私はこの後全員のフォローをするのにとても苦労したのでしたとさ。





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